自宅に来た真莉と裕也への飲み物と茶菓子を準備してる時インターホンが鳴る。
誰なのか彩菜が確認しに行くと玄関の前には残り最後の試練の相手……常盤蓮が立っていた。
帝征龍グァンゾルムの適合者の謝罪を受け続けながら3人は藤沢家についた。
彩菜も裕也ももう謝らなくていいと何回も言ったが彼女は頭を下げた……これまでの憎しみに染まった軋を一生懸命取り除くために頭を下げるそんな気がした。
二人はカップルなんて言う生半可な関係じゃないと釈明しその誤解を解く説明の際裕也の口からどうしてこの憎悪の復讐劇が行われたか全て語られた。
……俺がこの復讐劇の元凶だ、真莉に彩菜が藤沢の娘と教えみんなの憎悪を煽るよう仕向けた。
真実を聞いて真莉は暫く唖然としていた、彩菜への復讐が裕也の手の平で行われてた事実に納得出来ないようだ。
「そう……裕也が、仕組んだのね」
上手くいってた復讐劇は他人が敷いたレールをただただ走るだけのものだったんだ。
そのレールも彩菜が強くなり走れなくなった……自分は将棋やチェスの駒に過ぎない事実が深く心に刻まれる。
同時に彼への怒りも沸いた。
でも忘れちゃいけない、仕組まれたとは言え、駒だったとは言え、真莉もまた彩菜いじめの加害者であることを。
どんなに言い繕うが過去は変えられない
事実が気になり真莉は彩菜に聞いた、裕也を許したのかと。
彼女の答えは首を縦に振るものだった、憎悪に身を任せるのは簡単だがこの復讐はどこかで止めなきゃ連鎖してしまうから。だから許したのだという。
ただし……この町に危害を及ぼす者や無闇に人を殺そうとする者や話が通じない場合にはこの限りではない。
全員が全員ではないがそうなれば結局、最後の手段としては力で優劣を決めるしかないのだ。
彩菜は大人だ、自分と違い割り切れる。
当の被害者が許したのに加害者である真莉が『加害者』を恨んでも何にも進展せず悪戯に禍根を残すのみ。
だから真莉は裕也が復讐を仕組んだことは忘れて水に流し彩菜が気にしないなら私も気にしないと言った。
裕也は涙声ですまないと謝った……これで充分だ、裕也を恨む筋はない。
それに真莉にとっては裕也以上に二人の父の総一朗の方が憎悪を向けるべき対象である。
家庭を壊し大好きな父親を殺した帳本人は彼だ。
「本当にごめんなさい!カップルとか言っちゃって……」
「家でまで謝らなくていいよ」
笑いながら、彩菜は二人に出す飲み物と茶菓子を取りに行った。
あいにく母親が不在だったため自分で用意するしかない。
正直あまりやったことがないのでめんどい。
「ジュースはなっちゃんでいいか、茶菓子は……」
茶菓子がなかなか見あたらない。
盆には既にコップ3つにジュースをついであるからあとは菓子を添えればいいだけだ。
こっちの戸棚かしら?あ、あった。あった。
サラダせん餅の袋を発見し、手に取った。
「あれ、なにかしら?」
取った袋の下に写真が置いてあった、年代は今より約20年前だろうか写っていた人物は顔立ちが整った男性と美人な女性の二人。
この若い男の人、お父さんだ……面影があるもの。
ではこちらの女性は誰なのか、考えても分からないが……直感的に自分と似た雰囲気を感じた。
……血の繋がりでもあるのかしら、私とこの女性の間に。あ、そうだ。自分のお父さんの若い頃の写真を見れば裕也も嬉しがるかも。
特に勘繰りもせず、盆にジュースとサラダせん餅と写真を乗っけた彩菜は部屋へ戻ろうとしたが、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴ったため盆を置きざるを得なかった。
タイミングが悪い客ね。
ムッとしながら、玄関に行き、はい。藤沢ですが?と声を出した。
「彩菜か……俺だ」
ドアの向こうから聞こえたのは聞きおぼえのある声。
「……蓮?」
突然の来訪者の正体は、あと一人だけとなった試練の相手……彩菜を犯すよう一真と大輔に命令し不良のグループのリーダー常盤蓮だった……自然と対峙する彼女の表情は険しくなる。
