夜中の白咲町のビルで一人の少年は薄ら笑いを浮かべ町を見下ろしていた。
「僕の存在に他の3人も気付いてるみたいだね」
禁忌の特権と言うべきなのだろうか、普通のモンスターでも彩菜のラ・ロは適合者が試練を克服した先に現実改変を行う能力を持つが……禁忌は複数の特殊能力を持っている。
煌黒龍の彼は今のところ我関せずの態度を取ってるけど……町を守りたいと言うなら、いずれ楽しく殺し合わなきゃいけないよ。煌輝?。他の3人も戦うのは好きだからね。
……あとの海に居る一人は分からないけど。
「そろそろ始めようかな……」
人間の意識を乗っとるほどの殺気が彼の身体から放たれた。
=====
「今日からまた登校開始か」
学級閉鎖は終わりまた登校と試練の日が続く。
残るクラスメイトは半数切ってる……後は確実に試練を行うだけだ。
登校後……。
……あいつは。
行方不明になった直人が登校していた。
元々目立つような生徒じゃなかったからクラスメイトから友達の翔太以外あまり声を掛けられていない様子だ。
直人が何を考えてるか分からないけど、よくまた来る気になったな。
クラスの状況は、不登校に隼人と一真が加わったことぐらい。
あとは特に変化なし。
「おはよう彩菜~。学級閉鎖中はなにしてた?」
「おはよう恵美。まぁ色々と動いてたわ。隕石とか怖かったよね」
親友と直に会って話すのも久しぶりだやはり2週間は長い。
「おはよう恵美彩菜。早速だけどあんた達期末テストって分かるよね?もう3週間切っているのだけど……勉強した?」
問い掛ける3年生学年順位3番滝嶋結子。
試練のことだけじゃなく勉強もしていた彩菜は、うんと答えた。
残る片方は……イビルジョーやバゼルギウスに遭遇したモンスターのように身体が硬直していた。
「期末テスト……」
「えぇ」
「なんだっけそれ……たべものだったっ――
笑顔で誤魔化そうと試みた恵美の目の前にナナ・テスカトリの陽炎が一瞬放たれた。
「灰にするわよ?」
「してません」
「素直でよろしい。で許せると思う?これから帰宅する時は遊ばず私の家に通いなさい……いいわね?」
久々のいつものやり取りを見て微笑ましい気分になりかけた彩菜だが……突如鳴り響いた破壊音と悲鳴に打ち消された。
「え、なにこの音?」
「1階の方からだよ。1年生でなにかあったのかな?」
廊下を見ると騒ぎに釣られた生徒達が駆けてくところだ。
「嫌な予感がする……恵美、結子行ってみよう」
「えぇ」「うん!」
1階にたどり着き生徒の列を避け覗いて見たら1年1組の教室で同じクラスメイト同士で揉み合いになってるところだった。
「ねぇ、あれ……他の子のこと食べたんじゃ……」
恵美が指差した生徒の口周りが真っ赤に染まり舌を舐めずっていた。
「ヤバイわね!早く止めよう!」
一見乱闘のように見えるこの揉み合い……だがこれはただの喧嘩ではない。
理性を失った生徒が他の生徒を襲い始めたことから始まったのである。
小柄な女子生徒や男子生徒が自分より身長も体重もある生徒を投げ飛ばしたり再起不能に陥れる様子は正しく異様だ。
彩菜達は乱闘の中に入っていく。
「あなた達やめなさい!」
割って入るも理性を失った生徒は言うことを聞かず彩菜にも暴力は向けられる。
「うぁ……!」
膝間づいてしまう。
なんで……人間がこんな怪力を……!。
有り得ないことだ。まさか適合者なのか?
「あんた死ぬ気?」
髪をサイドに結んだ生徒が呆れながら彩菜に声を掛けた。
「っ!……この子達は適合者なの?」
「……違うわただの人間よ。そいつらが急にウチらのこと襲ってきてビックリしてんの。適合者でもないのにウチらと張り合いやがってさ!」
ただの人間が……。
「普通の人に技を使うのは気がひけるけどそんなこと言ってらんないみたいね」
「先輩。つか、適合者とタメ張る時点で普通の人間じゃなくね?」
暴風を起こし数人の意識を刈り取る。
「え、マジ。先輩のモンスター強すぎじゃん」
「あと、3人ね普通じゃないなら……」
ラ・ロの威力を弱めた超滑空で3人も意識を失った。
「終わりね」
「彩菜大丈夫だった?」
「本当に普通の人間だったの、今の子達……」
やはり恵美と結子も信じられない表情だ。
「助けてくれて礼言うよ。私は井上好実」
「真面目に助かりました先輩。俺は今田友宏です。いやぁ適合者なのに逆に殺されかけてどうなるかと思った」
好実と友宏はそれぞれ彩菜に礼をのべた。
「あなた達のクラスに何が……」
「テメェこの野郎!影が薄いクソ野郎どもが暴れやがってぶっ殺してやる!」
「ちょ、佐川っ!もうこの先輩が止めてくれたのに蒸し返すなって」
好実は佐川と呼ばれるボウズ苅りの男子生徒にやめるようよびかけた。
「うっせぇ!なんなんだこいつら適合者でもねぇのにあんな馬鹿力有り得ねぇ!」
「それはまだ原因が分からねぇよ。でも気を失ってるならほっとくべきじゃん。起きてから聞きゃあいい」
「急にこの子達は暴れだしたの?」
「まぁね。それも9人同時に……こいつら大人しい性格だったしこんな行為に及ぶことがもう有り得ないんだよね……真面目に誰かに操られたのかも……」
「怖い可能性ね……」
「先輩は何組なの?」
「3年3組よ。私は藤沢彩菜。よろしくね好実ちゃん」
「後ろの二人も彩菜先輩と同じクラスメイト?」
「そう。私は滝嶋結子」
「窪田恵美。二人と同じく3年3組だよ」
「ふ~んそうなんだ。マジで今回の件は助かったよありがとね。学校にはウチらの方から言うから先輩達は戻って大丈夫だよ」
「分かったわ」
「ふふふ!いざとなったら先輩を頼るのだぞ後輩達よ!」
「なんであんたが偉そうなの……あんたには勉強って言う友達が居るのを忘れたのかしら?」
「も、勿論覚えてるよ!はぁ……」
「なによその溜息はいいからいくわよ」
「強ぇぇぇ。この学校にあんな鬼強いモンスター使う人もいたんだな」
「意外と私が思った以上にシラケたとこじゃねぇのかもこの学校」
「なんか言ったか?」
「なんでもねーよ、先公共に言いに行きましょ」
「へいへい」
操られた……か。
教室に戻ると、朝のHRが始まり教師の方から騒ぎがあった旨が伝えられた。
1時間目は先の1年1組の暴動の件で職員会議になったため、自習だ。
「これもしかして学級閉鎖からの臨時休校っちゅうダブルコンボ来るんやないか?」
「俺はもう暇はいやなんだがな……」
3年3組のクラスメイト夏目麻衣は静かに勉強したい+参考書を探しに図書室へ向かった。
その後を二人の生徒が付ける。
「はぁ……この勉強するチャンスを物にしたいのに……裕也や結子に勝てるように頑張らなきゃ」
本棚からひょっこり女子が姿を現した。
「麻衣っちやっぱこのクラスいや……学校は呪われてるんだよ。彩菜も変わっちゃったし……」
同じクラスのオカルトマニアの古賀美里は少し熱が入った様子で麻衣に語った。
「はぁ……あんたは暇でいいわね。見ての通り私はデブでブス……だからこそこのモンスターの勾玉が宿ったのかもしれないけど」
「麻衣っちのガムートならあまり敵はいなさそうだよね。ウチのケチャワチャは……うん」
「でかい=強いではないんじゃない……。古龍や古龍級にはどうあがいたって勝てないだろうし」
「そっかー」
図書室の扉が開く。
勾玉について語る二人に一人の人物が近づいた。
二人はその人物に気づくと少し戸惑う。
「彩菜……」
「ひっ!!。こ、殺しにきた……?」
彩菜の姿を確認するやいなや麻衣の後ろに隠れる美里。
「やっぱりここにいたのね。麻衣と美里……」
「勉強したいからね。そういう彩菜は美里の言うように殺しにきたってわけではないみたいだけどなんのよう?」
美里はホッと息を吐くが依然麻衣の後ろに隠れている。
「私は今からあなた達に恥ずかしいことを言うかもしれない……麻衣、美里私とこれから卒業まで仲良く過ごしてほしいの」
へ?っとすっとんきょうな声を挙げる美里に対し麻衣は特に表情を崩さない。
「どういう意味?」
「私はいじめを受けた頃助けてくれないあなた達に、力で試練を達成しようと考えてた……でもそれじゃ麻衣達に八つ当りするみたいなもんだよね。だから……もうそんな憎悪や怨嗟を捨てあなた達と仲良くしたい……駄目かしら?」
麻衣と美里は顔を見合せ……笑いだした。
「……本当に変わっちゃったんだね彩菜は」
「その申し出を断る理由はないわ。今まで見てみぬ振りしてごめんね彩菜。私の方からあなたと友達になりたいわ」
「私も殺されると思ったけど仲良く過ごせるならそれにこしたことはないよ!ごめんね、そしてこれからよろしくね彩菜!」
笑顔で麻衣と美里の試練は達成できた。
だが力を使わないで試練を終えるのが出来るのはこれまでかもしれない……あとはいじめの主犯格真莉グループとその手下、この他にもクセ者だらけだ。
「彩菜危ない!」
「えっ……」
気付いた時には本棚に押し潰された。
「大丈夫彩菜!」
「い、今何が起きたの?。急に彩菜に本棚が迫ったように見えたけど……」
「くっ……いたぁ。今日は痛い思いしてばっかりね」
前の二人は何も不審な行動はとっていない。
気配も二人以外ない……誰かが姿を消したか超速で図書室に忍び込み図書棚を倒したのか……。
一先ず脱出し彼女らは教室へと戻った。
最初に比べ強くなったから油断してしまったのか、まだまだ気は抜けそうにない。
この日のうちに学校側は今回の暴動騒ぎ含め町内の治安悪化を案じて近日中に長期の臨時休校とする方針をとった……生徒の安全を守るためと言えば聞こえはいいがようは責任逃れでもあった。
また町の教育委員会も全体的にこの白咲高校の動きを認め白咲高校だけならず同町に於ける他の4つの高校も臨時休校を取るように指示が出た。
特に東ヶ原高校では爆発騒ぎも出たばかりだ。
白咲町に漂う不穏は増すばかりである。
=====
白咲町内……某高校……。
「ははは黒邪の奴面白い真似をしやがるな!。人間共を洗脳し力を与え適合者と殺しあわせるなんてよ」
「緋絃、あなたも場を盛り上げるようなことしないの?」
「焔紅や黒邪には負けてられねぇな。俺も禁忌の紅龍だ面倒くせぇ学校も休みになるみてぇだし」
『暴れるか』
誰が先にこの町全部ぶっ壊せるか競争してから奴等と殺し合うのも面白そうだ。