※この作品はR-18です。

凶禍刻みし復讐   作:獄華

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黒邪の戦闘不能に成功した彩菜……。
だが強大な焔紅には今の力でも勝てそうにないと判断した彼女は、ラ・ロにある願いをする。


成就した願い

倒れてまで癪に触る男だわ。

彩菜は憤慨した。

さっきのように暴れられては困るので彼女は黒邪から勾玉を抜きとっていた。

禁忌等と言うからさぞかし勾玉も立派な物だと思ったがこれらは並の適合者と変わらないようだ。

しかしどういう神経をしてるのか、攻撃を受けて満足そうに気を失うのは中々常人には真似できない。

あらゆる意味でこの男が規格外というのを現してるようだ。

 

「やっぱり黒邪を殺した方がいいかな……世を終焉に導こうとしたこの男が生きてちゃ駄目な気がする」

 

「そうね……。でもその男は適合者としては死んだも同然でしょうね。自分の力の源を彩菜が握ってるんだから」

 

 

美穂の言う通りだった、自分の右手の中に握られるこの勾玉がこの男の思い描く破壊を実現させる力の源だ。

これがなくちゃ人間と何も変わらない。

 

「無粋な言い方かもしれないけど、その男にはもう殺す価値は殆んど無いわ。黒龍の力を失ってただの人間になったんだからね。それに私は……彩菜に人殺しになってほしくない」

 

「ズルいなぁ、美穂は」

 

いじめを受けてた時も裏で奔走し、いざ親友がこうして人の道を踏みはずそうものなら表立って全力で人の道に踏み留ませる。

まるでもう一人のお母さんだわ。

 

母親になったら普段は優しいが子供が悪さをした時は冷たく間違いを正すタイプだ。

そんなミステリアスな母親に育てられるのも面白そうだ。

「言ってなかったけど私も人の心が読めるの、彩菜……思考ただ漏れよ」

 

ポーカーフェイスがジーと此方を見つめる。

……馬鹿なことを幼馴染みで考えるのはここまでにしておこう。

 

「マジごめん……。美穂の言う通りこんな奴の為に殺人犯になるなんて馬鹿馬鹿しいね。適合者だったらまだしも今のこいつは人間なんだから」

 

「そうよ彩菜。今優先すべきは人を塵の如く焼き払うあの赤雷と紅焔を発生してる者達を止めることよ」

 

「……えぇ」

 

 

古龍の幻影空間のシュレイド城から、現世界に帰還すると目の前は地獄絵図と化していた。

空だけじゃなく地やビルを這う赤い稲妻と町全体に陽炎を巻き起こし寝てる人々を食らっていく紅い焔。

適合者達も必死で抵抗するも一方的に屠られてくのを二人は目の当たりにした。

他世界から来た彼も、禁忌の龍の前では呆気なく焼かれる一人に過ぎないみたいだ。

「このままじゃ人が大勢死んでしまう……この地獄を終わらせなきゃ」

 

「随分と大口を叩きますね。藤沢彩菜。それともその禁忌に立ち向かう愚かともとれる意志があなたが刻龍unknownの適合者である証左なのでしょうが」

 

怪しく語りながら後ろから不意に中性的な外見の少年が現れた。

異質と共に何処か神々しさも放っていた。

並の適合者ではない……この男から感じる力は黒邪と変わらぬ強いエネルギーを張り巡らせている。

 

「あんたも、禁忌の適合者なの……?」

 

「えぇ。深海朱煉、偉大なる破壊と創造をもたらす煉黒龍グラン・ミラオスの適合者です。お分かりでしょうが……私は冥沙に強き適合者の殲滅を命じていました。藤沢彩菜。正にあなたは私の懸念の種だった」

 

冥沙との戦闘が甦り怒りが沸いた。

 

「……あんたがふざけた命令であのラギア希少種の適合者を動かし真莉の親友の詩織と真央の命を奪ったのね」

 

「その二人からいじめを受けたあなたが二人を思い怒るのですね。つくづく人間とは分からないものです。自身に非礼を働いた者を許すというのが私には到底理解できない……あれほど凄惨ないじめを受けて。私があなたの立場であればその場で殺害していたでしょう」

 

勝手なことを語るな。

ある意味で全員が悲劇に踊らされた被害者だ、そりゃあの二人を殺して気分が晴れたり悪夢が終わるんならいいだろう。

でも終わらない……この悪夢は広がった。

悪い夢に最悪なことをして納まるものか。

だから……彩菜は許しもうクラスメイトを恨まないと決めたのだ。

 

 

「あんたは何をしにきた?。人が死に行く様を笑いに来たの?」

「逆です。止めにきたんですよ……この醜い終焉を。人間は憎いがこんなやり方粗末で下品だ。今はあなたと利害が一致していませんか?」

 

遠回しにこの場は組めと朱煉は言ってるらしい。

 

「利害は一致してるわね」

 

「では……」

 

「勘違いしないで、考えまで一致してるとは言ってない」

 

 

「グゥゥッ……!!」

 

 

龍属性を彷彿させる赤黒いエネルギーが纏われた拳が彼の腹に刺さり吐血しながら音速を越えた速度でブッ飛んだ。

 

 

その光景を見て、美穂に場外ホームランおめでとうと言われた。

嬉しくないと即答する。

 

「美穂ここで黒邪を見張ってて。私が奴等と決着をつけるから」

「死ぬ気?……あなた一人で、あの力は禁忌の更に上を行ってるのよ。勝てるとは思えない……」

 

「大丈夫。絶対勝てる。ラ・ロ!」

 

主の呼び声に刻竜unknownはすぐ返事をする。

破滅と終焉が町が覆うとするばかりなのにこの活気、とっておきを使う気らしい。

-なんだ?。

 

「試練を達成した暁に私の願いを叶えて」

 

-何なりと申せ。

 

 

「私に―――

 

 

あそこで暴虐を尽くす禁忌を上回る力を与えて。私が一番強くなって街の人達も仲間の適合者も悲劇から解放したいの!」

-承知した。我が主。

 

 

一度きりの願いをもしかしたら自分は馬鹿な願いにしたのではないかと自覚はあった。

自分だけ別な世界に行くとか皆仲良しな世界を作るとか他にも候補はある。

しかしそれではこの世界の住人は見殺しだ。

世界が変わる際に今いる世界の住人の脅威が終わる保障は何処にもない。

 

 

ならば……自分が最強になり、世界に留まり平定するだけだ。

 

 

ラ・ロと対称的な眩い光が彩菜を包んだ。

光の中で能力が格段に強化されていく……。

全智全能……森羅万象……全てを越え全てを統べる。

光から解放された時、心では凄く怒っているのに異様に落ち着いていた。

 

「彩菜……」

 

「行ってくるね」

 

酷く懐かしさを覚えた。まるで小学生の頃先生や友人に呼ばれ離れるのを美穂に告げる言い方だ。

 

「行ってらっしゃい」

 

そんな友人に美穂も笑顔で見送った。

 

 

大丈夫、彩菜なら。

……私信じて待ってるからね。

 

 

 

-----

 

 

「い、た…い」

 

殺せよ……早く……。

 

生気のこもらぬ力が抜けた目は厳しい現実から逃れるかのように虚空を眺めていた。

俺は確かに深天祖雷を殺したのに……と何度も心の中で繰り返す。

じゃあ、今自分の腹を貫く程殴ってるのは?、健太郎や佑樹、仲間達をモーフィングパワーで全員灰にしたのは?。赤い雷を周りに落としているのは?。

 

 

「どうしたの亮君?心が壊れちゃった。フフフ、でもまだまだ終わらせてあげないわよ。……あなたには殺された恨みがあるんだから」

 

なんで生き返ってるんだよ……。

 

笑い声を聞いたあとまた自分の身体に激痛が走る。

「あぁ、凄く楽しい。愛する彼氏と一緒に行動してるとなれば尚更よ」

 

上空では焔紅が次々とモンスターを創って暴れさせていた。

ドラギュロス、エスピナス亜種、レビディオラ、デュラガウア……他にも創られたモンスターが街や人を襲う。

「上空の彼がね私を甦らせてくれたのよ。そしてあなた達を全員殺したら私はもう一回彼に殺してもらうの!愛する人の手で……それで私達の愛は確実になるの、ぁは、ハネムーンがてら世界を壊しながら旅行も悪くないわね」

 

