焔紅はその話の中で自らの過去を思い出す。
日が沈み、辺りは暗闇に包まれた。
白咲町から離れた同県内の廃病院に、禁忌の適合者、黒龍ミラボレアスの力を持つ黒邪……紅焔龍ミララースの力を持つ焔紅、祖龍ミラルーツの力を持つ祖雷が待ち合い室のボロボロの素材が剥がれた椅子に腰掛け歓談に浸っている。
話の内容は、世界を滅する一端としてその始まりの白咲町の崩壊をどのように行うか……である。
3人同時にコトを始めるのか、一人ずつやるのか、『破壊』の会談の内容は豊富だ。
「やはりあいつは腑抜けたか」
「焔紅の言ったことが信じられなかったけど本当に人間に感化されちゃったんだね。緋絃は」
本来ならこの場に居るべきのもう一人の禁忌の適合者、紅龍ミラバルカンの力を持つ緋絃は姿を現さなかった。
「たかだか一人の研究員の言葉に揺らぐとはな」
「ある意味で純粋だったのよあの子はね。それにあの子がこの終焉に加わらない分私達の破壊する楽しみ(範囲)が増えるんだから」
確かにな、と笑いながら言う。
ここに居る三人は多少の差はあれど破壊や戦いは楽しむべきものと認識しているタイプだ。
その点で禁忌の適合者として産まれたことに宗教的感銘と神と同義の価値観を感じる朱煉とは絶対相容れない。
朱煉の殺戮行動の理由は裁くため……黒邪達のような遊技感覚の殺戮は朱煉にとっては下劣な理由になるのだ。
……同じ殺害でも価値観が全く異なっている。
「腑抜けの奴はほっといて、煌輝と戦うのは避けられん確定事項……もしくは己を選ばれし者と自負する朱煉ともか、奴の振り翳す狂信的な理念とも戦わねばな。我が紅き終焉を達成するために」
「強い者と多く戦えるなら僕は嬉しいよ。禁忌以外にも僕らに張り合えそうな適合者も出てきたことだしね」
優しさって言葉から掛け離れた存在の黒邪の柔和的な笑みから優しさを感じるのは悪い冗談だ。
「あなた、普通に学園生活送れてたら女の子にモテモテだったかもね。勿体ないったらありゃしない…そんな可愛い顔して」
見上げるように祖雷は顔を近付けた。
「興味ないよ戦うことしか。それに普通の学園生活なんてしてたら何百人も死んだろうし」
「的を得た発言だな。常に破壊願望が強い俺達が学校に馴染めるのはとても無理だろう」
浮かび上がる過去の記憶……物心ついた時から焔紅は質素な家具だけがある狭い部屋で過ごしていた。
この暮らしになる前に適合者研究所に両親と共に訪れたのは覚えている。
食料はあらかじめインスタントがおいてあり足りなくなれば配達で配られるので食うのには困らない。
学校もどこかに通わされてるようでプリントや教材も届くからすらすらとこなしていたその他、生活用品も届く。
たまに研究所の職員が自分のことを見にきたりした……見ると言っても部屋の中には入らず、窓の外からこっちを眺めて数秒程で逃げるように帰る。
何故俺はこんな生活を送ってるのか?。
この紅き焔の龍と、関連があるのかもしれんな……。
疑問を抱きながら、狭い世界で中学生になり変わらず生活していた。
中学を卒業する時、4名ぐらいの研究員が叩かれることのなかったドアを叩き、焔紅に会うのを求めた。
少し疑りながらドアを開く。
「深谷焔紅君だね?」
50代ぐらいの研究員が話しかけてくる。
「そうだが」
「単刀直入に聞こう……君は自分の記憶を何処まで覚えている?」
自分の記憶……?。
適合者の研究所に両親と一緒に訪れたのが今自分が知りうる最古の記憶だ。
「両親とあんたらのところへ訪れたことぐらいだな」
「そうか……。私達も迷う。君に真実を話すか話さぬべきか……知りたいか?」
「あぁ、是非聞きたいな。俺がこの狭い世界で過ごすようになったわけをな」
「良いだろう。君ももう15歳だ……何があったのか話そう」
研究員の口から語られたのは……恐るべき事実だった。 焔紅が両親と施設に来た日、突然紅い焔を纏い場にいた両親含め40数人の研究員を一瞬で焼き払い、研究所は跡形もなく燃やされた。
暴虐無人の限りを尽くした後焔紅は気を失った。
その隙を見計らいこの部屋に収納されたのだと言う。
この部屋は頑丈に作られており、耐熱耐震耐水耐電とあらゆるものへ耐性をもつ。
強い衝撃にも耐え、元々暴走した適合者を収監するのに作られた。
用途に叶った理由で焔紅は入れられたわけだ。
「……そんなことがあったなんて」
「すまない…話していいか考えたが……」
「いや、事実を知れて良かった。礼を言わなくては、ありがとう」
「そうか、言って良かったよ。あ、そうそう春休みが終わり高校生になる前に今まで通りこの部屋で勉強を続けたいか、研究所に通う他の適合者みたいに高校に通うか聞くからその時まで考えてみてくれたまえ」
それじゃあなと言って研究員達は帰っていく。
愚かながら俺は、来る高校生活に夢を抱いていた。
しかし……運命は俺を破壊へと導いた。
春休みに入り変化は簡単に起きた。
先ずは自分が暴れて両親や研究員を焼き殺した記憶のフラッシュバックから始まった。
次に身体の熱さ、発汗、動悸……思考が、失われた記憶がどんどん戻り、あの頃へ感覚が回帰する。
ははははは!燃えて、灰燼と化せ!
