side一夏
「はぁ……」
俺はため息を着いていた。現在、生徒会による織斑一夏の部活動貸出キャンペーンが始まっているのだが……それは原因ではない。原因というのは、そちらではなく生徒会……正確に言うんだったら、生徒会長の更識楯無さんのことである。
「……」
会えない、と言えばまるで恋人を求める男のように聞こえてくる。そうと言えばそうかもしれないし、そうじゃないと言えば……そうじゃないかもしれない。
「一夏さん……」
「……ん? セシリアか……どうしたんだ?」
「顔が強ばってましてよ? 一体……どうなされたのですか?」
「いや……ちょっとな……大丈夫だ、1人でどうにもなりそうになかったら話すから」
「はい……」
今現在、テニス部に俺はいる。そして、テニス部にはセシリアがいる。楯無さんのことを話そうかと悩んだが、如何せんどう話せばいいかよく分からない。
まだ、俺が避けられているだけ……という状況なのかもしれない。けど、会わないと……会わないと、あの日の事が理解できない。
『ごめんね……』
あの時、俺は気がついたらベッドで横たわっていた。多分、楯無さんに気絶させられたんだろう。多分、あの人は…………あの時言っていた目標は達成している筈。つまりは、そういう事だ。俺だって子供じゃない……何をされたのか、それがどういう行為なのかくらいは理解出来る。
「……会って、話をしないと……」
「ねぇ、織斑君……ちょっといいかな……?」
ふと、俺に声をかける人がいた。テニス部……の人ではなかった。俺はこの人のことを一度見た事がある。確か、箒の入ってる部活……剣道部の先輩だった。
「どうしたんですか?」
「ちょっと、篠ノ之さんの事で聞きたいんだけど……」
「箒の事……? 何かあったんですか?」
「何かあった、って言うか……なんか雰囲気がおかしいって言うか……」
しどろもどろになりながらも、先輩は箒の様子がおかしいということを俺に伝えてくる。
『そう言えば』と……俺も思い当たる節が幾らかあった。ココ最近、箒に声をかけても上の空の返事だったり、一緒に飯を食べようとしたら離れていったり……色々あったのだ。
「……そう言えば、シャルも……」
シャルも、もっと言うならラウラもだが……何処かおかしい。前まで、俺が声をかけたら少し身構えていた程度だったのが、ココ最近俺を露骨に避けているような気がしていた。しかし、理由は当然理解できない。
「……何か、一年の専用機持ちだけ様子がおかしくなってるってこと?」
「……セシリアは別に、そんなことは無いんですけどね……?」
他に一年に専用機持ちがいるんだったら、その人にも話を聞きたいけど……そう言えば、2組に新しい人が入ってたけど……確か、スパイを疑われてたんだよな。
話に行く……べきか……?
「━━━行くしかない、か」
ひとまず、テニス部の用事が終わってからである。その時に……2組の新しい転校生と顔合わせをしておこう。
「織斑一夏君、でいいんだよね?」
「あぁ……確か……」
「マライアでいいよ、織斑君。それで……何の話かな?」
「単刀直入に聞くけど━━━」
「生徒会長更識楯無の事? それとも、一年1組にいるセシリア・オルコット以外の専用機持ちの事?」
「っ!!」
俺はその言葉で、一気に気を張った。相手に隠す気がないというのは、ある意味で好都合かもしれない。証拠なんて、取り放題だからだ。
「なんでその事を聞きたいと思ったんだ?」
「簡単だよ、最近避けられてるって自分で言ってたんでしょ? 彼女達から」
「……お前が、それの元凶か?」
「元凶って……言い方が酷いなぁ……ただ私は、織斑一夏って男の彼女を見繕ってあげようって思っただけだよ?」
何が言いたいのか、俺にはさっぱり理解できなかった。一体、何が目的で俺達に不和をもたらしているのか。
「何が目的だ?」
「私のお姉様の目的……遠回りをしてでも、確実に叶えたい願いの為」
「……まさか、お前まで束さんを殺したい……なんて言うのか?」
