side?
「っ……また、繋がらない……」
セシリアは、自分の携帯を握りしめながら不安そうな顔をしていた。その不安は、彼女が1人の時だけに見せる弱っているところであり、鬼村五十冬や織斑一夏などの彼女と親しい人物に話してはいない。
「チェルシー……貴方、どこで何をしてますの……?」
チェルシー。セシリアのメイドであり、少し前には『エクスカリバー事件』の中心人物となった女性である。少し前から、彼女との連絡が付かなくなっていた。最初の2日3日こそ、ただ連絡が遅れているだけだと思っていたものの、2週間3週間過ぎても折り返しの連絡すら来ないのは異常だと感じ始めていた。
「……無事なら、早く出て……!」
探しに行きたいところだが、最早セシリアは……セシリアどころかIS学園に通う所謂『お嬢様』といった立ち位置の少女達は、IS学園から出ることさえ叶わなくなっていた。
理由は簡単、IS学園の校則の1つにある『IS学園に通っている間如何なる国の干渉、本人の政治的立場は考慮しない』と、そういったものが国連によって悪質に改変されたからである。
『IS学園に通っている間、如何なる国や地域または本人の政治的立場、身分などを考慮せず場合によっては政府の命令により出動すること』これが新しい校則だった。
簡単に言えば、IS学園に通っている生徒や教師は全員政府の命令に従わなければならないというものだ。少し前から、政府による干渉が酷くなってきてはいたが、この校則……年を越してしまってから出来たこれにより、さらに悪化していた。
「いやっ……行きたくない……!」
「国連命令です、行かなければ退学処分……いいですね?」
「っ……」
「また……ですの……」
国連に従わなければ退学処分。これだけならば、生徒達は喜んでやめていただろう。だが、それを簡単に許すほど国連の黒い部分は許してはくれなかった。
この校則、改悪&悪用している1部の国連の人間は、更にもうひとつ……この校則からは読み取れないものを付け加えていた。
『テロリストかどうかの調査』である。簡単な話だ、国連の命令に従えない者はテロリストの疑いあり。それにより、音信不通になった生徒は数しれなかった。
死んだ、とさえ来ない。むしろ、無理やり連れていかれてどこかに消えたというのが、さらに不安と恐怖を煽っていた。
「……一応、向かってみましょう」
セシリアは立ち上がる。向かうは生徒会室……既に大半の機能を失っている生徒会役員に対して、物申しに行くのである。
「駄目っす、私達も忙しいんで」
生徒会室に到着しているセシリア。しかし、部屋の中でフォルテ・サファイアに拒否されていた。明らかに暇そうにしているにも関わらず、『忙しい』と返答されていた。
「忙しい? どう見ても、生徒会メンバーはあなただけしか居ないように思えますが?」
「……今は、全員学園内の別の場所にいるだけっす」
「……そうですの」
少しだけ目を泳がせたフォルテ。その一瞬の隙をセシリアは見逃さなかった。少しだけ見せた隙、それがいつものフォルテの反応ではないとセシリアは感じていた。
「さ、早く戻るっすよ。1年生はまだ勉強することが仕事なんすから」
「……そうですわね、ではお言葉に甘えて戻らさせてもらいますわ」
今は、ここでフォルテと言い争って問題を悪化させる訳には行かない。この学園内で、何かがひっそりと行われている。それを確かめるために、今は一旦ここからセシリアは引くのであった。
「━━━ということがありましたの」
「……やっぱり、様子がおかしいみたいだな」
セシリアからの話を聞いて、織斑一夏は納得しつつも新たな疑問点を得ていた。フォルテの様子がおかしいのは何となく感じていたが、生徒会メンバーが彼女を除いて今や全員行方不明という状態になっているのだ。
「……IS学園は、どうなってしまうのだろうか……」
現在、第3学期。3年生は卒業し、他の学年は繰り上がり新入生も入ってくるであろう季節が迫ってくる。しかし、今のIS学園にはそういった『普通の学園』らしいことは何一つできやしない状態となっていた。
選ばれた生徒がどこかに連れ出され、傷物にされて戻ってくる。そんな状態になっていると噂も広まり、新入生も入ってくるかどうか怪しい。そして、反抗した生徒も行方不明。
「……生徒会メンバーは、確か学園の業務の都合上政府への呼び出しは免除される筈……」
「実際、呼び出されている節はなかった。それに加えて、専用機持ちも呼び出されないようになっているのか……私とセシリアは、未だに呼ばれていない……私はそろそろ、怪しいところだが」
「……どうして、こうなってしまったのでしょうか」
「……鈴、シャルロット、ラウラ、それに楯無生徒会長……」
「……この教室も、随分と人が少なくなったように思えるな」
「何人か、呼び出されてました……逆らった人も、恐らくいると思います」
全員の空気が重くなっていた。だが、これを無理に明るくしようにも、どうしても難しいところが出てきてしまうのだ。そして、ここまで話していたところでふとセシリアが辺りを見回す。
「……そう言えば、五十冬さんはどちらに……?」
「そう言えば……姿が見えないな……」
「……何かあったんじゃないのか?」
仮に、政府からの呼び出しがあったとする。これを本人がひた隠しにしていても、学校側からの発表があるため結局バレるため隠す生徒はほとんど居ない。皆、隠しても無駄だと諦めているからだ。
だからこそ、生徒がいきなり消えるまたは来なくなるということは滅多にない。あるとすれば、それは━━━
「……政府からの要望に逆らった、か?」
「……鬼村の部屋に行ってみよう」
織斑一夏率いる3人は、一旦鬼村五十冬の部屋に向かうこととなった。授業がもうすぐ始まるが、それ以上に五十冬の安否が気になったからである。
「……鬼村! いるのか!?」
部屋をノックする一夏。度重なる生徒の政府からの呼び出しにより、2人部屋であった部屋はもはや殆どが1人の部屋と化している事が多く、鬼村五十冬と同室だった女生徒もまた同じなので五十冬がいるかどうか聞くことは不可能なのだ。
「……待て一夏、鍵が開いているぞ」
「……慎重に入りましょう」
「……あぁ」
そう言いながら、部屋に入る3人。部屋の中は特に荒らされた形跡もなく、また明らかにこの部屋の住人以外が入り込んだ形跡も見当たらない。
軽くだけそれを確認し、3人はベッドへと向かう。すると、そこに居たのは呻き声を上げてベッドに横たわっている鬼村五十冬本人だった。
「っあ……うぅ……!」
「鬼村……!? 大丈夫か!?」
何か体に不調が起こっているのかと、一夏は五十冬のデコにまず手を当てていた。熱はなく、まず熱を発するものでは無いことは確認が出来た。
「一夏さん、私達で確認しますわ」
「同じ女だ、何かあってもわかりやすいだろう」
「そうだな……なら、頼む2人とも。俺は先生に報告してくる」
「お願い致しますわ」
同じ女である箒とセシリアが、軽く確認だけを取る。そして自分たちでわからない場合は、医務室へと連れていく。その間、無断欠席する訳にも行かないために、一夏が教師へと報告に向かう。そのため一旦一夏だけ教室へと戻り、残りのふたりが五十冬の介抱をすることとなる。
「……それにしても、これは……」
「五十冬さん……」
「うぅ……!」
苦しんでいる五十冬。しかし、そんな状態であっても五十冬の意識は未だ覚めていないのだ。何が起こっているのか……それを彼女の口から聞くことは無い。
「……前から思っていたことなんだが……」
「……なんですの、今は無駄話をしている暇はないですわよ?」
「お前は……今の鬼村と、前の鬼村……
突然の言葉、その言葉の意味が理解できないほどセシリアは頭の回らない少女ではない。疑われているのだ、セシリアが今と過去……どちらの鬼村五十冬の味方なのかと。
「……私が、あなた達を裏切ると?」
「違う……裏切るとは思っていない。だが、仮に今の鬼村が前の鬼村に戻り私たちの敵に戻った場合……引き金に指をかけられるか?」
「……」
殺害することもあるだろう、けれどそこまでいけば一夏達も殺すことは出来ないかもしれない。死線をくぐりぬけているとはいえ、未だ子供の身である彼らに人を殺すのはかなり難しいことだろう。
だが、武装破壊後に戦闘不能にさせることは出来る。それすらもセシリアは出来ないのではないかと、箒は考えているのだ。
「……分からないですわ、そんなことになって……私がどういう行動をとるのかは」
「……だったら、私と一夏が戦う。お前に無理をさせたくない」
「箒さんも、無茶を言いますのね? 貴方は紅椿を失った……打鉄じゃないと戦えないのに、何を言ってるんですか」
「だが……」
「現状、IS学園に残された専用機持ちは私と一夏さん……それに生徒会のフォルテ・サファイア……それに、アイリスさんとジブリルさんの5人……その内フォルテ・サファイアは敵側と考えると……実質四人」
「……確かに、戦えないなどと言ってる場合ではないのかもしれないが……」
セシリアの言葉に、箒は渋い顔をする。正論だが、セシリアの気持ちを考えて言っているのだ。以前の鬼村五十冬と敵対する、その五十冬のことを少なからず好意的に見ているセシリアの事を、心配しているのだ。
「……大丈夫です、私は……私は……」
「……無理だと悟ったら、一夏に代わってもらうといい」
「箒さん……」
「さ、鬼村を運ぼう。異常は簡単に見ても見受けられなかったからな」
「……はい」
箒の言葉に従い、優しくゆっくりと五十冬を運んでいく二人。その空気はどこか気まずく、そしてギクシャクしているものであることは間違いが無いのであった。
side五十冬
夢を見ていました。大切な、おそらく私の大切な人であろう男性が死ぬ夢です。それに加えて、その夢はずっと続いていました。死んで視界が真っ暗になったかと思えば、また初めから始まる……それの繰り返しばかりでした。
「……なんで、なんでこんな……!」
男の人を殺している、あの女の人達……人1人を殺しているのにも関わらず悪びれず……そして挙句の果てに大した罪にもならないと言う結果に終わりました。
「……こんなことって……」
私は悲しさと怒りを覚えました。しかし……直ぐにそれを上回るほどのむなしさに襲われました。復讐をした所で、人は帰ってこない。復讐に費やせば費やすほど、自分の心の空白期間は大きくなってしまう。そう感じてしまったからです。
もちろん、復讐を遂げてスッキリする人もいると思います。けど私は……
「……復讐なんて、遂げたところで……自分が終わらないと、永遠に虚しさを味わうだけじゃない……」
……復讐を望んでいた私も、そうなのかも知れません。自分が終わりたいがために……そんなことをしているのかもしれません。確定ではないけれど……
「……復讐を遂げて……そのあとはどうするつもりなの……?」
考えていたのか居ないのか……私ですらそんなことはわかりません。そんな、自分だも分からないことに悶々としながらも時間はすぎていき……夢からは、覚めるのでした。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい