空中から地へと降りたった黒邪は彩菜達に話しかけた。
「彩菜の他にワイバーン達も僕の相手となるのか。つまらないな強くない者と戦っても一方的な虐殺になるだけだし」
嫌悪感を覚える笑みから漏れでた言葉は彩菜以外、ゴミとしか見てないと言ったようなものだ。
ゴミですって……。
「テメェ!。俺のレウス亜種をなめんな!」
「青電の反逆者の裁きを受けな!」
「ま、待つんだ!二人とも!」
理雄の制止を振り払って二人は黒邪の見下した発言に耐えかね攻撃行動に出てしまう。
風圧大を巻き起こしながら蒼王と逆人は、黒邪へ突っ込むが、リオレウス亜種と青電主ライゼクスの強豪モンスター2体の突進をくらうにも関わらず黒邪はその表情(笑み)を一切崩していない。
周囲の4人は勿論不気味に感じたのだが……。
その様子を一番不気味に感じたのは、突っ込んでる本人達だ。
突進のモーションに入り黒邪に近づくにつれて淡い期待ながらも、奴は発足だとか少しは顔をしかめたりして脅威に思うかもと少し楽観視していた。
この楽観的思考にはちゃんと理由がある。
逆人の場合は、以前禁忌の祖龍の力が与えられたヴァルハザクの適合者と戦い当時はなすすべなく骨にされた。
しかしその後亮のおかげで生き返ると、自分のライゼクスが青電主へと変わったことに気づく。
禁忌の古龍とて、2つ名持ちモンスターの攻撃なら少しは怯むだろうと考えてしまったのだ。
蒼王の場合は、まず禁忌と戦った経験が全くないこと。
古龍と戦った経験ならあるがその戦いで蒼王は完膚なきまでに叩き潰された。
しかしそこから彼なりに鍛え、前の自分よりは遥かに強くなったと感じていた。
彼らにとってこれは大きな変転となり自信の確立にも繋がった……だがこれは彼らから見てである。
「この程度の威力か弱いね」
目測でふと呟いた。
禁忌の適合者からは……そのような変転は取るに足らないちっぽけなことだ。
生れたての赤子が、1歳か2歳になるようなものだ。
幼い子供が大人に勝てるわけがない。
鈍く何かが砕けた音がした。
車で言うなら、逆人は100キロ、蒼王は80キロぐらいの速度を付けて突っ込んだ。
このスピードなら突っ込む方もかなり衝撃が走るが当てられた方は砕けて粉々になるだろう。
衝撃で全身の骨という骨が折れ最悪、腕や足がちぎれるかもしれない……それほどの大ダメージを生身に受けた筈なのに黒邪は傷ひとつ負わず、衣服すら汚れたり皺がついたりしていなかった。
周囲に骨が砕ける音を鳴らしたのは突っ込んだ蒼王と逆人の方だったのだ……。
「ぐっああああああああああっ!!」
「いてぇ……!ごふっ!ゲホゲホッ!」
咳き込んだあと、逆人の口から大量に血が漏れでた。
「蒼王君!逆人君!」
「弱いくせに攻撃するからだよ。戦いで楽しませることが出来ないなら……死ぬ様子で僕を楽しくさせてね」
「逆人君!ダーリン!」
友達と彼氏の危機に叫ぶ桜花。
黒邪の身体から赤黒い稲妻が延びて龍の顔を模して、二人を食おうとするところだ。
「助けなきゃ!」
「あぁ!」
「待って!玲里ちゃん!理雄君!助けに行ったらあなた達もあの龍属性のエネルギーに飲み込まれるわ!」
直感で彩菜にはあのエネルギーは同じ禁忌のモンスターか、禁忌と同格になった者しか防げないと分かった。
「でもこのままじゃ二人が……!」
「分かってる。今助けてくるから」
音もなく彩菜の姿が消え、一瞬で黒邪の前へと移動した。
手を伸ばせば掴めそうな距離に現れた彼女に黒邪はまるで恋人に久々に会った青年のように興奮を覚えた。
「前戯は終わりだね……はぁっ!」
龍を模したエネルギーが彩菜の両脇から襲いかかるが旋回して、エネルギーを打ち消した。
「あぁ……凄く楽しめそうだ……」
「今の回転はあんたの攻撃を打ち消すだけじゃない!。竜巻を作るのも目的よ」
ゴォっと音を立て彼女の上空で赤い竜巻が渦を巻く。
直ぐ様跳躍し竜巻に彩菜は身を沈める……赤い竜巻に濃縮された凶禍の力をその身に纏い、超滑空を繰り出した。
爆音に継ぐ爆音が鳴り響く。
銀翼の凶星バルファルクよりも速く五月蝿い。
くらうがいいわ。
髪と目が真っ赤に染まり、オーラが身体全体を包んだ状態で放たれたこの一撃に先程不動を保った黒邪も数百メートルもブッ飛ばされた。
ビルや建物等の障害物は容易く発泡スチロールのように砕きアスファルトではボールみたいに身体がバウンドした。
「はははは……はははは……はははははははは……楽しいなぁ……凄く」
凶禍の運動エネルギーにブッ飛ばされる中黒邪は愉悦に浸っていた。
小さい頃に戻った気分だ。
こんなに楽しいなんて……。
ワクワクが止まらないよ。
「え、えげつねぇ……」
「あの黒龍の適合者をよくもまぁ、本当に元が飛竜種とは考えられねぇな……青電主を悠に越えた強さだ」
傷も修復しかけ呆然と二人は様子を見ていた。
「そーくん!大丈夫!?」
桜花達が駆けつけてきた。
「あぁ……なんとかな。彩菜のおかげで死なずにすんだわ」
「彩菜ちゃんは本当に禁忌と同格となったんだな、とてつもない力だ。煌輝から彩菜ちゃんと亮が禁忌に匹敵する存在となったって聞いた時は耳を疑ったけど」
少し悲しげな目で理雄は、彼女の後ろ姿を見つめた。
「彩菜ちゃんはあの力を何も罪がない人々を奪うことには使わないよ。私達の仲間だもん!」
目を向ける表情に気づいた玲里は必死で理雄に思いを語る。
彩菜は……自分達は街を守る為に戦ってるんだ。
「ありがとう玲里ちゃん。そうだな今は頑張らないと……難しいことはあとだ」
「お礼なんて言わなくていいよ。大好きな理雄君も含めて皆を守りたい。それが私の願いだから……また元気になって良かった!」
「こーら、いちゃついてんなバカップル!。ダーリンと逆人君も復活したしあーちゃんの援護に行きましょっ……て何よ理雄君も玲里も二人してその顔は?」
何故か知らんが、玲里も理雄も白けた表情をしている。
「ちょっと飽きちゃった?」
分からないかな、この人。本当に分からないかな?。
頭痛が走った玲里は頭を手で抑えた。
原因が分かってるとは言え凄い痛みだ。
「そういうわけでは……ないかな。ね、玲里ちゃん」
「うん……」
「?……どしたの本当に?」
「いいから取り敢えず彩菜ちゃんの援護に行こっお姉ちゃん」
「うん。あの禁忌の適合者に絶対勝ってやろうじゃん!」
「行ったね」
「うん……ショックだよ。バカップルの御手本からバカップルとか言われるとか……はぁぁぁぁぁ……よりによって桜花お姉ちゃんなんかに……」
「まぁまぁ……確かに桜花に言われたのはアレだけど。この戦いで守り抜いてこっちもいっぱい言い返そう。バカップルの御手本の桜花には言われたくないってさ」
「ふふっ、そうだね」
あぁ、なんて可愛らしくて綺麗な顔なんだ。
絶対に俺はこの人を守らなくちゃ。
「玲里ちゃんちょっと動かないで……」
「どうしたの――
感じたことのない感触……唇に柔らかい物があたった。
大好きな優しい理雄の唇だと認識するのに数秒時間を有した……。
我に帰った玲里だが、口に舌を入れられたので互いに吸うように両肩に手を乗せ深いキスを味わう。
また数秒ほどでキスは終わり二人は顔を離した。
「ごめん、玲里ちゃんが可愛すぎて」
「うぅぅぅ~~……!!。フライングだよ理雄君……」
顔を赤くさせ、涙を流しながら玲里は小さく舌を出して理雄に言った。
「大丈夫ゴールは一緒だから……絶対生き残ろう玲里ちゃん」
「うん、理雄君」
固く手を繋ぎ桜花達に続き、彩菜の方へと二人は向かう。
和気藹々とした5人とは裏腹に彩菜は警戒をとくことなく黒邪の動きに注視していた。
「あいつがあの程度で終わるわけない。どう来るの……黒邪」
「こう来るよ」
「っ!……光線!?あぁぁぁっ!!」
青白い光線が彩菜の身体に直撃した。
「うそ…」
光線を受けた腹部の一部に空洞が出来ていた。
再生はするだろうが、食らい続け再生が追い付かなくなり死ぬのも考慮すべきである。
彼女はさらに黒邪の姿を見て驚いた。
先程と全然様子が違う、頭部、胸部、両腕、両足がさっき放たれた光線と同じ色で発光してるのだ。
彩菜は問いた。
「その姿があんたの最強の形態ってわけ?」
「まぁね。君にはこの形態で戦うのが一番よさそうだ。後ろのワイバーン達は僕の執事が相手するから僕達はどちらが先に死ぬかまで楽しもう」
空中に赤黒い龍属性の稲妻と龍属性を凝縮した球が大量に出現した。