「おい、お前。なんとか言ってみたらどうだ」
一瞬のことだった。身体を吹き飛ばされたのと同時に、視界が白と褐色に覆われる。
息が苦しい。恐らく、なにかによって首を締め上げられているのだと思う。
「黙秘するつもりか。ならば、このまま絞め落として連れて行くまでだ」
女の声。背中がぞくりとするくらい、冷ややかな声色だった。
このまま、俺は死ぬんじゃないか。そう考えてしまう程度には、強い力が込められている。
「こいつ、意外としぶとい奴だ……」
ぎゅっ、とまた首の左右から圧力がかけられる。万力のように締め付けてくる割には、妙な柔らかさがあった。
ようやく、自身の状態が飲み込めてきたきがする。この万力は、きっと女の太ももによるものだ。
それに、この白い布。どういった趣向なのかは知らないが、褌を着用しているとしか思えなかった。
「ちっ……、下で動くな。余計なことをすると、首をへし折るぞ」
朦朧とする意識の中で、嗅覚だけが研ぎ澄まされていく。
むわりと広がる汗の匂い。甘酸っぱく濃厚で、鼻腔にこびりつくようだ。
「この…っ、動くなと言っているだろう」
すんすん、と鼻を鳴らす。確かに汗の匂いが色濃いが、それだけではない。
その合間に存在しているもの。すなわち異性の、雌の香りだ。
必死になって呼吸をするほどに、体臭とフェロモンが一体となったもので肺が満たされていく。たまらない感覚。生と死の狭間だというのに、興奮が止まらない。
「や、やめろ……っ! お前、どこを舐めているんだ!?」
女の声が、遠くに聞こえている。
褐色の太ももの谷間。締め込まれた褌の中心が、少しぷっくりとしている。
しょっばさの強い膨らみに全力で舌を伸ばし、唾液をなすりつけていった。脳内に痺れが拡がっていく。思わず、腰が浮いた。どうやら苦しがっているのは、下半身も同じなようだ。
「こ、このっ……!」
この女は、きっと俺を殺す気なのだろう。だったら、好きにするだけだ。
「ん……、んあっ……!?」
力が一瞬だけ緩む。今だ、と俺は女の柔らかな部分に食い付いた。
もっとだ、もっと舐めさせろ。舌を動かし、ぷにぷにとした丘を押し込んでいく。そうしていると、味はさらに濃くなっていった。まさか、感じているのだろうか。
「やめろ……、この愚か者めっ」
再び締め付けが厳しくなった。だが、その苦悶は同時に快楽すら生み出している。俺の意識は、そのまま虚空の彼方へと吸い込まれていった。
「なっ!お前まさか!?」
女の焦ったような声が響く。そう、俺は成し遂げたのだ。
苦しさに意識を投げ出した瞬間、ブレーキの効かなくなった下半身は強く脈打ちはじめたらしい。
ドクン、ドクン! 飛び出した液体は布地すら撃ち抜き、女の尻を汚した。その事実を知った時は、笑い死ぬかと思ったものだ。
「……そんなに面白いか。だったら、いますぐ本当に殺してやってもいいんだぞ、北郷」
女に睨まれ、俺の身体は急速冷凍でもされたように固まっていく。
そうだ、そうなのだ。悔やんでも、悔やみきれない出来事なのかもしれない。それこそが俺と褌の女、もとい思春との最悪の出会いだったのだから。