学級閉鎖から4日が経った。
吉永翔太は地元のスーパーでバイトをしていた、彼の家は幼い時に両親が他界してしまいそこからは祖母の年金を頼りに翔太と下の妹二人は貧しい生活を送るのを余儀なくされた。
高校生になってバイトが出来て本当に嬉しい。
しかも自分は適合者として生まれたから日払いの力仕事もなんなくこなせる。
適合者はマイナスなだけではないんだ。
だが、強力な力を持ったから敵が居ないというわけでもないし……決して不死ではない……勾玉の再生が間に合わなくなるような大ダメージを受ければ普通の人間と同じように死ぬ……大輔のように勾玉を抜かれた場合もだ。
彼は誰に殺されたんだろう。
適合者が落下し車でひかれたぐらいで死ぬわけない。
僕たち(適合者)の特性を理解してる誰かが……。
勾玉さえ失えば普通の人間と何ら変わらない。
「ちょっとあんた!会計早くしてよ!」
「すみません!」
考えててレジ打ちの手が止まっていた少し老けた女性に怒られ急いで精算する。
「まったくも~!若いのにこんなグズじゃ可哀想ね!」
適合者じゃなくては見えないモンスターの怒りの紋様が額から腕に走る。
この目の前の女性がどんなにムカついても一般人にこの能力を使えば力の快楽に負けたと同じこと……だから翔太は必死に怒りを抑える。
「ありがとうございました」
どうにか感情に捕らわれずに済んだ。
バイトを終えた翔太は私服に着替え帰路につく。
祖母の年金と自分のバイト代だけが頼りの生活もあと少しだ卒業すれば働いて家族を支えられる。
妹達を高校まで送ってあげられるのだ。
「舞子、美奈。余計な心配しなくていいからな、二人は俺が守る」
「俺が守る?。女の名前口にして随分な台詞だなぁ翔太!」
空気を裂く音と共に腹を鋭利な爪で貫かれ血を吐いた。
爪は自分の血が月光を反射してうっすらと赤く光る。
この爪のモンスターは……一真の惨爪竜オドガロンだ。
「謹慎とけて戻ってみりゃ大輔が死んだだの、直人が行方不明になっただの、千鶴達が捕まっただの……こんな短期間におかしいだろ!……お前なんか知らねぇか?」
腹を貫く爪を少しねじった。
「ぅああああああああっ……!僕は知らない!なんにも知らないんだ!」
「ほう、そうか。クラスで一番ドン臭ぇお前が不幸に合わねぇのは俺は不思議でしょうがねぇがな……この騒ぎの被害に巻き込まれないってのは!」
「……確かに僕は君の言う通りドン臭いけど。守るべき物があるんだ!」
自分の保有するモンスター、棘竜エスピナスの力を腕に纏わせ一真を強打した。
「グォ……!」
かなりの破壊力に体に重い痛みが走り、毒状態と化した。
「いい加減にしてくれ。君みたいな不良の腹いせで攻撃されちゃ堪ったもんじゃない!」
「…っ…有り得ねぇだろこんな木偶の坊のモンスターがこんなに強いなんて……!」
「棘竜エスピナス。普段は温厚な性格だがいざ怒ると見境が付かなくなり徹底的に外敵を排除する飛竜だよ……人間だって同じだ抑圧されればされるだけ怒りは溜まる」
エスピナスを語る翔太の口からは紫炎が漏れでてる。
「野郎、その不気味な炎の正体は毒が混ざってんのか、火と毒を混ぜて放てるとはな」
「太古の樹海である古龍との縄張り争いに勝ったとされる種だ。言っちゃ悪いがオドガロン如き敵じゃない」
「テメェ!オドガロン如きだと!?」
怒りで赤く染まる一真。
だが今この場で翔太に勝てる気はしない。
俊敏とは言え、接近技しかもたないオドガロンに遠距離攻撃を持ち接近技もそれなりに持つエスピナスは分が悪い。
……嘗めてたぜ。翔太が殺り合うのが好きじゃねぇからってモンスターまで弱いと俺は錯覚しちまってたのか。
逆上型の野郎に勝つには少し考えねぇと。
「待てお前の言う通りかもな。今の俺じゃお前に勝てねぇ……どうだ?ここは再戦ってことで手を打ってくれねぇか?」
「このまま逃げて僕の前に姿を現さなくてもいいんだよ一真君。無闇な戦いは面倒臭いだけだ」
「流石にそれは癪だ。そうだな日時は追って告げるクラスの緊急時の連絡先にお前の電話番号があるからな。あばよ」
笑いを見せ一真は闇夜に消えた。
「バイトでヘトヘトなのに……だが彼には俺も借りがいっぱいある」
徹底的に潰すべきかもしれないああいう存在は……
「クラスの緊急連絡先か。……彼女の名前もそこにある筈だよな。貴志君への復讐に付き合わされて流石に僕も気づいた。この一連の出来事には彼女が絡んでいると」
家への道を急ぐ。
「協力する。というか……君の復讐の一真だけは僕にやらせてくれ……彩菜さん」
=====
学級閉鎖から7日後……。
土日を除き最初の学級閉鎖から一週間が過ぎた月曜日。
スマホのニュースや昼間のテレビが東ヶ原高校で不審な爆発があったと報じた。
彩菜は東ヶ原高の生徒のsnsが発信したとされる事件の画像を見て目を疑う。
焼かれて黒焦げになった爆発の中心地と見られる教室、それだけでも充分異常なのだが……凍りついた箇所があり今だに氷が解けないらしいのだ。
どんな気象現象や科学現象が起こればこんなことになるんだ?。
「適合者の仕業……か」
爆発による死者は35名にも昇ったそうだ。
炎と氷……相反する2つのエネルギーを同時に操る。
「こんな芸当が出来るのはやっぱり……古龍種?」
考えてると家の電話がなり母親に「出て」と言われ彩菜は出る。
「もしもし藤沢です」
『藤沢彩菜さんのお宅ですか?』
「その声は翔太ね。彩菜よどうかした?」
『君の復讐の手伝いがしたいんだ。正確には越智一真は僕が仕留めたい』
「……どうしたのいったい?」
『君が今クラスの連中が次々と不幸な目に合ってることの中核に居ることは分かるよ。恐らく君は自分の手で復讐したいんだろうけど……奴だけは自分の手で仕留めたいんだ』
受話器越しの声から甚大な憎悪を察知した。
「以前私の試練に貴方を使ったからまぁ気付くよね。いいよ別に貴方が一真を仕留めても。その代わり貴方が一真を仕留めることを私は翔太への試練にする」
えっ、と驚く声が聞こえる。
『そんなことで……君になにかメリットがあるの?』
「あるとすれば。一真を態々私が手を下さなくてもいいってことぐらいかな。貴方は自分から危険に踏み込もうとしてるそう決めるに至るまでの貴方の苦痛や怒りは想像を絶すると思うの……だからそれが私の試練よ」
『なるほど、変わったね彩菜さん。横取りした御詫に君には一真への復讐を見届けてほしいんだ』
「分かったわ。御安い御用よ」
『明日の午後7時、町外れの廃ビルで奴と戦うから。それじゃ』
電話が切れた。
「明日の午後7時か。どんな戦いになるんだろ」
=====
「やめてっ!」
「どうしてそんなに必死になるの?。戦いは楽しまなきゃ損だよ。もっと笑顔になろうよ」
見事東ヶ原高校3年3組を皆殺しにした天音であったが、騒ぎをとある古龍の適合者に聞かれ殺されようとしていた。
帰宅途中に襲われてしまう。
「なんでなの……なんでディスフィロアの力が効かないの!?」
天音の焦りは次第に絶望に変わってく。
気づかされるのだ、自分は死ぬのだと。
「今度生まれ変わる時は劣化じゃなくて原典の力を手に入れられると良いね」
じゃあね。と黒邪は手を振り天音の身体は四散した。
「僕の勾玉と同格のエネルギーを感知して白咲町に来たのに何処にいるんだろう。他の禁忌は」
笑顔で町中を歩く。