「逆になんで、彼女を殺させないようにしてるの?」
「なんでそこまでして束さんを殺したいんだ」
「簡単な事……世の中には、悪意を持たない悪がある。それが今回に限っては巨悪で、篠ノ之束という物だっただけ。分かってくれないかな?」
「分かりたくない。人殺しをする事に、理由はあるかもしれないけど……それを盾にするのは、一番だめだ」
「じゃあ、盾がなかったら盾があるよりマシってこと? そうやって目を背けるから、IS社会の闇に気づかないんだよ」
「……闇?」
闇、ラウラみたいな存在のことを言っているのだろうか? 確かに、戦うためだけに生まれた存在というのは……俺としては、作ったやつらを絶対に許すことは出来ない。けど、生まれてきた……例えばラウラは戦うこと以外でも、女の子らしく生きることは可能なのだ。
「あ、多分斜め上の発想してない?」
「……え?」
「しょうがないなぁ、じゃあちょっとだけ昔話してあげるよ」
sideマライア
昔昔、ISが生まれた少し後ほどの時代。白騎士事件をきっかけに、世界はISに一気に傾いた。そんな中、ある1部の組織が禁忌に手を染めた。ラウラ・ボーデヴィッヒの様な『1部の事柄に特化させた人間を生み出す』というものだったの。
ラウラ・ボーデヴィッヒ、彼女は確かにそんなデザインベイビーではあるものの、ISを動かせているのは才能と努力の結果であったね。私は、純粋にすごいと思う。
そんな中で、『ISに特化させたデザインベイビー』というものが生まれたの。文字通り、ISに特化させるだけを目的とした子供だね。
「おら! もっとキビキビ動け!!」
まー、酷いものだったよ。まず初めに、試験管とも呼べるポッドの中で成長させられるんだけど、約1ヶ月ほどでドロドロに溶ける個体がいた。そこから綺麗に成長して、いざポッドの中から出そうとして……水風船みたいに破裂したのが個体もいた。
そこから何とか生まれることが出来ても、今度はISを動かすという情報の多さで脳がオーバーヒートする個体もいた……ま、はっきり言えばポッドから出た瞬間に半分が死ぬね。
そこから薬で急成長させられるんだけど、それに耐えきれなくて死ぬ個体もいるし、訓練の途中で死ぬなんて言うのもざらだった。
「ちっ……また死にやがった」
「豚の餌にでもしとけって思うだんだけどよ、出来ねぇのか?」
「こいつら、まともな肉体してねぇんだよ。死んだら燃やすまでもなく勝手に自壊していくんだよ」
「うへぇ、そんなん食わせたかねぇな」
職員から、そのデザインベイビー達への当たりは当然のことながら凄まじかった。ISを操縦するということに特化したせいで、女ばかりだからよく性処理されてたよ。今思ったら、あの職員達も正気じゃなかったのかもね。
「ちっ……また壊れやがった」
「ノルマ達成出来ねぇやつは、こっちにくんだろ? 俺らとしちゃあ役得だが、ノルマを行えねぇ奴が多すぎねぇか?」
「勘違いすんなよ? 無能の数が多いわけじゃねぇ……母数がでかいんだよ」
大人達の会話は、聞きたくもなかった。事実、言葉だけは聞こえていても、内容は一切理解下ないようにしていたよ。今だったら理解出来なくもないけど、正直理解したらしたで『永久に死に続けろ』という言葉しか出てこないよ。
まぁ、そんな中で育ってたから……性格とかはともかく、私は量産型のISだけで、恐ろしく強くなったと思っていた。どうやら、私は才能の塊として生まれてきたらしい。この才能のおかげで、私はIS以外のこともきちんと行えるようになっていた。
「な、なんだてめぇら!? ぐぎゃああああああ!?」
「ぇ……?」
そんな生活を続けてたある日、私がいた所は1つの組織によって壊滅した。それが亡国機業なのだけど……私はそこに拾われた。私以外の生きてる子達も、私のように拾われた。勿論、逆らうことがなかった者達に限るんだけど。
「君、名前は?」
「……マライア」
「あー、きっといい名前だと思うよ」
