※この作品はR-18です。

凶禍刻みし復讐   作:獄華

53 / 67
デパートで対峙するヴァルハザクの適合者透子とジンオウガの適合者亮。
圧倒的な力で透子は亮を追い詰めるが……。


雷狼竜は冥底にて極み吼える

亮が目の前の異質な女に言い返した瞬間、舌打ちの後に自覚なしとかマジ万死だわ。と目を大きく見開き鬼と身間違えるかのような顔で呟いた。

否、生気が全く感じられぬその形相は死人と言ってもよいだろう。

普通、我々人間は他人や他の動物が怒ったさい少なからず脳からドーパミンやノルアドレナリンが摘出され興奮や恐怖を覚えるものだこの他者ないし生物が怒るといった際に興奮を覚えるか恐怖を感じるかはその人間がどちらの脳内物質が『多く』出たかにより決まる。

 

すなわち、ヴァルハザクの適合者、透子と対峙してる亮、祐樹、逆人、健太郎、黒夢はそれぞれどちらかの感情を覚えることとなる。

 

 

だが、この場にいる5人が感じるのは心臓を素手で握りしめられたような恐怖だけだった。

 

ムードメーカーの健太郎、お調子者の逆人でさえ静まり返るぐらいの冥府の底の見えない圧倒的な恐怖を……。

 

 

「ねぇさぁ、確かに貴方達は輝いてると思うよ、でも……その輝きが届かず暗い傘をさして生きてる人だっているのを知りなよ」

 

肺の息が空っぽになるんじゃないかと思うぐらい、腰を曲げ息を吐き出した。

 

透子と亮達意外は、悲鳴をあげ逃げまどってる者ばかりだ。

 

 

あれれ。

 

顔をあげた際に凄く楽しめそうな光景が写った、従業員が人々を誘導し自動ドアから避難させるのを行ってる場だ。

 

 

「自動ドアか、機械つまり電気……祖雷様の操るお力は雷属性、あっはははははははは!」

 

「なにをする気だ!」

 

突然笑い始めた透子に恐怖に気圧されながらも亮は強い口調で訪ねた。

「う~ん、時間が経つに連れ人が死ぬ……脱出(デス)ゲーム?」

 

パリッと音をたて彼女の頭から赤い稲妻が真上に放たれた。

デパートの電気系統は一瞬でショートし屋内全て停電となる。

 

「嘘やろ…あの女電気止めたっちゅうのか……」

 

「そうよ。これで一般人は逃げるのが難しくなったわね。自動ドアはそう簡単には壊れない。非常口まで誘導するしかないでしょうけどその間にも私のヴァルハザクの攻撃が蝕んで普通の人間なら即死だわ」

 

なんて女なのだろう。

人の逃げ道を妨げ適合者の影響で人間が死ぬのを何の抵抗もなく話す。

もう耐えられない。

 

「お前!それでも人間かよ!」

 

「君馬鹿?、私達は人間と一線を越す適合者でしょ」

激昂した亮に冷ややかに事実を伝えた。

 

「確かに俺達は人間じゃない。だが、人間と同じ感情を持ち人間と同じ理性や知能を持つ。人間と同じ心も命も…違うのはこの肉体に勾玉を宿したか、宿さないかだ!」

 

 

自身の服を皺が盛り上がるくらい掴んで……人間と適合者の違いが語られた。

適合者だからと上に見て人を見下すこいつは絶対許せない。

「勾玉の有無で適合者かそうでないかが決まるのだから適合者も本質的には人間と言いたいのね。じゃあ私も言い方を変えましょう、同じ人間でも勾玉を持って産まれた方が得だよね、だって……楽しみがいっぱいだもん」

 

ふっ、と頬笑むと周りの人々が次々と倒れた。

悪夢はそれだけでは終わらない。倒れた人達の皮膚は死体が長く放置されるのと同じように変色し長い時間をかけ腐敗という段階に進み淘汰されるという現象が30秒に凝縮されて行われた。

和気藹々としたデパートは骸骨が散乱する墓場に変わった……小さな骸は子供を表し、大きな骸は成人や中年を、腰の曲がった骸は老人を表すのが一目で分かる。

 

「ねぇ?私は生まれながら不公平な人間に等しく死を与えられるのよ」

亮の中で何かがキレた。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!命を弄びやがってぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

青い光が彼を包み、超帯電状態に移行する。

ジンオウガの勾玉には雷光虫も生息していてそこから電気をもらうジンオウガ単体では発電量が限られているのだ。

雷狼竜渾身の叩きつけを繰り出すも不可視の力に阻れ届かない。

 

