学校側は3年3組の事態を受けある判断を下した。
まだ寒さが残る午前7時一行は海へ向けて歩っていた。
「昨日は色々大変な目にあったんだね……彩菜達」
心配そうに語る恵美、その表情は助けに行けなかった罪悪感が出てるように見えた。
「まあね、結子と陽太君が来なかったら危なかったかも」
錆びたクシャルダオラ。たった一匹で9人の勾玉使いを戦闘不能に追い込むまさに錆翼の覇者だ。
暴風を起こし暴れ古龍の恐ろしさを再認識した瞬間である。
「私も…行ければ……でも古龍相手にパオウルムーじゃ役にたたないし…」
「大丈夫。恵美は自分を一番に守ることを考えてその気持ちだけでうれしいからさ」
如何に適合者とて死んだら元も子もない戦闘中勾玉を外され攻撃の雨霰に曝されれば死を意味する。
恵美の場合大輔のこともあるので無理してほしくないのは本音だ。
「うん……分かった!」
「ところで氷崋ちゃんのことなんだけど」
氷崋は彩菜達より前の方にいる。
「彼女は何者なの?」
昨夜の警察をまるで彼女が意のままに操ってるような光景を見て気になった。
あの若さで国に属して働く仕事でもしてるのだろうか?。
「ちょっと私の口からは言えないよごめん。今度氷崋ちゃんに彩菜に言っていいか聞いてみるね」
「うん」
本当に何者なの…?
「わぁ……!凄く綺麗!」
感嘆の声を挙げる恵美……目の前には朝の陽を照らしキラキラ揺らめく水面が出迎えた。
一行は写真や!写真や!と写真を撮ったり、秋の冷たい海に片足を突っ込んだりと様々な行動を取る。
「いい景色だわ。これが見れただけでも来て良かったわね」
「うん!」
この様子じゃ恵美は大丈夫かな……。
ホッと結子は一息つく。
最後に海を背にして写真を撮り散々満喫したあと一行は電車に乗り帰宅の路についた。
風翔の襲撃及び風翔の死があったものの、みんな卒業前のいい思い出が出来たと満足な笑顔を浮かべて旅行は終わる。
「じゃあな。また明日学校で」
「うん」
亮に送ってもらった彩菜。
自分の家の前にある元『親友』の家を寂しげに覗いた……。
美穂……私は、結子とも恵美とも仲直り出来たよ。後は貴女だけ……絶対さ卒業までに仲直り出来るよね私達……。
悲痛な瞳から頬を涙が流れる。
楽しさと悔しさが半々に混じりその日は眠った。
……翌日。
彩菜は学校に向かう途中、中学生時代を仲良く過ごした旧友に会う。
「あれ、透子?……もしかして鹿音透子!」
「彩菜!久しぶりだね!元気だった!」
西ヶ原高校に進学した鹿音透子だ。
綺麗なロングヘアで中学時代の彩菜の友達の中で一番頭が良かった。
「かわりない?透子」
「全然よ。彩菜こそ元気そうで安心したわ……あれ、そう言えばさ、美穂はどうしたの?中学時代一緒に登校するぐらい仲が良かったのに」
「あー……色々あってね」
中学時代の親友の肩書きは伊達ではなく彩菜のその様子からある程度察した。
「……そう、多感な時期だからしょうがないかもね。高校生活も私達もうちょっとだし悔いが残らないようにしたいよね!」
「ふふ、そうだね」
二人は久々に再会した嬉しさから暫く話をしながら歩くそろそろ互いの登校時間なのでお別れだ。
「あ、じゃあ私こっちだから。じゃあね彩菜!」
「うん、バイバイ」
彩菜の姿が見えなくなると透子はブロック塀を拳で叩きつけた。
白い霧を自分の身体の周りに張り巡らせながら。
「こんな姿彩菜に見せたく無いわね……」
今の私は憎悪に支配されている。
きっかけは勉強や他人のsnsを覗いたりしたことによる他人との差……私は思った人間には生まれついての差って何処に産まれたかで決めるんだ……と。
私達の街は都会とは言いがたい、都会に産まれれば小さな頃から様々な出会いを体験するのだろうが、そこ以外で産まれればそうも行かない。
憎い……憎い……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!
