火花を散らし、ライドブッカーとエンファクルスの互いの刀身が打ち付けられる。
その明りは暗い夜道を照らすほどに。
外見的にもエンファクルスの方がズッシリとした感じのようにその重量に相違なくライドブッカーが押し負け刀身を払われた。
「いい武器持ってるじゃねぇか」
力負けしたにも関わらず手を擦りあわせパンパンと叩く。
ディケイドは余裕をいっさい崩さない。
「人間でも適合者でもない存在か。何故私達はこんな危険な男がこの世界に来たのに気づかなかったのかしら…?」
「ふっ、どこぞの世界の奴にも言われたっけな。お前はクウガでもリント(人間)でもないって…俺は俺の正体がよく分からない。だが色んな世界を旅し訪れた世界を壊すことだけは俺の目標だと堅く信じてるのさ」
諸葛、世界の破壊者を自負してるってわけか…あの方とは相容れそうにもない。
……正しく愚かな奴。海に返す価値もない、ここで無にしてやる。
新たなカードがディケイドライバーに差し込まれた。
マゼンダに彩られ18のライダーズクレストが刻まれたこのベルトこそがディケイドの能力源だ。
『ATTACKRAID SLASH!』
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
電子音声の読みとりと同時にディケイドは弾かれたライドブッカーを掲げ再度立ち向かう。
「お前の得物じゃ私の冥大剣は打ち破れない!このエンファクルスでズタズタになってから無に帰せ」
「どうだかな?試してみようぜ」
軽口を叩くディケイドのライドブッカーと冥沙のエンファクルスが再びぶつかりあう。
「あの人なに考えてるの!?さっきその剣を払われたばかりなのに!」
「なにかしらさ……あの仮面の男に勝機があるのかもしれない」
本当にゆっくりだが結子と陽太の身体は回復してきている。
禁忌の力でより圧倒的な破壊力を得たラギアクルス希少種の稲妻で潰された右目と切られた左腕も元の長さにまで生え戻り必死に再生が行われた。
いずれにせよ、結子と陽太のテオ・テスカトルとナナ・テスカトリでは歯が立たないので異形の戦士ディケイドに任せるしかない。
金属音が響き今度は剣が地面に弾かれた。
しかし弾かれたのは―――
「馬鹿な……」
冥沙のエンファクルスだ。
地に落ちた冥大剣は元の彼女が装飾していた勾玉に戻った。
剛力体の攻撃力と何にも動じない防御力を誇った状態のエンファクルスをいとも簡単に……。
この男やはりこの世界にいてはならない……。
「今ここで藻屑にしてあげる」
目の色が紫から緑色に変わり、射撃体へと変化した。
新たに手にした勾玉をモーフィングパワーで冥弓エルクエスタに作り変える。
キリキリ、と弦をひいてディケイドに狙いを定めた。
「お前のその攻撃、以前お前に弓を当てられた者達を俺はこの目で見ている。確か水になるんだったな」
「大当たりよ」
答えと同時に弓は放たれる。
ライドブッカーっでなんなく叩き落とした。
猪口才な。
「飛道具には飛道具ってね」
ライドブッカーをガンモードに変化させ、連射した。
弦をひく動作が掛かる弓と違って銃は引き金をひけば弾が出る。
一発の攻撃にかかる手間も手数も大違いだ。
「ぐっ……。最悪ね。射撃体時……感覚が倍増される。勿論痛覚も……」
究極の形態になれれば索敵や敵の位置を探す超感覚だけ扱え痛覚の倍増は遮断できるのに……。
もっと雷の……電力や雷属性のエネルギーがあれば……けど私が究極の形態を手にするというのは恐れながら朱煉様と同格になってしまうことよ。
それはダメだわ。
私を救ってくれるあの人は一人じゃなきゃ意味がないのだから。
「おい、膝までついて肺や腹からドクドク血が出て辛そうだな。今、楽にしてやる」
カードを手に冥沙に語るディケイド。
ディケイドライバーにカードを差し込み、必殺技のFINAL ATTACK RIDEを発動させようとしたが、無数の銃弾が彼の行動を阻害した。
「ぐぁ!?……これは俺がガンモードで撃った攻撃だ。忘れてたあいつはサイコキネシスを持ち超能力も扱えるんだったな。やな能力だ」
「その気になれば心臓や頭も潰せるわ。まぁ人間なら即死でしょうけど適合者であればそれぐらいじゃ死なないでしょうね。生身の貴方になら効いたかも知れないけどその姿じゃ無理そうだわ……結局最後は力ね」
彼女はスゥと息を吐きゆっくり目を閉じた。
