sideシャルロット
「……」
僕は寮でぼーっとしていた。特に率先してやることも無い、というのもあるけど……ラウラがいない。朝起きたら、既に姿が見えなくなっていた。それだけならいつもの事だけど、アリーナにもどこにも姿が見えないのだ。
本日は休み、特に必要そうな買い物に行くとも聞いていない。ご飯はまだ残ってる。となると━━━
「あそこ、なのかな……」
前に一度行ったあの路地裏の建物。ラウラとセシリアが、男性に股を開いて腰を振っているあの異質すぎる空間。何をしているのかはわかるし、それがどう言った意味を持つのかも理解している。
「……」
嫌な記憶が蘇る。薬漬けにされ、散々に犯されて捨てられたあの日。全く関係のない男たちにも犯されて、僕自身…心のどこかでトラウマとなっていた。
「僕、は…」
自分の身を守るか、それともラウラを助けに行くか……二つに一つである。いや、初めから僕の答えは決まっている。ラウラは一夏を取り合う仲だけど、それ以上に……僕の親友なのだから。
少しだけ、歩きながら整理してみたことがある。ラウラと鬼村五十冬の関係性である。恐らく、事の発端はラウラが転校してきた日から僕と一夏、鬼村さんとラウラの2組で戦ったあの日までに…ラウラは何らかの理由で彼女に従わされていたのだ。
「だから、不自然なまでに怯えてたし……休みの日にはどこかに出かけてたんだ……」
恐らく、初めの1回で脅しの材料は手に入れられてしまっただろう。だから、彼女がいなくなったあともラウラは行かなければならないのだ。
「セシリアは…どうなんだろう……」
脅された事はそうなのかもしれないが、鬼村五十冬が関係していないとは思えない。けれど、彼女に直接手を下された訳では無いのか彼女に対しての信頼感はかなり高いと思えた。
「……じゃあ、一体誰にあそこに…」
全くの別件で連れていかれた…というのは、まず有り得ないだろう。あそこまで綺麗に行くとは、0とは言えないが可能性は限りなく低いだろう。
「━━━シャルロット・デュノア令嬢で?」
「…誰?」
突然声をかけられた。しかし、僕はその顔に見覚えはなかった。全く知らない人だが…わざわざ令嬢と付けている以上
「私は本社の物です、話すことがございますが……ここだと人目を引いてしまう。一旦路地裏でも構いませんか?」
「……ん、分かりました」
いつでも即座にISを開けるように、準備だけは整えていく。一応従っておくことにするけど、怪しいことに変わりはないのだから。しかし、相手もそのことは分かっているのか一瞬だけ僕のISに目線を向けた後に背を向けて歩き始めていた。
「…それで、話ってなんですか?」
路地裏に入り、少しだけ歩いた先で僕達は話し始める。向こうから話しかけてきたにも関わらず、僕がいざ質問したら固まってしまっていた。どう言えばいいか、分からないのだろうか?
「あー……その、えっと…」
「…ごめん、僕は忙しいんだ。今すぐに話せないような内容なら、さっさと行かせて貰うけど?」
「あぁ…いや、すみません…その、とても言いづらいのですが…シャルロット様、貴方様は下手をすればデュノアの名を外される可能性があります」
「え━━━」
男性が発したその言葉は、僕の頭の中でひたすらにループしていた。僕がデュノア社の名前を語ることを許されなくなる……それは一体どう言う事か。
別に、デュノアの名前に執着がある訳じゃないが……後ろ盾がなくなれば、僕は完全に居場所をなくしてしまう。IS学園にも、故郷にも何ら帰る場所がなくなってしまうのだ。
最悪、退学もありえる。
「な、何でそんなことに……」
「…貴方様の痴態が乗ってある写真や動画が、匿名で送られてきました。誰が送ってきたのかはわかりませんが、しかし合成にしては自然すぎるその写真を見て……あなたの父親がそう判断しました」
匿名のものを信じるのか…と叫びたくなったけど、実際に起きているであろう写真をわざわ選んで送っているのだろう。事実僕は『そういったこと』をさせられていたのだから、何ら反論することは出来ないことなのである。
「…父に直談判してみます。例え何を要求されようとも…」
