「みんなおは、よ……う………?」
朝、セシリアと共にクラスに入る私こと鬼村五十冬。しかし、何やらクラス中がどうにもこうにも騒がしかった。
確かにいつもと比べても変わらない程度のざわめきだが、何故だろう……傍から聞いている分では、皆同じ話題を口にしていた。
「ねぇ、何の話をしてるの?」
「え、知らないの?今月のトーナメントで勝つと、織斑君と付き合えるんだって!」
「……えっ」
何故そんな話がでているのだろう?公式的なものでは無いことは確かだが、一体全体その噂がどうやって広まったのかは謎である。
「まぁ……そのような事に……」
「多分それ本人も預かり知らぬところだろうね……何でそんな噂が…それ誰から聞いたの?」
「えーっと確か━━━」
噂というものは、絶対に大元が存在するものである。それが広がった原因、広めた張本人と別れているが、とりあえず大元は存在しているはずなのである。
そして、私はホームルームが始まるまでの間にその噂の出処を調べていた。何故こんなことを調べているか?別に野次馬根性等ではない、本当にそういった噂になっているのならば、利用できるかもしれないからだ。そのためにも、真偽を確かめねばならない。織斑一夏はそんな事が起こっているなんて露ほども知らないだろうけど……そして、私は調査をするうちにとある1人の生徒に行き着いた。いやまぁ、うちのクラス内の噂だから当たり前なんだけど……私のクラスメイトだった。
「……布仏さん、何でこんな噂流したの…?」
そんな彼女が何故、このような煽りをしたのか私には理解ができなかった。赤ん坊が中指を故意に立てるくらいありえないとまで言える。
「うーんとねぇー……」
「……」
「しののんがぁー、イッチーにぃ、告白しててぇー……」
「えっと、つまり?」
しまった。あまりにものほほんさんの話が長すぎるために、隣にいた相川さんに事情を聞いてしまった。顔がめっちゃ不機嫌になってる。
確執を残すのもなんだから後で謝っておこう。
「篠ノ之さんが、織斑君に告白したんだよね。次のトーナメントに勝ったら付き合って欲しいって」
「そんなことが……それで?」
「うん、私達がそれを聞いて広めようとしたんだけど……どうしてかこうなっちゃってたんだよね」
「私が広めたんだよぉー」
「……情報伝達失敗してない?」
「そうなんだよね……これは織斑君……あぁいや、篠ノ之さんにも悪いことしちゃってるなぁ……」
これは大変めんどくさい事になってしまった。これはただの噂になっているせいで、誰が勝っても恐らく悲惨なことしか起こらないだろう。というか、ふと気になったが……
「篠ノ之さんって織斑君になんて告白してたの?」
「え?『トーナメントで勝ったら付き合ってもらう』って直球だったよ?」
何故だろう。私は篠ノ之箒ですらろくな目に合わないような……そんな気がしてきた。愛していると、直球勝負じゃない限りあの男には通じないような…そんな気がしてくる。
「皆、なんの話してるんだ?」
「「「何でもない!」」」
と、ここで本人様が到着したが…クラス一丸となって彼に情報を渡さないようにしていた。何だこのクラス……と思っていたら、先生御二方が到着していた。
「席に座れ、ホームルームを始めるぞ」
その言葉と共に、皆が席に着き始める。そして、山田先生が何やら嬉しそうな顔をしながら教卓についていた。
いつも嬉しそうな顔をしているが、今日は一段と嬉しそうな……にしてもこの先生、胸の大きさだけを除けば低身長も相まって子供にしか見えない。
「えー、今日は皆さんに転校生を紹介します!」
またか。いや、このクラスでは初めてかもしれないけど2回目だよ転校生イベント。2組で行って今度は1組ですか……と、ふざけたことを言っていたら件の転校生が入ってきた……
「……男…?」
「シャルル・デュノアです、これからよろ━━━」
「男の子!?」
「え、は、はい…ここに僕と同じ人がいると聞いて転校してきました」
私は驚いていた。有り得ない、有り得るわけがないと。そもそも私は、織斑一夏がISを動かせているのは、篠ノ之束が関わっているからだという前提だった。
しかし、今目の前に篠ノ之束と一切関係のない少年がIS学園に…少年?
クラス中が新たな男子の登場に騒ぐ中、私はふと考える。
そうだ、こんな簡単に2人目が見つかっていいのか?と…そもそも2人目が本当に見つかったのなら、彼の故郷どころか他の国でも騒がれるはずだ。
しかし、幾ら他の国と隔絶された所とはいえ、流石に一切の情報が入ってこないというのは異常では無いだろうか?
「静かにしろ!」
2人目の男子到来により騒ぐ教室だったが、織斑千冬の一喝により一気に静まりかえる。流石である。
「……今日は2組と合同を行う、各人は速やかに着替えてアリーナに集合!
