「うーん…実に楽しそう」
ラウラ・ボーデヴィッヒに迫られていた日の翌日の朝、私はアリーナへと立っていた。
無論、グラウンドではなく見る側…観客席なのだが。何故そこにいるのか?私は簡単に見てみたかったものがあるのと、あの場において都合のいいことが起こったからだった。
「凰鈴音の甲龍、セシリア・オルコットのブルーティアーズ…まぁ相手としては不足ないでしょ」
グラウンドでは、セシリアと凰鈴音の2人が同時にラウラ・ボーデヴィッヒに襲いかかっていた。無論、不意打ちなどやライバル潰しなどといった陰険なことをする二人ではない。
むしろけしかけたのはラウラ・ボーデヴィッヒの方だ。まぁ…あの晩何があったのかを話すとしよう━━━
「━━━ん?」
実はあの晩、とある一通のメールが私の携帯に入っていたのだ。まぁラウラ・ボーデヴィッヒと対峙していた時だったので、素直に見せてもらえるか怪しかったのだが。
まぁ、都合がいいといえば都合がよかった。あまりにもタイミングが過ぎたので、正直誰かに見られているのじゃないかと思えるほどに。
「…ねぇ、メール来たけど読んでいい?」
「ふん、この場から逃げない限りは別に構わん。中身は見せてもらうがな」
「はいはいありがとう……これは…」
メールの送り主は、セシリアを脅迫している私のツテその1である。そのメールは、別段セシリアに関係することではなく私宛の直接的なメールだった。
「……おい、誰から送られてきた」
「……はい、どうぞ」
内容としては『日曜日また来て欲しい』とだけ来たメール。しかしメールの送り主の名前から察したのか、ラウラ・ボーデヴィッヒは私に蔑むような笑みを向けていた。
「ふん…貴様、余程獣のような生活をしてきたのだな。男という種しか出せない存在に、喜んで腰を振るとはな」
「はいはい、好き勝手……あ、そうだ」
「…?」
ふと、私は思いついたことがあった。メールを返信する許可をもらい、私はメールにこう綴った。『今度学年別のトーナメントがあるので、それに優勝することを条件にしたメールをセシリアに送ってほしい』と。
「ねぇ、私を信用出来ないって言ったよね?」
「あぁ、そうだな……なんだ、私が貴様を信用できるような手段を思いついたとでも?」
「いやぁ?これで、あなたが私を信用できるとは思えないよ。けど、その足がかりくらいには…なるかなって」
「ほう、どう言ったことだ。私にも利益になるなら……乗ってやってもいい」
『織斑一夏以外の専用機持ちを誰か潰して欲しい』というのが私の頼んだ事だった。本来ならば、彼女がそれに乗ることはまずないだろう。というか、勝手にやるつもりだったらしいが。
ドイツ軍も欲しているのだ。他の国の専用機の実力を…それに加えて、彼女の持つ専用機の戦闘データも併せて取りたいはずだ。
まぁ、私は彼女達の性格を少し教えてやっただけだ。『煽れば簡単に乗ってくれる』と。まぁそれ以外にも色々教えてあげたが……例えば、本格的に殺すつもりでやったとしても、織斑千冬辺りが止めに来るはずだとも。
「ふん…データで見た時の方が強そうに見えたな」
「何ですって…!」
安全装置の解除……要するに、生身にダメージを与えることも可能なモードに切り替えた上での、模擬戦…いや最早殺し合いにも匹敵するだろう。
「さて、私は…他の子達にこのことを伝えに行こうっと」
ギャラリーが多い方が、叩き潰された時の屈辱も凄いだろう。いい時に、いいタイミングで、いい作戦を思いついたものだ。
あのメールと、この叩き潰しが一致した理由……まぁ、はっきり言えば…セシリアにはそろそろ退場願おうと思っていたところである。
「特訓するにはアリーナしかないもんねぇ……セシリア」
よく言っていたこと…セシリアは何としてでも、勝ちに行くだろう。今回の学年別対抗戦…だっけ?それに勝てば、多分彼女は私のツテから解放されるだろうからね。
けどもし優勝できなかった場合…彼女は永遠に解放されなくなる。そういった約束をするためのメールを、男達に送らせたのだから。
「そして、叩き潰されたら…怪我をしてしまえばそもそも参加が出来なくなる。さて、一体セシリアは何をされちゃうんだろうね…私ちょっと楽しみだよ」
休日に何度か呼び出しをされては、長く外出しているらしいが…ふふ、今度ばかりは心が折れるんじゃないだろうか?
「…まぁ私としては、彼女の専用機がどう言った戦い方をするのか見てみたいだけなんだけどね」
どうにも、彼女のISには特殊なシステムが仕込まれているらしい。アクティブ・イナーシャル・キャンセラー……通称、AICと呼ばれるものがあるのだ。
このシステムは、集中力こそ必要になるが代わりに自らの正面にシールドのようなものを張ることで、物理的な物全てを停止させることが出来る代物である。
但し、あくまでも正面限定なので対象が複数ある場合は少し苦戦するのだとか。
「……むっ、織斑千冬が出る前に…」
織斑一夏、その後すぐにシャルル・デュノアがアリーナの強化ガラスを叩き割って、凰鈴音とセシリアを救助に入る。
しかし、遠近どちらにも対応している彼女のISにはさしものシャルル・デュノアも苦戦を強いられているようだった。
「あ、織斑先生よ!!」
「今更…?」
そして、織斑一夏がAICに止められてトドメをさせられそうな所で…織斑千冬が助けに入っていた。アリーナの防壁が破壊されると、教師が出ないといけないらしい。
私の目には、明らかに弟を助けに来たかのように思えるんだけど……というか、なぜスーツ姿の刀1本でISの攻撃受けてるんだあの人。筋力も化け物級か?
「決着は学年別対抗戦にて付けろ!それまで、私闘の一切を禁じる!!理解出来たなら早く戻れ!!」
「……ここまでか、まぁ色々と見れたしいいかな…」
「さて…私をいいように利用してくれたな」
「いやいや、貴方が勝手に乗っかったんでしょーよ……それで、どうだった?候補生2人の攻撃は」
「あんなもの、ろくな経験値にもならん…それよりも、セシリア・オルコットを連れ出したのは貴様か?」
「ううん?勝手に彼女が出て行っただけだよ。ただ…彼女がちゃんとやる気を出すように、少しだけ手を加えさせてもらったけどね」
「それが昨日のメールというわけか……」
色々あったけど、ひとまずやることは終わった。私としては、そろそろセシリアが退場してくれないと、次のステップに進まないから困るんだけど…
「……しかし、同室の者を売るとは相当な下衆だな貴様は」
「あれ?私が焚きつけておいてなんだけど…簡単にISで人殺ししようとしたあなたが言える義理じゃなくない?」
「……なんだと?軍にも所属していない様なやつが何を━━━」
「あのね、私ってISを使えることで調子に乗ってる女が大嫌いなの」
ニッコリと、私は微笑んでいた。当たり前だ、別に男をなんと言おうが私は何も気にしないが…それがISによるものなのならば話は別だ。
こいつは2人を挑発している時に、散々織斑一夏のことを馬鹿にしていたのだが…その際に出される暴言の数々が、私の兄を侮辱したあの女達を彷彿とさせていた。
「……貴様…」
「所詮ISが無ければ、貴方は軍にすら所属出来なかった可能性だってある。あの二人を倒したのがあなたの実力?いいや違う」
「それ以上言えば…」
「殺す?その袖の内側に隠してるもので?」
「っ…!?」
「あ、カマかけたんだけど当たってたんだ?」
にしても、私がわかりやすいのは感情的なせいかもしれない。実を言うと、考えなしに今は行動してしまっている。こういう直情的なことはもうしないと思っていたけど……自制せねば。
「…殺しはしない…が、少々落ちて貰うぞ…!」
そう言って、ラウラ・ボーデヴィッヒはナイフを取り出す。てっきりそれで私を刺し殺すのかと思っていたので、私はそれを叩き落とそうと動く。
ただ、持っている手の手首を叩くだけ…簡単だと思っていたが、
「っ!?」
「馬鹿め、殺しはしないと言ったろう?安心しろ、首を絞めて落とすだけだ…今までの会話は全て録音済みだ。貴様が一体どう言った人物で、どこの組織のものかは知らないが……全て教官に伝える。覚悟して……」
首を締めれば、気道が確保出来なくなって呼吸困難になる。まぁ、そうなればなんやかんやで気絶させられる。本当に全て録音されているのなら、気絶させられて起きた後には尋問室……なんてざらかもしれない。
まぁ……あくまでも、
「……それで終わり?」
「っ!?貴様なぜ喋れて━━━」
私は、その体制のままラウラ・ボーデヴィッヒの腰を掴む。馬鹿め、そもそも私の体は色々やるために改造済なのだ。首は元々刺されても、器官まで届かないように鉄板を中に敷いてあるのだ。
少々を首を絞められた程度では、私の呼吸器官が締まる事はない。まぁ首を絞められることは、考えに置いてなかったので驚いたことは驚いてしまった。
「は、離せ…!」
「残念、落ちるのは貴方の方だったね」
そのまま私は、腰だけを器用に稼働させて足でラウラ・ボーデヴィッヒの首を絞める。殺すつもりは無い、ただ私にしようとしたことと同じように…してやろうと思っただけだ。
幸い、AICを積んだISというものはたいへん珍しいものだ。そのまま私のISの力にしてやろう。
「ぐ、が……」
「助けなんて来ないよ、貴方がわざわざ人気のない所で私を襲おうとしてくれたおかげで、見つかりづらい時間と場所なんだもんここ」
ラウラ・ボーデヴィッヒの顔色が段々と真っ青になっていく。このままだと死んでしまうかもしれないが、まぁ問題ないだろう。
しかし危なかった、彼女が本当に刺しに来ていた場合場所によっては死んでいたかもしれないのだから。
「が━━━」
しばらく絞めていたら、グルンとラウラ・ボーデヴィッヒの目が回って白目となる。どうやら、気絶したようだ。
気絶したフリ……とも考えたが、足を外してからも動くことは無かったので特に問題は無いだろうと考えもした。
「丁度いいや……このまま私の部屋に連れて行っちゃおうか」
気絶した彼女のポケットなどを漁ってから、担ぎあげる。そして私は自分の私室へと急ぐ。見つかると困るのは確かだが、適当な場所に放置しても置けない。仕方ないので適当な理由付けでもしておく方が無難だろう。
というか、彼女の部屋の場所知らんし私。
「━━━」
「……ん?」
しばらく歩いていくと、どこからか話し声が聞こえてくる。声の主を確認しようと探すと、近くの橋の上に織斑一夏とシャルル・デュノアの2人がいた。
何故こんな所に2人で話し合っているのだろうか。私はふと気になったので、ラウラ・ボーデヴィッヒが本当に持っていた録音機を使って、その会話の録音を図る。
「……それにしても、ありがとう一夏」
「ん?何がだ?」
「トーナメントの事。僕を庇ってくれたんだよね」
「あぁ……なんかあって、お前が女の子だってバレたらまずいもんな」
……なんと、やはり女の子だったのかシャルル・デュノアは。私の予想は、やはり間違っていなかったのだ。
その2人の話し合いは少しだけ続いて、そして寮へと帰って行った。私達も、それに続いて戻るのであった。
忘れずに、彼女の専用機のデータも取っておこう。IS学園内だが…仕方ない。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい