「祖雷……」
紅き焔を纏う適合者は、戦いの最中ふとその名前を呼んだ。
彼女の強大な祖龍のエネルギーが消失した。
これが何を示すか……。
貴様の思い描いたようにコトが運んでしまったようだな。
終焉を起こす一時間前、俺は奴と身体を交えた……互いに禁忌の適合者同士だからか相性はかなりよくいつも気丈に振る舞う奴の淫らに乱れる姿が見れたものだ。
……正直言って俺は征服感と優越感を覚え、他の女と変わらず喘ぐ祖雷に惚れていた。
行為を終え、少しベットに横になると祖雷は興奮がまだ取れてない状態で俺にこう話してきた……私はもしかしたら極み吠えるジンオウガの適合者北浦亮に殺されるかもしれないと。
馬鹿げてると俺は鼻で笑った。
「お前が一介の適合者に?」
「ええ。彼はもう小犬じゃない……私達、禁忌をも食らいかねない飢えた狼そのものよ」
「恐暴竜みたいだな。だとしても雑種の犬が狼になろうと雑種だ。気にすることでもない、同格になったのと勝つのでは話が別だ」
俺達は産まれた時からこの力を身に宿しているのだ。
先天的に力と生きてきた者が後天的に力を手に入れた適合者が勝てると夢にも思わなかった。
だが、その夢のような絵空事は本当になり祖雷は北浦亮に殺されたようだ。
お前ほどの女が……俺や黒邪と戦う前に死にやがって……愛したお前をこの手で殺す喜びを俺から奪いたいらしいがそうはいかん。
死を予期したお前が俺に祖龍の力を分け与え教えたことだ、祖龍は元々全ての種の祖と言える存在であらゆる生命は祖龍から産まれた、と。
でも、お前一人の力でこの祖龍の数多の生命の源のエネルギーを扱うのは難しいと話した。
祖龍の本質とも喚べるその力に興味がわいた俺は聞いた。
「どうすればお前はその力を遺憾無く発揮出来るのだ?」
「そうねぇ……」
白く細い手が俺の胸をゆっくり詰る。
「もう一匹禁忌の力を合わせるとか」
パチパチと放電音が走り、俺の心臓に自分が使う紅焔とは別の熱さが走った。
祖雷が腕から俺に自分のエネルギーを流していた。
「これは何の真似だ?」
「あなたは禁忌で一番強くなりたいんでしょ。その手伝いも含めて貴方に私の力を渡したの」
頭がふらっと揺れた。
何なのだ、この光景は……。
俺の脳裏に、次々とモンスターの姿が浮かび上がる。
アカムトルム、ウカルムバス、ダラ・アマデュラ、オストガロア、ゼノ・ジーヴァ、ゾラ・マグダラオス、ゴグマジオス、アマツマガツチ、シャンティエン、ケオ・アルボル、ヤマツカミなどの強大なモンスター含めた全モンスターが脳裏に焼き付く。
「あら、頭なんて抑えて……辿り着いたのかしら祖龍の力の真髄に」
膨大な情報の量を処理仕切れず頭に激痛が走る俺を祖雷は後ろから抱きしめた。
「ふー……ふー……。人を殺す気か……はぁぁぁぁぁ……」
気だるさに負けそのまま肩を落とし大きく息を吐き出す。
……あぁだが、確実に俺の身体にこの祖龍の数多の生命を創世する力が身についたようだ。
痛みを被った甲斐はあったな。
しかしここで疑問が浮かぶ。
「俺の強化の手伝いなんてせず、お前自身が他の禁忌から力をもらえば良かったんじゃないのか?……あるいは奪うか」
ふっと彼女は吹き出す。
「面倒くさいのよ。人々の悲鳴や子供の泣き叫ぶ声も聞かない内に死にたくないし終焉前にリスクは避けたかったりで。やってみたい殺し方があるの……親の前で子供をちょっとずつ赤雷で弱めて殺すとか、考えただけでワクワクしちゃう」
「その前に雑種共と戦うだろうがな」
「そうね……多分そこで私は殺される」
「だからそれはお前の――
「まぁ、無様に足掻くつもりよ。死が迫り怯える者のように人間らしく死んでやる気だから」
完全に殺されると予測してるようだ。
たった40分前馬鹿げた話と笑った祖雷の言葉が真実になるとはな。
「大切な話よ。私が死んだあと貴方にお願いがあるの……全てのモンスターを司る力を用いてまた私を――
『創って。次に貴方の手によって甦る時私は貴方の紅焔の力を纏ってるだろうから。お願いね、私の大好きな焔紅』
「創ってやるさ。俺の手で愛するお前を塵1つ残らず殺す為に、灰にしたらまた甦らせて共に世界を赤雷と紅焔で終焉を巻き起こそうではないか」
愛する者を殺すのは一回で充分だ。
あとは俺と一緒に生きればいい。
蔑むような目で、焔紅は地に目を移した。
現在自身が生み出した禁忌の一角ミララースの幻影の地、熔岩島に煌輝と複数の適合者達が全員地面に倒れていた……。
「化け物か、俺のアルバで属性を封じたのに……全く弱まってないだと」
総攻撃にもびくともせず逆に圧倒的な力で煌輝達は全員倒された。
身を起こしながら煌輝は有り得ないと言った様子で焔紅を見た。
「貴様は弱くはない。俺が強くなりすぎただけだ。見ろ、愛するあいつが黄泉から戻ろうとしている。俺の愛する……深天祖雷がラースのエネルギーを新たに加えて復活するのだ」
月や星が清んで見えるぐらい雲がない熔岩島に赤雷が走った。
空にブラックホールのような穴が現れその中から真っ白な翼を生やした人が現れた。
「あーあ、甦ちゃった」
「そ、ら……あいつ亮と戦ってたんじゃ」
「奴は一回死んだんだ。だから俺が新たに甦らせ(創っ)た……モンスターの生命と適合者の創成を行えるようになった俺がな。適合者とモンスターをセットにし甦らせ(創)ることも出来るが、モンスターだけを創ることも出来るのだこんな風にな」
-ウォォォォォォォォォォォォォッ!
巨大な体躯を誇り赤黒く、口には二本の大牙を忍ばせた獄炎の覇者アカムトルムの咆哮が熔岩島に響きわたる。
「更にプレゼントだ」
-ゴァァァァァァァァァァァァッ!
-オォォォォォォォォォォォォッ!
-グォォォォォォォォォォォォッ!
ブラキディオス、宝纏ウラガンキン、グラビモスが出現した。
元々住んでたのじゃなくまた焔紅が新たに創ったのだ。
「死にかけのお前らの相手はあとはこいつらがやってくれる……俺達は北浦亮を潰しに行くぞ」
「えぇ、行きましょう。あなた」
二人は熔岩島から通常の世界へと帰った。
その身体に紅焔龍の能力の他に祖龍の能力も宿した影響か……幻影を作った本人が幻影の外に出ても幻影は消失しなくなった。
裏を返せば焔紅が幻影を解かない限り煌輝達は自力で脱出不可能だ。
灼熱の熔岩地帯に煌輝達は閉ざされたしまった……。
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「来てミ・ル」
-ウォァァァァァァァァァァ!
