どこだろうここは?。
ぼやける目を擦りながら必死に頭を働かせていく。
なにをしてたんだっけ?。
ずぶ濡れてる私の服、口の中でほのかに漂う紅茶の味。
喫茶店……。私と同じ制服の少女と話す光景。
渡しましょうと台詞と同時に机に置かれた黒く少し赤みがかった勾玉……。
思い出した。
同校の生徒伊里愛瑠奈になにかされたのを。
「ぐくっ……!。まだ心臓が痛い…。」
さっきに比べればだいぶマシだけど。
目が夜に馴れてきた私は、今居る場所は学校の近くの河川だと分かった。
自分の足で動いた記憶がない以上、伊里愛さんが私をこの場所に移動させたんだ。
とにかく、まずは家に帰ろうかしら。
今姿が見えない伊里愛さんには学校で会えるし。
そこで私の体になにをしたか聞こう。
「お、カワイコちゃん発見!。」
場に合わない同年代ぐらいの男子生徒が陽気な声をあげた。
君、なにしてんの?。彼氏待ち?。とどんどん聞いてくる?。
……めんどくさい。
帰るだけだから、と応え私は場を後にした。
そこで男子の絡みも止まったので良かった。
バイバーイ!と大きく手を振ってるけど。
ってか……なにしにこの場所へ……あの男子は来たの?。
まぁ、私の知ったことじゃないな。
「ただいま。」
家に着き、壁時計を見たら19時を少し過ぎていた。
怒られるかな?。
不安になりながら家へ入ってくが叱り声はとんでこない。
「電気も点いてて鍵も開いてたけどお母さん。居ないのかな……。まぁ、いいや。」
色々疲れたのでお風呂の前に少し休もう。
制服の上着を脱ぎシャツ姿でベッドに寝込む。
寝込んだ際、自室の鏡に信じられない光景がうつった。
黒をベースとし赤みがかった髪型の少女が私を見つめてる目も茶色くなく赤眼だ。
……この少女を私だと認識するのに20秒ほど有した。
本当にどうなってるの?。
スマホの着信音がなった。
画面には見たことない番号が表示されてる。
不審に思ったが取り敢えず出てみることにした。
「もしもし」
『もしもし。心臓の痛みは取れました?。彩菜さん。』
忘れる筈のないお嬢様口調で、人に優しく語りかける声。
「瑠奈ちゃん……か。悪趣味、人のスマホの番号見たの?。」
『連絡先がどうも分からなかったので、でも他は見てないので安心してください。』
それ本当に……。
不安が広まった。
『さて貴女の体の痛みがなくなり勾玉と適合した今、伝えなきゃいけないことが沢山ありますわ。』
「だろうね。私もなにがなんだか分からないし。聞かせて、瑠奈ちゃんの話を。」
『分かりました。勾玉について、この物質は地球の悠久の時が産んだ……虚空のモンスターの力です。今まで地球では色んな生物が育みまた死ぬのを繰り返してきました。だけどその生命のエネルギーは無くならなかったんです。』
はるか昔には恐竜の時代……始祖鳥が鳥類と爬虫類の特徴を持つとならった記憶がある。
『勾玉は地球が溜めた生命のエネルギーの結晶なんです。テロや治安の関係上どこの国も公にしてなく普通の人生なら知らずに天命を全うします。』
……意外とスケールがでかいな。
ここで私に疑問が生じる。
「世界規模で極秘扱いの物を何故瑠奈ちゃんが持つの?。」
秘密です。と彼女は返した。
恐らく人づてにもらったんだろうけど……。
『勾玉には2種類の活用法があります。1つは纏身。勾玉のモンスターの力を身に纏うことです。モンスターの種族によって自分の体の一部を変化できます。』
「へぇ。」
『2つ目は解放。自分の体と適合した勾玉をモンスターとして具現化させモンスターに命令を与えれば戦えます。』
「……本当に。なんか怖い……。」
纏身しなくても髪の色は適合したモンスターの色に変更可能ですと付け加えた。
話を聞く限り纏身だけでこと足りるような。
この力で奴等に復讐できるじゃないか。
一人一人叩き潰せる。
私の心に凶禍の念がうまれた。
『圧倒的力で奴等に復讐……と考えてます?。』
本心を読まれドッキリする。
「まぁ……。可能そうだし。」
受話器の向こうで瑠奈ちゃんがひと息おいた。
『刻竜……別の名でunknownの名も持つモンスターの勾玉は、自分が適合した人間の望みを叶える特性があるんです。こんな特性全モンスターでもunknownだけ。』
……嘘。凄すぎない?。
だが話はそんなに甘くない。
『ただ、その為の試練をunknown自身が貴女に与えます。試練を全部達成した時……貴女の望みが叶うのです。』
「まるで天国に行くための地獄の苦行めぐりね。」
『unknownの試練は現実を改変させると言われてます。貴女が受ける試練にあわせて。』
「今までの関係が途絶えてしまうのもありえるわけか。でも私は望みの為に試練を受けたい。こんな地獄から抜け出すためならもっと地獄に飛び込んでも構わない!。」
-よくぞ言った。
「な、なに!?」
『どうしました!。彩菜さん!。彩菜さん!。』
一転。
空間が切り替わる。
場が得体の知れぬ黒き靄が覆った。
廻りの視界は0。
ドスン、ドスン、と重い足音を立て2つの赤い発光がこちらに近づいてくる。
グルルルル……。
唸り声だ。
-ウォォォォォォォ!。
「うわ、耳が!!」
つんざくようなunknownの咆哮に耳を全力で防ぐ。
黒き靄が晴れ、私は古代の塔の頂上らしき場所に立っていた。
そして顕になるunknownの全貌。
2つの脚に大きな翼全身は漆黒に染まり見る者に恐怖を植えつける見ためだ……。
-覚えておけ。私の種族は飛竜種、この骨格をワイバーンと呼ぶ。
「……喋るんだね。」
-勾玉が互いの意思の疎通を可能にしているのだ。我が主、お前の望みはなんだ?。
瑠奈ちゃんの言葉通り、刻竜が私に聞いてきた。
今さら試練ごときどうってことない。
「この人生をやり直すことよ。いじめを全て精算してまた楽しく過ごせる人生を歩むの……。」
-つまり、いじめが起きない状態で人生をやり直したい。そうだな?。
「うん。駄目かな……。」
-可能だ。しかしその為にお前に試練を与える。ときに彩菜。お前は奴等に復讐したいとも考えてるな。それに条件をつけて試練とする。
復讐が試練?。
奴等に復讐してからやり直せるなんて喜んで良いのかしら。
でも条件って……。
-お前のクラスメイト全員が勾玉を有することになる。
お前はこのクラスメイト全員に復讐を遂げた時点で成し遂げたとしよう。
次にお前は復讐時以外私の力を制御して生活してもらう。
お前のクラスメイト以外の勾玉使いが襲って来た場合は全力を出して構わないが普段クラスメイトと生活するときは使ってならない。
えぇ?。
それってかなり不便なんじゃ。
あとちゃっかり勾玉を持つ物を増やしてるし。
-防御を使うなとは言ってない。あくまで攻撃に全力を出せないものと思え。
それでは始めよう。お前が新たな道を切り開く為の試練を。
いつの間にか自宅に戻り次の日の午前6時になっていた。