私は朝食を抜くハメになった、さすがに見ただけで……いや、正確には名前を聞いてこうなったのだから、下手をすれば顔を見る以前の問題かもしれない。
心の準備が整っていなかったため、あんな事になってしまった。しかし、冷静に考えてみると何故こんなところに篠ノ之束がいるのか疑問である。
やつは常に逃げ回っている。理由としては、いろんな国から逃げるためだ。しかし、その逃げる行為というのも半分遊びで行っていても不思議ではない。何せ、篠ノ之束なのだから。
とまぁそんなことは置いておいて、ここに来た理由を考えよう。奴が偶然ここを通ることは、まずありえない。何かしらの理由があってここにしたに違いないのだ。
そう言えば、妹である篠ノ之箒を探していた。彼女に関する何かを行うためにここに来たのだろうか?
何か、か。もしかしたらそれはIS関連のことかもしれない…というか実際そうだろう。
ISのコアは、彼女以外に作ることは出来ない。つまり、新しいISは100%作り上げられることは無いのだ。
だが、作り手である篠ノ之束はそれを無視することが出来る。新しいIS……あの様子だと妹は溺愛しているだろうから、新しいISという名のおもちゃを与えに来たに違いない。
「……なら、行くしかないか」
そして、私は……正確には専用機持ち達が呼ばれていた。このタイミングだとほぼ間違いなく篠ノ之束は現れる。彼女は身内である織斑千冬と織斑一夏も溺愛しているからだ。自分が認めた人物以外が視界に本当の意味で入らない…そんな人物なのだ、彼女は。
話がズレてしまった。つまりは、専用機に関する何かと篠ノ之箒に関係する何かが起ころうとしているということである。
「気が進まないけど……」
今回の合宿は、元々シャルロット・デュノアを相手するためだけに来たつもりだったが……とんだ災難である。ごめんよ私の体、ビックリさせすぎて吐かせちゃったよ。
「よし、専用機持ちは全員揃ったな」
と、織斑千冬からの確認がされる。しかし、本来はその場に居ないはずのメンツが1人…篠ノ之箒である。なんというか、やはりというか、どうやら篠ノ之束は妹に専用機を渡したようだ。
「待ってください、箒は専用機持ちじゃないです」
「それは……」
「私から説明しよう、実は━━━」
「ちぃぃぃぃいいいいいちゃああああああああああん!!」
間髪入れてないなあいつは…どこから湧いているのか、私の中の胃が積極的に胃酸を精製してくれていた。吐くためだけに。
しかし、そんな私の気持ちも察せられないまま織斑千冬は飛んできた篠ノ之束の頭をアイアンクローしていた。空中から飛んできた人間の頭を難なく片手でキャッチできるのは、果たして並の人間にできるだろうか。
「会いたかったよー!ちーちゃん!さぁハグハグしよう愛を確かめ会おう!!」
「うるさいぞ」
篠ノ之束は一体全体どうやってか、織斑千冬のアイアンクローをすり抜けて、いつの間にか近くの岩場に隠れていた箒に顔を無理やり合わせていた。
「やぁ!」
「……どうも」
「久しぶりだねー箒ちゃん、何年ぶりかなー?大きくなったよねー!特に…おっぱい!」
篠ノ之箒はどこに隠し持っていたのか木刀の先で姉を殴っていた。いや、ISスーツを着ているのに本当にどこに隠し持っていたんだ?その無駄にでかい胸か?
「殴りますよ?」
「殴ったァー!言う前に殴ったァ!!」
「うるさいぞ、自己紹介くらいしろ」
「えー、やだよめんどくさいなー」
「早くしろ」
なんというか、空気だけなら緩い。空気だけなら…だが。しかし、この女は気まぐれで世界の価値観を変えてしまった女だ。創作世界にいそうな、自分の研究が第1で世界なんざ知らないって科学者のタイプだ。
「私が有名な束さんだよー!終わり!」
「束って…」
「あのISの発明者で天才科学者の…」
「篠ノ之束か……」
専用機持ち達がそれぞれ反応をする。私は一応専用機持ち扱いらしいが、人柱機体の見事な生贄である。
「さぁ!お空をご覧あれ!」
そう言って指を天に向ける篠ノ之束。私は即座に上を向いた。このままだと吐きそうだったので、こうやってあの女を視界だけでも外すことが出来たのは僥倖である。
そして、見上げた直後に銀色の立方体が上から落ちてきた。
「さぁ御開帳!これが箒ちゃんの新しい専用機!名付けて紅椿!」
「私の……専用機…!」
IS、紅椿。赤と言うよりは紅色のIS。これが篠ノ之箒の専用ISということらしい。
「私が開発した第4世代型IS紅椿!さぁ、乗ってご覧箒ちゃん。既に箒ちゃんの体に合うようにフォーマットしてるからね!」
……一体いつ触ったのやら。久しぶりに会ったのはついさっきだと言うのに。しかし、本格的に合わせるのは今からのようで、直ぐにモニターを開いて弄り始めていた。
「……」
「はい、完了!とりあえず動いてみてよ!箒ちゃんの思っていたとおりに動くはずだから!」
その声と共に、篠ノ之箒は飛び立った。それも、見たこともないほどの速度で、類を見ないほどの速度で。
「早い…!」
「これが第四世代型の…」
ちなみに言うと、篠ノ之束を覗いた各国のIS開発期間はようやく第三世代を開発したばかりである。その事だけで、篠ノ之束がどれだけの化け物か理解できるだろう。
……はっきり言おう、恐らく白式を除いた全ての機体を紅椿は凌駕する。篠ノ之箒は、その紅椿の強さに翻弄されていないだけまだマシとも言えるかもしれない。
ISは、それより以前の兵器全てを無力化できる兵器という前提を持ってしても、その性能は私から見てみれば頭がおかしいの一言だった。
だからこそ、使いこなせてはいけない。安易に強くなりすぎてはいけない……篠ノ之箒は、自分自身が紅椿のリミッターとなっていた。
「……強いなぁ…」
「織斑先生ー!」
と、ここで何故か山田先生が登場。何やら大変なことが起こった様子だが…下着をつけているのか居ないのか、胸がバルンバルンしていた。もぐぞ。
「これを…」
「特務任務A級、現地で解決されたし……分かった。稼働実験は中止だ、お前達にやってもらいたいことがある」
……どうやら、紅椿や篠ノ之束の登場と言った以外にも厄介な事件が紛れ込んできたようだった。
side?
