「自己紹介をしますね」
私には兄がいた……とてもとてもいい兄だった。勉強を教えて欲しいと頼めば勉強を丁寧に教えてくれて、暇があれば私の為に時間を割いてくれるといういい兄だった。
そんな兄に、私も尊敬を抱いていた。子供の頃は兄と結婚する、と言っていたこともとても懐かしかった。
そんな兄が会社に就職した。当然、家族を含めた私達は祝いに祝った。その時私は何歳だっただろう……よく覚えていなかった。ただ、私と兄は歳が離れていた。普通の兄妹というには、少し離れすぎていると言っても過言ではない。海鮮物の名前のキャラクターが多い某国民アニメである、主人公の女性とその小学生の弟程には離れている。
大学を出て、大学院に入り……そしてとある企業に就職した。裕福ではなかったものの、それなりのお金はあった。それなりに幸せだったし、その幸せがそれなりに上下しながらも続くものだと思っていた。
「革新的なことを言いますね」
しかし、その幸せは突如壊されることになる。女性にしか装備できない『インフィニット・ストラトス』通称ISの発明……女性にしか装備できないという事が、世の中の女性達を調子に乗らせた。女尊男卑世界になったのだ。
そして、それによって生まれた事件……私の兄が殺されたのだ。ただ、鬱陶しかっただけだから…その程度の理由で兄は殺された。
当然、家族総出で証拠を集めた。状況証拠や、兄の服についていた女達の指紋……それらを集めて裁判所に提出した。悪意も殺意も確定であると、私達は確信していた。
「残酷さを語りますね」
結果として、罰金で10万円ほど払われた程度で終わった。刑期はもちろんあった……が、女達の親が代わりに金を払うということになり、罪相応の金額が支払われたことにより、罪に問われなくなった。
「壊れていく様を伝えますね」
私はそれからどうなったか。簡単な事である。司法が、国が仕事をしないのであるならば、有罪または死刑にならないのならば……私が処刑人となることに決めたのである。
「結果を、喋りますね」
女達の帰りのルートを調べ、時間も調べ、毎日毎日コツコツと移動ルートを調べていった。そして、最適な時間と最適なタイミングと最適なものと最適な方法と最適な作戦を用いて……女達を次々と殺していった。
ただし、あまりに関連性の高い殺人を連続で犯してしまうとバレてしまう可能性があったので、関係の無い人間を殺していくことに決めた。
「最終的なことをお教えしますね」
結果として、怖いほどに作戦は上手くいっていた。全く関係の無い赤の他人……老若男女関係なく殺すことに、初めなら抵抗がなかった。何だったら、女性が殺されたから…という理由だけで男性が犯人ではないかと決めつけていたこともあってか、全く私は対象に入っていなかった。普段から、いい子ぶっていたからだろう…真面目というのは、時に役に立つものである。
「……変な夢」
私は目が覚めました。そこは自宅でも実家でもない場所……無機質な壁と床に合わせて、薄く冷たいベッドで目を覚ましていた。気づけば寝ていたようだが、どうやら自分が過去を語る夢を見ていたようである。存分にいいことである。
「気持ちが忘れられなくなる……うん 」
そう言って、私は部屋を出る。嗚呼、私の名前はなんだったか…私の目的はなんだったか……いや、思い出せない訳では無い。しかし、毎日これを思い出していないと……どうにも頭の中の記憶がすり減っていく感覚に陥ってしまうのだ。
「……ん?」
突然、端末から連絡が届く……当然知らない番号であり、本来ならば出る価値もないが
「……何の用、S」
S、エス、えす……当然電話の相手はそんな名ではない。コードネームのようなものである。私がそう呼んでいるだけだが、わざわざ電話をかけに来るとは暇なのだろうか。
「……は?IS学園?」
言われたことは、学校に入学しろという事である。私は中卒…と言っても学校に通っていないだけなので、学力さえあれば入学できるらしいが。緩い、緩くないか…?
「……あぁ、なるほど…」
言われたことはたった一言。『篠ノ之束の親族が入学するぞ』それだけである。
けれど私はその一言だけで入学を決めた。女尊男卑世界を作ったのはIS、ISを作ったのは篠ノ之束……そして、その親族が入学するのであれば、利用しない手はない。
「悪いけど、最悪…貴方のやろうとしてることを破綻させるから」
私の目的は世界を壊すこと、混沌にすること……ではない。今私がいる組織が、そんな感じの目的だったかもしれないが私には関係ない。私がやる事はただ一つ。『篠ノ之束を地獄に落とすこと』である。
無論、そのような事は不可能だろう。可能な確率は小数点何位以下か…それでも、やるだけなのだ。
使えそうなものを、ただ使うだけ。
「……名前?あぁ、忘れてた」
学校に入学する際に、名前が必要だと言われた。しかし、本名そのまま入るのは些か問題があるだろう。故に、偽名が必要なのだ。自分の頭の中に、その名前をインプットしなければならない。
「……鬼村、五十冬…うんその名前でいく」
ふと、特に何のことも無く思いついた名前である。しかし、理由付けらしい理由を言わなければ彼女は納得しないだろう。
「……その学校、確か織斑千冬のいる学校だったでしょ。ただ、響きを似てる様にしておきたかった……まぁ、ただの嫌がらせ」
電話の向こうで、彼女が皮肉めいた笑いを微かに上げる。馬鹿にしている訳では無いだろう、理由がないことを隠したことを笑っているのだ。無論、それが伝わっているのは彼女もわかっているだろうが。
「……本名?」
突然、自分の本名を聞かれた。すっと出てこない辺り、自分の名前も相当摩耗させてしまっていたのだろう。だからといって、この名前を使うことは恐らく二度とないだろうが。
「……思い出した。高村……高村、文音」
綺麗な文章と、綺麗な声で喋りが得意な子になるように…などと言った願いが込められている、と教わった記憶がある。両親の少しズレた名前の意味を改めて頭の中で復唱しながら、覚え直す。
「……え?織斑一夏?」
突然上げられる男の名前。どうやら織斑千冬の弟らしく、同時に姉である千冬が親代わりになっているらしく、篠ノ之家とも姉妹&姉弟共にいい関係になっていたらしい……という言葉が、私にひとつの結論をもたらしてくれた。
「S、多分その弟…IS学園に来るよ」
相変わらず亡国機業はいい情報を調べてくれる。ならば、唯一の男が来るならば…私の作戦は、野望はもっと確定的になるかもしれない。
「だったら、入学するしかないよね……」
電話を切り、まだ見ぬIS学園に気持ちを昂らせる私。暴走気味かもしれないと自分でも認識できてしまっているが、最早止められないのもまた事実である。
この機会を逃す訳にはいかないのだ。
「……待っててよ、篠ノ之束…あんたに絶対一泡吹かせるから……」
果たして、それが成功するかどうかはわからない。けれど私は何がなんでも、篠ノ之束に復讐をするのだ。
出来ようが出来まいが、やるしかないのだ。この組織に入った以上は……
私がこの組織に入った理由、それは私が歪んでいたからだ。S…偶然私を見つけてくれた彼女が、私を組織へと誘ってくれた。
それまでの生活では私はホームレスよりもひどい生活をしていたように思う。この日本で、だ。
財布は擦らなかった。だが、いろんな人物に体を売っていた。一応この体は女なのだ……そして、私の顔はそれなりに綺麗であり未成年である。一応、未だ高校生ですらないこの体は『そういった男達』によく受けた。金をもらい、男達のツテからコネを得る。
そこから木の枝のように、私のコネを伸ばしていった。変態のお偉いさんにまで、私の根は伸びている。よくもまぁ売られて、男達の家畜にならなかったものだと思っている。
復讐において、殺しが脅しにならない相手もいる……本当に殺すか、殺さないかはその都度私が決めた。
まぁ、基本殺したけれど……例えば、加害者の女達に娘がいた場合とか……そういった場合は男達を焚きつけて、海外に売り飛ばさせた。このご時世、女と言うだけで男の客に随分と売れるらしい。いいことである。
まぁ、そのコネが今でも使えるかわからないが…少なくとも、亡国企業のコネは使えないだろう。そっちのコネが使えるなら、存分に使っていきたい所存である。
「……私の名前は…
そういうわけで、私のただただしょうもない、誰一人として得をしない
一応R-18小説です。読んでくれる方、これからよろしくお願い致します。
五十冬の見た目
-
黒髪ロング、胸はない
-
黒髪で肩までの長さ、胸はない
-
茶髪ロング、胸はない
-
茶髪で肩までの長さ、胸はない
-
なんでもいいけど眼鏡が欲しい