再戦(リベンジ)を望む彩菜にラ・ロは最終形態の力を打診した……。
暖かい布団が身を包む感覚で彩菜は目を覚ました。
……ここは?
ぼやける目で辺りを覗くと、どこかの家の中のようだ。
身近に人物が立っているが寝ボケと疲労感ですぐに答えを出せない。
この人誰だったかしら……。
誰だか疑問を浮かべるとその少女は彩菜ちゃん!と泣きながら彩菜に抱きついた。
そこでようやく彩菜の寝ボケ磨哭けの頭もこの少女の記憶を完全に思いだした。
「玲里ちゃん……?」
「うぅぅぅ……無事で良かったよぉ!」
えーんと小さい子のように泣く玲里。
なんだか悪気を感じた彩菜はそのまま頭を撫でてあげた。
部屋にさらに二人の男女が入ってきた。
「彩菜ちゃん、目が覚めたんだね」
「玲里の泣き声が聞こえたので入ってみたら……ともかく御無事で何よりですわ。彩菜さん」
「理雄君と瑠奈ちゃん……それじゃこの場所は」
「「私の家です(だよ)」」
伊里愛三姉妹の家に担ぎこまれていたようだ。
だがその原因はまだ思い当たらない。
なんで自分が寝るハメになったのか。
「ごめんなさい、失礼かもしれないけど……何故私は瑠奈ちゃん達の家に担ぎこまれたの?私、ちょっと記憶がなくて……」
何か変なワードでも言ったのだろうか。
えっ……と声を挙げ三人の顔が不安そうになった。
こちらもつられて不安になる。
「覚えてないんだね……彩菜ちゃん」
「うん」
一体自分に何が起きたのだ。
「俺と玲里ちゃんが公園にいた時、空から大きな氷塊が降ってきたんだ。そのまま落ちたんじゃ下を通過する車にぶつかりそうだから俺は蹴って公園の方へ跳ばした……」
空から大きな氷……。
異常気象か?。
「その氷塊はとかく異質だったよ。中身が見えなくなるぐらい氷が何重にも張られてサイズも人間より少し大きなぐらいだ。明らかに自然に凍らされたものじゃなく、何かが軸に氷が何重も形成されていたんだ、溶かすのにえらい苦労したよ」
「まさか、その氷の中に……私が……」
「あぁ……信じられなかった。あれほど強い君を凍てつかせ何重にも氷を張ったんだ。古龍か古龍に匹敵するモンスターと戦ったみたいだね」
「こおり……氷ね」
氷というキーワードが頭にひっかかる。
あと少しで自分が忘れた出来事の記憶が甦りそうだ。
飛竜……ベリオロス、デュラガウアと次々ワードが頭を流れる。
「理雄君。私は氷に閉ざされていたんだよね?」
「あぁ」
今浮かべた飛竜が自分の身体を凍らせのだろうか。
そもそも、ベリオロスもデュラガウアも猛者には違い無いが強さは古龍には遠く及ばない。
古龍は生態系を逸脱した存在だ……ここから考えればラ・ロがこの2体に遅れを取ったと考えにくい。
何が……私とその2体の飛竜に何が?。
そう言えば今日私は同じクラスの4人と遊ぶ約束してたんだっけ。
まぁ、遊びってのは口だけで確か結衣、哲也、杏奈、政敏への試練を誓って待ち合わせのデパートに行ったら杏奈と政敏が二人しかいなかったんだ。
……それで私は……街から離れたところで杏奈のベリオロスと政敏のデュラガウアと戦って……。
負けたんだ……。
記憶を思いだしたと同時に負けていじめられた頃のトラウマも甦り腕を強く掴んだ。
いつの間にか地面ごと凍らされていた、そして落としてバラバラにしようとしたわけか。
「彩菜さん……?」
「完全に思いだしたわ……私は負けたの。異様な強さを誇るベリオロスとデュラガウアに」
「ベリオロスとデュラガウアに!?」
「希少種や危険度の高い種ならともかく原種が古龍級の強さを身につけたと言うのは……些か信じられません」
