第7形態の力を手にした彩菜。
森へ向かう道中、禁忌の適合者煌輝と……二人の倒れたクラスメイトに出会った。
赤色灯を点滅させ走る救急車。
この車両の中にはまだ生きてると判断された空から落下してきた氷漬けにされた2人の人間が運ばれていた…隊員達の殆どが生きているわけが無いと思ったが何処からともなく白衣の男性が現れ病院と直接交渉し救急車にのせることとなった。
隊員達もみな不審に思いながら走る救急車の電灯が突然全て消えた。
おい!なんだ急に!と隊員の一人は声を荒らげる。
「分かりません!、原因不明!」
「この氷に閉ざされた人達を早く運ばなくてはならないのだ!」
生きているかどうか自分達では判断出来ないが、他者の指南でも生きてる可能性があるなら病院に運ぶのが隊員達の仕事だった。
「あの光はなんでしょう!?」
運転手の声に他の隊員達も声が示す方向を見た。
眩い真っ白な発光が白咲山の近くの森を覆い尽くす…日の出の太陽より明るく見えた。
「なんだよありゃ…この世の終わりか…」
冗談ながらに口にした隊員がタンカに目をやると氷漬けにされた2人の人間は姿が消えていた。
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…なにあれ。
彩菜と瑠奈は白咲山の麓の森から発せられる眩い光を見て思わず足を止めた。
光ったのは間違いなくさっき自分が居た場所、まさか政敏や杏奈があの光を放ったのだろうか?。
「なんですの……あの光は?」
「分からないわ。だけど放っておいたら凄く危険な気がする」
「その通りだ」
声がした方を見上げると、彩菜の友達の禁忌の適合者が翼をゆっくり動かしながら地上に降り立つところだった。
「煌輝君!」
「このお方は……どなたですか?」
「よ、彩菜。そしてそっちのお嬢さんははじめましてだな。俺の名前は深色煌輝。煌黒龍アルバトリオンの適合者だ」
そのモンスターの名前を聞いて瑠奈はアルバトリオンですって!?と凄く驚いた顔をしていた。
「はははは、まぁ皆驚くよな」
「煌輝君は力を悪く使うような人じゃないから大丈夫よ。私が保障する」
「分かりました……取り乱してすみません。私は伊里愛瑠奈と申します。金火竜リオレイア希少種の適合者です」
彩菜が悪い人じゃないと紹介したからか瑠奈は幾分か落ち着きを取り戻したようだ。
「リオレイア希少種か、強力なサマーソルトや火球を得意とするモンスターだよな。宜しくな瑠奈」
「こちらこそ、宜しくお願いします。煌輝さん」
二人の自己紹介が終わった。
だが瑠奈の顔はまだ重い……何かを危惧してるようだった。
「禁忌の煌黒龍……そんな勾玉が本当にあるなんて都市伝説に過ぎないと思っていました。でも現にこうして煌輝さんがアルバトリオンの力を司る存在として実在してるということは……まさか」
「そう、他の禁忌も5体存在する。で、今お前達が見たあの光は禁忌の一体のモンスターの力だ。だが光を放ったのは恐らく本人じゃない……他の適合者に自分の力を無理矢理与えて暴れさせようってんだろ」
禁忌の膨大なエネルギーを他の適合者に送って暴走させる……。
一体どうなるんだ。
「俺達禁忌は適合者のエネルギー全てを感知できる能力を持つ普段は鬱陶しいから切ってるけどな。あそこに居んのは一人じゃない二人だ男女のな」
煌輝のその言葉を聞きあの場に居るのは政敏と杏奈だと確信した。
これで全て納得がいった。あの化け物染みた強さも禁忌の力を与えられたからなんだ。
禁忌の古龍の力ね……。あそこまでモンスターを強くしてしまうのだから、確かに恐ろしいな。
彩菜があの一方的にやられた戦いを思い出してると、オイオイオイと煌輝が顔をしかめながら漏らした。
「祖龍の力だけじゃなくて、黒龍の力も宿らせただと……普通の適合者の身が持つ筈がない。奴等はこのまま何れ死ね運命にある。俺の力で奴の体内から力を消せば別だけど」
祖龍に……黒龍?。
また山が発光して今度は赤い稲妻が空に轟いた。
早く止めないと本当に被害がでそうだ。
「とにかく、生かすにしても倒さなきゃいけないってことね」
今度こそ勝ってみせる。
ラ・ロの第7形態の力で。
「大変あそこに二人倒れていますわ」
瑠奈の声に振り向くと今日遊ぶ約束をしてこなかった二人が暗いアスファルトの上で横になっていた。
「結衣、哲也……」
お知り合いですか?と瑠奈の質問に試練の相手よと答えた。
近づいて二人を見たが特に身体の欠損や外傷は見当たらない氷が溶けたためまた新たに身体が再生したようだ。……二人の身体と周りのアスファルトは水びたしだった。
この状態が二人が氷漬けにされたことを物語っている。
「無様ね……仲間に裏切られ氷漬けにされた挙げ句叩き落とされたんだから」
安らかな表情で横たわる二人に対し彩菜の脳裏には結衣に嵌められた記憶が浮かび上がる。そこから杏奈や政敏と一緒に散々嫌がらせをされた。
……このままこの女の頭を潰してしまいたい。
適合者だから死にはしない……だが今の自分にはどうしても気を失った相手を甚振る行為が出来なくなっていた。
吐き捨てるように一息すると結衣の身体を強く揺さぶった。
「起きなさい……結衣!」
「……ん、……こ、こは……あや……な!?」
自分を叩き起こした人物の正体をしり結衣はバッと後ろに下がった。
恐らく結衣にとっては最悪の邂逅となっただろう。
「立ちなさい。私と戦ってもらうわ。あの二人みたいにあんたも禁忌の力を受けとったんでしょ?」
「ちょっと待って!私はもうあなたと戦いたくないの」
なんだと。
自分を上回る力を手にしたのに結衣らしくもない。
この女だったらあの二人同様に徹底的に自分に攻撃してくると彩菜は考えていた。
「あんたらしくもないわね。頭打ったの?」
「違う!……気付いたのもうこんなことしたくないって……本当にごめんなさい。今まであなたにいっぱい陰湿なことをして本当にごめんなさい!」
泣き崩れながら結衣は謝る。
嘘泣きってわけではなさそうだし、油断させて襲おうという雰囲気も感じられない。
あぁ……なんで結衣と哲也があの二人に裏切られたか分かった気がするわ。
「反省……しているのね?」
重く、はいと彼女は返事する。
「分かった。はっきり言って私はあなたを許せない……でもあなたに本気で償う気持ちがあるなら私はあなたと哲也に試練を下すわ。その試練は私の試練でもある」
「試練……?」
「氷らされて起きたらアスファルトの上で物騒な話を聞かされちゃったな」
笑いながら哲也は顔をあげた。
「てっちゃん!無事だったんだね!」
「なんとかな…俺も謝るよ彩菜こいつ含めあの二人も止められなくて本当にすまなかった。こいつの嘘信じて彩菜に最低最悪な思いをさせてしまった」
哲也は彩菜に対して何もしなかったが……その何もせずただ傍観したことを酷く後悔してるようだ。
彼は……私に対して確かに害を与える存在ではないけど、デマを信じ残りの3人を止めようともしなかった。
……やはりあなたも試練の対象よ哲也。
そして、後悔し改心したあなた達の意志を私に見せて。
「試練の内容は私達と共に……暴走したあいつらを倒すことよ」
赤雷と白光が点滅する白咲山の森を見て静かに言った。