風翔から話を聞こうとする一行だが……。
……日本の某所にある豪邸で柔かな顔立ちでリビングに座る少年に少女が膝をついて報告を行っていた。
「僕が幼少時代を過ごした家に侵入者が?」
「はい、鍵が掛かってあったため最初の部屋以外は行ってないと思いますが……」
「う~ん、彼らはどんな目的で入ったんだろうね。あんな場所に家があれば探索心を擽られても無理は無いと思うけど」
少年の口調はいたって気楽だ。
「黒邪様の過去を探ろうとしたのかもしれません」
「僕の過去を探ったって面白くもなんともないよ。そうだね、一人将棋やった方が面白いよ」
冗談を言っておられるがこのお方の過去は……言葉では現せないほど異質だ。
「でも小さい時は凄く楽しかったよ。まだお父さんとお母さんもいたしね。家に仕える執事の娘として君ともよく遊んだよね愛華」
「はい、あの時はご無礼を……」
「全然気にしてないよ、それより僕はそろそろ始めようと思うんだ……新たなる世界創世のための破壊をね」
「『他の方々』は邪魔して来ないでしょうか?」
愛華の言葉を聞いた黒邪の顔は更に笑顔になった。
「僕は強い人と戦うのが好きだから大歓迎だよ。何処に要るんだろうね。このモンスターと同格の存在は」
=====
「う………俺は…いったい……」
声をあげ一人の古龍の適合者の少年が目を覚ました。
見慣れない布団に掛け布団……養護施設では無いことはすぐわかった。
「やっと目を覚ましたわね……風翔」
「……結子」
結子以外にも周りには同じクラスの奴や他クラスの奴が自分を取り囲んでいる。
この感じ……クシャルダオラの勾玉を抜かれたらしい。
そうか、俺は…奴の情報を頼りに、彩菜を殺そうとしてたんだ。
結果、こともあろうにワイバーンという自分が見下した存在に負けてしまった。
ワイバーンに括めず飛竜として見れば、覇竜アカムトルム、崩竜ウカムルバス、弩岩竜オディバトラスなど規格外の巨体を持ち古龍に匹敵する力を持つ者も居るにはいる。
いや、まてワイバーンにも古龍に匹敵すると思われるモンスターも少し存在したか、自身の保有するクシャルダオラを太古の樹海から追い出したとされるエスピナス原種を始めとするエスピナス種、長い鉤爪を持ち高地や渓谷を飛行し、放電を行うベルキュロスとそれと対称的に龍雷を操る亜種のドラギュロス、広範囲を飛び回り爆鱗を振り撒き周囲を火の海に変えるバゼルギウス。
風翔の知識ではこの種だけだ。
彩菜の未知の黒い飛竜については聞いたことがない。
クシャルダオラの風の鎧を突破しダメージを与えたあの力(モンスター)の正体はなんなんだ。
「何か考えてるみたいだけど、こっちもあなたに聞きたいことがあるわ……何故、急に現れ彩菜達を襲撃したの?」
眉を潜めながら、結子は質問をする。
現在の自分に適合者としての力がないことを考慮すれば……答えるしかない。
「ある男に言われた……俺の家が燃えて両親が死んだ原因は…彩菜にあるってな」
「彩菜が関係するわけないでしょ!何の根拠もなしに言われるがまま信じたと?……」
「その男は彩菜が俺に吹っ飛ばされたのが原因で直人が怒り俺の家に火を放ったと言ったんだ。ふっ、奴は彩菜に歪な愛を抱いてたからな。そん時の俺は強ち間違ってないと思えた……その元凶の彩菜を真っ先に殺すと決めて奇襲を仕掛けたわけだ」
風翔も自分と同じ考えだったのか。
少し彩菜は驚いた……そこに自分を絡めるのは勘弁してほしいが。
「ふざけたことばかりべらべらと……!言いなさい!誰が貴方をそそのかしたの!」
結子の怒りは頂天に達した。
「奴の名は……」
1つの着信音が会話を遮る……発信源は風翔のスマホだ。
「ワリィ……電話だ。もしもし」
『見損なったよ風翔。満足に目的も果たせないとはね……君にその勾玉は宝の持ち腐れだったな』
「なんだとっ……」
プツっと電話が切れた。
彼が何故奴が電話を掛けて来たか不思議に思っていた僅かな瞬間……部屋のガラスが音をたて割れ……鋭利な棘が自分の心臓を貫いた。
「うっ……かっ…………はっ……!」
「なっ……!」
目を見開き吐血しながら風翔は死んだ。
白い布団を真っ赤に染め上げて……。
「な、なに死んでんねん!、お前を差し向けた人物の名前吐かんかったら何の意味もないやろ!」
「健太郎、風翔はもう手遅れよ。完全な死体には勾玉は取り付かない……とにかく旅館に報告して警察を呼ぶしかないわね」
冷静に告げる結子。
混乱し旅館にあらぬ迷惑を掛けないようにと皆に警察が来るまでは部屋から極力動かないよう指示した。
「にしてもこの棘どこから放たれたんだか、まぁこんな攻撃が出来るのは俺達と同じ勾玉使いだけだろうけどさ」
「このドアホ唆した張本人と違うんか。どっからか見てて口封じにぶっ殺したんやろ」
「随分とえげつない事をするものだな」
「瑠奈ちゃん。このモンスターの棘なんだか分かる?」
「この棘はネルギガンテだと思います」
「ネルギガンテ?」
「古龍を喰らう古龍って言われてるモンスターだよ。あんま詳しくないけど鋭利な棘や再生力が半端ないらしいね」
「桜花の言う通りです。龍封力と呼ばれる古龍の力を弱める能力もあるみたいですわ。対峙したことが無いので、真意は不明ですが」
「古龍のなかにもそんな存在が……他を喰らう古龍……か」
話をしてると警察が到着した。
結子がどのように話すか迷っていると、私が話すよと氷崋が変わり彼女の話を聞いた警察は態度を変え敬語まで使ってすぐ事件の処理にあたった。
すぐ終わるって氷崋の発言に恵美を除き彼女は何者なのか全員の心で疑問が生まれる。
「まさか本当にすぐ終わるとか……」
「なにもんや……あの氷崋ちゃんって子は……」
風翔が殺され嵐の2日目は全員にあと味の悪いものを残し終わった……明日は海を見て午前の電車で白咲町に帰る予定だ。