次の日、登校すると優人が女性関係で一真に痛め付けられたとの噂が流れていた。
「なんでも池田の他に彼女がいたことに一真はキレたんだとよ。」
「そら、キレるやろなぁ。優人も馬鹿なやっちゃ。」
噂というものは一度流れれば払拭は難しい。
まぁ、自業自得よ。
さて、次の試練の相手は……。
「ねぇ、結子。聞いた優人のこと?。」
「聞いたわ。最低な奴だね。」
彼処で窪田恵美と駄弁ってる、このクラスの学級委員長、滝嶋結子だ。
恵美と結子については、元々親友ということもあり、その行動パターンはだいたい把握してある。
……あの出来事以来、私は彼女達と関わりをもたないけれど。
一人目はなんなく達成したのだし、結子は来週挑むとしよう。
他のクラスメイトの情報も収集したいし。
やることが決まった私は、3組にいても暇なので伊里愛3姉妹がいる1組に遊びに行った。
連中からこうちょっかいかけられ無くなると逆に不気味ね。
藍の直撃を防いだのがよっぽど効いたらしい。
なんの妨害もなく1組にたどり着き、私は戸を開いた。
いた、瑠奈ちゃんの姿だ。
彩菜さん!。と瑠奈ちゃんは笑顔で私を招いてくれた。
「おはよ!。これから毎日会いにきていい?。3組があれだからさ。」
「構いませんよ。そうですわ。ついでに私の妹達とも仲良くしてあげてください。桜花、玲里、ちょっといらっしゃい。」
まるで母親だな。
ほーい、はい、と二人は返事して私達の近くにきた……う~ん。やっぱりそっくりね。全員同じ髪型だと絶対見わけがつかないパターンだ。
「彩菜ちゃんだよね。昨日の昇降口ぶりです。伊里愛玲里って言います!。宜しくお願いします!。」
元気よく玲里ちゃんが頭を下げた。
ところどころ、敬語が入ってるけど長女と違って全ての言葉を敬語で話したりはしないんだね。
初めての挨拶だから丁寧に話してくれたんだ。
「こちらこそ。宜しく玲里ちゃん。」
にこやかに私も紹介仕返した。
「よく出来ました玲里、次は貴女よ。桜花。」
長女や末っ子と違いギャルな見ための子だ。
「はーい。伊里愛桜花です!。好きなものは彼氏や友達、嫌いなものはなし。苦手なものは瑠奈姉貴!。宜しく彩菜ちゃん!。」
「よ、宜しくね。桜花ちゃん……。」
ラップの様に流れがよくなんて思いきった自己紹介……。
表情は笑ってるのに、目が笑ってない瑠奈ちゃんの姿を見て私は戦慄した。
「まぁ……。桜花ったら素直なことで、オホホホ……。」
「嘘つきは泥棒の始まり。って姉貴に習ったからね。ふふ。」
二人ともどこ見て話してんのよ。
これは……壮絶な姉妹喧嘩でも始まるの?。
「桜花……放課後暇かしら?。付き添って身振り手振りで正しい自己紹介の仕方を教えてさしあげますわ。」
「姉貴の実技受けたいけど、今日は用事あるからやめとく。また今度ね。」
「あら、それは残念。でも用事なら仕方ありません。今度のお楽しみにいたしましょう。絶対御教授しますから。」
だから全然目が笑ってないって……。
どうしよう。長女と次女が一触即発の雰囲気だし出直そうかな。
戸惑ってる私の肩を三女の玲里ちゃんが叩いた。
「心配しないで。お姉ちゃん達は昔からあんな感じなの。いつの間にか仲直りしてるから大丈夫だよ。」
「平常運転ってこと?。」
「うん。」
「いきなり険悪になったからびっくりしたよ……。」
独りっ子の私には姉妹がどんなものなのか分からない。
悪口を言いあっても最終的には仲直り出来るっていいな。
姉妹なら血が繋がってるし。
……親友と決裂した場合はそうはいかない。
親友と言えど赤の他人なんだ。
だから私は失った。結子、恵美、小学生の頃から、姉妹のように仲が良かった美穂も……。
試練を通じてまた彼女達と仲直り出来ないかしら……。
淡い期待だが、どうせ今居る場所は地獄。暗い考えよりは自分を鼓舞するような考えの方がマシだ。
「すみません。お苦しい姿を……。」
「迷惑かけてごめんね……彩菜ちゃん……。」
「いいよ。気にしてない。そういえば気になったんだけどこの学年だけで勾玉使いって何人いるのかな?。」
ラ・ロが言った他クラスメイトとの戦闘、戦えば戦うだけ適合者の私は強くなれる。
何人くらい居るのか確認しておきたいな。
ラ・ロの現実改変より前に勾玉にある程度の知識を持っていた瑠奈ちゃんなら分かるかも。
「改変前なら把握してますが、改変後は私も……良く分かりません。」
「そっか。」
記憶の繋りはあっても、現実の改変にはついていけないのか。
だから瑠奈ちゃんには新規の勾玉使いは当然分からない。
私の中で1つの危惧が浮かぶ……改変後の人間の思考や性格に変化は起きなくても、勾玉を手にしたことで行動には変化が起きてしまう。
藍を私めがけて投げたのもその一環だ。
いくら真央でも黒板の所から藍を私の所までぶん投げるなど普通じゃ無理だ。
並じゃない力を手に入れた以上、不可能及び我慢しなければならないことのハードルがグッと下がる。
この事実は勾玉使いになった全員つまり自分にも当てはまる。
……考えたくないけど、町を壊滅させるとか馬鹿みたいなことを思い浮かべてる奴はいないわよね。
……もしそんな奴が、強大なモンスターを宿した勾玉との適合者だったら……。
「彩菜さん……。顔色が優れませんよ。」
「ごめん、少し考えごと……。改変前で誰か確実な人は分かるかな。後で通話やメールで知らせてもらえる。もうちょっとでHR始まるから失礼するね。じゃ。」
「お姉ちゃん達が喧嘩して彩菜ちゃん早く帰っちゃった。」
「不可抗力だから、しゃーない、しゃーない。」
「ちょっと金火竜のサマーソルトを10回ぐらい連続で打ち込みたくなりましたわ。こら!、桜花!待ちなさい!。」
「せめて螺旋じゃなくて直線にしてー!。」
次女の悲痛な叫びが校内に響いた。