11月なのに今日は20度を越えそうだ。
昼間の屋上の手すりは既に温かい。
「5、6人目…、まだ6分の1ね。」
次の標的は二人だ。
もっぱらクラス内ではやんちゃな不良少女で通っており、実際クラスメイトへのカツアゲを行ったり、援助交際の噂が絶えぬ、菅原千鶴と三輪楓への試練を行う。
「勾玉があるからってヒヤヒヤする絵面ね……。」
普段やらぬような、屋上の手すりにうもたれる光景に結子は彩菜の身を案じて言葉をかけたが……当の本人は大丈夫、と軽く言い体勢を崩さない。
そのまま自分がこの二人から受けたいじめを思い出していく……。
7月の末……結子と別れた私は、本当にこのまま誰とも話さないままなのかな……。と落胆した。
当時の私は瑠奈ちゃんやラ・ロとも出会わず、本当に無力同然、圧倒的な弱者だ。
そんな中、からかってだとは分かるが私に話しかけてくる同じクラスメイトが二人いた。
菅原千鶴と三輪楓。
あははは、と笑いながら、小突いたり、肩を叩かれたりしたが……私にとっては数少ない笑顔で自分に接してくれる二人だと思って、笑い返し嫌な顔も1つしなかった。
……それが気に触ったんだろう。
ある時、トイレに呼び出され個室に閉じ込められた。
パニックになった私は、ドアを叩いたり、押したりするがびくともしない。
中からしか鍵がしないドアを裏から押さえてる者がいるのは明白であり、犯人も察しがつく。
この時点で既に最悪な状況だが、地獄はこれだけでは終わらない。
「きゃっ!!!。」
頭に、水をかけられた。
仕切ってある壁の上から、バケツで更にもう1発……。
「やめてぇぇぇぇ!!!。」
私は全力で騒いだ。
するとピタリと二人の行動は止まったが今度は言葉の暴力が浴びせられた。
「きゃはははは!。ちょっとはアンタが置かれてる立場再確認できた~!。」
「無理無理、楓。こいつはからかわれてるのを話しかけてくる子がいるって勘違いして喜ぶようなマゾよ。泣いてるみてぇだけど本当は嬉しいんじゃないの~?。」
笑い声と言葉が確実に私の心を傷つけていく。
ドアが開かれ涙目になりながら出た私に二人は追い打ちをかけた。
「調子こいてなれなれしくしてんじゃねーよ、お前。勘違いマジムカつく~……やっぱ私達大人になる身として法に従わないといけないから~、これからさ慰謝料としてお金を私と千鶴に払ってね~、それで許してあげる。」
ふざけるな。
「マジ名案だよ楓。ってことでこれからも勘違いさせてあげるからよろしく。あはははは!。」
なにが慰謝料だ。
殺気を込めてトイレから出てく二人を見つめた。
それから毎日お金を盗られ……。
拒めば殴られたり、煙草の火を押し付けられたりもした……。
身体が熱くなる。
怒りに同調してか彩菜の目が赤く発光した。
もうこいつらについては行動は把握済みだ。
「明日決行したいと思ってるわ。」
「手伝うわよ。なんでも。」
「ありがとう。じゃあ……」
結子に手伝ってほしいことを話し今日は解散した。
夕闇に染まった帰路で彩菜は一人思惑を繰り返す。
力を身に付けて1つだけ確実に言えるとすれば、
人は結局、自分より弱いと思ったものは徹底的に攻撃することだ。
これに集団心理が働けば、攻撃されてるものはいよいよ手に負えなくなり、最悪……自分の手で死んでしまうこともある。
『強さ』『弱肉強食』『食うか食われるか』
どの分野にも共通する、生き物が地球に誕生した時からの不変の真理。
理性を身に付けた人間にさえ当てはまる。
今の私は奴等から、なに一つちょっかいを受けてない。
あいつらを越えた強さを持ったから。
ま、今頃、手を出さなくなっても遅いけどね。
……この理不尽の代償は暴力や、ラ・ロの力、試練で絶対晴らす。
優人や結子には暴力は振るわずすんだが、こっからはそうも行かなくなる。
「おぉ、今日は夕日が綺麗だ。アンタもそう思わないか?。」
シャッター音がなる。
マゼンダ色のカメラを首にさげ、見たことない制服の少年が彩菜に話しかけてきた。
「そうだね……。あなたの制服見たことないけどどこの高校の人?。」
あっち。と適当に言っただけとしか思えない方を指さした。
アバウトなのかしら……?。
「アンタも勾玉使いか?。」
「まぁね。」
「髪の色を見て大体分かった。」
……なんて言い返していいか分からない人ね。
「俺の名前は門矢 士。通りすがりの勾玉使いだ。いずれまた会うかもな。じゃ。」
「……不思議な人。」
士は夕闇に消えていった。
勾玉のモンスター名もディケイドにしようかな。