白咲高校3年3組学級閉鎖から2日後の早朝……廃工場で適合者同士の……一方的な虐殺が行われていた。
紅い翼を生やした悪魔は次々と適合者を焼き付くしていく。
「ガァ……!」
桁違いの力により叩きつけられて勾玉の再生が間に合わなくなり死んだ者もいる。
「つまらん弱さだ……。まぁこいつの相手は同じ禁忌じゃないと務まらんというわけか……」
死んだ適合者から勾玉を奪いさると太陽のように紅く輝く翼を広げ暗い街中を飛んでいった。
「この力は終焉の為に使わなければならない。俺だけの終焉の為に……俺の紅き終焉を邪魔するなら例え同じ禁忌だろうが殺すまでだ」
空が紅く光り、隕石が適合者を虐殺した工場に降り注ぐ。
「火葬ぐらいはしてやる。葬式の手間が省けて良かったな」
笑い声と共に紅翼の男は空に消えた。
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「今朝の爆音凄かったな……隕石でも落ちたのかと思った」
爆音で早起きしてしまったことで起きる睡眠不足の欠伸を抑えトントンと彩菜の部屋の前のドアをノックする人物が一人、中から部屋の主のどうぞの掛け声で叩いた人物は中に入った。
「お待たせ…彩菜ちゃんと、結子ちゃん?……」
部屋に入った人間……野村藍は彩菜から聞かされてない結子の存在に少し驚く。
「こんにちは、藍」
「こんにちは、結子ちゃん……あの彩菜ちゃん。これはどう言う……私、隼人君への復讐のことしか聞いてなかったもんだから……」
何故、結子がいるのか気になってる様子だ。
この接見は当然彩菜が考えた、学級閉鎖が告げられてから2日しか経過してない今、生徒の動きが限られるのでチャンスなのだ。
学級閉鎖期間の一人目は……五十嵐隼人だ。
この男は家が裕福で本人もその事を自慢してる。だが彼は背が小さくて肥満でお世辞にも外見が良いとは言えなかった、そんな彼にもクラスの連中がお金を求め寄ってきた……隼人がお金を渡せばクラスの連中はその場だけでも喜ぶ、その様子を見て隼人はクラスのATMに過ぎないのに満足感を得ることが出来た。
……人間性では嫌われたが金銭面ではクラスの人気を得たのだ。
自称人気者の彼から直接暴行を受けたりはしなかったものの見下した態度で睨まれたり命令されたことは多々あった……。
あいつの場合……暴行を働かなかったってよりも、怖くて暴行に及べなかったってのがピンと来るわね。
今日の試練は私がやってもなんら障壁となることはないけど、その役目をこの子に託す。
「藍。前まで私はあなたの事も試練の対象だった。けどね……あなただってクラスの憎悪を受けていた一人だって気付いたの。だから私はあなたに負を残すような試練はしない。あなたに自信を持ってほしい為の試練を与えるわ」
「私に自信……。無理だよ地味だし暗いし……影も薄いし」
「そんなこと無いわよ。藍は気付いてないかもだけどあなた意外といい顔してる」
結子のフォローに、本当……?と首を傾げた。
一度の試練で、隼人には凄惨を藍には幸福……と正反対の境遇を二人に与えるのが今回の試練。
そのために彩菜は結子と協議し作戦を練り、藍に最大限のフォローをするのだ。
「決行日は明日……藍早速準備してくわよ!」
戸惑ってる少女の前に次々と化粧用具が並べられていった。
……翌日。
「やったぞ、僕はこの日を待ちわびてたんだ!」
喜ぶ一人の少年、隼人が街中のDVDレンタル店にて目を輝かせながら今日行われる自分が好きなアニメ……侍乙女のイベント現場の列に整理券を手に並んだ。
最高だ。本当に待ったカイがあったな。
同級生には隼人の他にこのアニメを好きな者はいない。
別にこんな姿見られても構いはしないが、後から何故彼処に居たとか変な因縁を付けられるのは御免だ卒業も近いし。
「隼人君」
ワクワクしながら待つ隼人、そんな彼に一人の異性が自分の名前を呼んできた。
「隼人君。やっぱり隼人君だよね?」
誰だこの可愛い娘は……。こんな娘見たことない。
少し記憶を思い返すがやはり出てこなかった。
「あの、どちら様で?」
すると少女はクスクス笑いながら
「私、藍よ。野村藍」
これが、あの藍……。
女の子ってメイクで変わるっては聞いてたけどこんなに……?。
いつもは眼鏡をしてて暗そうな藍がメイクと髪型を変えただけで凄いな。
「…にしても隼人君。学級閉鎖で自宅待機が命じられてるのに隣町までなにしに来たの?」
「そういう藍こそなにしに来たんだい?」
いつもの隼人からは考えられない口調に吹き出しそうになった。
彩菜ちゃんのいう通りだ、男なんて見た目しか見てない。
「なーんてね。隼人君と一緒の予定だよ」
ピラリと揺れる自分が持つのと同じ整理券。
藍も侍乙女のファンだったのか!。
今日は驚くことばかりだ。
遠巻きにトランシーバー片手に様子を見てた彩菜と結子は笑っていた。
『ねぇ、隼人君は誰が好き!』
『え~と、僕は……』
「見事に魚は釣られたようね。彩菜」
「大きなフグだからそれなりに準備は必要だけど逃げることはないわね」
「あっちは大丈夫として……あなたは昨日のあの爆音どう思う?」
「凄い音だったよね。工場が一軒燃えたとか、ガス爆発かな?」
昨日と今日の地元の新聞の見出しに大々にニュースは載っていた。
「廃工場でガス爆発……。聞いた話によればその会社はスマホの下請け会社で廃業してから3年近く経っているから火器は特に無いと思うけど」
「誰かが意図的に燃やした……?」
「爆音が気になるけどね。町の発表によれば隕石って言われてるけど……」
「まさか……適合者の仕業とか?」
「可能性は大いに有り得るけど……現状どんなモンスターかは特定出来ないわ。私の知識にそんなモンスターの記憶は無いからね」
今のところは原因解明は無理か。
それより今はこっちね。
イベントが終わり藍と隼人は適当なフード店に入り談笑に花を咲かせていた。
とくに華やかな子に対する金使いは豪快だと彩菜から言われてたがその通りだ。
「ん、なんか言った?」
危ない危ない、余りにも隼人が読み通りに動いてるもんだからおかしくなり口走りそうになった笑いながら慌てて口を抑えた。
「なんでもないよ……」
「でさ、あの場面菊姫が未来を庇ったのが伏線だったなんてね」
「うん、びっくりしたけど!零の命令とは言え菊姫も迷っていたんだね!」
「いやぁしかし、クラスメイトと好きな作品について高尚な話し合いが出来るなんて……ま、僕は知ってたけどね!。藍は他の子と違うって!」
よくもまぁ調子がいいなこのボンボンは。
「あ、ゴメン。僕ばかり喋っちゃって……」
「うんうん。楽しいよご馳走になったし」
「そんなもっと高い店じゃなくて良かったのかい?君の為なら高級レストランでも!藍ぐらい美人なら連れ添う僕も鼻が高いよ!いつもその感じでいれば良いのに」
「……う~ん、学校ではあまり目立ちたくないし。それに私なんてとても彩菜ちゃん達には敵わないから」
その人物の単語を聞いた隼人の態度が変わる。
「彩菜ちゃん達?、彩菜や結子達のこと?。駄目だよあいつらは!あんな奴等前までいじめられてたのにちょっと彩菜がクラスで強さを発揮したからっていい気になってさ!」
次々と自分の尊敬する者達へ侮言を吐きはじめた。
「そもそも自己中だから彩菜はいじめられ始めたんだよ!あんな奴等と付き合ってちゃ藍まで酷い目にあうよ!」
耐えきれなくなりテーブルを叩き立ち上った。
「え、どうしたの?大丈夫だよ!僕は蓮にお金を払ってるから目をつけられたりしないよ!藍も頼もうか?」
「……やめて、そんなの必要ない」
「そうだよね!藍は暫くみんなから無視されてたし……あ、そういうことを言いたいんじゃなくて!……ははは、ごめん僕ちょっと御手洗い~ははは……」
本当に口だけは達者だ。
人が傷つく言葉をいとも簡単に口にする。
食事が終わった二人はぶらぶら街中を歩いた。
途中服屋の前で隼人が止まる。
「ねぇ!この服可愛いと思わない!きっと藍にピッタリだよ!僕が買ってあげる」
「悪いよそんな。なにもないのに」
「いいからいいから!お金ならいくらでもあるから気にしないで!」
バッグを開けて財布を取りだそうとするが……。
「あれ?おかしいなぁ、財布がない。さっきのマックに置いてきたのかも!ごめん……藍!ちょっと待ってて!」
「え、ちょっと……。隼人君!!」
財布の持ち主が完全にいなくなるのを見計らうかのように藍の背後に2人の足音が近づく。
「……うまくできたよ。彩菜ちゃん、結子ちゃん」
彼女の服のポケットから……隼人の財布を取り出した。
「隼人がトイレに行ってる隙に盗っておいたから」
「……完璧よ藍。私の言う通り簡単だったでしょ?」
「不思議ね。他の人だったら良心が痛むのだろうけどアイツの場合痛みもしないわ。ってか良く私の友人のことをボロクソに……至近距離でヘルフレアをお見舞いしてやろうかしら」
「怖いよ結子ちゃん、ははは」
「それで藍。その財布どうする?戦利品に貰っておく?」
「いらないよ。あんな奴の汚ないお金」
視線を変えず藍は喋った。
「なら、予定通り藍、隼人を寝かせるのよ夜鳥ホロロホルルの力を使って」
「成る程ね。ホロロホルルの睡眠ビームでアイツを眠らせられるってわけか」
「えぇ、そしてここは不良の溜まり場で有名な通り眠った挙げ句勾玉を抜きとって財布を近くにでもおけば……」
「隼人は非力な一般人となったまま不良達にいたぶられる……そうだよね彩菜ちゃん」
「その通りよ」
隼人はまだ財布を探すが見つからない。
何処に行ったんだ僕の財布は?。
弱気になったその時、藍が掛けながら戻ってきて抱き締めてきた。
「あ、藍!」
「ごめんね!隼人君が私の為に本気になってくれてるのに……私、私!」
「だ、大丈夫だよ……藍って意外とグラマラスなんだね」
「私隼人君の気持ちに気づいたの!だから、今ここでキスしよ?」
「こ、ここで!……大胆だなぁ。別に構わないよ……」
じゃあ行くねと二人は顔を近付けるが隼人の顔に触れたものは藍ではなく睡眠光線だった。
「え、あ……藍」
バタリと昏睡に落ちた。
背中から思いっきり心臓に手を伸ばし隼人の勾玉、岩穿テツカブラを手にする。
「なんか……手ベトベト。隼人の勾玉って2つ名持ちだったんだ」
財布を近くに置いて藍は去った。
様子を見ていた彩菜と結子は手を振って讃えてくれた。
…………
うん……なんか……痛いな……。でもまだ眠気が心地いいし眠ってよう。
「おいこいつ蹴っても蹴っても起きねーぞ。どうなってんだ?」
「知るかよ。この財布を拾った時にこいつが近くに居たからカツアゲしてやろうかと思ったが冷静に考えりゃ道で倒れてたこいつを救って家に届けた方がたんまり例が出るはずだぜ。なんせ10万も入ってんだからな!」
「そのためにもこいつには起きて俺らの善人振りを証明してほしいのによー。全く参ったぜ」
ピアスや指輪を嵌めた三人の不良は夜の噴水場で隼人にショックを与えながら起きるのを待ってた。
「綺麗な夜景だね。ここが白咲町か」
「黒邪様お気を付けください。いつあんな輩に目をつけられないとも限りませんから」
少年と少女の会話が不良の耳に入った。
「あー、なんだてめぇ!俺らはここらでも有名な不良だぞ。良く見たら可愛いじゃんねーちゃん。そんな優男に付いてかないで俺らと楽しく合コンでもしねーか。金なら10万あるぜ!」
愛華は哀れむような目で不良を睨んだ。
「なんなんだよ……その目は、このアマぁ!なめてんじゃねぇぞ!」
「お下がりください!私が相手を……」
「大丈夫僕も遊びたいからね。合コンか、噂で聞いたことしかないけど古城に招待するよ」
『古龍の幻影』
-ヒュアアアアアアアッ!
「はっ……朝か。イテテ昨日のこと殆んど思い出せないぞ。確か藍と一緒に語りあって……そうだ財布だ。僕は財布を、あった!財布があった!」
騒ぎながら跳び跳ねる。
「取り敢えずこれさえ無事なら大丈夫だ。ゲッ!、ママからすげぇメールが来てる。一晩中帰らずここで寝てたのか、早く帰らないと!」
地に落ちてたピアスや指輪を気付かず踏みつけ隼人は家へ全力疾走した。