……禁忌達が行動を起こすのが刻一刻と迫る中、適合者達が研究所へ集った。
警察署が焔紅によって燃やされた。
煌輝君は業務命令を出す上司のように淡々と話した。
本部から解放され熾凍龍の翼で空を駆け、私は白咲町に着いた。
煌輝君や研究所員の舞や刃の協力で完成した探知機が膨大なエネルギー波をキャッチしたのはこの12時間後の、午後11時の日付けが変わるまであと僅かの時間帯。
焔紅の出現は当然の成り行きだったのかも。
このエネルギー波は禁忌が活動……世に終焉をもたらす破壊を始めようとした時に感知されるもの。
煌輝君の話じゃ、残り数時間で奴等は行動を起こすらしいわ。
……あぁ、今この町は地獄以外の何ものでもない。
深夜の時間帯も相まって研究所員はこの恐るべき事態を前に一寸先の光も見えない暗闇に放り出された気分だ。
たった一人の自称お宝ハンターを除いて。
「おいおい君達、そんな絶望的な顔をしてもしょうがないじゃないか。それよりもっとコーヒーとお宝(適合者及び勾玉のデータ)を見せてくれたまえ」
優雅に口にコーヒーを運び味を嗜む彼。
ここは喫茶店じゃありません!と舞に叱られた。
この人何者なんだろう?。
私が帰った時には既に研究所にいて皆の制止を振り切り研究所のデータを見てたらしいけど。
必死に追い払おうと所員一丸となってかかっても彼は動じず禁忌の出現予測がされ有耶無耶になってしまったようだ。
名前は確か、海東大樹だっけ?。
「おや、どうかしたかい僕の顔になにかついてた?」
私の視線に大樹さんが気づいた。
「いえ…周りがこんな状態の時、よくあなたは我を失わずに寛げると思ってね」
「手厳しいね。しかし当然か、禁忌の適合者達を止められなければ君達の世界は終わるからね。この街から始った終焉が世界に広まるってわけだ」
ガァン!と机を叩く音が静寂した空間に広がる……叩いたのは舞か。
「いい加減にして!さっきっから貴方気に入らないわ。町の……この世の……危機的状況なのに、なんでそんな余裕綽々な態度をとれるの!……大樹さんあなただってこの町の住人でしょ!自分の住み処を壊され悔しくないの!?」
泡狐竜のように顔を真っ赤にさせながら舞は激しく怒り吠えた。
「舞の言う通りだ……あんたからはこの危機を危惧する様子が見受けられない!血が通ってないのか?」
刃……この子がキレるってことはそうとうこの大輝さんに腹を立ててるんだね。
セクションでも小さい時からこの子を見てきたけどここまで怒ったことは一回もない。
刃、私もこの男の振る舞いには鼻につくわ。
あなたの気持ちは痛いほど分かるけど手を出しては駄目よあなたが悪くなってしまうから。
「僕が邪魔なら警察に電話して追い払うようお巡りさんに言えばいいんだよ。あっ、この町の警察署は建物事焼かれちゃったんだっけ?」
「テメェッ!……」
怒りが押さえきれなくなった刃の真後ろから大きく延びたディノバルドの尾が出現した。
低い刃が掠れる音が鳴る。
「やめなさい刃。あなたがこんな屑の為にその身を汚すことはないわ。まっさらなあなたが溝浚いしなくていいのよ」
いつしか私は強烈な怒りを抱いていた。
あの大輔君を殺害した時に勝るとも劣らない殺意を。
未だにへらつく海東大樹の首を熾凍の属性を纏った手で強く掴む。
「あなたも死んでみる?意外と心地いいかもしれないよ」
激熱と冷気に掴まれ常人なら気を失い、適合者でも古龍未満なら喚きながら振り払うレベルの痛みがある。
諸葛脅しのつもりだけど少々度が過ぎたかしら?。
「ちょっとこれは痛いかな……!」
「うぅ!!」
瞬時に海東は氷崋の拘束から逃れ、手に銃を模した変身道具ディエンドライバーを握り彼女の腹に風穴を2つ空け真っ赤な血を垂らした。