「補給は充分か?」
「はい!」
とある街、近くにそれなりの人数が固まっていた。それは傍から見たら現地人達からは、別の国の来訪者だということが理解できた。
当たり前だ、彼女達はドイツ軍のIS部隊……つまりはラウラの部下達なのだから。
「日本までもう少しだ」
「はい」
彼女達は、ドイツ軍に掛け合って日本に行くことを許可された。しかし、本命は本部には一切語っていない。理由としては、私的な理由だからだ。そもそも、掛け合わなくても独断権限で動くこと自体は可能だが、相手取るのはIS学園……下手をすれば全ての国を相手にすることになってしまう。
その為に、わざわざ掛け合って許可まで取ったのだ。
「しかし…こうもゆっくりしていても良いのでしょうか?」
「……日本に着くまでにISのエネルギーが切れてはかなわない。それに、時期としてはこのくらいがちょうどいいのだ」
「…と、言いますと?」
「IS学園は今、合宿を行っている。つまり、IS学園の土地から離れているんだ」
「……合法的にIS学園を襲うことが出来ると?」
「理論上……というか、言い訳がましいがな」
IS学園にいないのだから、IS学園を襲っても問題は無い。言葉としてはまったくもって理解不能な論理だが、それほどの無茶をしなければならないほどに、彼女達はラウラを助けたかったのだ。
「……だから、向かうぞ」
「「「はい!!」」」
彼女達は、死すらも覚悟して望んでいた。しかしそれは逆に言えば『死を望んでいる』とも言える。言葉遊びだが、そういうものなのだ。では、彼女達が望んでいないことは何か?それは殺されないままに、そして生きているとは言い難い人生を歩まされることである。
そんな目にあうとは、彼女たちは考えていない。せいぜい、酷くて刑務所の中で飯を食べるくらいにしか考えていない。後は、犯罪者たちの性欲処理か。
だが、世の中には抜け出せるはずなのに抜け出せないものがある。ラウラはそれにハマってしまっているのだ……割り切れることと割り切れないこと、その違いは自分から行うか自分が受けに徹するかの違いでしかない。
この少女達は、受けに徹することになるのを、まだ理解していないのであった。
side?
ここは全く別の所。IS学園もドイツ軍の一部隊も関係ない所。しかし、とある企業には関係がある場所。テロリストが関係している場所。
「んー……今どの辺だこれ……国の位置なんて正確に覚えてないからわかんないや…まぁいいや、五十冬ちゃんにはユーラシア大陸のどっかって伝えとこ」
適当な言葉が1人だけのその部屋に響く。カタカタとキーボードが鳴り、そこが無機質な部屋だというのをより強調させていた。
「そもそも探知なんて私のやることじゃないんだよなぁ…地図なんて大陸と日本しか覚えてないよ……あれ、日本どこだっけそもそも」
などと言いながら、キーボードを叩く腕は停めない。なんだかんだと愚痴を言いながら、その腕はただひたすらに動いていた。
「私の専門は医療だってのに……あの小娘、帰ったら腕を撃てないサイコガンに変えてやる」
その少女のことを思いながら、ただ不器用に真っ直ぐにひたすらにキーボードを叩き続ける。彼女は五十冬の主治医兼、サポーター兼、IS技師兼……その他色々な役柄があるが、要するに鬼村五十冬という少女の相棒的存在ということである。
「……この調子だと、着くのはもうちょっとだな…ISの速度が早いからこそなのか、早いといえども人形兵器という小型サイズだと言うべきなのか……」
戦闘機すらも凌駕する速度を出せるとはいえ、そのISのエネルギーは消耗される。消耗されたエネルギーを最小限に抑えるためには、逐一休まねばならない。
飛行機で行けばいいが、念には念を入れてバレない方法を取っているのかもしれないと、彼女自身もそう勘づいていた。不法入国だが、バレなければ犯罪ではないの典型のつもりなのだろうか。
「……ま、これ以上私ができることはないかな。伝えて、直して、治して……私がするのはそれくらいだし、出来るのもそれくらいだし」
1件普通のメールのような文章を偽って、五十冬にメールを送る。勘づくだろう、彼女ならと信用しているのだ。
ただ、向こうも向こうで何やら問題が起きているようだが……そんなこと、彼女からしたらしったこっちゃ無いことである。
「私もあの子も、末端も末端…亡国機業が何をしたいのかなんて一切知らないしわからない、伝えられてない情報は語れないし、知ることも出来ない。ググって分かれば簡単な話なんだけどね」
無論、ネットで調べて分かるようなことな訳が無い。そんな当たり前のことを言ってしまうほどには、今喋っているのは愚痴である。
「……さて、とりあえずもうやることないし寝よ」
それだけ呟いた後、彼女は本当に寝た。これ以上やってしまうと、彼女が怪しまれることと、逆探やデータが盗まれる可能性も考慮しなければならないからだ。
「あとは天のゆくまま、運を任せるしかないよ」
それだけ呟いて、彼女は自分の仕事を終わらせたのであった。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい