リオスのつがいの適合者である理雄と玲里は公園で落下する氷塊を見る……。
時を同じくして彩菜のunknownと杏奈のベリオロスと政敏のデュラガウアが戦った場所で勝った筈の政敏が腹部を赤く膨らませ横たわっていた。
白咲高校3年1組である伊里愛玲里と炎天理雄はこの日デートをし、街の中心部から外れた道路沿いの公園のベンチで二人して休んだ。
実は奥手な二人を見かねて桜花が「暇になるから楽しんできなよ!」とセッティングしたのが真相である。
あの旅行後、理雄は怜里に告白し怜里は快諾した。
「臨時休校いつまで続くんだろうね」
「うん…。学校に居た方が皆と話せて楽しいから私はいやだな」
……悲しげな怜里の表情を見て、理雄も寂しさと彼女をもっと元気づけられないかと自分の不甲斐なさに腹をたてたくなる。
こういう時蒼王のような性格が羨ましいと思う。
普段の自分から見れば蒼王はノリがよくて少しいい加減な奴と見てしまうが彼には彼なりに人を惹き付けるものがありいい意味でも悪い意味でも自身を顧みず行動しちゃんと人を敬う発言をする。
何事にも億劫な自分とは正反対だ。
「怜里ちゃんって高校卒業したら大学行くんだっけ?お姉さん達と一緒に」
「うん。この街出て東京の方に行くの、銀陽君は私達と一緒の大学に入るみたいだけど、玲央君と蒼王君は卒業したら地元で就職しちゃうから私達離れ離れになっちゃうね」
「うん…遠距離か」
東京って人が多いんだろうな。
彼女は四月からそこで生きていくのか。
「寂しい?」
少し笑いながら聞いてきた。
「うん…高校生活両思いで出来た彼女が離れるのは寂しいよ。まだ彼女らしいことも俺出来てないし」
「理雄君問い詰め過ぎだよ」
自分の右手の上に被せられる彼女の暖かい左手。
「理雄君は理雄君だよ。貴方の他人にない優しさが私は好き。いいんだよ私達は桜花お姉ちゃんみたいにくっついたりしなくても、ゆっくり進めばいいの。私も玲央君も」
この優しさだ。
理雄が怜里に惹かれたのも決して他人に影響されず自分達は自分達で進もうと言う彼女が好きなのだ。
「桜花達は確かにちょっとくっつきすぎかもね」
「だよね…瑠奈お姉ちゃんほどじゃないけど私も恥ずかしくなるもん…」
苦笑しながら語る理雄とは裏に怜里は赤面している。
「君が東京行っても会いに行く絶対」
「うれしい。理雄君と会うの楽しみに待つね」
幸福に包まれてる二人は上空から何かが落下する光景を見た。
「なんだろ、あれ?」
その時目の前の道路を自動者が街の方から走ってきた。
このままでは落下してくる時間と位置からあの車にぶつかるのではないか…。
「ヤバイ!」
火竜リオレウスの力を纏い氷塊をレウスの蹴りの力で誰も居ない公園へずらそうと飛びたつ。
破壊するより力を掛けなくていい。
「どりゃあ!」
見事理雄の考え通り公園に氷塊を弾き跳ばすことに成功した。
「あっぶねー…」
「ナイスキック、この氷塊一体なんだろ?氷が幾つにも重ねて凍結されて中が濁って見えるね」
「明らかに自然でこうなったわけじゃなさそうだね」
「適合者だね……」
もしかして中身でナニか凍らされていてそれを軸に氷が形成されてってるんじゃ……。
誰かが氷らせた。
理雄の身体に悪寒が走る。
手にリオレウスの火を纏い火球攻撃を手から放つ。
「理雄君!?」
「玲里ちゃん。この中で凍ってるものがあるかもしれない。形だってよくみたら人間に近いし、溶かしてみよう!」
「う、うん」
玲里も手から火球攻撃を放つ。
一体何が出てくるんだろう。氷を溶かす過程でさらにおかしなことに気付いた。
理雄のリオレウスと玲里のリオレイアの火球を食らい氷からは溶ける音や湯気は立つのに一向に溶けない。
その頃町にこの他にも天から2つの氷塊が落下した。
氷塊はいずれも人型の大きさだったが粉々に砕け散々となった。
砕け散った氷から何故か指が出てきたり舌が出てきたりして落下地点はパニックになっている。
「どうなってるんだこの氷……」
「でもなんとか溶けては来てるみたい。当ててた側の氷がちょっとずつ薄くなってきたし」
「うん」
何気無く確認しようと近づき、氷の中にとんでもないものを見た。
「……嘘だろ」
「どうしたの……」
絶句する理雄と玲里……無理もない。
冷たい氷に閉ざされてたのは人間だったんだから。
「玲里ちゃん。念の為瑠奈さんや銀陽とかに連絡してくれる?。もしかしなくてもこんなことする奴ヤバイからさ……」
「うん!」
直ぐ様自宅に電話し姉に伝えはじめた。
「瑠奈お姉ちゃんは今来るみたい。桜花お姉ちゃんは家にいなかった」
「そっか」
氷塊は先ほどよりもすごく薄くなった。
中に入ってる人間の顔が誰だか認識出来るぐらいには。
「おいおいなんでだよ……なんで、なんで彩菜ちゃんが中に入ってるんだ……」
「彩菜ちゃんに一体何があったの……?」
眠ったように穏やかな表情を浮かべた友達の姿がそこにあった。
=====
「がぁぁぁぁっ、あの女ぁ!」
3個の人間の氷塊を作った政敏は腹を押さえながら彩菜と戦った場所から動かず苦痛に身をよじっていた。
この痛みは彩菜と戦闘し3人を氷らせたら突然発生してあまりの痛みに立っていられなくなり今は身体を地面に寝かせている。
先ほど超滑空を食らった腹がパンパンに赤く膨れあがり汗と血が滝のように流れる。
当然彼が氷塊を落とせるわけがなく杏奈が全部落としにいった。
「俺は死ぬのか……そんなはずねぇ!俺は彩菜の技を受けとめた上で奴を倒したんだ。勝ったのは俺の筈なんだ!」
血が喉を駆け上がり吐いた。
意識朦朧とする中ある者の話し声が聞こえてくる……。
「黒邪の力を受けとってこのザマか。彼女のunknownの攻撃を受け止めた時は少し興味が湧いたけどま、所詮ワイバーンの原種じゃ素体が力量不足だしこんなもんよね」
なぜ、黒邪さんの名前を知ってるんだ。
その女の台詞一言一言に不思議な感覚が自分の身体を走る。
あんなに痛かったのにあんなに血を吐き出していたのに……この女の畏怖が身体全体を支配し全ての感覚が消失してゆく。
「……あんたは何者なんだ?」
「何者だろうね。適合者には間違いないけど、その痛み今のままじゃあなた取ること出来ないわよ。もしunknownの適合者の彩菜さんが貴方に報復しに戻ればあなたそのまま何も出来ずに負けるわね」
この女はなぜ彩菜のことも知っているのだろう……。
「そんな……!頼むあいつに勝つのはいいけど負けるなんて……格好悪いしだせぇよ!」
必死に体裁を取り繕う姿に少女は笑った。
「体面を気にするか……いいよ人間らしくて私は好きよ。身の丈にも合わない力を受けとり有頂天に振る舞うあんたらは馬鹿みたいだけどね。そもそもワイバーンの器を考えなよ。まぁ役者が死んだら困るし今はその力を安定させるの手伝ってあげる」
少女の赤雷を纏った手が政敏の心臓の中に入り込み山に苦痛の咆哮が響いた。