気づいていたがこの女は狂ってる。

この女がもう一人の禁忌の適合者に愛してるからか狂気が前より増したようだ……。

 

そんなこともうどうでもいいか……どう足掻いても俺はこの死から逃れられそうにない。

彩菜……ごめん。

 

祖龍の赤雷を纏いながら蹴りが繰り出されるのを見て覚悟を決め、目を閉じた。

 

「えっ、はぁ……?」

 

 

自分に蹴りを放つ女の困惑する声が聞こえた。

「ちょっと、なによこれ……」

 

身体がピタリと止まっていた。

どうやら深天祖雷の身体が動かなくなったらしい。

 

 

なにが起きて……。

 

 

「亮に手を出すなぁぁぁぁぁ!」

 

 

聞こえた自分の彼女、彩菜の咆哮。

上空から高速で降下してきて赤い残像をひきながら深天祖雷の頭に踵落としを決めた。

 

禁忌の耐久力と治癒力を大幅に上回る衝撃で脳を揺さぶられ祖雷は気を失った。

 

「亮!しっかりして!大変こんな怪我してる!!」

 

「あ、やな……ありがとうな。助けてくれて……」

 

連撃を受けてダメージにより再生しなかった自分の身体が再生を始めた。

彩菜が来なければ本当に自分は死んでいただろう。

「これで大丈夫よ」

 

「おぉぉっ」

 

手を翳しただけで亮の身体は完治した。

 

「前より能力強くなってるみたいだが……身体は大丈夫なのか?」

 

不安そうに亮は訪ねた。

 

「大丈夫。この強さは私が願った結果だから。あとはあいつだけね。と、その前に……」

 

祖雷の胸に手を突っこみ祖龍ミラルーツの勾玉を取り出した。

 

これで祖雷は無力化した、どうしても……おーちゃん達も気になるけど真莉と蓮がいれば大丈夫かな。

 

「成る程、桜花達はエスピナス希少種の適合者と戦ってるのか俺助太刀に行ってくるわ」

 

「ありがとう」

 

「よせって、礼を言うのはこっちさ。あのミララースの適合者を止められるのはお前だけだ。頼んだ!彩菜!」

 

「うん、任せて!」

 

 

太陽にも劣らない輝きを放つ翼を広げ、焔紅は街を焼きつくしながら悠々と飛行していた。

 

なので彩菜は彼を地べたに撃たれた鳥のごとく叩き落とした。

 

 

「ガハッ……!ふっ、その力は少々いや凄く反則だ。祖龍の力を宿した俺を上回るとは……」

圧倒的不利だとわかりながらも悪態を突ける、その厚かましい態度は是非見習いたいものだわ。

 

「黙りなさい。この力で殺戮を繰り返した者が。もう終わりよ」

 

「ぐっ!」

 

焔紅の動きを止め黒邪や祖雷にしたように紅焔龍ミララースの勾玉を引っこ抜いた。

 

「……これで終わりね。あとは私の能力で街を元に戻す。あんたらは……いない!」

 

 

勾玉を抜かれても暫くはモンスターの力が残る。

焔紅だけでなく祖雷の姿も見当たらない。

 

何処に行ったのあの二人は!?。

 

 

「奴の手で俺もお前も殺されてたまるものか、なぁ祖雷……」

 

 

能力が消えるまであと30秒。

勾玉を抜かれたあと能力をフルに使い祖雷をお姫様抱っこしながら海を下に望む高台に立っていた。

「最早俺達は他人に運命を委ねる弱い存在と化した。ならば……自分達の最後は自分達で決めたい」

 

20秒……10秒……能力が消えた。

 

「愛しているぞ祖雷」

 

 

祖雷を抱え焔紅は海に飛び込んだ。

その衝撃か祖雷はハッと目を覚ました。

そして……海中でありがとう、私も愛してると口を動かし二人はキスしながら冷たく暗い深海へと沈んでいった。

 

 

 

 

彩菜が二人が海に身を投げたのに気づいたのは既に二人が息絶えた後だ。

街を壊そうとした奴等が死んで喜ばしいはずなのに……何故か涙を流し心に穴が空いた感じがした。

 

焔紅の死により彼が創ったモンスターも消え、煌輝達も熔岩島から解放された。

 

 

 

 





あと2、3話程度で終わりです。
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