「……それが、そうもいきません」
「何故!?」
「このことが世間に知られれば、デュノア社は大きな損害を伴う。貴方は、自らの手で……自分の身を守れる場所を全て破壊していったのです」
「そんな……」
「デュノア社に戻ってきても、おそらく門前払いがいいところ…IS学園には辛うじて通わせてもらえるかもしれませんが、貴方の今後の対応次第では…ISも、学園での生徒という立場でさえも無くしてしまいます」
全てをなくしてしまえば、僕はどう足掻いてもダメになってしまう。いずれ、この事も学園にバレるかもしれない。だからこそ、デュノアの名前を外されるかもしれないという通達が来たのだろう。
「でも、僕は…」
「例え、どんな理由があろうとも…自分の身を考えられないようでは話にならない」
その事だけを告げて、男性は去っていった。これ以上『あんな事』をすれば、僕はデュノアの名前が使えなくなる。ISも何もかもをなくし、校則違反として学園からも罰せられる可能性が非常に高い。
「…相談、できる人……」
一夏は駄目だ。まず間違いなく逆上してしまう。そうなってしまうと、白式が一夏から離れてしまいかねない。では織斑先生や山田先生は?こちらもダメだ、先生という立場上…僕を守るなんてことをしたら、公平性にかけてしまう。それに、理由もなく彼女達が私的制裁を加えてしまうのも問題である。
「と、なると……」
僕は、先日交換した電話番号に連絡する……あの時は無理やり電話番号を入れられたけど、こんなことになって、ようやく発揮出来るなんて…順序が逆だったら、僕はこんなことになってないかもしれない。そこだけは、少しだけ恨んでしまう……そう思いながら僕は電話をかける。
「もしもし…『楯無さんですか?』」
恐らく、織斑先生に次ぐかつ先生以上に動ける逸材なのは…生徒会長である更識楯無さんだけだろう。
side楯無
「なるほど…確かに、それは一大事ね」
「多分、セシリアとラウラは同じところに…」
「……分かったわ、私がなんとかしてくる。相手は、女尊男卑以前の…違法集団なんだもの…何とかしてあげるわ。貴方はここで待ってて?」
私はそれだけを伝えて、教えられた場所へと向かう。相手は女性…それも、若い少女を食い物にしている外道集団。生徒会長の私が動くのはグレーだけど、生徒が危険な目に遭わされてるって言う話なら…先生よりも迅速に動ける。
「ここを曲がって……っ!?」
「あれー?生徒会長さんじゃないですかー」
ふと、一切の気配を感じさせることなく私の目の前に少女が現れる。確か…新しく入ってきたマライア、って子だったかしら?この子も、一応専用機持ちのはずだけど……
「どうして、こんな所にいるの?」
「私が休日にどうしてたって……生徒会長には関係ない話なんじゃないですか?」
「場合によってはね……風紀を乱すような、違反を犯していた場合は全く関係がないとも言えなくなるわ」
ニコニコと、私と話しながらも笑顔を絶やさない彼女。けれど、私の動きに合わせて最小限で、次の動きを止めに来るその動きは、紛れもなく時間稼ぎをしているようにしか感じられなかった。
「ふーん……なら、こんな事してる生徒は放っておけないわけだね?」
どこからともなく取り出され、投げ捨てられる5枚の写真。1つは、シャルロットちゃんの写真だった。明らかにおかしな、薬を打たれているというのがわかる顔のまま、犯されていた。
「……悪趣味ね、彼女達の痴態を見せて動揺を誘おうとしたって………『5枚』…?」
私の頬に、冷や汗が流れる。私が認識している限り、被害にあっているのは一夏君の周りにいる3人の専用機持ちの子だけ。篠ノ之ちゃんは、まだ被害にあっていない。だから、写真がこの場に無いのだ。
そして、残り4枚…それは今はいない凰鈴音ちゃんを含めた他の子達の写真。どこから入手したのか、よりも…『やはりスパイだったか』という確信に変わっただけであった。
だったら…もう1枚はなんなのか…私は、その五枚目の写真を見て…驚愕した。見覚えのある水色の髪の少女が、拘束されている写真だったからだ。
「簪、ちゃん…」
「崩したね?今、その余裕を━━━」
「はっ…!?」
一瞬、たった一瞬の…その油断が私の命運を左右した。部分展開されたISの一撃が、私の鳩尾に入る。骨が折れてしまったかどうかの確認が出来ない。その前に、私の意識は……その一撃だけで刈り取られてしまったからだった。
sideマライア
「いやぁ、こんな簡単に引っかかってくれるなんてねぇ…」
私は、通信機器を持って独り言を話す。その独り言は通信機の向こうにいる人に…きっと届いてる。
『分かってると思うけど……』
「分かってますよお姉様!更識簪には手を出さない、それが決まってたことですものね!」
『……前から言ってるけど、私と話す時くらいその口調辞めたら?』
「いいえお姉様!私はお姉様を愛してるんです!だから、言葉は絶対に丁寧でやらないといけないんです!」
『……まぁ、いいや。更識簪は、こっちに情報流してくれるいい子だからね』
更識簪、そこに倒れている更識楯無の妹……らしいんだけど。何で私たちに協力するかはよく分かっていない。その辺、お姉様は知ってるんだろうけど…
『……今、何で更識の家の出の子が手伝うか…みたいな事考えたでしょ?』
「まぁ、はい……」
『簡単な事だよ、姉妹は仲良くなくて…その劣等感を拗らせちゃったったまま後回しにされたってだけ』
「……天才で最強の姉がいて、世界で唯一の男のIS操縦者が優先されてしまったのが原因って事ですか?」
『相変わらず、頭回りすぎ……でもまぁそういう事』
「……私には分からないんですけど、それが理由なら随分と小さいような……」
『本人にとってそれがどう言った意味を持つのか……他人から見たら小さな事でも、本人にとっては大きな意味を持つものなんだよ…じゃ、私簪ちゃんとイチャイチャしてくるから』
「え!?ちょっと待っ」
通信はそれで切られてしまった。私のお姉様とイチャイチャしようだなんて……更識簪絶対許さない!!
side五十冬
「……誰から?」
「私の愛しくて鬱陶しい人から……で、本当に良かったわけ?」
「いいよ、事実はねじ曲げてでっちあげるものだし」
マライア…Mって呼ぶと怒られるんだけど、とりあえず彼女からの連絡を断ち切って私は更識簪と一緒にいた。彼女は元々織斑一夏よりも早い段階でISを貰える予定だったのだが、織斑一夏がISを操縦してしまったことにより、事実的に制作は凍結。代わりに白式に全てのスタッフが回されているという事態が起こっていた。
「ねじ曲げる、ね……まぁその辺はマライアに任せてもいいと思う」
「…信用できるの?」
「彼女は……私の知る限り指折りの天才の猛者。人を扇動することも出来て、実力も合って……それでいて柔軟な思考と豊富な知識を持ってる。
でも性格は違う。例えて言うんだったら、更識楯無が上から引っ張りあげる当事者だとすれば、マライアは煽るだけ煽って影から傍観を決め込む観戦者」
「……信用できなくなってきた」
「まぁ、今の説明で信用できたらすごいよ……ただ、実力は本当にある。加えて、ISの相性は…更識楯無ととてもいい。更識楯無のISの天敵とも言える」
「そんなに?」
信じられない、と言った顔をしている簪。まぁ正直ありえないとは思うだろう……実際、私も信じられなかった。彼女がそのISを貰ったのがつい最近だったこと。それもあって、余計に信じられなかった。
「彼女のISの名前は、
「……朱雀、玄武、青竜、白虎の四神の事?随分とまぁ…かっこいいネーミングだね」
「そう、それでいて実力もあるしISも滅茶苦茶強い……断言する、更識楯無は絶対に彼女には勝てない」
「……なら、信じる」
簪はどうやら信じてくれたようだけど……理解しているのだろうか。私達に協力するのは、それだけ世界の敵になるのだということを。それとも……彼女もまた世界が憎いのだろうか。彼女が何を思って、そして何を考えて私達の協力をしているのかは……全くわからないままなのであった。
五十冬の見た目
-
黒髪ロング、胸はない
-
黒髪で肩までの長さ、胸はない
-
茶髪ロング、胸はない
-
茶髪で肩までの長さ、胸はない
-
なんでもいいけど眼鏡が欲しい