「御返しさ」
「お前ら禁忌で手一杯なのに争いはやめろ!」
煌輝が怒号が飛んだ。
「氷崋姉さんは悪くないわ!。あの人が煽って来たんだもん!」
「そうだ……しまいにゃ姉さんを撃ちやがって!」
姉の仇だと二人は加熱する。
間違いなくこのままでは二人は海東に攻撃しだす。
あの子達がこの男と戦う必要はないのに……。
「ま…い……じん…あな…た達が……」
舞と刃を止めようと声をあげたいが、撃たれた傷が痛み声を出せなかった。
技を放つ体勢になり二人は自身のモンスターの力を放とうとする……が。
何も攻撃は出ず不発に終わった。
「うそ……」
「なんでだ……」
「お前ら人の話を聞け…禁忌に対応しなきゃいけないと言ってるのに遊んでる場合なのか?」
異様な雰囲気と殺気を感じ場にいる全員にゾクリと身震いが走った。
敵の禁忌にばかり気を取られていた私達は身近な禁忌を忘れていたのだ。
煌黒龍アルバトリオンの適合者煌輝は、私のディスより多い4つの属性を操るアルバトリオンの強烈な属性エネルギーを用いディノバルドの炎とタマミツネの泡を封じた為に二人は不発に終わった。
……この分だと、私も熾凍属性を封じられたかな。
案の定、属性を放とうとするも手に属性エネルギーは流れない。
「お前も頭を冷やせ氷崋。またお前があんなことをしでかせば……お前の背負う罪は増え、実の姉のように慕うこいつらが悲しむだけだ」
「流石、強き力を持つ者は話が分かっていいね。僕は君を気にいったよ。煌輝君」
「はぁ?お前アホか。寝言は寝てから言え。そもそも部外者のお前が馬鹿にしたようにこいつらを煽ったのが最大の原因だ、顔もみたくない出ていけ。出ていかないなら意識を奪い摘まみ出すだけだ」
誰も聞いたことのない冷たい声だった。
禁忌は、数々の特殊能力やサイコキネシス、モーフィングパワーを扱えるんだよね……彼なら容易いことか。
「俺もその男の意見に賛成だ」
オーロラのような壁がかかり、3人の人物が現れた。
「結子ちゃんに……陽太君。随分様変わりな出現の仕方だねそのオーロラみたいなのは……?」
突っ込みどころがいっぱいの出現だ。
「驚かせてごめんね…氷崋ちゃん。私達もよく分からなくてね。全て彼がやったの」
結子ちゃんは真ん中に立つ男性に目を向けた。
この人も適合者なのかな?。
それにさっきの素振りだと海東さんのことを知ってたりする?。
「久しぶりだな海東。この世界でもお前はコソ泥か」
「君を追って来たのさ士。今の僕は宝は二の次さ…それとコソ泥と言うのはやめたまえ」
突如現れた士なる人物にそこまで言ったところで深く海東大輝は息を吐いた。
「まぁこの世界のお宝、彩鳥の勾玉も手に入れたしこの場はひこうかな。楽しいショーも見れそうだしね。それじゃ諸君」
指で銃の形を型どり、撃つ真似をして海東は姿を消した。
「ふん盗っ人が」
「あんた、今の男の知り合いらしいな。陽太と結子をここに届けてくれたしあの男程悪い奴じゃなさそうだ」
「あいつは性格が悪い上にコソ泥だからな俺とは比べものにならないさ」
……なんかこの人も結構俺様キャラで面倒臭そうな気がするんだけど……。
「そうか、俺の名前は深色煌輝。あんたは?」
「真良士。この世界と別の世界から通りすがった者でお前達勾玉使いとは違う力を用いて戦う通りすがりの仮面ライダーさ」
「仮面ライダー?初めて聞く名前だ」
「私も」
「知らなくて当然だ。ここはライダーが居ない世界、何故俺がこの世界に来たか最初は分からなかったがお前達の町……いや、世界の危機に直面してるのを見て確信したよ。禁忌の適合者を倒すのがこの世界で俺がすべきことだと」