「技もかなり強化されてた。あのお方から力をもらったとか言ってたわ」
あのお方……?と瑠奈は呟いた。
「お姉ちゃん……彩菜ちゃんの話が本当ならベリオロスとデュラガウアに並の古龍を上回る力を与えた人が居るってことだよね?……一般の種を古龍級の強さにするって相当ヤバイんじゃ……」
「最近のこの街で起きてる出来事に関係してるのかも。力を与えたそいつが裏で手を引いてるとかさ」
禁忌のモンスターを持つ煌輝も適合者が絡んでると言っていたから間違いない。
なんにせよ先ずは試練を優先しないとならない。
討ち洩らした、政敏、杏奈を含め……あと9人だ。
だけど今の状態のラ・ロじゃまだ政敏と杏奈を倒すには力が足りなく感じたな。
-無事で安心したぞ彩菜よ。
ラ・ロが話かけてきた。
久しぶりね。負けちゃったね第6形態の必殺技を繰りだしたのに……。
-私にはもう1つ形態がある。天に至りし力を持つ第7形態が。
天に至りし力……。それを持てば私は奴等を倒せるのかな?。
-忠告しておくがその力は強大だ。お前が奴等を倒すどころかお前が第7形態の力に支配されて見境なく虐殺するかもしれない……恐ろしい力なのだぞ。
力の制御か……自分に出来るのか。
敵と戦かう前に自分の制御をしなくちゃならないんだ。
-お前はもう肉体的にこの力を使っても問題ない。だが私はお前の精神面への影響が心配でこの力を扱えとは言えなかった……だがお前が必要なら問うぞ。この新たな力を使うか?。
決まってるよ。憎悪や怨嗟のなく皆が笑顔で和気藹々した新たなクラスを作る為に私は……力を使うよ。
皆が話し合う中で最後の悪魔の契約がラ・ロと彩菜に結ばれた。
「彩菜さん?何か考えごとしてました?」
「あっ、ごめんね。どうすれば奴等を倒せるかなって考えててハマっちゃった。あれ?おーちゃんは?」
「あの愚妹なら蒼王さんとデートに出かけていますわ。能天気と言うか大馬鹿と言うか……」
「でも、そこが桜花のいいところな気もするけどね。マイナスな考えばっかじゃつまんないからな」
「意外ですね。理雄さんがそんな台詞を言うなんて。いいことでもありましたか?」
まぁ……あったかな。と頭を手で擦る理雄。
玲里もほっぺたに両手をあて赤くなってる。
可愛わね……二人とも。
ずっと眺めてたいと思ってしまう。
それどころじゃないと自分に言い聞かせ彩菜は取り敢えず瑠奈に礼を言い帰宅しようとしたが瑠奈のお待ちくださいの一言に止められた。
「実は氷に閉ざされたのは彩菜さんだけじゃないのかも知れないのです」
「え?」
自分の他にも犠牲者がいるのか。
スマホを見ながら瑠奈は読み上げていく。
「snsに画像が上がっていたのですが、氷塊はあと2つ確認されていて街の中心部にどちらも落ちたそうです。怪我人も出たとか……」
「中に人はいたの?」
恐る恐る聞く彩菜。
「いたみたいです…氷が砕けると同時に脚や指や胴が割れたり、時間が経つにつれ氷塊が赤く染まったみたいですわよ」
ちょうど、その時の写真も挙げられていますね。と付け加えた。
しかし誰が犠牲になったんだろう。自分達と同じ適合者か…流石に普通の人間にそんなことはしないと思う。
……結衣と哲也の二人が居なくて二つの氷塊……まさか、杏奈と政敏は仮にも自分の仲間の二人を手に掛けたんじゃ……今のあの雰囲気なら充分に有り得る。
まずリベンジする前に結衣と哲也に話を聞いた方がいいかもしれない。
「じゃあ、私用があるから行くよ」
「待ってください。また戻るおつもりですか?。自分が氷漬けにした敵の場所へ」
「…えぇ。私は乗り越えなければいけないから。今回だって越えてみせる、試練を越えた先にある私の目標のためにも」
「あなたのその心意気は立派です。ですが私はあなたの友人として彩菜さんを一人で行かせるのに反対です聞くと相手は複数じゃないですか。私も行きますよ」
「瑠奈ちゃん…」
ありがたい申し出だが相手は相当つよい。
一方的に蹂躙された錆びたクシャルダオラより政敏のデュラガウアの方が強さは段違いだ。
友人として嬉しいが彼女が奴に倒されたら……。
「政敏も杏奈もケタ違いの強さよ。瑠奈ちゃんが逆に倒されちゃうかもしれないわ。そしたら……玲里ちゃんやおーちゃんに申し訳ないし…二人は悲しむわ」
ちらりと玲里に目を移すと、不安そうな顔をし顔を剃らした。
「彩菜さん。私あのあと銀陽さんと特訓したんです。皆を守れず、妹の桜花も守れなかった自分を恥じて……あの時とは私だって違います!決して貴女の足は引っ張りません。だから…私も連れて行ってください。お願いします」
御辞儀をする瑠奈。
玲里は姉の姿を見て少し困ってる様子だ。
「分かったわ瑠奈ちゃん……玲里ちゃん。お姉さんの力を借りてもいいかな?」
「うん。ちょっと不安だけどお姉ちゃんを信じる。お姉ちゃんは凄く強くて私の憧れだから。彩菜ちゃん、お姉ちゃんを宜しくね!」
不安だろうに玲里は満面の笑みで元気付けてくれた。
「うん。絶対に帰ってくるよ」
「俺も何か役にたてるかな?」
理雄の一言に彩菜と瑠奈は笑顔で顔を見合わせる。
「理雄君はここで玲里ちゃんを見守ってて。あなたにしか出来ない仕事よ」
「妹を宜しくお願いします、理雄さん」
「うん。分かった」
二人は部屋を出て、さっきの戦闘をした場所へ向かった。
今度は絶対奴等に勝つと誓って。
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彩菜、結衣、哲也三人の氷塊を落とした杏奈は政敏の元へ戻った。
彼が急に容態が悪化したようだが大丈夫か不安だ。
午後4時頃になり、辺りは薄暗い。
「……眩しい!」
森から眩い白い発光が放出された。
ちょうど政敏がいるあたりだ。
「ちょっと、まーくんに何かあったの!?」
急いで飛行し森に降り立つ杏奈。
……政敏の姿は見あたらなかった。
「まーくん、まーくん!」
名前を呼ぶも彼の返事は聞こえない。
静まり帰る森に……小さく何かが蒸発する音が聞こえるた、まるで電気が流れるような音が一定でしている。
黒邪から力をもらい彩菜を一方的に叩き潰せる強さを身に付けた筈なのに身震いが生じた。
本能が戦うなと自分に言ってくる。
「なに……なんなのこの殺気……政敏なの!私は杏奈よ!」
警戒してる杏奈の背中に突然激熱が走り吹っ飛ばされた……言葉にならない悲鳴をあげ、あまりの痛みで立ち上がれない、ダメージの影響か手も足も震えが止まらなかった。
死んだ蛙のように仰向けに寝る杏奈にさっきの発光が照らすそこから自分の彼氏が変わり果てた姿でこちらに歩いてきた。
「ま……さと……しな……の?」
再生が間に合わない。
政敏は身体の大部分が白く染まり目から血の涙を流し赤い雷が身を駆け巡り背中から生えた真っ黒な翼に炎を纏っている。
「杏奈……黒邪さんの力だけじゃあ俺は不完全だったが、更にもう一人の方のおかげで俺は力を制定出来たんだ……」
『お前も完全にさせてやる』
赤い涙を流しながら政敏は杏奈に……強大なエネルギーを放ち森は白光と赤雷に数十秒に渡り包まれた。