ISこそ付けてなかったけど、そこに来たのがお姉様……この学園で鬼村五十冬と名乗ってる彼女だったの。それが、私とお姉さまの出会い。
「マライア、また大きくなった?」
「はい、先週から10センチほど」
「胸もまぁ大きくなっちゃって……お母さん嫉妬しちゃうよ」
幸せだった。私のこの感謝の気持ちも、気づけばお姉様に対する恋慕へと変貌していたの。女同士でおかしい、って話はなしね。そんな細かいことを一々突っ込まれるのは面倒だから。
「あの……お姉様は……普通に生まれてきているはずなのに、どうして人を殺すことにためらいがないのですか?」
「え、何そのお姉様って……まぁいいや。私が人を殺すことに、ためらいがない理由?」
「はい……
「あー、うーん……」
最初は、答えにくい理由があるのかと私は思ってた。けど、そうじゃない。今思えば、『答えにくそうな表情』と言うよりは『答えを思い出せないに近い表情』だったのだ。
「何だろうね、慣れ……としか言い様がないかも」
「慣れ……?」
「確かに、私にはマライアみたいな出自はないし、他に特殊な立場でも出自がある訳でもない。けど、『それをするのが当たり前の生活』になっちゃってた」
私が経験したことの無い普通なら、恐らくそれは異常なことだと言うのはよくわかる。しかし、お姉様はその異常さに慣れてしまっていたの。
「……人を殺すことに、躊躇いはないって話だっけ? それの質問としては、無いって言うのが答え。どんな殺し方をしても、多分昨日の晩御飯みたいに忘却の彼方へと消えていく代物」
「……」
「ま、こうなるなっていうのはこんなところにいたら無茶な話だから……せめて私よりは長生きして欲しいところかな」
「長生き、ですか……」
「うん、私よりは生きてご覧よ。マライアが死ぬ時っていうのは、私が篠ノ之束を殺すよりも後にしてあげるから」
side一夏
「……って言う訳で。私はお姉様とそんな出会い方をしたの……あ、ごめんなさい私の出自の話もチョロっとしてたわ」
「……」
何と言うか、ラウラも1歩間違えばこうなっていたのかもしれないと思った。だが、マライアは今この状況を楽しんでいた。満喫していた……本来、あってはならないものなのに。
「……その話を聞いて、俺にどうしろと?」
「どうしろと、なんて野暮なことは言わないよ。けど、そうだね……じゃあ今の話は誰にも口外しないこと、いい?」
「その要求を飲むと思うか?」
「飲むよ、飲まないといけないよ……じゃないと、ろくな目に遭わないかも……君じゃなくて、君の周りが……ね」
「周りって━━━」
まさか、1組の皆や楯無さんを巻き込む気か……!? そんな事、させる訳には行かない!!
俺はそう思って、即座にISを展開しようとして……
「おっと危ない」
「くっ!?」
一瞬早くマライアがISを展開して、俺の目の前の床が軽くひび割れていた。どうやら、相当速度の早い銃器の様だ。
「……因みに、バラしたら君の考えているメンバー所か、そのメンバーの身内すら私達は手にかけるよ」
「なっ……!? 卑怯だぞ!?」
「卑怯最強コケコッコー、どうでもいいから黙っててくれたらこのままことが進むんだからさ」
マライアは俺の前を通り過ぎて階段に向かう。もはや、俺に用はないようだった。だが……これで俺は手出しが出来なくなってしまった。もう、何とかして千冬姉に頼るしかないか……?
そう思った俺は、拳を握りしめてその場に立ち尽くすしか……出来ないのであった。
「……そろそろ大会だけど……」
『マライア、その大会出なさい』
「お姉様? でも……」
『いいからいいから、思いっきり羽を伸ばしてこいっての』
「……分かりました」
お姉様の意図は分からないけど……きっとなにか意味があるかもしれないと信用して、私はそのままお姉様と通話を切るのであった。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい