学級閉鎖が間もなく開けようとする土曜日、彩菜達は煌輝と会う約束をした。
連絡先を交換した週の土曜日、彩菜は亮と翔太を呼び出し公園で煌輝と会う約束をした。
3人は2分前に公園にたどり着いた。
「マジで凄い奴なのか煌輝って男は?」
「えぇ、圧倒的な実力で一真に手も足も出させず勾玉を引っこ抜いた強者よ。膨大な属性エネルギーも操ってた」
目視でもあれは自身のラ・ロの凶禍の力を軽く上回っていた。
紛れもない古龍種でその中でも上位の存在にあたるのかもしれない。
「おぉ、みんなジャストに居んのな」
煌輝が来た。
「あんたが煌輝か。この二人のクラスメイトの北浦亮だ」
クラスメイトのか……。
自分の彼氏と言ってもらいたかった彩菜は少し落胆する。
まぁ、それはそれで恥ずかしいのだが。
「そっか。宜しくな亮」
「じゃあ今度はみんなのモンスターの紹介をしていきましょう」
彩菜、亮、翔太の3人にそれぞれ2匹の飛竜と1匹の牙竜が現れたその中の1体を煌輝は不思議そうに見つめた。
「へぇ、unknownか。勾玉はあると言われてて国が探しても見つからなかったから空想上の存在だと思われたが彩菜が適合者だったんだな。で、残るは翔太がエスピナス。亮がジンオウガか」
「ラ・ロって珍しいんだ……」
風翔はラ・ロの存在すら知らなかったことを思いだした。
「煌輝君の勾玉はなんなんだい?」
「俺か、こい」
『ヒュオオオオオオオオオオン』
咆哮と共に出現したのは頭に角を生やし黒い身体に四肢を生やした大きな古龍だった。
彩菜の頭にざわめきが走る。
このモンスターの姿を見ただけで本能が、戦ってはいけない者。神をも恐れさせる存在、と訴えた。
亮も翔太も驚きのあまり硬直してる。
「は、はじめてみたよ。禁忌の一角……煌黒龍アルバトリオン……を」
「あ、あぁ」
「アルバ……トリオン?」
初めて聞いたモンスター名だ……そして禁忌とは……。
「怖がらなくていいぞって言っても無理か。俺にとっては産まれた時からこいつが一緒だからこれが普通なんだけどな」
主たる煌輝は頭を下げるアルバトリオンを撫でた。
強大な存在でも決して主に手を挙げたりはしないようだ。
その絵面に益々翔太と亮は目を奪われていた。
「あまり、私は古龍の存在に詳しくないんだけど禁忌って?」
「モンスターの中に6匹しかいない世界を壊滅させる程の能力を持つ種だ。ただでさえ生態を逸脱した古龍種の枠組みでも最上位に位置する存在さ」
古龍種の最上位……。
上位に当たるとは予想してたけど、私の想像を越え遥か上の存在なんだ。
「俺のアルバトリオンも膨大な属性エネルギーを持ち場に居るだけで天候が変わる能力を持つがそこは適合者の俺が押さえてる」
「変なこと聞くかもしれないけど、煌輝君はそこまで強いアルバトリオンを手にして産まれて……世界を滅ぼそうと思ったことはないのかい?」
不思議そうに聞く翔太。
だがある意味当然の疑問かもしれない。
古龍の最上位たる禁忌の強さがあれば人間は勿論、適合者など同じ5体の禁忌以外皆殺しにして自由気儘な世界を作れそうなものである。
「確かにそうだな。俺のアルバトリオンなら世界を容易く滅ぼすだろう」
でも、と笑いながら煌輝は一息おいた。
「俺はこの世界が好きなんだよ。だから破滅には使いたくないんだこいつの力を……他の禁忌の適合者はどう考えてるか知らないけどさ俺は自分の好きなこの世界を破壊する気は更々ないよ」
「そうなんだ」
「なんかいいな。そういうの!禁忌の適合者って初めて会ったから怖かったけど、煌輝とはいい友達になれそうだ!」
改めて宜しくと亮は元気に接した。
「あぁ、戦うよりは仲良くしたいからな。けど今のこの町には話が通じない奴も何人か居るんだけどな」
「先週の隕石騒ぎや今週の東ヶ原高校の件のこと?」
「その2つは間違いなく適合者が絡んでる。国は公に情報を公開してないが隕石が落ちた廃工場で数人の焼死体が見つかった。誰も寄り付かないような廃工場に何故隕石が落ち人が居たのか……出来すぎてるよな」
「随分詳しいのね」
「勾玉のこともあってありきたりな人生は歩んでないからな。それなりに裏の情報は入手出きる位置にはいるさ」
「……なるほど」
出自を聞くのは失礼ね。
「今週の件もある古龍の影響によるものだが、恐らく事を起こしたのはその古龍を持つ本人じゃない。模倣して作られた力を手にした奴が起こしたんだ」
あのイカれた計画進んでいやがったのかと煌輝は声を漏らす。
「模倣して作られた力?」
「つまり……コピーだよね」
「原典には劣るがな。この国の適合者に充てられた研究員の中には少し頭のネジがぶっ飛んでる奴も多いんだ。禁忌の適合者以上にな」
「マジかよ……」
「俺達くらいの年齢になれば奴等だって手出しは容易じゃないさ。だが17、18年前出生した子供の中で適合者が発見され気味悪がった親や研究の価値を見いだした国に引きとられた人間もいるんだ。俺もその一人さ」
語るその姿はどこか寂しげな表情だ。
「国は別に引きとることを強制はさせなかったからな。だからお前達は親に育てられて良かったな」
そんなことが……これもラ・ロによる現実改編の弊害の1つだ。
……早く試練を進めなきゃ、それがこの世界を作りあげてしまった私の使命だ。
「親が子を化け物扱いするなんて……」
罪悪感に駈られ涙が出る。
「おい、泣くなよ彩菜。頭がいい奴とかは運がいい奴はそもそも自分が適合者だと親に知られてない奴だって居るんだぜ」
「僕も知られなかったね。でも知っても婆ちゃん達は受け入れてくれる気がするけどさ」
「俺もだ。家族の前ではあんまり帯電行為とかしなかった」
「ふっ、確かに背中に電気を集めたらバレちゃうもんな」
「あぁ!」
ドッと笑いが全員を包む。
「だから彩菜お前が気に掛けることは無いんだぜ。この世界がお前のunknownによって形成された世界でも生きてるのは俺達だ。俺達の過去からの記憶は変わらないさ」
「知ってたのね。……意地悪。ふふふ」
彩菜も笑った。
形成された世界?と二人は疑問を漏らしたがなんでもないと言った。
意気投合した4人は昼過ぎまで適合者のことや世間話を交え解散した。
明後日からまた登校日だ。
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同日……彩菜いじめの主犯格の一人、渋谷真央は自身がこき使うパシリの稲葉結衣を路地裏に呼び出していた。
「身を引きたいだぁ?」
「そうよ……だって彩菜はもう私達が知ってる彩菜じゃ……」
「もっかい言ってみろ……結衣!」
激昂した真央の背後のレンガが崩れ、緑色に染まり円月状の刃がついた尻尾を現した。
「私とあのクソ女どっちが怖いか言ってみな?」
ジャギンジャギンと尾が鳴く。
どっちも怖いが、今この場では直接対峙してる真央が一番怖い。
「ま、真央……」
「正解だ……あの女調子に乗りやがって今度はこっちからけしかけてやる。お前と杏奈とお前らの彼氏も使ってな―――
楽しくなるぜ」
不気味に笑いながら真央はポンポンと結衣の肩を叩き姿を消した。