彩菜戦の時みたいに真っ黒な稲妻が彼女の身体を駆け巡り目の色が金色に変わる。
「なんだ、真の力解放ってわけか?」
「これは唯一私の中であの御方に近い力を使える形態……この力であなたを倒すわ」
バチバチと音をたて、周囲にラギアクルス希少種特有の黒い稲妻が発生した。
手をディケイドに向け稲妻は意思を持った生物のように様々な軌道で彼に迫る。
「チィッ、攻撃されまくって反撃出来ないってのは嫌な展開だぜ」
すんででかわしながら悪態をついた。
しかしこのまま電撃の波状攻撃に曝されたままでは確実に体力がなくなるのはこちらだ。
変身が解けてしまえば、死ぬだろう。
「こいつで一気に決めるか」
『KAMENRIDE KABUTO!CHANG BEETLE』
ディケイドの姿が上書きされ赤いプロテクターに特徴的なカブトムシの角が生えた仮面ライダー……カブトに姿が変わった。
「あんたも形態変化を使うのね。今さらなにしようがこの冥海竜の雷からは逃げられないけどね」
驕りや発足でなく事実として彼女は述べた。
先程まで冥沙の周囲だけに留まっていた黒き雷は、上空やディケイドの背後にまで発生している。
逃げられる隙がないぐらいびっしりと……。
「どうかな」
1枚のカードが読み込まれた。
『ATTACK RIDE CLOCKUP』
時間の流れが変わり、ディケイドカブト以外の存在は生物、攻撃問わず全て時でも止まったようにピタリとその場で動きが止まる。
これは時間をとめたわけじゃなく、クロックアップを発動させたディケイドカブトが普通の時間の流れよりも能力で加速させ早い時間の流れに身をおいたため。
当然、加速された時間の中から見れば元いた時間は遅くなる。
だから動きが止まってるように見えるのだ。
「どんなに範囲が広く、とてつもない破壊力を持っても当たらなくちゃ意味がない。今度こそ終わりだ」
背後に近づき、カブトのFINAL ATTACK RIDE カードがなんの妨害もなくディケイドライバーに読み込まれる。
『FINALATTACKRIDE、 KA、KA、KA、KABUTO!』
「ハァァァッ!」
掛け声を発し、当てた対象を原子崩壊するライダーキックが放たれた。
蹴り終わり変身が解かれ、人間の姿に戻ると共にクロックアップも終了する。
「くぁ……うぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ライダーキックを受けた冥沙の身体で崩壊が起こりはじめ地面に踞る。
「ふっ……はははははは。適合者以外にもこんな強さを持つ者もいるのね」
驚くぐらい邪気が抜けたような穏やかな顔で笑った。
「放った俺が言うのもなんだがお前がこの程度で死ぬとは思えない。易々、自分の身体が朽ちるのを待つのか?」
超能力や驚異的な力を持つ彼女が命の危機になんの抵抗もしないのは不思議だ。
「私は元々死ぬ身よ。藤沢彩菜さんに殺されるかあなたに殺されるかの違いでしかない……君に殺されるのを選ぶわ。最後に名前を教えて私を倒した者の名を刻みながら死にたいの」
「怖いことを言いやがる。門矢士だ。仮面ライダーディケイドに変身する者として色んな世界を巡っている」
「そう……士君って言うんだ。良かった私を倒した人の名前が知れて、ありがとう……じゃあね士君」
彼女は息耐え灰になった。
「いきなり……後味が悪いな」
彼女のありがとうとはどんな意味だ。
殺してくれてありがとうなのか、生命を終わらせてくれてありがとうなのか……彼女が心酔していた朱煉から解放されたことに対してのありがとうなのか……死んでしまったので真意は知り得ない。
やめだ、自分がやるべきことを先にしなければ。
「お前ら大丈夫か?」
冥沙に襲われ、瀕死の重症を負った二人の身を案じた。
士と冥沙の激闘の内に傷は殆んど治ってるようだ。
「あんたのおかげで助かった。俺は炎帝陽太だ」
「私は滝嶋結子、本当にありがとう門矢士君」
「奴に喋ってた俺の名が聞こえたか、まぁいい。陽太、結子今からこの世界の4時間後へ行くこのままここで待ちぼうけしてたって禁忌の適合者共に対してなんとかなるわけじゃない。個々でやり合ったって無惨に終わるだけだ」
「そう……ね」
落ち込んで顔を下げる2人の前にさっきのオーロラが現れた。
「さぁ、これをくぐってくれ。くぐればこの世界の4時間後の世界につく。勝負はそれからだ」
半信半疑でオーロラへ入って行った士の後を追った。