復興した電車に乗り込んだ美穂と蓮はある約束をして別れた。
結城真莉は藤沢彩菜に、昨日謝りにいった真央と詩織が帰ってこなかったと電話で伝えた。
彩菜から二人が謝りにきたメールを受けとった真莉はそのあと二人にメールを送ったが返信がこなかったため、二人の家に直接電話したところどちらも帰っていないと返事を得た。
『彩菜まさかあの二人を殺してしまったの……?』
断固として否定する。
ちゃんと自分は目の前で暴力を活用せず二人を許した。
「してないよ!。といっても信憑性が薄いか……でも、私はあの二人を手にかけたりなんてしてないよ」
受話器の向こうで息を飲む音が聞こえる。
『……ごめんなさい。あの二人は親友だったから。そうよね今の彩菜がそんなことするわけ無いよね。私はあの二人の手掛かりを探したいの、もしかしたら二人は行方不明になったんじゃなくて、強い適合者に襲われた可能性もあるかもしれないと今更ながら考えたわ……いずれにせよ道中に何か手掛かりがあるかも』
「有り得るかもね」
真莉の考え通り適合者同士の戦闘があったなら、地面の亀裂や壁の損傷などが見られる可能性がある。
でもそれじゃ戦闘があったというだけ……やはり何か適合者本人だと示す物が必要だ……。
『親御さんもさ。警察が忙しくて中々捜索してもらえないって言ってたからさ本当気が引けるんだけど彩菜も探すの手伝ってもらえる?』
「真莉の親友だものね。いいよ」
『ありがとう!サテンで待合せしましょ』
分かったと言い電話を切り身支度を始めた。
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ガタンガタンと揺れる車内。
大規模停電から一週間が経ち白咲町の停電と電波障害も殆んど復興し、町のインフラも戻りつつある。
正常に運行が再会されるようになった電車で2人の男女が乗っていた。
「奴の復讐もそろそろ終わりだな」
ふぅ、と煙草の煙りを吐きながら、白咲高3年3組の生徒常磐蓮は同じく3年3組の……塚本美穂にしゃべりかける。
「電車内で吸うのをやめなさい……あんたもその復讐の一人だと言うのに随分と余裕ね」
「ハッ、殺し合いには慣れてるからな。惚れた女なら尚更だ。勝とうが負けようが後悔しねぇよ」
「てっきり彩菜を手にした亮に勝負を挑むと思っていたのだけれど」
悪戯的な笑みを浮かべながら美穂が訪ねる。
「憎いこと言いやがる女だな。好きな女取られたからって暴れるほどガキじゃねぇよ」
殺してぇぐらいムカつくけどな。と付け加える。
蓮と亮は昔から幼馴染みだ。
小学生時代から同じ女子に恋をすることがあった……彩菜が恋愛の対象になったのもその延長線上だ。
いくら嫌いで憎かろうと亮は幼馴染み、好きな女と結ばれて喜ばないわけがない。
勿論、彩菜の復讐において戦闘になったのなら全力で迎え撃つただそれだけだ。
「しかし彩菜があれだけ強いならお前の俺を使った計画も必要なかったんじゃねぇのか?」
美穂の目を動かさず、蓮の問いに答える。
「私不思議に思うのよ。彩菜は前までクラスのいじめにやり返すことはせずただただ耐え忍ぶだけ。けどある日を境に彩菜は強大な力を使いクラスの連中に反逆の意志を示した」
どこぞの雷属性の飛竜の通り名に思わず笑う。
「じゃあなんだ、あの彩菜は別の世界からきたとでもいいたいのか?」
「かもしれない、でもそれを引き起こしたのは彩菜じゃなく彩菜の勾玉のモンスターかもね」
勾玉が超常現象を起こす、か。
有り得ない話ではない生命のエネルギー勾玉なら神秘的な現象や能力を持つあるいは宿したとしても全くおかしい話じゃない。
能力を宿す分には悪くはない。これは普通の適合者にも言えるが一般人と違い力を持ったからと言って虐げる理由にはならないのだ。
だが悲しいことに適合者にも強大な力を使い人間を虫ケラのように殺すものもいる。