この怒りどうすれば取れるの?頭が狂っちゃいそう。
そいつが住んでる所まで私が飛んでって殺す?……いや、今すぐにでも殺したい……出身校とか御丁寧に書いてる近場から殺ってこうかな……。
この街で幸せな生き方が出来てるのは確かに尊敬するけど……私は他人の幸せを見ると……地獄に落としたくなるの。この子が住むような冥底に、ねぇ、ヴァルハザク?。
-ァオオオオオオオッ
=====
一時間目。
担任の口からとんでもない一言が浴びせられた。
「知ってるとは思うが最近このクラスから死者や行方不明者が多数出ている。原因は学校側でも把握出来ていない。学校側は諸君ら生徒の大事をとり二週間ほどの学級閉鎖にすることとした」
普通のテンションであれば誰かしら喜びそうなもんだが誰も笑わず先生の話を聞いていた。
説明後生徒達はすぐに帰る。
この機会を逃すと美穂に学校で会えるまでまた2週間掛かってしまう。
彼女と折り合いを付ける為にも美穂と話あわなくちゃ。
「美穂!」
彩菜に呼ばれゆっくり彼女は振り返る。
「なに?」
相変わらずミステリアスな雰囲気だ。
彼女もラ・ロにより適合者となってるはず。
「私あなたと仲良くしたくて……お願い美穂、離れ離れはもう嫌だよ……」
「そう。私は別に構わないわよ……今まで彩菜には迷惑掛けてごめんね」
美穂は私のことを抱き締めた。
他のクラスメイトはほぼ仰天して二人を見つめていた。
「美穂ぉ……良かったよ……本当に良かったよ!」
「ふふ、泣きすぎよ……ただ彩菜。私にはまだやるべきことがいっぱいあるの。あなたや恵美と結子と昔のように親友として遊びたい気持ちは決してあなたに劣るわけでもないわ……だからもう少しだけ私を待ってほしいの……ダメ?」
上目使いで台詞を放つ美穂の姿を見てクラスメイトの一部の男子の胸に衝撃が走った。
「分かった親友の美穂を信じる!。でもたまにはラインとか出てくれなきゃ悲しいかも……」
「分かったわ。きっと連絡するからね」
試練達成だ。
これで親友達にラ・ロの力を振るわず済んだ。
美穂が出て行ったのを見計らい結子や亮達が近づいてくる。
「美穂ってあんな可愛い顔出来るんやな……」
この様子では健太郎は美穂にゾッコンのようだ。
「でも健太郎じゃ難しいんじゃない」
恵美に突っ込まれ、なんやと!、と関西弁の口調で言い返し仲良く二人は口喧嘩し始めた。
「はぁ~……健太郎と喧嘩出来るぐらいなら今度こそ大丈夫かしらね」
呆れた顔で学級委員長は言う。
「にしても2週間休みになるとはな。旅行は……金銭的な面も含めて無理だし、大人しく自宅で勉強しろってことなのかもな」
「なに言ってんだよ亮、亮には彩菜が居るんだから町内デートし放題だろ……俺やケンは本当にどうすれば……」
覇気のない口調で頭を抱えしゃがむ祐樹……彼を見つめる一人の女子の視線には気づかない。
そもそもいきなり2週間も休みになり用事をすぐにでも建てるというのは無理筋だ。
メンバーは少し駄弁りながらこの日は帰った。
この2週間の内にも……私は奴等への試練を行う……。
自宅に着いた彩菜は侍乙女と書かれた漫画の表紙を黒く塗りつぶした。