……この男は、何をしに家に来たのだ?。
「その話本当なの!?」
「あぁ」
なかなか戻らない友達を待ってる間二人は、消えた真央と詩織について彩菜を付ける過程でその最後を見てしまった裕也から二人がどのように亡くなったか語られた。
「矢で射られて水になったですって……」
「あぁ、遠目からだけどね。だがあれは明らかに二人の身体が水に変わって溶けてたよ……その時さ偶然纏身してたから聴力が上昇してて矢を放った女の台詞も聞こえたんだ」
「なんて言ってたの?」
「愚かな自分を恥じ藻屑に帰れ、とか。母なる海に流れる資格はないとか言ってたな」
ピンと思いついた。
あのラギアクルス希少種の奴だ!。
先ほどの戦いの際も愚かねとか言ったり、初っぱなから弓を射られた間違いなくあいつだ。
「そいつは私にもいきなり弓を射ってきたのよ。あいつが真央と詩織を殺したのか!クソッ!」
「落ち着けよ。この様子だとその適合者は何らかの多大な力を持ってると考えるべきだ。この世の理が当てはまらない、な」
「実際持ってるのよ。あいつの勾玉はラギアクルス希少種。深海に住む種が陸であれほどの力を出せるわけがない。私も不思議に思ったことだわ……でも雲見砦で戦いの時彩菜のある台詞で私も納得したの、禁忌の力を持っているって言葉にね」
「禁忌か……ラギア希少種に力を与えるだけに留まらずそのモンスターの生態の上での弱点の克服や新たな技や術を増やす……正しく化け物、モンスターだ」
そうモンスター……モンスターを越えたモンスター、常識って概念が通用しない生物。
無惨にも二人を殺したラギア希少種の適合者は、その片鱗を渡された。
心情としてすぐ仇を討ちたい、あの女が水で溶かしたならこちらは火で灰にしてやりたい!。
……この憎悪は止める必要ないわよね。あんな狂って人を見下す女は潰さなきゃ。
仲間の為にも……町や住人達を脅かす存在の観点からも。
しかし力量差はあまりにもかけ離れている。
「悔しいけど私単体じゃあいつに勝てない!一人で突っ走りたくても出来ないのよ……誰かと力を会わせなきゃね」
「ふっ、はははははは!」
裕也が笑った。
「……なんかおかしいこと言った?」
「いや、真莉も変わったなって」
復讐の道を歩んでたらこんな場面にでくわなさかっただろう。
憎悪も連鎖するが、人を思う気持ちもまた連鎖する……憎悪や怒りに身を預けるのは簡単だがそれだとマイナスになってしまう。
人を思いやるのは難しく自分の本心を隠さなきゃならない時も出てくる。
でもその思いが繋がれば……きっと心から打ち解けられる仲間になれるんだ。
これから進むべき道は、もしかすれば憎悪の道より険しいのかもしれない。
だけどそれでもこの仲間達と確実に絆や更なる仲間を増やしたい。
妹が全部彼に気づかせてくれたことだ。
「おまたせー」
噂がすればなにとやらか。
彼女が盆に飲み物や茶菓子をのせ戻ってきた。
盆にはジュースが4つ、1つ多い。
「私達3人よ、誰かのおかわりぶん?」
「んなわけねぇだろ。俺のぶんだ」
ドスが聞いた声、彩菜の真後ろからその声を発した人物は眺めるように顔を向ける。
3年3組の不良のリーダー常盤蓮が、威圧を放ちながら立っていた。
「なんで蓮がいるの!?」
「蓮……」
驚く真莉と対称的に裕也は静かに彼の名を呟く。
「よう、裕也。お前の計画が頓挫しちまったのに元気そうなツラで安心したぜ」
服から箱とライターを取り出し煙草に火をつけながら嫌味ったらしく言った。
「……やっぱり気づいてたんだね。君と美穂は」
「美穂っ!蓮と美穂が関わってたの!?」
突然出てきた幼馴染の名に驚愕を禁じ得ない彩菜……二人は自分がいじめられてる裏で何をしていたんだ?。
更にはさっき記憶で読んだ裕也の計画も知ってる素振りだ。
「俺が彩菜の家に来た理由は彩菜への詫びと俺と美穂がいじめの裏で何してたか言いにきたんだよ」
煙草をスーとはき、蓮は彩菜に親友がしていた行動を話し始める。