……禁忌の適合者。奴等は自分達の目的のため他の適合者や一般人を殺害してる。
不良の蓮でも禁忌の適合者達には怒りを燃やしていた。
適合者ならまだしも関係無い奴等を巻き込むな。
ずっと架空や噂の臆測を出ないと思っていた禁忌を初めて認識したのは謎の発光現象とそれに伴う停電からだ。
これほど大規模な雷属性のエネルギーをどうやって発生したのか疑問に思った。天翔龍シャンティエン、雷極龍レビディオラ、幻獣キリン……これらの古龍の仕業とも考えたがあの発電の規模は古龍のそれを軽く上回り、更には停電をもたらした。
まさか……禁忌の祖龍だと言うのか。
この浮き出た答え以外に考えられない。
最近町で起きてる適合者殺しも禁忌の仕業と特定するのに時間はかからなかった。
「あいつはあいつだ。例え違う世界から来たとしても彩菜に変わりはねぇ。お前だってそう思ってるだろが」
「まぁね」
「今は彩菜よりも禁忌のクソ共からこの町救うことが先決だろ」
「……正面から戦いを挑んで勝てる相手だったらね、奴等は私達にそんな悠長な考えで勝たせてくれる相手じゃない」
「やはりお前はもう彩菜の元に戻れ。彩菜の仲間と一緒にいた方が生きる確率はあがる。俺と一緒にいるよりはな……危険は禁忌だけじゃねぇのを忘れたか?お前の読みが正しいなら3年3組の復讐を焚き付けた真犯人様は計画が悉く失敗しキレてるはずだ」
蓮の言う通り、禁忌の他にもう一人の彩菜の復讐相手にして……復讐の連鎖を作った帳本人、『山瀬裕也』の存在がある……2人は裕也が何故この惨劇を起こしたのか、その原因を既に調べあげていた。
1つ確実に言えるのは裕也は彩菜もとい……藤沢の血を憎んでると言うことだ。
裕也の過去の家の近所や小学校時代の教師や友人から情報を集め繋ぎ断片的に見えたのは……彼の心にすみつく深い闇。
確実に裕也は彩菜に報復に出る。
自分を壊し裏切り母を殺した藤沢の血を殺す為に。
「大勢で行動し近場で見守った方が確かに良いけど、あんたは大丈夫なの一人で?」
「大丈夫だ鏖魔がいるさ。砂漠の暴君ディアブロスの2つ名がな。鏖しとまではいかないが徹底的にこいつでどんな敵とも戦ってやる」
「相変わらずだこと……蓮あんたには色々と恩があるわ。だからせめて死なずに彩菜からの復讐を受けなさい」
思わず吹き出す。
「馬鹿か、俺がマゾみたいな言い方しやがって」
「現に戦闘は楽しみなのでしょう?」
「あぁ、勝敗の結果にこだわりなくな」
電車が止まり扉が開く。
話していたため駅に着くのがあっというまだった。
「それじゃあ戦闘好き不良さんの言うようにここで落ちるわ」
「そうしとけ、幼馴染み大好き女」
「……やっぱ感じ悪いわねあんた」
げっそりした表情を浮かべ、美穂は駅に降りた。
この不良との約束を守るために。
後ろを見ると閉まったドアの出口から笑い蓮は見送っていた。
大した度胸ね。
呆れながらも笑い足を進める……改札を通り駅から外に出た彼女の耳に普通では絶対有り得ない音が駅の方から響き悲鳴が聞こえた。
耳をつんざく金属が擦れる高い音、そして何かが続け様にぶつかり合う音……美穂はそれで何が起こったのか察した。
「蓮……」
だが美穂は振り返らない。
酷だが蓮よりも大切で守るべき者がいるのだ。
信じるしかないわ蓮の力を……。
「彩菜も町も守ってみせる……黒狐竜ミ・ルの力で。こんなところで死ぬんじゃないわよ蓮」
結晶を纏い美穂は一瞬で姿を消す。
原因不明の脱線を起こした電車は紅い焔が燃え広がり、駅や回りの建物にも引火せんとするばかりだ。
電車の中の乗客は皆死に……紅く煌めく翼を広げた適合者と衝撃で怪我を負った蓮だけが残る。
「グゥッ…!」
「聞こえたぞ、鏖(みなごろし)だと?。貴様は他の雑種よりかは強そうと見た。前菜程度にしかならんだろうが俺の終焉の糧にしてやろう」
ダメージで膝を着いた蓮に、紅い焔を纏った悪魔は嘲笑いながら一歩一歩近づいていった。