それと織斑」
「はい?」
「デュノアの面倒を見てやってやれ、同じ男子同士だ」
「分かりました」
同じ男子同士、ということもあって当たり前だが織斑一夏が案内役に選ばれていた。まぁ、この学校はISの学校ということもあって…男性が全く居ない。今のところ彼ら二人だけであり、そんな特例の存在のためだけに新しく設備を作るほど学校も資金をやりくりする気もない。
男子トイレはなし、そして更衣室も専用のものがない。当たり前だ、男はISを動かせるわけがないのだから。
「よし、じゃあ行こうぜ」
「えっ!?」
シャルル・デュノアの手を取って、織斑一夏は教室から急いで出ていく。専用の更衣室がないので、少し遠回りをしなければならないのだが…
「……ねぇ、セシリア」
「何ですの?」
「デュノアって聞き覚えある?」
「確か…フランスのISメーカーですわね」
「……」
私はどうにもきな臭い匂いを感じていた。まるで、織斑一夏に合わせたかのように新しく男子が入ってきたような感じがしたのだ。
私の前提が間違えていなければの話だが、男で動かせるのは確実に織斑一夏だけである。
「そっか、ありがとうセシリア」
「いえ、気にしなくて結構ですわ」
さて、あの王子様が一体全体……どんな目的でIS学園に入ってきたのか探らないといけない。何故かって?私の目的の邪魔になるんだったら消さないといけないし、私と目的が同じなら利用しないといけない。
「さ、私達もさっさと着替えないとね」
「そうですわね」
ひとまず様子見と行こうか。今は、情報集めの時間だしね…
私はそう考えながら、ISスーツに着替えるのであった。
さて、今はアリーナのグラウンドに1組と2組が集結していた。そして、山田先生を相手としてセシリアと凰鈴音が軽く手合わせをすることになった。
教員の実力というものを見せたいのだろうが、そもそも山田先生が強いというのは当たり前だろう…このIS学園において、余程の実力者でない限り専用機持ちであっても教師達に勝てるわけがない。
「デュノア、山田先生が今使っているISの説明をしてみろ」
ここからは私が彼の説明の代弁をしよう。山田先生が使っているのは、ラファール・リヴァイブというデュノア社製の量産型ISである。
本来ISには第○世代という括りがあるのだが、ラファール・リヴァイブは第2世代……今現在開発されている第三世代ISよりも一つ前の世代である。しかし、第三世代初期型と同等の力を持っている機体でもあるのだ。
数々の武装を使いこなせる凡庸性等が長所であり、まさに量産型の中では破格の性能だと言えるだろう。高水準のバランス型、と言えばわかりやすいだろうか?
誰にでも使えるが、強い人が使えば強いもの……それが今山田先生が使っている機体である。
「……まぁ、案の定ああなるよね」
「これで分かっただろう。お前達よりも、教員が強いということが。では、これからは別れてISの訓練を始める。チームリーダーはそれぞれ、専用機持ちが務めること…以上」
「……さて、セシリアお願いね」
「は、はいですわ」
負けたことが悔しいのか、少し膨れながらもセシリアは私の指導をすることに。まぁ、私だけじゃなくてほかの1組のクラスメイトだったり、2組の子だったりと忙しいが。
「……にしても…」
「五十冬さん?動けそうですか?」
「あぁうん……えっと、こんな感じかな」
「あら……お上手ですわね」
私は打鉄に乗って、軽く手を動かす練習と歩く練習を行う。まぁこれくらいは出来ないと……正直、話にならないと思う。
「…さて、これくらいだよね?」
「そうですわね、では降りてみて下さい。1人で降りれそうですか?」
「大丈夫大丈夫」
私は次の人が乗れるように腰を低くしながら、ISから離れる。そして私の次の人が、セシリアの指導を受け始める。
私は問題なかったので、みんなの元に戻りながら例のシャルル・デュノアに視線を向ける。
「……うーん」
「鬼村さん?どうしたの?」
「ううん、何でもなーい」
なんでもない訳が無い。しかし、これをただのクラスメイトに言うのは問題が起こるので辞めておくことにした。
因みに気になったことというのは、シャルル・デュノアの腹筋がどうにも…男子の感じかしなかったのだ。男子特有の腹筋と言うべきだろうか?硬いはずの腹筋が、どうにも柔らかく見えてしまう。
いや、メタボなだけだろそれっていう話ではない。織斑一夏と同じくらいのウエストでありながら、筋肉が目立たないのだ。
どちらかと言えば……ウエストの細い女子のような見た目と言うべきだろうか?
「……」
「鬼村さーん?おーい」
やはり、男というのは嘘ではないだろうか?しかし、それだと男にするメリットというのが皆目見当つかない。考えれば考える程に、何故彼がIS学園に今このタイミングで入学したのかがわからない。
「お!に!む!ら!さぁん!!!!」
「うひゃっ!?え、な、何!?」
「ずーっとぼーっとしてるけど本当にどうしたの?しかも、デュノア君の方をずっと見て……あ、好きになっちゃった?」
「…へ?」
「いやいや、デュノア君の事をだよ……まぁでも彼かっこいいもんねぇ」
あ、なんか壮大な勘違いされてる……あぁでも訂正すんのめんどくさいし、もういいかな。うん、好きだったってことにしておこう。否定も肯定もしないから思う存分勘違いしてもらって構わない。
だって……そこ突っ込んだら余計に……ねぇ?支障のない問題起こすくらいなら、私は突っ込まないことを選ぶよ…という訳で、授業は順調に進んで終わりを迎えるのであった。
と、思っていたのだが……
「五十冬さん、少しいいですか?」
「どうしたの?」
「一夏さんから昼食のお誘いがございましたの、ご一緒にどうですか?」
「それってセシリアだけが誘われたの?」
「いえ、篠ノ之さんの発案ですわ」
唐変木にホレるというのは、同情したくなるものなのだな……と私は思った。恐らく、同じ男子同士だということでシャルル・デュノアも来るだろうし……という訳で、この後お昼ご飯の回ということになったのであった。
……1人だけパン食なのも味気ないし……お弁当作らないと。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい