「…これはどういうことだ一夏」
「やっぱ飯はみんなで食べた方が美味いだろ?それにシャルルは最近来たばかりだからな、馴染まないと!」
「まぁこうなるよね」
昼食時、私はセシリアと共に織斑一夏が急遽発案した昼食会に招かれていた。正確には、織斑一夏に誘われたセシリアに誘われた…と言った方が分かりやすいだろうか?
そして、私達以外で織斑一夏に誘われたのは凰鈴音、シャルル・デュノアの2人である。因みに、この場にいる篠ノ之箒は織斑一夏『だけ』を昼食に誘った人物である。同情したくなるよ、唐変木に惚れるって大変なんだねって。
「ん?鬼村どうした?」
「いや?天然でそれやってるなら織斑君って、随分と呑気なんだねって話」
「んー…?」
まぁ遠回しに言った私も悪いが…唐変木と直接言って通じるのだろうか、この男には?言っても通じなさそうなところが恐ろしい。
「…というか、鬼村も作ってきたんだな?セシリアと同室だし、同じものか?」
「いや?流石にそこまで芸がないことはしないよ…まぁ、ほか三人に比べたらちょっと洋食風味になっちゃうかもしれないけど」
そう言って私はお弁当の蓋を開ける。凰鈴音は中華、セシリアは教えてもらったので知っているのでそれも避ける、篠ノ之箒のは恐らく現代日本らしい弁当だと予測したので━━━
「保温弁当箱に入れてきたミニパスタ5種」
「……が、2段目…あんた一段目何入れてんのよ…?」
「え?見る?」
「……興味本位で見たいと思いましたわ」
「しょうがないなぁ…はい、エビピラフ…保温弁当箱だしどっちも暖かいよ?」
あれ、何故だろう…皆の私を見る目がすごく残念そうな人物を見る目になってる…パスタ5種とエビピラフってそんなに駄目だったの?
ペペロンチーノ、カルボナーラ、和風、イカスミ、ボロネーゼ…何がまずかっただろうか?仕切りはちゃんとあるので味が混ざることは無いが…?
「……ま、まぁ一口ずつ貰っていいか?」
「いいよ、元々みんなで食べるために持ってきたんだろうし…交換するためでしょ?」
「ま、まぁそうだな…」
篠ノ之箒までが何故か可哀想な目で見てくる。凄く虚しくなってきた、泣きそう。
そんな私を後目に、織斑一夏はペペロンチーノに手を出す。
「…美味い!?」
「織斑君ナチュラルに驚くのやめてくれない?私もしかして料理できない子だと思われてた?」
「…そりゃあ、あんだけカロリーの塊みたいなの見せられたらね…あんた、野菜とか肉とか取らないの?炭水化物しかなかったわよ今のメニュー」
「え…ピラフにキャベツととうもろこしとエビ入ってるよ…?」
「……これは、私たちが言っても通じそうにありませんわね…」
私なにか間違ったこと言ってるのだろうか?美味いものだけを食べたいと思うのは間違いなのだろうか…
なんて思っていると、今度はセシリアが自らの弁当箱を開ける。中からは、色とりどりのサンドイッチがでてきた。『見た目だけならば』美味しそうである。
「お、美味そうだなぁ…貰っていいか?」
「構いませんわ、五十冬さんもどうぞ」
「じゃあ有難く……」
私と織斑一夏がほぼ同時にサンドイッチに手を伸ばす。2人して同じのを取らなくて心底よかったと思いつつ、それを口に含む。
ふむ、まずとんでもない辛味が口の中を襲ってくる。その後にそれを上書きするかのような甘さ、そして酸味と苦さが入り交じった形容しがたい味が口いっぱいに広がる。
要約すると、不味い。
「うぐっ………!?」
どうやら織斑一夏も同じ感想だったらしい。だが生憎、私はこういうものは普通にまだ食べれる胃袋をしているので、ある意味助かっていた。常人の舌と胃袋ならば即座に吐き出していただろう。
まぁ、私の方も舌が耐えきれなくて泣いているのだが。これきっついわ……
「い、五十冬さん…?どうして涙を流していらっしゃるんですの…?」
「……その、セシリア多分調味料間違えてるよ」
「ほ、本当ですの!?」
「ほ、箒のも美味そうだなぁ!食べてもいいか!?」
「…わ、私はあまり自信はないが…」
そう言って篠ノ之箒も弁当箱を開ける。中から現れたのは、実に現代日本らしい弁当だった。予測が当たって何より……というか唐揚げ美味そうと思ったの久しぶりなんだけど。
「おー、美味そうだなぁ!」
「ちょ、ちょっと一夏!私もお弁当作ってるんだからね!?」
そう言いながら凰鈴音は自らの弁当箱を開く。中には酢豚が入っていた。彼女の家は昔、中華料理店を開いていたらしいので味は中華本家よりの味なのだろうか?あれ、そう言えば酢豚って中国発祥でいいんだっけ…?ラーメンそのものは違うって話は知ってる、別の料理がラーメンに変わったんだよねアレ。
「おー、鈴のは酢豚か。懐かしいなぁ、昔お前の家でよく食べてたもんなぁ」
「で、でしょ!?」
異性の家に飯を食べに行く、しかもその異性は自分のことが好き…これはもう事実上の許嫁では?と言われても仕方なさそうである。まぁ、それを気にするほどの敏感さがこの男にあるとは思えないが。
「うん、美味いなぁ…箒、唐揚げも貰ってもいいか?」
「あ、あぁ」
「うん、こっちも美味いなぁ」
そう言いながらも、パクパクと篠ノ之箒の弁当を食べていく織斑一夏。彼女は、彼の為にお弁当を作ったので問題は無いだろうが…凰鈴音はそれを面白くなさそうな目で見ていた。
当たり前だ、自分が好きな男がほかの女…しかもよりにもよって、その男に惚れている女が作った手料理をパクパク食べている。状況だけで見たら絶対に面白くないだろう。
「あ、五十冬さんもうひとつ如何ですか?」
「じゃあ貰うよ」
そして私は。セシリアの作ったサンドイッチらしき物体を食べることになった。食べなくてもいいが、妙に押してくるし断るのも面倒だから。
あぁでも…出来ることなら味覚をシャットダウンしたいなぁ…痛覚はシャットダウン出来るようにしてるけど…今度は舌の改造しようかな…
「はい、一夏まだまだあるからね」
「一夏、存分に食べてもいいからな 」
「五十冬さん、もっと食べてくださいね」
「デュノア君は食べないの?」
「え、あぁ……ご、ごめん場に圧倒されたから…」
そう言えばさっきから喋っていなかったな…まぁ、正直この場の圧はすごいと思う。私だってこんな場面が目の前で繰り広げられていたら、無視してどこかに行きたくなるだろう。
「あ…す、済まないデュノア……私のも食べるか?」
「私のもどうぞ」
「私のエビピラフ…」
「……え、エビピラフ貰おうかな…」
篠ノ之箒がおずおずと弁当を出してきたが、シャルル・デュノアは無難な私を選択してきた。当たり前だ、この場にいる4人の女生徒…その内2人は意中の男に弁当を作ってきており、残りの2人の内1人は産業廃棄物、つまり油濃くても無難な私を選択する。あと暖かいし。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう……あはは…」
やけに遠い目をしているシャルル・デュノア。私は彼が女じゃないかという疑念があるせいか、一挙一動が女に見えて仕方がない…
「…?どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
これは1度…本気を出して彼の正体を探る必要がある。私はこの場で何故かそう確信したのであった。
とは言ったものの、いざ暴いてやろうとすると面倒なのが問題である。実際問題、弱みを握るというのは相手を従わせられる可能性の高い方法である。
しかし、私としてはあまり顔を見られたくないので、遠隔で…音声ソフトか何かで声を吹き替えたりせねばならない。まぁ、文字打ち込んで発音するタイプや、手紙だけのパターンを作れば問題は少ないだろうけど。
「五十冬さん、お先にお風呂いただきますわね」
「うん、わかったー」
私の気の抜けた返事を聞いてから、セシリアはお風呂に入る。それを確認してから、私は思案する。まぁ、向こうも男子として転入している以上簡単にバレたくはないだろう。
シャルル・デュノア本人は悪い目にあうことは無いだろうが、デュノア社の信用は地に落ちる。彼がそれを望まない人物かは賭けだが、もしデュノア社を盾にして従いそうなら……色々と操作もすることが容易くなるだろう。
「さて…私もお風呂入ったあとは寝るかなー…」
体を伸ばして、独り言を呟く私。この後はただ入浴と睡眠を行うだけだが……まぁ、特に問題が起こることは少ないだろう。
私はそう思っていた……のだが、まさか翌日に新たな面倒がこの学園に現れるだなんて、思ってもみなかった。
「え、えーっと……本日も皆さんに嬉しいお知らせがあります。このクラスにまた新しく転入生がやって来ました」
「……」
「え、えーっと……」
またか、また転校生か。2日連続の転校生、しかも2組にも凰鈴音という転校生がいるために私の知る限りこの短い間で3人も転校生が来ていることになる。
1人はおそらく織斑一夏の為、もう1人は同じく織斑一夏の為…だが同じ男子がいるという名目があるため、細かい理由は別。この三人目は一体どのような理由で来たのだろうか。
「ラウラ、挨拶をしろ」
「はい、教官」
……教官?今織斑千冬のことを教官と呼んだのか?という事は、彼女は織斑一夏ではなく織斑千冬のために来た……いやいやそんなことはどうだっていい。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「……それだけですか?」
「それだけだ」
くすんでいるかのように見えるが、艶のある銀髪。そして眼帯と赤い目…凰鈴音とも並ぶほどに小さいと思われる身長。まぁ特徴の塊である。
そう言えば…彼女の制服の改造の仕方、妙に独特である。長袖なのは変わらないが、彼女は女……の筈だがスカートを履いていなかった。男勝り…と言われればそうなのかもしれない。
しかし、妙にダボったいというか……主に太ももの部分が膨らんでいるかのような…そんな服装となっていた。
「……あ、えっと…?」
「貴様が……」
突然、ラウラが織斑一夏の前に移動する。世にも珍しい男子ISパイロットの確認という目でもなければ、織斑千冬の弟である織斑一夏をただ見ているだけという視線でもなかった。
敵意がある…私がそう認識した時、ラウラの手のひらが織斑一夏の頬を気持ちいい音を立てながら叩いていた。
「えっ…!?」
「っ…!?」
クラス全体が騒然となる。しかし、そんなことを気にしないと言わんばかりにラウラは敵意の目を織斑一夏に向けていた。
「…認めない、貴様が教官の弟であるなどと……認めるわけがない…!」
……凰鈴音は、織斑一夏に対する恋心のために日本に来たと言っても過言ではないだろう。
ならば、ラウラ・ボーデヴィッヒ……彼女はさしずめ織斑千冬に対する恋心のためにやってきた、
まぁ、こんなことを茶化して言ってしまうと殺し合いが行われかねないので、辞めておくとしよう。
だがまぁ……これからもっとめんどくさいことが行われることだけは、確かだろう。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい