さて、このお話は私がシャルロット・デュノアと凰鈴音を打ち負かした少しあとのお話である。
あの後、残ったセシリアとラウラ。そしていつの間にか大怪我をしていた織斑一夏と、いつの間にか意気消沈していた篠ノ之箒が福音に終止符を打ったそう。
なぜ他人事のように話しているのか、実際他人事なのはそうなのだが、その間私は見事に気絶していたからだ。ではその間、捕まえた凰鈴音とドイツ軍以下略は、どうしていたのか?それは既に回収してもらっていた。ギリギリ船に乗せるのが成功したので、とりあえず海に飛び込んで、体の力を抜いていたらあらビックリ数日経過していた……というオチである。
でまぁ、本題はここから。細かくシチュエーションを付けることになってしまうが、福音を倒したあとかつ私とシャルロットが、二人きりになっていた時の話。
「鈴をどこへやったの」
「世界のどこかじゃない?」
「ふざけないで!なんで、なんで鈴が貴方に攫われないといけないの…!」
「私だって…分かるんだ?」
「……なんとなくだよ。あのIS、僕達の装備ばかりだった。他の生徒、って可能性もあるかもしれないけど……そもそも1番怪しいどころか、敵なのが確定しているのはあなたしかいない」
「それで、あのIS操縦者が私だって?」
「…そうであろうとなかろうと、少なくとも貴方が関係しているのは間違いない」
なるほど、確証はないようだ。まぁ一切顔を見せていないししょうがないと言えばしょうがない話である。
だが、それがシャルロットの怒りにつながっているかどうかはまた別の話だ。
「……なんで、僕じゃなかったの。決闘の相手は僕だったはずだよ」
「だったら一人で来たら良かったじゃん…なんて、そんなことは言わないけどさ。貴方自身よりも、貴方の周りにいるものを消していけばあなたにはダメージがあるかなって」
「っ……そのため、だけに…!?」
「そ、だからあなたは攫わなかった。まぁさらっても良かったけどさ…デュノア社の娘のあなたを攫うより、中華屋の娘の凰鈴音さらった方が良かったんだよね」
「……」
言わんとしていることがわかったのか、シャルロットは下唇を噛んでいた。そう、仮にもしデュノア社の娘であるシャルロットをさらった場合、1人の社長が娘を探そうとして躍起になるかもしれない。大事な娘なのか、なにか重要なことを握っている『道具』だからなのかはともかく。
それに比べて、凰鈴音の場合は本人は返さなくてもISさえ返せば向こうは納得してくれる。というか、お嬢様とかじゃないだけで国の対応はかなりずさんになる。特に、男が上司だと露骨にその反応は酷くなる。
「貴方は大事にされてる前提で、凰鈴音自体は国からは大事にされてない前提として、だったら凰鈴音攫った方がいいよねってなる訳で」
「仮にISを返しても、向こうは日本を糾弾するよ?」
「私には関係ないよ。それで日本が落ち着こうが荒れ狂おうが、私には一切どうでもいいこと」
「ま、どっちにしろ貴方みたいな性格の女を虐めるのは、これが一番いいと思っただけだよ」
「……下衆め…!」
「褒め言葉ありがとう、悪いけど私女の人が大の苦手だから……言葉だけ受け取っておくね」
勿論皮肉だ。もし私が負けていたら、負け犬の遠吠えになっていたかもしれないが……私は勝ってるので、皮肉ですんでいた。
「…鈴は、絶対に取り返す…」
「そりゃあすごい、頑張ってね」
私はそう言いながら、寝込んでいる布団を首まで被る。凰鈴音を取り返そうとするその心意気はいいが、本当に私でさえ場所を把握していないのだ。
特にどこかに表立ったアジトはなく、裏の方には存在している……という訳でもない。文字通り、ないのだ。そんなもんだから、中々同業者と会うことが少ない。仮の場所を集合場所だったりする時もあるが、今のところ私はアジトを知らないでいた。
さて、とりあえず一旦寝よっと。
「くっ……」
シャルロットも諦めたのか、私が寝たかもしれないと判断すると、特に何か暴力を振るおうとする気配はなかった。まぁ、単純に殺しても意味が無い上に、リスクがあるということが分かっているからなのかもしれないが。
sideシャルロット
僕は歯がゆい思いをしていた。わかりきった敵が目の前にいるのに、自分では何も出来ないことに。その敵に対して、自分が何かを成しても一切の成果が上げられないことに。
「どうして……!」
あの時、彼女はドイツ軍らしき人達を倒しきっていた。あの姿を見て、彼女がIS学園に通うただの一般生徒だと言われても信じる者は少ないと思う。
あのIS、僕達が二人がかりで挑んだにも関わらずほとんど苦戦をさせることが出来なかった。あの動き方は、まるで文字通りの意味で自分の手足のように動かしているとしか思えなかった。
「……」
相手は呑気に寝ていた。だが、彼女のISを奪う事が出来れば…これから敵が減るかもしれない。このISを提出すれば、彼女は少なくともIS学園に居ることが出来ない……なら。
僕はそう思って、待機状態になっているISを探す。彼女は2機、ISを持っている。もう一機、待機状態のがあるだろう……そう思って、起こさないようにゆっくりと彼女を跨ぐように体を彼女の上にする。
「━━━手が出せるって、本気で思ってたの?」
「っ!?」
気がつけば、僕は彼女に押し倒されていた。その顔は蛇のような…まるで、獲物を前にして舌なめずりをしている蛇のようだった。
しかし、その目は一切の光を宿していなかった。彼女の目を、初めて近くで見たが、その目には僕は移っていないようにさえ思えた。彼女には、また別の狙うものが━━━
「……そうだね、丁度いいし君も狙ってあげる」
「何を━━━」
両手をそれぞれの腕で拘束されている状態で、僕は一切抵抗ができなかった。それは恐怖を感じて…とかじゃなくて、純粋な腕力で出来なくなっていた。そして、それは足の方も同じだった。
一切動けない状態で、彼女は僕の着ている浴衣を丁寧にはだけさせていく。
「っ!?」
「まぁ、今は手は出さないから安心しなよ。私は……単純にはだけた貴方の写真を『上げる』だけだからさ」
「あ、あげるって……誰に…」
彼女は僕のその言葉を聞くと、キョトンとした表情で見てから直ぐに笑みを浮かべていた。僕は、その笑みを見て恐怖に駆られた。人の笑みを初めて怖いものだと認識していた。
「さて……私は何をどうするでしょう……か、っと」
そして、最終的に僕の着物の帯は外されて、完全に着物が崩れてしまっていた。直すのにしばらくの時間がかかるだろう。だが、何を思ったのか彼女は僕の上からどいていた。
「っ…!」
「おーおー、即座に直そうとするその心意気や良し」
「すぐにでも…!」
何をされるかはわからないが、僕は直ぐに浴衣を直していた。綺麗に、とまではいかないが少なくとも勝手に解けて崩れると言ったことは起こらないだろう。
しかし、そんなすぐ直していてもとある音で手遅れだと僕は悟った。それは、カメラのシャッター音だった。
「なっ……!」
「携帯持ってないと思ったの?滑稽だね」
そう、携帯のカメラで写真を取られていたのだ。僕はその携帯を取ろうと動く…だが、本当に病み上がりなのだろうかと言わんばかりの機敏な動きで、最小限だけ動いて僕を回避していた。
「なんで、そんなに動けて…!」
「いやぁ、頭が冴えちゃって冴えちゃってしょうがないんだよねぇ」
一体なんのことか全くわからないが、とりあえず彼女の頭が冷静に働いているのだと僕は理解することにした。そんなことはどうでもいいからだ。
「それに、そんな騒いでいいの?」
「え…?」
「織斑先生が、来ちゃうよ?」
その言葉で、僕は一瞬躊躇してしまう。織斑先生からしてみたら、僕達二人とも『被害者』なのだ。しかも、彼女の方が酷いことになっている……そんな状態で喧嘩をしていたら、僕が明らかに悪者になってしまう。
客観的に見たら、僕が怪我をした彼女を襲っているようにしか見えないのである。勿論、織斑先生が僕がただ彼女を襲っているとは思わないだろう。しかし、その理論でいえば目の前にいる彼女も同じ理論で織斑先生に守られてしまうのだ。
「……ま、安心しなよ。顔は隠してあげてるからさ」
「……一体、何を…」
「うーん、そうだねぇ…1ヶ月でいいかな…?」
「…?だからなんの…」
「この臨海合宿が終わってから1ヶ月、織斑一夏以外の男の人に声をかけられたら、イェスマンで過ごすこと」
「……もし断ったら?」
「凰鈴音の場所が本当にわからなくなっちゃうね」
初めから教える気なんてサラサラないだろう。僕だって、その事は頭で理解していた。しかし、『もし本当に教えてくれるなら?』という気持ちもあった。
一切信用出来ないのは変わっていないし、信用に足る情報を提供された訳でもない。けど、『もしかしたら』という気持ちが僕の判断を鈍らせる。
「それと、イェスマンでいなかったとしても案外バレるからそれも気をつけておかないといけないよ」
恐らく、彼女の仲間が僕に手を出しに来るんだろう。それを断ると、鈴の場所が…手がかりを完全に失ってしまうことになるのだ。可能性さえも潰えさせてしまうのは、とても惜しいことである。一夏の悲しい顔なんて……もう見たくない。
「……わかった」
「いいよいいよ、1ヶ月耐え切ったら…ちゃんと情報をあげるからね…と言いたいけど、ちゃんと渡すって証拠が必要だよね?」
「…そういうの、くれないと思ってた」
「いやいや、ちゃんとあげるよ……そうだねぇ…10日事に、航空写真をあげるよ。期限ごとに段々狭まっていくものをさ」
「……絶対僕にバレない、って思ってるの?」
「絶対バレないなんて言わないし、もしかしたらちゃんと助けられるかもしれない…とも思ってるよ」
笑顔で、ずっと話しかけてくるのが不気味でしょうがない。一体何を企んでいるのだろうか。
本当にそう思っているのか、実はそんなこと微塵も思っていないのか……その違いすらも、判別しようがない。
「じゃあ、どうして……」
「助けられるかもしれないとは言ったけど、そこから脱出できるとは言ってないし…ちゃんとIS学園まで連れてこれるのか、って問題もあるよね」
「っ……」
屁理屈だ。けど、確かにその通りでもある。極論の話だけど、北極とか南極に鈴がいた場合、ISだけで助けに行くのは不可能だ。それに、仮に手助けを入れられたとしてもそこの戦力が未知数だからどうしようもない。
「ま、どっちにしろもう君は意見を呑んじゃったしね。今更拒否するって言うのは許されないよ…わかってるとは思うけどね」
「……」
「じゃ、私はもう寝るから……林間合宿が終わっても、よきクラスメイトとして一緒に頑張っていこうね?」
side五十冬
その後、ものすごく重い空気と共に林間合宿は終了した。凰鈴音という少女1人が行方不明となったこの事件は、学園内でも表向きは誰も語らなくなったのだ。
けど、悪い噂も当然立つ。無論、シャルロット・デュノアにである。織斑千冬がいる所では、何も起こらないだろう。しかし、1組以外の彼女をよく知らない人物からしてみれば、『凰鈴音が連れ去られたにも関わらず、さらわれなかった女』として映るのだ。それが国単位としても同じだったのか、中国はフランスを糾弾しているらしい。代表候補生とはいえ、大事な甲龍を奪われてしまったにも関わらず、フランスはただ気絶させられただけで特に何も起こらなかったからだ。
さて、国の話はともかくとしても……前は男として偽って入学し、今回は凰鈴音の拉致…こんなことが続けば、性根が悪い奴らからどんな目に遭うかは予想しやすいことだ。
まぁ、下手なことは出来ないので隠れてするか…それとも陰湿な手口を使うかは別だが……正直な話、私でさえここまで上手くいくのは出来が良すぎると思っている。
「まぁ、それでどうなろうとも私は関与しないけどね」
それが私のシャルロット・デュノアに対する考えである。どうなるかは全くわからないが、とりあえず退屈はしないようで……彼女には、色々と頑張って欲しいものである。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい