……イジメを行った理由を聞く彩菜に彼女は正直に語り出した。
白咲町のとあるカフェに禁忌の適合者が3人揃った。
「怖じ気づいたか?あの女に力を与えたのはお前だぞ緋絃」
「分かっている」
「じゃあ何故力を消したの?」
焔紅と祖雷は、怪訝そうに緋絃を見つめた。
「魔がさした……違うな。清められたのか、俺の手下の知人にな。とにかく俺は無闇な破壊を自らやるのはやめる。暴れるのは真に強い適合者やお前らとやり合う時だ」
「ふーん」
「人間ごときに感化されるとは。貴様も落ちたな」
「なんだと……」
緋絃は焔紅の胸倉を掴んだ。
直ぐ様焔紅は振り払う。
「早いようだが今から誰が勝つか決めるか?」
「あぁ。どっちの焔が強いか決めようぜ」
「まぁまぁ、落着きさいよあなた達。あの彩菜さんが更に強くなってからでも遅くないでしょう?」
祖雷の言葉に、二人はふっ、と笑いながら席につき茶を嗜んだ。
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んん……と声をあげ真莉は目を覚ました。
「お目覚めかしら?」
彩菜の一言に深く、ハァ~~~~……と息を吐いた。
顔に手を当てながら悔しそうに、負けたのね……。と呟く。
「で、私のことなんで殺さなかったの?まさか情けとか言わないわよね?」
「えぇ。あなた達3人が何故私をいじめるようになったか聞きたいのよ、結衣の嘘を本当にしてまで起因を作り私をいじめたかった理由は?」
彼女は下を向いた。
「答えないつもり?」
「……結局、私はあんたらに親子して勝てなかったのね」
「親子……?。さっきあなた戦闘中にお父さんと言っていたけど……うちの父親と何かあったの?」
彩菜の問いにふっ、と自虐的な笑みを浮かべた……同時に邪気が失われていく。
……こんな真莉見たことない。
「分かったもう全部話す……あなたを狙った理由も」
「聞かせて頂戴……」
「私の父は工場を経営していてね。と言っても下請けなんだけど……でも小さくてもきりもみしながらなんとか頑張ってたのよ。学校帰りに寄ったりしたら同僚の人達も家族みたいに迎えてくれてさ……この幸せな場は長く続くと思ってた。だけどある日事件が起きたのよ」
「事件?」
鬱屈な表情で彼女はことのあらましを語り出した。
中学卒業を控えた3年前……。
「どういうことだ……!?」
真莉はこの日、いつものように帰宅後工場に寄った際に、父親達が騒いでいるのを聞いた。
優しい父が怒鳴ったことなんて生まれてこの方見たことなかった。
……怖い。
恐怖の感情が起こるが、入り口でしっかりと内容を真莉は聞いた。
「岸君、森岡君と連絡がつかない!?……あの二人がいなければ仕事にならない!」
父親の怒号を受ける社員が震えるように声を出す。
「……きっと藤沢です!」
「なんだと……?」
「藤沢グループがあの二人を引き抜いたんですよ!!」
そこから真莉の幸せは途絶えた。
経営に支障をきたした父親のもとに莫大な借金が残り、生活は瞬く間に苦しくなった。
最後に……父親は首を吊って死んだのである。
藤沢が私達の生活を奪って……お父さんを殺したんだ!。
「それからよ……かの有名な藤沢グループの家がまさかこんな近所にあることを知ったのはね。この家族が奪われた悲しみをあなたの父、藤沢総一郎に味わらせたかったからあなたを死に追いやろうとイジメをはじめたのよ」
過去に自分の父親の行動が1つの家族に悲劇をもたらしてしまっていた……。
申し訳ない気持ちが浮かび上がる。が、それとは裏腹にあの父ならやりかねないという思いもある。
あの父親は自分の娘にすら冷酷なのだから。
「じゃあ真莉は、高1の時から既に私に狙いをつけていたの?」
「まぁね、あ、でも他の人もあなたが藤沢の娘だって言ってたわね。……確か誰だったかしら?」
顔に手を当てるが出てこない。
身近な人物だった気がするのに。
「いいわ、無理に思いださなくて。……そうだったの、あなたがいじめられる原因を作ったのは私の父親だったんだ……」
あまり驚かない彩菜が何故か気になる。
でも関係ない、自分は彩菜に負けてしまったんだ。
……責任は全て私にある。
「でも私はあんたに最悪な行為を繰り返した。信号待ち中のあんたに火を放ったり」
「あれ真莉だったんだ……」
「……彩菜本当にごめんね。父親への恨みをあなたにぶつけ残ったのは互いの恨みだけだったね。企てたのは全て私、もう私はどうしてくれても構わない……だから、詩織と真央だけは見逃して」
「駄目よ」
「え?」
「あなたのことは許すわ、私の父親にも問題があったみたいだし。それに私はあの二人には散々やられたから直接謝って貰わなきゃとてもじゃないけど許せない……それでもすまないなら戦うけど。あなただって本当の復讐相手が分かった今……やるべきことがあるんじゃないの?」
「彩菜……あんた。どんだけ前向きなのよ。許す挙げ句負けた相手に手を伸ばすとか……腹が立つわね」
真莉は今まで彩菜に見せたことのないような明るい笑みを浮かべ嫌味ったらしく言う。
「ははははは!ちょっと……笑らせないでよ!馬鹿真莉!」
「うるさいわよ前向き!」
「名前すら入ってないのは酷くない!?」
「あんたなんかそれでちょうどよ!」
またも笑いが場を包む。
この瞬間、彼女らは不遇の敵からうち解け合う者へ変わっていた。
「あ~あ、彩菜とこんな楽しく話せる日が来るなんてね」
「私の台詞よ」
賑やかでちょっと腹が立つ友達になりそうね。
「つか、あんたは私と対称的にまったく自分の父親のこと信頼してない様子だけど昔から?」
「いや、小学生までは普通だったかな、中学から急に成績ダメ押しされてさ。お前は藤沢の恥さらしだとか中学の段階で言われたりしたのよ」
「うわぁ……そんなんじゃ子供も生きづらくなるわよね。自分の娘すら大切に出来ない男が私達家族の苦しみが分かるわけないか……本当にごめんなさい彩菜!、いじめて更にあんたに枷をかけてしまって……」
「もう、あんたは謝らなくて良いよ。充分伝わった」
「ありがとう……。そうだ、あんたの父親に伝言頼めない?待っててもいいけどそろそろ帰んなきゃお母さんが心配するし」
「この頃、あの人帰るの遅いの。朝方なら言えるかも」
「良かった。こう伝えておいて……」
「うん。分かった」
その日、真莉は彩菜とラインを交換し礼を述べ帰った。
暗さが入る余地もない明るい表情を浮かべて。
翌朝、会社に向かう父親を彩菜は呼び止め真莉の伝言を伝えた。
「『会社は確かに大切だと思いますが、手遅れになる前に今一度本当に自分の大切なものを考えてください。痛みを伴ってからでは手遅れになります』。友達からの伝言だよお父さん」
「ふざけてるのか?」
「昨日、私お父さんが過去にヘッドハンティングした会社を調べたの。どの会社も経営が立ち行かなくなり、破産の運命を迎えてたわ」
「何が言いたい」
自分の父は本当に血が通っているか不安になってきた。
「お父さん、その会社の人達にも生活があり子がある人もいるんだよ!お父さんがやってることは生活を奪ってるようなものじゃない!」
痛みを感じぬ父親に思わず感情的になり叫んだ。
「朝から喚くな。この世は犠牲でなりたってるのだ。弱き者は搾取される運命だ。お前に付き合う暇はない」
ドアを開け父親は出ていく。
彩菜は玄関に泣き崩れた。
……ごめん真莉、あの人は分かりそうにないよ。
「まったくなんて娘なのだ。奴の方が俺の実子であれば……」
総一郎はイライラしながら会社へ向かった。