朝早く、私は目が覚めていた。ササッと朝風呂にしてから、着替えて部屋を出る。この時間、目が覚めていたとしても本の数人ほどだろう。こんな時間では、アリーナの許可すら取れやしない。
太陽が登り始めて……そんなくらい、早い時間である。単純に目が覚めただけなのだが、偶にはと思って外を歩いていた。
朝早く外に出ると気持ちいいというのがあるが、夏限定だろうか?少し涼しめの空気が、肌をほのかに冷やしてくれる。夏と言っても、既に二学期という状態なので終わりも近いのだが、それでもまだまだ昼間などは暑い。
「寒っ」
開幕この一言だが、寒いと感じたのはこの直前…つまり、先程まで本当に心地よい涼しさだったのだ。なのに、急に寒く…というか湿気てきてる気がする。肌に水がついてる気が……
「おやおや、こんな朝早くに起きるなんて勉強熱心な生徒だね」
「……えっと…」
目の前にいるのは、水色の髪をした人。制服を着ているので生徒なのは間違いがないが……先輩だろうか、年上という雰囲気を感じる。まぁ、お姉さんぶっているだけだろうが……あと着痩せするようだ。胸がデカいのを私は見逃さない。
「さて、最近1年生のことで妙な噂が立っているんだけど…君は知っているかな?」
「妙な噂ですか、生憎私はそういうのに疎いんですよね……あの、ところでどちらさ」
「主に代表候補生の事なんだけれども……例えば援交、いかがわしいアルバイト…そんなことを行ってるなんて噂が、広がってる」
「いやだから」
「さて、そんな噂は聞いたことがないかな?」
誰かを聞きたいのに、徹底して遮られてしまう。というか、そんな噂を知っているかどうかを私に聞くなんて、答えがわかりやすいことをするものだ。
「ここで聞いてるって答えたらどうなるんですか?」
「んー……突き出すかな、君を」
「根も葉もない噂をバラまいている元凶として?」
「代表候補生達に、そういったことをさせている元凶として」
ほら、やっぱり分かりきっているじゃないか。何故いちいちそんなにまどろっこしい事をするのか、私は理解に苦しむね。
「はぁ……私が、元凶」
「物的証拠は残念ながら出せないけどね?」
「つまり状況証拠はあると?」
「あなたと関わった子達の態度が、あからさまに変わっていたらそんな噂嫌でもたつと思うんだけど?」
どうせ物的証拠も持っている癖に、何を誤魔化しているのやら。しかし、わざわざ私の目の前に現れてこんな話するなんて…どこまで真相にたどり着いているのやら。
というか、本当に誰この人……私全然わからんのだけど。
「貴方が学園に害を成すのなんて、分かってるもの…だから、さっさと仕留めさせて欲しいワケで」
「……そんな貴方は、一体だあれ?多分、というか貴方先輩かつ代表候補生の人だよね?」
「さて、私は誰でしょう。『A:学園長』『B:理事長』『C:委員長』」
「嘘つき、その中に回答ないでしょ?わざわざ避けた辺り生徒会長とかが答えじゃない?」
「さて?私はそれに対して答えを用意する気は無いわ。だって……
その台詞、そっくりそのまま返させてもらう…と言いたいところだが、カリオストロは使えない。ここでいきなり侵入者が現れたら、朝起きていた私が完全に疑われる。それだけは避けたい。
「そんなこと言ってる場合じゃなさそう…!」
うっすらと、私の体の1部分…のさらに1部に水が集中していく。まるで、私の体が縛られていくかのようにその部分に水が生成されて行く。
生成……無から有を作り出すのは不可能だろうから、ナノマシンで水に見せかけているだけか、それともナノマシンで水を集めているかまでは分からないが。
「貴方、体の至る所に鉄を仕込んでいるのよね?関節、首、そして臓器周り……体そのものの強化をきちんと仕込んでいる」
「だから?」
「貴方の体内に水分を送り込んで、中から錆びさせるわ」
随分と、えげつない技を使おうとしていらっしゃる。しかしこちらとて奥の手は用意しておくものだ。鉄を仕込んでいるんじゃなくて、ちょっとしたギミックを入れているのが私の体なのだ。
「うぐぐ…!」
「無駄よ、手も足も固定させて貰ったから…貴方は絶対に動くことができない。話してもらうために、口だけは自由にさせてあげる。舌は噛ませてあげないけど」
「うぐっ……」
手足は縛られて、動けない状態。何を喋って欲しいのか口は開けさせてくれていた。しかし、舌を噛もうとすれば即座に邪魔されるだろう。
しかし、口を残しておいたのは残念だったな。
「……」
「…?そんなに口を勢いよく開けているところで、勢いよく口を閉めようとしても邪魔するけど?」
「……ふん!!」
少しだけ力む。別に変な意味はないが、これはちょっと私の体でしかわからない感覚なので、どう言った操作をしているのかは省かせて頂く。だって、めちゃくちゃ感覚頼りの説明しかできないもんこのギミック。
まぁ、力むとどうなるのかという話だが……
「は!?」
流石に予想外だったのか、水色女はサッと避ける。しかしISの操作がほんの少しほんの一瞬緩んだので、そのままぶち抜くように拘束から逃れる。
そして、ついでにこの湿度の高い地帯から抜け出すようにする。恐らく、効果範囲はそこまで広くないだろうし。
「くっ……逃げられた…まさか、あんな隠し芸があるなんて……!というか、舌の先端がいつの間にかなくなってるし…」
因みに、舌の先端と舌の本体は細く丈夫な紐で繋がってるのでリールでまきあげたら簡単に回収が可能なのである。便利である、はっきり言うと。
「うわぁ…あんな湿度高いところいたせいか、何か服の方もぐっしょり濡れちゃってるよったく」
私はそう言いながら、時間を確認する。走りまくったせいで、正確な時間を確認できなかったのだ。まぁ、別に確認しなくても結構早めに起きたせいでまず遅刻する事がありえないのだけれど。
「時間があれば十分に乾かせるかな……」
問題はこっち、服が乾くかどうかである。暑がりと言っても、全身の服がびしょ濡れになるまで汗をかくほど暑い訳でもないのだ。それに、運動していたとしてもとんでもない量をこなさないといけないので、結局の所乾かさなければ異常自体だと認識されてしまう。この辺にびしょ濡れになるような場所なんてないし。
「にしても、ほんと誰だあれ…」
生徒っぽかったし、クラス委員長や生徒会長なんていう予想がたっているものの、なぜ今小手調べするような真似をしたのかが気になってしょうがないのだ。だって、さっさと捕まえておけばいいのにあんな試すような真似をするっておかしくない?
「ま、いいや…とりあえず部屋戻ろっかな…ドライヤーで乾かすしかない…」
というわけで、私はさっさと部屋に戻ることになったのであった。
「まぁ、五十冬さんどちらにいらしてたんですの?」
「え、ちょっと朝早く起きたから散歩でも…って思ったんだけど……つかなんでもう起きてるの?」
「お弁当を作らないといけないので…」
そう言えば、こう見えてセシリアは弁当派だった。学食で食べることももちろんあるが、自分の口に合うものくらいは自分で作らなければならないと思ったらしい。
まぁ、いつの間にか私の分までまとめて作ってくれてるから結構助かってるんだけど。
「……それにしても、何故服が濡れているんですの?」
「あー、えーっと…汗だよ汗」
「汗にしては…多くありませんか…?」
「発汗作用凄いから私」
「そ、そうですの?」
「とりあえずシャワー浴びてくるから、朝ご飯一緒に食べようね」
「は、はい……」
絶対ごまかせてないけど、この位のゴリ押しじゃないとセシリアは騙せない。いや、騙せてないけどとりあえず押して押して押しまくるしかない。疑ってるだろうけど、押していくしかない。
「朝ご飯、何が食べたいですかー?」
「ジャムパンが食べたいー」
体を温めながら、適当な会話をする私達。私の言うジャムパンは本格的なものじゃなくて、市販で売ってる数百円単位のものだが…偶にセシリアは祖国で売ってるジャムを使う時がある。ごめん、口に合わないんだよ私の。
「はい、ストロベリージャムのパンですわ」
「え、何作ったの?お金かかるでしょ」
「そうでもありませんわ。たまには五十冬さんもお料理を作ってみてはいかがですか?」
私、一応一人暮らしを賄えるくらいには料理作れるんだけどね。何故かパスタを作っても誰にも認められない…何故だ……
「いや、私はたまに作って…」
「茹でて和えるだけの、簡単パスタを本当に調理してると思っているのですか?」
偶にこうやって、セシリアは怖くなる。早く堕ちさせないと、私が懐柔されてしまう気がする。ギャグ的なノリに見えるけど、実際駄目になるくらいに甘やかしてきそうだし。
「……」
「五十冬さん?」
「さて、お風呂気持ちよかったしさっさと着替えて教室行こっか」
話を無理やり終わらせる。体を超高速で拭いて、なおかつ着替えも高速で終わらせる。セシリアの話を聞いていたら、着替える暇さえ与えられ無さそうだ。
髪はドライヤーで乾かしたいところだが、セシリアに迫られる気がする。
「ちょ、ちょっと五十冬さん?」
「あー、早く行かないと遅刻しちゃうなー!」
因みに今は朝の6時だ。しかもここは寮なので、8時に起きようが準備さえ早く終わらせてしまえば、余裕で教室に間に合うのだ。残り2時間、どこで時間を潰すかは私の気分次第だ。
というか、あの水色の女に鉢合わせる可能性もある。恐らく、鉢合わせる前に仕掛けてくると思うので、さっさと走り回って撹乱でもしておこう。
あ、アリーナにでも行けば情報が手に入るかな?
「……朝早いとはいえ、6時だったら起きて外に出てる人もいるだろうし……聞いてみる価値はあるかもね」
その際、どうやってその女と出会ったのか…なんて聞かれたら、どうするかまでをちゃんと考えておかなくてはならない。出会う確率が低い人物だった場合、怪しまれる可能性もあるからだ。
「じゃあセシリア!お弁当よろしくね!!」
「え、ちょっと……行ってしまいましたわ……」
セシリアには悪いけど、あの女はさっさと潰す必要がある。ただ、他の生徒達とは違ってちゃんとした訓練も受けているのは間違いがない。
それに、ISも専用機だろうし……相手するのは骨が折れそうだ。カリオストロでは勝てそうにもないし、サクリファイスなんて以ての外だ。そもそもあの機体、まともに戦闘できる気がしない。
「とりあえず……めぼしいところ当たってみるかな……」
織斑千冬、または山田先生なら何か知っているかもしれないが…この2人にはなるべく聞かないようにしよう。教師という存在は、あまり手を出して面倒事にしたくないのだ。
「さて…とりあえず行ってみるかな」
ひとまず私は、セシリアから逃げるためと情報収集、後あの女になるべく鉢合わせないように祈りながら、外を走り回るのであった。
どこまで相手を増やすかを考えてます
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい