「彩菜ぁ……君は天使のような人間だね」
深夜3時……不快な音を鳴らし一人の少年は自室のベッドに置かれたスマホに写されたある女子高生の写真をにやにやして息を乱しながら見つめていた……周りにティッシュを散らかして……。
「悲しいよ……画面の上では君のこの身体を直接は堪能出来ない……あぁ!……欲しいなぁ、君が欲しいなぁ……」
表示されてる彩菜の写真は明らかに隠し撮りをしたものばかりだ。
制服から体操着に着替える場面を納めたものや、彼女が前屈みになってるもの……机に突っ伏してるのもある。
「僕は彩菜の彼氏なんだ……なにを恐れる必要がある。……『あの件』が証明してくれたじゃないか……僕は彩菜の彼氏だって……でも最近の彼女はちょっと怖い……マリッジブルーってやつか?」
彩菜は僕のものだ……だが最近の彼女の振る舞いは目に余る。
君は僕だけを見てればいいのに……僕は君の恋人だ。
「……俺も!……強いところ彩菜に見せてまた寄りを戻して見せるからね……!」
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ゾクリ、と震えが走り彩菜は飛び起きた。
この震えの類いは悪寒や背筋が氷るようないやな感じのもの……冷や汗で濡れる手を握りながら……今日は色々あったからと結論を出す。
……まだ午前3時だ。
「恵美……貴女を今日も探してみせるわ」
……翌日、教室に入ると、昨日と同じく結子が走りながら近づいてきた。
酷く取り乱してるようだ。
「彩菜!……大変なの、この電話番号から……」
「ちょっと、落ち着いて結子」
「ごめんなさい……。まずはスマホのこれを見て」
写し出された着信履歴の一番上を結子は指した。
「この上の朝の時間帯に掛かって来たのが、恵美の……?」
「そうよ……恵美は無事だったの!。貴女も電話したいんじゃない彩菜?」
もちろんだ。
嬉しいし、自分と結子を不安がらせたことを怒らなくては……笑みを浮かべながら電話するため移動しようとする二人に……突風が襲いかかる。
「きゃあ!」
「くっ!」
教壇に打ち付けられる、彩菜と結子……一人の少年が苛ついた顔でこちらを睨んでいた。
「うるせぇんだよ。てめぇら、前までいじめられてたカスが少し『環境』がよくなったぐらいで騒ぐんじゃねぇよコラ。邪魔だからどかしたぞ」
ポケットに手を突っこみ錆び付いた鋼翼を広げ男子が二人を見下すように立った。
赤錆風翔……赤髪のショートヘアで噂では蓮と互角とも言われる男。
髪を巻き上げ死体に群がるウジ虫どもと比喩し尊大な態度で席についた。
クスクスと真莉グループは笑う。
久々に彩菜の無様が見れて嬉しいようだ。
「……風翔!なんなのよ……!」
「ほっとこう彩菜。あいつは蓮とはまた別格な恐ろしさを感じるわ……まずはこれよ」
結子の……言う通りか。
なんてことない数字の配列が現在は友への道標だ……まだ朝のホームルームは始まらない。
注意されたんで出ましょうと嫌味も込めて放ち廊下へ場を変えた、その際自分達が抜ける瞬間歯ぎしりが聞こえた。気のせいかと思ったが結子も同様に顔をしかめていたので確実に誰かがならした。
「今度は歯ぎしり……悪趣味な生徒が多いわ」
「そうでなきゃ試験が楽しめないんじゃない?」
「もう……他人事なんだから……」
笑いながら告げる友達に困ってしまう。
生徒も教師の姿も見えないところに来て結子はスマホを取り出す。
「じゃあ、掛けてみるわね。今度は彩菜も一緒だって言わないとね」
「うん!」
着信履歴の画面をタッチしコールが響く。
1回……2回……3回……。
『もしもし!結子!』
「私よ恵美!。彩菜もいるわ!」
スマホに顔を近づけた。
「随分長い隠れんぼね。今日中に迎えに行くわどこ?」
一瞬、恵美は沈黙した。
『……う~ん。ちょっと言えない場所なの。あ、でも全然元気だから安心して!迎えも大丈夫。一人で帰れるから問題ないよ!』
「……そう、ならいいんだけど」
少しガッカリだが無事なら心配ない。
「アンタが明日学校に来てからい~~~~~~~っぱい話は聞かせてもらうからね。今日は休んでおきなさいよ!」
『は~い!。学級委員長さん!』
結子にふざけた調子で返し電話はきれた。
「たくっ、でも一安心ってところね」
「そうね……」
「ところで次の試練ってもう決めてたりする?」
「だいたいね。明後日実行に移そうと思ってる」
「ふ~ん。相手は?」
「もりた……」
教室の戸を撃ち破る音が会話を遮った。
「直人……テメェなんのつもりだ」
クラスメイトの森谷直人が風翔に廊下に放り出され、踞る直人に風翔は一歩一歩近づいていた。
自身の身体の周りに黒い風を纏いながら……。
対する直人も腕が真っ白でアルビノを彷彿とするブヨブヨとした異質な形状に変化し口からは紫色の吐息が溢れた。
「なんのつもりだと?…………君が僕の彼女に手を出したからだ!……そんな男を許せると思うか?……僕なら君を殺れる!……僕には彩菜の愛の力がある!……ハハハ錆鋼龍がなんだ!……猛毒で殺してやる!」
「……誰に向かって吠えてんだ?」
狂気じみた直人の言葉を受けても風翔は一切表情を変えない、直人の方が逆に硬直していたさながら蛇に睨まれた蛙だ。
風が流れる音がどんどんでかくなる。軋む音をたてながらものすごい速度で風が風翔の周りを駆けめぐった。
「身の程を知れや、このボケ」
身体から一気に風が前方に凝縮し直人に襲いかかる。
……だが直前で直人の前に青い炎が放たれ風と炎が威力を打ち消した。
更に炎が自分を包む、だが全然熱さを感じない舌打ちし邪魔した人物を睨んだ。
「おーあちぃあちぃ。随分仕事熱心だな結子」
「黙りなさい。クラスでも欠席者が多いのに私の目の前で危険な行為をして見逃せるわけないでしょ」
さっきの仕返しかと思ったが結子に限ってそれはないだろう。
この女はそんなタマじゃない。
……正義感による行動か。
「……くだらねぇ」
突風を起し蒼い炎ごと吹っ飛ばした。
「先に喧嘩ふっかけて来たのはその馬鹿だぜ。原因を作ったこいつを徹底的にしかれや」
「直人も叱るけどそれに暴力的な返し方したあんたも叱るのは当然よ。あなたの言ってることが本当と限らないし」
「……めんどくせぇな。ま、別にどっちが悪いでも構わねぇわな。喧嘩ふっかけようが、ふっかけられようが弱けりゃ死ぬ。それだけのことだ」
風翔は教室に入っていった。
「嫌な男……直人とりあえず大丈夫?」
「あ、あぁ……」
結子が直人に手を差し伸べる光景……学級委員長だから仕事だからしょうがないとは分かる。
……自分がこれから試練を行う相手を親友が助けるというのは気にくわないが。
森谷直人……思い出すのも忌ま忌ましいが、4ヵ月前の屈辱に終止符を打つため試練に挑む。
思い上がり捻まがった負の感情を撃ち破る。
そのあと……朝のホームルームで大輔が交通事故で亡くなったことを聞いた。
台詞の方がストーリーは進むか……?