いいぞ、ラースよ。お前の紅焔で紅き終焉を起こすのだ。
……全て思い出した。俺のすべきことを。
焔紅は今まで通りこの部屋で学習すると研究員に伝えた。
戻った記憶のことは言ってない。
もう少し身体が成長し力をもて余すことなく使えるようになるまで待つことを選ぶ。
普通の高校に行かないのは 一人の方が何かと融通が効いていいからだ。
終焉をもたらすにはまだ早い、役者も力も最高の舞台で挑めるようにしなければ。
そして彼は、高3の11月から動き始め、その動向を察知し黒邪も招かれるように白咲町に来たのだ。
「やはり学校へ行っていたら俺は危うく終焉を巻き起こす楽しみを溝に捨てていたな。行かなくて正解だった」
「ふーん、で、誰が一番最初にやる?」
「みんな同時に始めようよ。それで邪魔してくる適合者を倒して焦土化したらいよいよ僕らが戦うって感じでどうかな」
「それが無難かもね」
「あぁ、特に異議もない。俺もそれでいい」
「明日の早朝から始めよう、本当に楽しみだ」
「ふっ、くれぐれも足元を救われんようにな」
こうして白咲町をどのように破壊してくのか取り決められ破壊の元一致した3人は場を後にした。
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全ては朱煉様のために。
冥沙は彩菜の親友の二人の男女を襲っている。
手には剛力体のモーフィングパワーによって生み出された武器冥大剣エンファクルスを深々と握りしめて。
重い振りは例え攻撃を交わそうと地を容易に砕く勢いだ。
対峙するテスカトの適合者、結子と陽太はボロボロである。
大学の試験に向けて図書館での勉強返りを狙われた。
冥沙が禁忌の力を持ってるのが二人は攻撃を受けすぐわかった。
倒せるか挑んでみるも、全く歯が立たず殺される寸前だ。
「結子……せめてお前だけでも……逃げろ」
再生が追いつかない血だらけの身体で必死に掠れた声で彼女に逃げるよう促す。
「馬鹿……陽太を置いてけるわけないじゃない。それに私だってもう……」
電撃で右目を潰され、左腕を切断された。
このままダメージを受け続ければ再生出来ない。
万事休すだ……。
「あなた達が藤沢彩菜の親友だったのが災いしたわね。大丈夫よ。終わったら海に流してあげるから」
一際黒い電撃が放たれた。
終わりか……。
そう頭を過り、二人は目を閉じた。
「なに……?」
冥沙と二人の間に揺らめく、透明なカーテンのようなものがかかる。
「うぅぅぅ……なんだこの揺らめく壁は……」
「分からないけど、取り敢えずこの壁が防いでくれたようね」
新たな敵の可能性も考え二人は警戒しながら周囲を注意した。
電撃を放った冥沙が戸惑ってる様子を見るとこの壁は彼女から見ても未知らしい。
壁から一人の警察官が現れた。
「はぁ、この世界での俺のやるべきことがわかった気がするぜ。禁忌とその手下を倒すってな」
腰にはマゼンタのベルトが巻いてあり、何かの模様がびっしり刻まれていた。
「あなた…何者?」
気になり結子は思わずといた。
「こういうものさ、変身!」
カードを手にとりベルトへ差し込んだ。
『KAMENRAID、DECADE!』
ベルトから電子音声がなり、複数の影が重なって警察官は見たことのない姿に変わった。
「お前からは適合者の力も感じられないわ何者なの?」
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
眉を細めながら聞いてきた冥沙に答えると異形の戦士ディケイドは自身の腰にある得物ライドブッカーに手を伸ばした。