「では、今回の禁忌の適合者が巻き起こしたコトの騒乱は完全に納まったのだね?」
「あぁ」
勾玉に関する研究の本拠地……東京の研究所で歳老いた男性の研究者はとある適合者の報告を受けていた。
男性の手にはタブレットが握られている。
「ふむ、ただの1人でさえ甚大な被害をもたらす怪物のような存在が3人襲って来たのをみんな無力化するとはな。……流石は未知の黒き飛竜unknownと言ったところか」
タブレットにはラ・ロの力を纏いオーラと目が赤くなった彩菜の姿が写っていた。
「つうか、マジに反則だろ。紅焔龍の力に祖龍の力を宿した状態のアホ焔紅でさえぼろクズのようにいたぶられたんだぜ。あれで世界破壊なんてやられた暁にゃ……人間、適合者関係なく死ぬだけだ」
「おや君はうれしくないのか?。終末をもたらす紅龍の適合者として最強の敵と戦かえるのは」
にこやかにあからさまに嫌味を混ぜた言葉に、緋絃は勘弁しろよ。と首を振った。
「愚かながら俺は奴等の戦いを外から見て興奮し居ても立ってもいられなくなっちまった。だが破壊には動かなかった。俺はもう赤炎や破壊を人に振りまきたくなくなっちまったのさ……あいつに会ったのとその管理者の言葉を聞いてな」
世界を見せる……あの研究員の言葉が胸に刺さった。
壊したら世界は見せられない。
部屋にあるソファに、イビルジョーの適合者広美が安らかな顔でスヤスヤ眠っている。
「あれが君が持ち出したと噂のイビルジョーの適合者か。どうだね、配下にしたは良いがかなり食費が掛かるんじゃないか?」
やはり本部では情報を握っていた。
「まぁな……。甘いものに目がねぇんだあいつ。マジ財布が飛ぶわ」
「ははははは。とんだお仲間だな、はははは」
「じいさん、駄洒落のつもりか。金はあるさガキや中坊ン時の研究の謝礼とか一生使いきれねぇと思ってたところにイビルジョーだ……スカウト失敗だな」
「しかしその出会いが君を破壊から遠ざけた。儂はそれだけでも広美ちゃんと会ったのには意味があると思うぞ緋絃君」
「どうだかな」
思えばあれから自分は自分じゃなくなった気が……もしかしたらこっちが自分の本質なのかは分からないが自分が真莉の前で白骨にした人間達は全員甦らせ、禁忌の適合者と彩菜達が戦ってる際には祖龍のエネルギーが暴走し死にかけの銀火竜の適合者を救った。
広美に会う前だったら確実に殺していただろう。
「君はまだまだ18だ。まぁゆっくり学んでいきなさい人生について」
「んだよ達観した言い方しやがって、食えねぇジジイだ」
「お前さんが言うと怖いな。儂だって食われたくないわ。しかし本当に良かったunknownの適合者彩菜さんのおかげで街は外観も元通りに亡くなった方達も生き返ったのだからな!。残りの事後処理は儂ら研究者達の仕事だ。辛い戦いを経験したあの子達はこれから楽しく人生を生きてもらいたい」
「あんたがそう願わなくても奴等は楽しく生きるだろうな」
「何だかんだ笑えるというのは良いことじゃ」
禁忌の脅威が過ぎ去り、彩菜が元通りにした街で奴等は歓喜の声を挙げていた。
感極まり泣くものや過呼吸になる者もいて空から眺める分には面白かった。
笑いあえる仲間っていいもんだな……俺がもっと世界を見せればこいつも心から笑うのか?。
熟睡する彼女には綺麗な髪を指で擦った。
サラサラだ。
今動いたような……気のせいか。食費はかかりそうだが、人食わないだけマシだと思うか……つうか人生ってのはマジに分からねぇものだ。
今この瞬間にも地球では数多の生と死が繰り返されている。
生も死も誰しも平等に訪れるもの、適合者にも老いの概念はある。能力で永遠の若さを保つ事も可能だがそれが出来るのは限られたモンスターだけだ。
この唯一平等な与えられた運命をどう全うするかは各人の自由だ。
……各人のな。
「また来るわじいさん……イヤ、本部長」
「いつでもこい。今度来るときはお前さん達の子供でも見れるかのう、ほほほほ」
緋絃はずっこけ、寝ているように見えて実は起きてた広美は顔が赤くなった。
この報告を緋絃が東京本部にしたのは白咲町の戦いが終わった半日後である。
白咲町では研究所で適合者達による簡易的な勝利を祝った祝賀会が開かれた。
やはり勝ったのは嬉しく皆談笑に熱をあげていた。
あくまで勝った方はであるが……。
「負けてしまいましたね。黒邪様」
エスピナス希少種の適合者にして黒邪の世話役兼付き人の愛華は何故か誘われた敵の祝賀会で申し訳なさそうに黒邪に話しかけた。
「そうだね。ごめんね世話役の君にまで迷惑かけて」
「とんでもありません。私が腑甲斐無いばかりにあなた様に迷惑を……」
「う~ん……あの力は腑甲斐無いとかそんな次元じゃ片付かないと思うよ」
愛華の家は代々長きに渡り黒邪の基へ仕えていた。
彼女が幼い頃始めて黒邪にあった時、間違って黒邪君と呼んでしまい父に怒鳴られた。
父の活躍は小さい頃から見ていて一言凄いと子供ながらに彼女は感じる。
黒邪が能力を用いて殺した野性動物の後片付けをしたり、炎を放ちあわや大火事になるのを消防を呼ばず使用人達の消火ですませるなど並々ならぬ仕事ぶりだ。
そこから黒邪が両親を殺したり研究所に引きとられるなど紆余曲折あって愛華は体力が落ち引退した父の代わりに頑張ってるのだ。
しかしこの状況はそんな人生の中でも屈辱的だ。
気になり自分を戦闘不能に追い込んだ彩菜に聞いて見ることにした。
「藤沢彩菜さん。ちょっとよろしいですか?」
なにかしらと仲間との会話を止めこちらを見る。
「この宴私達が受ける義理が見当たらないので帰ってもいいかしら?」
「せっかく戦いが終わったからあなた達とも盛り上がりたかったんだけどな。あなた凄い強かったし」
感覚的に亮の極み吼えるジンオウガよりちょっと下ぐらいの強さだ。
「それはどうも。でも敗者をいじめなくてもいいでしょう。帰ります」
調子が狂う人だ。
黒邪様だって帰りたがってるだろう。
「え~、行くの……?」
あなたは遊園地に来た5歳児ですか!?。
「わがまま言ってはなりません。帰りますよ黒邪様」
纏身してないのでされるがままに愛華に引っ張られていく。
「待って忘れものよ」
「これは……」
彩菜から渡されたのは黒い色をした勾玉、黒龍ミラボレアスの勾玉だった。
「どういうつもり?。あなたは黒邪様の終焉に抗いこのお方を恐れ多くも無力化したはずなのに……それを戻すなんて」
「私は信じてる。黒邪がもう破壊や終焉を巻き起こすなんて愚行は犯さないと。だから返したのよ」
「意外と馬鹿なのね彩菜さん。このお方が二度と引き起こさないって根拠は―――
「うん。君の言う通り僕はもう人に能力を振るったり殺めたりはしない」
「え?」
愛華は我が耳を疑った。
「そんな驚かないでよ愛華。僕はもう満足したんだ。彩菜のラ・ロと戦えてもう戦闘に対する未練はないよ。返してくれてありがとう僕の相棒を」
「黒邪様……成長しましたね」
言葉の真意が分からず適当にそう?と相打った。
「良く戻って来てくれたねミラボレアス。帰ろうか……僕達の家に」
「はい!」
翼を広げ二人は悠々と空を飛行していく。
戦いは終わった……あと自分達に残された使命は……。
「さぁ、恵美。明日から楽しい楽しいお勉強タイムよ~」
「やだぁ!勘弁してぇ!」
「私のルコは磁力を使えてね」
「俺の青電主だって人間を引寄せることが出来るぜ!」
「なんか黒炎王になってから纏身時の翼の生えかたが古龍の適合者と同じく背中から生えるようになったよね。なんでかな」
「私のレイちゃんも紫毒姫になってからそうなの。なんでだろ」
この人生を生きてくだけだ。
皆ありがとう。大好きだからね。
誰にも聞こえない声で感謝の気持ちを口に出し一人で泣いた。
士はこの世界での俺は役割は終わったみたいだなと言い残しオーロラに消えていった。