「今日もいい天気だわ」
…数多の出来事が流れ星のように次々と過ぎ去った高3から早6年の時が経つ。
あの日禁忌と死闘を繰り広げた私(適合者)達は、いろいろな道に進んだ。
高校を卒業してすぐ就職した者、県外県内の大学に進んでから就職したものまたは結婚した者。
私は後者だ。
県内の大学に亮と一緒に行って卒業した際に結婚し二人で同じ父親の系列の会社に入った。
面接は集団面接で特に圧迫面接ってわけでもなかったからなるべくリラックス出来た状態で挑めたと思うわ。
でも少し吃驚したことがあったの、裕也も私達と同じく父親の系列の会社を受けようとしていたこと。
私達は思わず3人迎い合わせ笑ってしまった。
面接が終わったあと、私達は堅いスーツを着替えに家に帰ってから再び喫茶店に集まった。
「裕也はもう着いたってさ」
「流石学級委員長…真面目~」
喫茶店の前に立ちドアを開けると、裕也が「ここだよ二人とも」と手を招く。
外見も真面目で特にふざけた様子は見られないが腕には金色の時計が嵌めてありどこか気品に溢れていた。
対する彩菜達は纏身の髪の色をそのまま投影しピアスや控え目のネックレスなどの細かい装飾をしていた。
来年には二人の薬指に指輪が増えることとなる。
「二人とも大学生活を謳歌してるって感じだな。顔が活気に溢れてるし」
「ありがと。まぁ卒論とか大変なんだけどさ」
「彩菜凄く頭良くなったもんな!」
努力のおかげか、はたまた腹違いの兄の血の影響か高校時代いまいち振るわなかった成績はグンと延びたのだ。
大学はそれほど偏差値が高いところでは無いが彼女にとって進歩だ。
変わったのはこれだけに留まらない。
彩菜に対し強く当たってた父は臨時休校が解けたあたりから普通の娘として接するようになった。
―――今までお前に親としての愛情を注げずすまなかったな。
幼稚園の時彩菜は家族3人の絵を描いて総一郎と雪に見せた…優しく笑って父親は上手な絵だと誉めてくれたのは今も脳裏に強く残る。
当時と同じ穏やかな表情で父親は謝り、久々に娘の頭を撫でたのだ。
「お父さん……」
嬉しくて彩菜はその日一日中泣いた。
こんな真似出来るの、あの人しか居ないよね。
同時にこの喜劇の立役者にもまさしくどんな魔法を使ったのか問い質した。
裕也は言った。
もう僕は藤沢家に遺恨も憎悪もない、お父さんには黙ってて悪かったけど……彩菜と和解したんだ。
勝手かもしれないけど僕達は気持ちをぶつけあって互いの関係を理解しあったよもう恨みはない…だからお父さんも彩菜を傷つけないでほしい。
……死んじゃった僕のお母さんの分まで彩菜を愛してあげてお父さん。
息子の衝撃の言葉を聞いて、総一郎は暫く戸惑いを隠せないでいたが次第に落ち着いていき…しがらみやら葛藤やらで険しかった顔が弛んだ。
そのまま息子を抱き締め、あぁ、分かった。と泣きながら約束したという。
この日を境に彩菜の家族に対する見方がどんどん変わっていった。
父の会社を受けたのも今まで育てくれた彩菜の恩返しの趣向もある。
社長の娘だから優遇なんて真似はせず正々堂々一般枠で面接を受けた。
「彩菜…彩菜!」
「あ、ごめんなさい考え事してた」
亮が自分を呼ぶ声で現実に引き戻された。
「全く愛しの彼氏の声が聞こえなくなるほど熱中するとは……他の男のことでも考えたりしたのか?」
わざとらしく笑い訪ねる裕也。
あながち間違いではない。
「まぁね」
「え、本当か……?」
「気を落とさないで。一番好きなのは亮だから」
「良かったぁぁ……。俺も一番彩菜が好きだ!」
「きゃあ!、ちょっと人多いのに……」
「人目ぐらいじゃ俺達の愛は止まらないさ!」
愛を語りあった二人はどこぞのワイバーンの亜種よろしく人目が多いカフェにも関わらずイチャイチャしだした。
「はぁ……こいつら。どこぞの金火竜の適合者が見てたらバカップル!って言われて螺旋サマーソルト食らうんだろうなぁ」
呆れた笑みを溢しながら、滅尽龍の適合者は溜め息をついた。
翌年の6月彩菜と亮は結婚式を挙げ高校生の仲間達が集い大盛況だった。
久々に会った友人達と他愛もない会話を繰り広げお互い苦難や挫折はあってもなりたい物を目指してるんだと犇々伝わる。
友人の中で一際上品さを醸し出す女性が彩菜に近付く。
その女性の顔を見て彩菜は誰だかすぐ分かった。
「彩菜さん、本当に…綺麗になりましたわね」
「瑠奈ちゃん!」
悲惨な人生を棄て、この人生を歩めたのは伊里愛瑠奈……彼女が自分にunknownの勾玉を託したからだ。
「久しぶりだね」
「はい。あの時の戦い私は参加出来なくてすいませんでした」
「いいよもうあのことは……私達の勝利で終わったんだし。瑠奈ちゃんだって銀陽君を連れ浚われて苦しかったんでしょ?」
「お恥ずかしながら、銀陽さんがいなくなってあんなにショックに陥るとは思いもしませんでした……」
「瑠奈ちゃんが銀陽君を心の底から愛してる証拠だよ」
真面目で一途な瑠奈らしい。
でもそんな彼女もあのことからは立ち上がり今では銀陽と同棲してるという。
「今の私の人生が歩めてるのは瑠奈ちゃんのおかげだよ。本当にありがとう瑠奈ちゃん」
フッと笑う。
「幸せを掴む為に行動したのは他ならぬ彩菜さんですよ。私は切っ掛けを与えたに過ぎません。どうかこの人生を強く生きてくださいね、彩菜さん」
「うん……!」
生きてくよ、どんな運命が待ち受けようと。
……そして現在。
彩菜は一児の母となった。
「雪菜あまりママから離れちゃ駄目だよ」
「はーい」
子供は娘で名は雪菜結婚した年に産まれた最愛の娘だ。
近場の公園で遊ぶ我が子に注意を促す。
私も昔はあの娘みたいに、お母さんに……こんな感じで見守られてたんだろうな。
敬愛する娘の姿にどこか既視感を覚えた。
今はもう馬鹿な考えを持った適合者はいないはず、でももしまた世界を壊滅させようなんて考える適合者が出てきたらあの娘や他の人を守る為に戦わなきゃね。
そんな日が来ないことを切に願うけど。
無力な我が子を何者からも守れるよう、母は周りに注意をはらって見つめていた。
ねぇ、イヴェちゃん。
おかあさんはまだイヴェちゃんのそんざいにきづいてないみたいだよ。
ゆきなイヴェちゃんがいるからよわくないからまもってもらうひつようないのにね。
-それがお母さんの役目なのよ雪菜ちゃん。混乱すると思うからもう少しお母さんには内緒にしておいてね?。
うん、イヴェちゃん!ゆきなやくそくするね!。
亮も彩菜も雪菜が古龍種、冰龍イヴェルカーナをその身に宿し産まれたのを知らなかった。
雪菜が今より成長しこの力を二人に言ったらどんな反応をとるか分からない……が適合者として産まれたから突き放したりはしないはずだ。
親として力の抑えかたと適合者の心持ちを教えるもよし、気にしないで自分の思うがまま生きなさいとアドバイスするもよし、全ては二人に掛かっている。
次へこの絆を受け継ぐために……。
筆者の執筆した作品の中でようやく完結出来た作品一作目となりました。
今回の作品は筆者が今まで執筆した作品と違う文章表現を目指し、他にダラダラ書いてる復讐教室の創作の反省も込め物語を必ず終わらせることに着目しました。
全体的に見れば少し省略し過ぎたかと思いますが暇があれば完全版の執筆を初めようかなとも考えております。
これにて終話となります、最後まで読んで下さった皆様本当にありがとうございました。