「クッソ!」

 

空を殴った。

 

「ジンオウガか、そのモンスターじゃミラルーツの力を授かった私には絶対届かないよ」

「なに……ミラルーツの力を授かった?」

 

祖龍ミラルーツ……最初に聞いたのは都市伝説で、煌輝と町の異変の調査に乗り出した際詳しく話を聞いた禁忌の一角。

全ての龍の祖と言われ、敵対するものは赤い雷で焼き払うと言われたモンスターだ。

前彩菜達が交戦した政敏や杏奈みたいに特殊能力を持つってわけか……あの二人も祖龍の力を渡されたとか言ってたっけな。

「並の適合者の攻撃は防いじまうってか、クソッ!」

 

「はてさてリア充君、命を弄びやがって。とキレてたみたいだけど、貴方には私を止められる力もない。私の快楽に貴方のエゴを押し付けないでほしいわね」

 

長い髪を手で払い勝ち誇った顔が覗いた。

「この世の真理は弱肉強食。強者がルールを作り弱者を支配し弱者はただただ不条理を背負い生きてくしかない。私に貴方の正義を振りかざしたいなら私を打ち倒せばいい。無理でしょうけど」

 

「黙れ如何に力があろうがなかろうと人の命を奪うのは悪だ!」

「ハァー……分かってないわね。力はより大きな力には対抗できないのそれが殺す方に向かおうと生かす方に向かおうと」

 

話した瞬間、自分が祖雷の物になった時の記憶を思い出した…強力な電撃に加え、何事にも動じないあの姿、女子の自分でさえ魅了される美しい容姿、それが透子を虜にしたのだ。

 

「あ…ぁぁぁぁ!祖雷様ぁ……」

 

 

異常だ、と健太郎は改めて感じる。

身を奮わし、目を閉じながら自分の身体を抱きしめてる。

 

「なにを思い浮かべてるか知らないが、お前を倒すまでは絶対退かない!」

 

超帯電状態が蒼白い光りに変貌した。

怒り状態となったジンオウガの雷光虫弾を4つ放つ。

今度は攻撃が放たれたのに防御する様子も意思も感じられない。

みすみす当たる気か?手を抜いてるのか?。

敵の油断だろうが当たればいい。少しでも奴を倒せるタシになれば…。

 

チャンスと見た他の3人も氷撃、咆哮、電撃をうつ。

やはり避ける様子はない、そのまま直撃した。

死んだなどとは思わない…ただ体力が削げれば、今この場で起きてる地獄を作った元凶に致命傷を与え取り敢えず場を退いてくれればそれでいい生きてる人間がいるかも。

「……クッ」

 

だがまた別な場所でこの酷い殺戮が行われたらどうする……あるのは終わりの見えない冥底への誘いではないか?。

 

『あ~んたのそういう考えさ、本当ムカつく』

 

 

 

3人が亮!と叫んだ。

 

声が聞こえた時には、異臭を放つ手が目の前まで迫り、頭を経験したことのない圧力が襲った。

頭の中で何かが砕け飛び出てる……熱く、気持ち悪く、不快な感覚だ……不快感のあと視界が赤く染まって一際熱い感覚を味わった後、亮は意識をなくした。

 

 

 

 

「やだ、もう死んじゃったの?」

 

 

つまらなさそうに呟き、祖龍の赤雷で焼け焦げた亮をぶん投げた。

「あーあ、せっかく祖雷様がおめかししてくださったのに汚れちゃった早く帰ろう」

 

自身の身体は全く傷ついてないがヴァルハザクの外装がボロボロになった他人から見ると人間の皮でも被ってるように見えるだろう。

 

「逃すわけないやろ!ボケェ!」

 

行く手を阻むように放たれる轟竜のバインドウェーブ―――圧倒的な力の差があるのは分かったはずなのに。

 

 

うっざいなぁ……。

 

 

赤い稲妻を纏った瘴気が背中から発生し猛スピードでデパート全域に拡散した。

 

 

「がぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

「手や足が……崩れる」

 

 

豆腐のように容易く身体が壊れ始める。

 

 

直人君、今行くからね。

 

直人を失った黒夢は、瘴気の恐怖に覆われながら彼のことを思い浮かべ塵となっていった。

 

 

『冥底で塵と化して死ね』

 

 

 

 

 

コトリとも音が聞こえない。

みんな平等に死んだんだわ……これぞ公平、死こそが人の命は同じだと私に思いしらせる。

 

「人が大勢死んだことの何が平等だ……」

 

 

男の声と一定に流れる電気の音。

 

「あんたも私のヴァルハザクに負けじと中々な生命力ね」

 

さっきのジンオウガの適合者、亮が真っ白な電気を纏いこちらを睨み付けている。

何故だかあまり驚きはしない。

 

「ジンオウガは雷属性のエネルギーが集まれば超帯電状態と移行するけど、あなたのジンオウガは超帯電状態すら超え最早禁忌に匹敵する強さになってしまったのかしらこのエネルギー、祖雷様にも匹敵する」

 

 

「……うるせぇ、お前だけは許さない」

 

 

床から稲妻のエネルギーが輪を描き、宙にも電気のドームが創りだされた。

亮はその場を高く跳び、床を砕きながらジンオウガが祖龍の赤雷を浴びて生まれた極み吼えるジンオウガの電撃を透子へ食らわせる。

 

 

「つぅッ……!」

 

この雷はあのお方と同じ規模だ……私はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。

 

今度は姿を一瞬で消し、稲妻と共に叩きつけを顔面に受けた。

 

 

あぁ……私は多分死ぬ。

最後に祖雷様と会えて良かった。

 

―アォォォォォォォォォォォン!

咆哮と怒涛の電撃が場を鮮やかに染めた。

 

 

 

――終わりだ」

 

 

 

 

=====

 

 

 

「あれ、どこやここは天国か?。にしちゃ、やけにうるさいし見慣れた間抜け顔が俺を上から見てる」

 

「馬鹿ケン!寝ぼけてんじゃねぇよ。俺たちゃ無事だ」

 

「この俺を間抜け顔と言うお前の無礼さも生きてて安心したぜ」

 

 

3人は生きてる喜びを分かちあった。

 

 

「あいつら生き返ってそうそう言い合いとはな」

 

「あの、もしかして甦らせたのは貴方?」

 

さっき、透子の攻撃から救った少女だ。

 

「…まぁな。あいつのミラルーツの雷を受け脳もグチャグチャになって死んだと思ったら今度は赤い雷が自分の中を駆け巡って生き返った極み吼えるジンオウガとしてパワーアップしたんだがあの女にはすんでで逃げられたよ」

 

「そうなんだ」

 

 

驚いたのはサイコキネシスとモーフィングパワーも使えるようになっていたことと塵になった死者をも甦らせるほどのエネルギーを持ったことだ。

 

透子が塵にした死者は全部亮が甦らせた、直人も五体満足で復活した。

 

 

俺は、あいつを……。

 

 

ヴァルハザクの適合者は何処まで逃げたのだろう。

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ…」

 

 

極み吼えるジンオウガの雷とダメージで動きが鈍くなった身体を引き摺るように動かし透子は街を移動していた。

 

なんで、生かしたのか理解に苦しむわあの男。

 

 

咆哮から発生したドーム状の放電を辛うじて耐えたものの戦う力はないも同然、この場で死ぬと思ったのに亮は片手で掴み電気を纏いながら外に放った。

またお前が大規模な殺戮を犯しても止めてやるぞって意味?……あぁ気分が悪い牙竜種が祖龍と同等の力を持つなんて。

「後悔させてやるわ」

 

後悔するのは貴方よ透子。

 

「そ、祖雷様!」

 

特殊能力の念写を用いて祖雷が直接語りかけてきた。

 

 

古龍のうえに私の力を受け取ってあんな失態を起こすとはおまけにそんなにボロボロになって……駄目な子ね。

 

「え…あ、祖雷様……」

 

自分の細胞が1つ1つ分裂してくような感覚が走りだす。

「あ、熱い!やめてください祖雷様!」

 

 

燃え始める自分の肉体、モーフィングパワーによる原子操作で体内の皮膚を分解する過程に発火しているのだ。

体内から発火するが別に火属性のわけではない。

 

 

 

 

「祖雷様ぁ……祖雷様ぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

敬愛する者の名を叫び透子は分解され無となった。

しかし今までの彼女の所業を考えれば……こうなったのは当然の報いなのかもしれない。

 

 

 

未知(unknown)の第8形態に到達したラ・ロ(unknown)と覚醒した極み吼えるジンオウガか、派手なショーになりそうね。

黒邪や焔紅と違って戦うより私は見て楽しむタイプだから。

……壮絶な死闘をね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。