士君から話を聞いたところ彼は今までいくつもの世界を巡って来たらしい。
私達には分からないが、クウガからキバまでの九つの世界から始まり、ブラック、ブラックRX、アマゾン、ダブル、オーズ、フォーゼ、ウィザード、鎧武、ドライブ、ゴースト、エグゼイド、ビルド……等々、いっぱい世界を旅してきたようだ。
さしずめ異世界からの戦士ってわけだ。
それはあの海東大樹も一緒とのことかなり尊大不遜な態度だけど。
「よく分かった士の事情が。俺らとしても協力してもらえるのはありがたいよ」
「ふむ、しかし役者がまだ揃わないのは否めないな俺がこの世界に滞在する道中で興味を持った者達がな」
士君が話した瞬間、ドタドタドタと慌ただしい足音が私達が居る部屋に向けて響いた。
「ごめんなさい遅れた!」
「とうとう始まるんやなぁ、奴等との戦いが」
皆口々に謝罪や意気込みの言葉を出しながら、あの時集ったメンバーが……メールを送ったメンバーがほぼ全員来てくれたのだ。
よく見ると見かけない顔もある。
「氷崋ちゃ~ん、遅れてごめんね」
「うんうん。そんなことないよ、来てくれてありがとう」
あの恵美の姿もある。
「来たか」
士が興味を持った二人……刻竜unknownの適合者藤沢彩菜と雷狼竜ジンオウガの適合者北浦亮を見つめる。
度々オーロラカーテンで街の適合者同士の戦闘を覗いていたが、こいつらは適合者の中でも異質だな。
彩菜と亮は禁忌に準ずる者と戦い禁忌と同格の力を入手したのだ。
この事実は、煌輝も知っていた。
いつの間にか自分と同格のエネルギーが他の禁忌の5人から、7人に増えてるのが感じて。
直ぐ様念写を使いそれが彩菜と亮だと分かった。
おめでとうって言葉はまだお預けだな。
もう1回敵の数を頭でまとめよう。
エネルギー感知から見て活発的に破壊活動を行おうとしてるのは、黒邪、焔紅、祖雷の3人……潜在的に敵となるかも知れないのが朱煉、どう出るか分からないのが緋弦か。
3人は確定事項だ。
しかし楽観視はとても出来ない……朱煉とは話しあったものの、部下の身体に罰を与えたり、自分に賛同しないものは全て粛清の対象だ。
緋弦は研究員の言葉により改心したらしいが、彼だって元々破壊を楽しんで来た身だ。
表立っては3人……潜在的には5人か。
まぁ、悲観的ってわけじゃないが常に最悪は想像した方がいいだろう。
まして相手は禁忌なんだからな。
同族嫌悪ってわけじゃないけど奴等の強さは同じ俺が一番分かる。
信じさせてもらうぜ、戦いを通じ禁忌と同格になった彩菜と亮の力……世界を守る為に来てくれた皆の力をな。
「皆、作戦を話すから集ってくれ……作戦と言っても総力戦みたいなもんだけどな」
普段と変わらず話す煌輝のまわりに適合者達は集る。
不思議と誰も恐怖や閉塞感は感じず真剣に彼の話しに耳を通していた。
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「見てぇ、焔紅。月が凄く赤いわ。私の雷や貴方の焔みたい」
バスタオルを巻き血のように赤いワインを飲みながら祖雷は月を指差した。
あと一時間で朝が来る。
「あーあ、呪いたいわね私達の性質を。勾玉でもなんで禁忌なわけ?こんなのに当たらなければ普通に恋も出来てた筈なのに」
「人の戦いを喜ぶお前が弱音とはな。今日は槍でも降るのか?」
「ぁは、降るのは破滅の雷と隕石よ。人間や適合者が等しく死んでく……ね。だからさぁそれまでこっちを楽しみましょ。あっちの楽しみだけじゃ萎えちゃうから」
「ふっ、全く憎めない女だ」
赤い月光が照らす中、二人は交わった。