ティガレックスのように前足を添え咆哮を挙げた。
強靭な四肢を持った漆黒の分類不明のモンスターミ・ルが美穂により具現化された。
初めてお目にかけるモンスターだ。
第一印象はナルガクルガのような黒さとレックス骨格ということ。
しかし、種族は飛竜種じゃない。
「さぁ、彩菜。ミ・ルに乗って」
「うん」
ちょっと待って美穂が具現化し体内の勾玉のモンスターを外に出したってことは……。
「今の美穂は人と運動力や耐久力が変わらないってこと?」
「まぁ、そうね。でも防御の面に関しては策があるの。ミ・ル」
黒い前両足に綺麗な結晶が精製され、ミ・ルは結晶を美穂に向かって放つ。
モンスターで自殺でもする気!?と身構えたが、結晶は美穂を傷付けることなく彼女の身体を覆うようにほぼ全身に纏われた。
透明なので外から見ただけじゃ結晶が覆ってるのは殆んど分からないが。
「自前の防御手段はあるから心配しないで」
「結晶って便利ね……」
そうでもないわ、と笑いながら言う。
二人の身体に寒気と強大な恐怖が走った。
「見つけたよ、彩菜とミ・ルの適合者……今度は逃げられないようにしないとね」
『古龍の幻影』
場は現実の世界から旧文明が栄えたシュレイド城に姿を変える。
「小洒落てるわね。あんな恐ろしい龍の住み処がこんなお城だなんて」
「全くね。御丁寧に白骨化した人間の死体まで添えてあるわ」
「この前招待した客人だよ。君達も僕を楽しませられなきゃああなるだろうね」
「あんたを倒したら玲里ちゃん達を助ける。早く倒そう美穂」
「3年1組の子達なら多分大丈夫。蓮と真莉も一緒に連れてきたから」
あの二人も来てたんだ。
古龍グァンゾルムと2つ名の鏖魔ディアブロスか大体の敵なら倒してしまいそうな面々だ。
「仕切り直しだ、この古城でどちらかが死ぬまで派手に楽しく戦おう」
「望むところよ!」
「変幻の黒影の異名を特と味わうがいいわ……捕まって彩菜」
美穂と彩菜を背中に乗せたミ・ルは目にも止まらぬ速さで動き出した。
妖し化けるミ・ルに覚醒したその速度は、ナルガクルガやキリンなんて目じゃない。
その高速から凶禍の力が何発も黒邪を捉える。
「中々大きな攻撃だ……僕の方からは彼女らを捉えられない」
……ただしそれは普通の攻撃では、だ。
口元が激しく歪んだ。
「くぁっ……」
「美穂?」
「くっ、あいつ…サイコキネシスで私の内臓をズタボロにしてきた……」
真っ赤な鮮血が口から漏れた。
「み、美穂!」
弱々しい呻き声を挙げる。
血が足りてない証拠か身体は全身が青ざめていた。
今の自分に出来るのは能力を用い美穂を少し治癒することだ。
治癒に全力を使えばすぐ治せるが反対に奴に攻撃されたら反撃もままならない。
「彩菜いざとなったら纏身して傷を治癒出来るから大丈夫よ……あいつとの戦いに集中して」
だいぶ傷を軽く出来た。
「美穂に、私の大切な親友をよくもこんな目に許さない!」
黒邪に膨大な憎悪を抱く。
赤黒いもやが全体を覆った。
怒りだろうが、哀れみだろうが、歓喜だろうが、私は私の凶刻の力が進化するならどんな感情だって受けいれる。
「ははははっ、もう分かるよ。とんでもない破壊力を秘めた技を放つんだってね!。僕も全身全霊で迎えてあげるよ」
赤黒い稲妻が身体を覆い宙には無数の赤い球が浮かんだ。
「彩菜……」
「ここで待ってて美穂、ミ・ルあなたも美穂を守ってね」
コクりと頷いた。
「ラ・ロ。越えようこの憎悪と破壊を振り撒く理不尽を」
「ハァァァァァァァァァァッ!」
赤黒い稲妻を纏い黒邪は龍属性のエネルギーを振るってくる。
だがその動きはすぐ止まった。
「ははは……なんだいこれは……身体が動かない」
止めてるのは……君しかいないだろうな彩菜。
乾いた笑いがうまれた。
これがもしかしたらあきらめの笑いなのかもしれないと自分の中で結論付けながら。
最後に黒邪は彩菜の手から放たれたunknown特有の青い熱線を食らって倒れた。
……これが禁忌や他のモンスターとは違う、異質の存在unknownの力か。
「楽しい戦いだったなぁ」
満足そうに呟き気を失った。