side箒
「あれ? 箒どこか行くのか?」
「ちょっと……な」
「そうか、すぐ帰ってくるんだぞ?」
「あ、あぁ……行ってくる」
一夏は妙なところで鋭い、いつもの様に鈍いままでいて欲しい……そう思いながら、私は私達の家から離れた。気がつけば、金を貸してもらっている男達の元に私はやってきていた。緊張のせいか、どうやって来たかさえ覚えていない。
「おや、もう来たんですか篠ノ之さん」
「……お金を、早く返したくて」
「いいですよ、その真面目な姿勢は私は信用出来ます。篠ノ之さんは返済をしないような人じゃない、って言うのは知ってましたしねぇ?」
「っ……」
男の言葉が、私の心に刺さる。真面目だったら、そもそもお金を借りてるなんてことはありえないのだ。
だからこそ、こうやって男は皮肉を言っているのだろう。
「それで……どうします? いきなり激しいコースか、ゆったりか……」
「……」
「私としましては、前者の方がいいと思いますよ? お金がいきなりドカンと手に入るので」
そう言いながら、男は私の胸に手を伸ばす。伸ばした手は、一切の遠慮なく胸を揉む。一夏以外の男に触らせるというのが、ありえないほどに気持ち悪いと思ったのだが、しかし抵抗したら……と考えてしまって私の体は動かないままとなっていた。
「どうします? 篠ノ之さん……私としては━━━」
「それ以上箒に触んな!!」
ドカンと蹴破られる扉。先程まで下卑た笑みを浮かべていた男達は、入ってきた人物を見るなり無表情となっていた。まるで、今までのが芝居だったとでも言わんばかりに。
「異物確認、排除」
「ワールド・パージに侵入者あり、排除開始」
無機質な声が、男たちから流れてくる。しかし、それが気にならないほどに私の視線は入ってきた人物に向けられていた。その人物は、一夏だった。
だが、見覚えの……ない……
「い゛っ!?」
激しい頭痛が、私の頭に起こる。頭が歪んでいるのではないか、とさえ思えてくるその痛さに、逆に私は段々とはっきりとしたいし気を持ち始めていた。
そうだ……何故私は忘れていたんだろうか。
「私は……私は篠ノ之箒! IS学園、1年1組だ!!」
その言葉と共に、私はISを部分展開する。取り出した武装で、男達の首を切り落とした。恐ろしい程に手応えがなく、この世界が現実ではないということを、ようやく思い出した。
「箒! 無事だったか!!」
「あぁ……心配かけたな」
駆け寄ってくる一夏、私はそれが嬉しくてつい笑みを零していたが……
『織斑君、篠ノ之さんは先に返さないといけないから……貴方はその先に進んで』
……更識簪のその言葉に、私たちは一旦離れないといけない羽目になったのだった。言いたいことも理屈もわかるが、人の恋愛をこんな形で邪魔されたくはなかった……
side簪
「……という訳で、電脳ダイブした後に全員揃って敵の術中にハマっていたという事」
「……けど、あんな悪趣味な光景を体験させて……どうする気だったのかな」
織斑一夏以外の専用機持ちが戻ってきたところで、私は一旦事情の説明をしていた。まぁ、プライバシーとか色々あるし、誰がどんな目のあったのかは絶対に詮索しないようにという念だけ押させてもらってからだけど。
「……でも、系統としてはセシリアだけは別だった」
「そうみたいですわね……」
「望んでいる事の系統が違う……と考えておこう。セシリア以外の3人は『織斑一夏に助けられる』という望みのためにあんな目に遭わされてたんだし」
「それでは、私は?」
「覚えていない、って訳じゃないでしょ? 私からは語らない……けど、自分がなにをされたのかをよく思い出して、考えて……それで確かめて?」
私から言えるのはここまで。私も五十冬にそれなりの感情はあるのかもしれないけど、セシリアほど求めているとは思わない。仮にもテロリストにあそこまでの感情を抱いているのは……表向きとしてはかなり危ない。だから、ここでは騙って欲しくないというのが私の考え。
「……分かりましたわ」
「……にしても、さすがは私の嫁だったな。私を華麗に助け出してくれた」
「そ、それを言うなら僕だって一夏にかっこよく助けてもらったもん!」
「わ、私も……」
楽しく談笑しているこの空間を眺めながら、やはり私は1つの結論の達した。やはり『五十冬のやりたい事の邪魔』をしているのだと。最近は彼女達は織斑一夏から離れていた。離れていたにも関わらず、今はこうやって再び仲睦まじくしている。
なにが目的なのかは分からないけど、とりあえず仲良くさせることが目的だと言うのは理解出来た。
「……兎も角、後は唯一の彼を待つだけ……か」
さて、鬼が出るか蛇が出るか……それとも何も起こらないか……私としては何も起こらない方が好ましいので、そのまま戻ってきてくれると助かるけど……
side五十冬
なんか喋るの久しぶり。最近は一人でいることが多いから、会話もろくにしないというね。ま、そんなわけで私はスコールに頼まれてとある場所に来てた。
とある場所って言っても……まぁ、アメリカの船なんですけどね? そこに極秘で潜入して、極秘でまぁ色々やって、今船沈めるボタンを━━━
「ポチッとな」
通常空母じゃない秘匿艦。沈めても、アメリカが多少の対テロを強めるだけでなんら問題ない。それに、マライアから届いた情報から考えて、沈めるのは問題ないとスコールが判断した。
「IS学園に罪をなすり付ける……大胆かつ思いきった作戦に私は涙が止まりませんよ」
今は簪が生徒会長をやってるみたいだけど、生徒会長たるいい目標を掲げているにも関わらず私たちと繋がってる……バレても問題ないと判断しているのか、それとも私達との繋がりを断つつもりなのか、はたまた━━━
「……これ以上考えてても仕方ないかな」
「よう、やってくれたな……!」
私の後ろにいるのは、アメリカ代表の……名前なんだっけ? イージス艦? まぁいいや、というかISの国家代表者って皆男勝りすぎる気がする。もうちょっと、お淑やかになれないのだろうか?
「うん、まぁ沈めろって命令だし?」
「てめぇ、誰の差し金だ? 更識楯無か?」
「あの元ロシア代表は既にどっかに行っちゃってるよ、あと私は戦う気ないんでよろしく」
「そう言って逃がすと思ってんのか?」
「逃がしてくれないんですか!?」
「……あんまり調子乗ってると━━━」
「はいドーン」
私は相手の言葉を遮って、突然そんな言葉を発していた。私のIS、カリオストロの力で実は辺り一面に水蒸気を撒いておいたのだ。くっそ蒸し暑いけど、おかげで逃げる算段はつけられている。
それを一気に液体の水へと戻して、さらに一気に高温のものをぶつける。あれだよ、マライアのISのビット。それだけでこの部屋は大爆散……私は吹き飛びながら外に出てこれる仕様ってわけ。
「でもやっぱりむっちゃ痛い!! ISの絶対防御あっても痛い!!」
「逃がすか!!」
今ので生きてんの!? なんて驚きはしない。そもそも私が生きてんだから、相手も生きてるだろうとは思ってる。とりあえず、外に出れてからいいんだよ。
「このままお前を仕留めて━━━」
「残念、外に出た時点で私の勝ちは決まっていたのだ。私の勝ちとは、姿をくらませること……じゃあね猪武者さん」
そのまま私は姿を消す。ミステリアス・レディに光学迷彩機能あったのが本当に助かった。何せ、それだけで相手は戸惑うんだもん。直感と勘だけでこっちを見破れるほど、この機能は甘くはないよ。
「へっ……てめぇがかくれんぼするってんなら、手当り次第に━━━」
あいつやべぇから本気で逃げよう。私の任務は終わってるし、そのまま帰ってもなんら問題ないと思う。戦っても別に問題は無いけど、戦うのが面倒だし何より戦闘データを取られるのが無茶苦茶面倒。
そう思った私は、急激なブーストをかけて無理矢理その場を離れるのであった。直後に後ろからとんでもないレベルの音が聞こえてきたが、完全に無視して逃げるのであった。
「ただいまぁ」
「あら、おかえりなさい」
「てめぇ、遅かったじゃねぇか」
スコールとオータムが私に声をかける。相変わらずオータムは口が悪い。あのアメリカ代表とめっちゃ口調そっくりすぎる。
「どうだった? 任務は」
「アメリカ代表と1回やりあったけど、撒いてきた。無駄に戦うは意味はないってわかってたし」
「そう、ありがとう……私たちの方も守備は順調よ」
「じゃあマライアから届いたあのデータ、有効活用してるんだ」
「えぇ、『IS学園が世界を乗っ取ろうとしてる』なんてバカげた嘘情報と一緒にね」
「いやぁ、世界に対して嘘ついてるのは事実だもんね。ISのコアを7個持ってるくせに、それら全部が今向こうにあるんだし」
ISのコア1つで戦争になりかねないのに、それが7つ。IS学園が幾らありとあらゆる国の干渉を受けない存在だからといって、やり過ぎである。
それに、あそこには量産機とはいえISがかなり置いてある。それもまた、拍車をかけているのだ。
「しかも篠ノ之束しか新造できないコア……新しく生み出された7つのコアは、ほぼ確実に篠ノ之束が作り出したものでしょうね」
「世界からしてみれば、遠回しに篠ノ之束からのプレゼントだからな。襲われたのは事実かもしれんが、裏を返せば直接的に渡すのを誤魔化すために襲撃事件を装ったとも取れる」
「アメリカ辺りが抜け駆けしたみたいだけど、それも問題なし……私も秘匿艦沈めたしアメリカはしばらく対テロに時間を費やすかもね」
「ま、これで抜け駆けしたら叩かれる状況は作り出せたわね……後はどうやって、世界の敵としてIS学園を持ち上げていくか……かしら?」
「まさかテロリストの私達がこんなことしてるなんて……って思う」
テロリストが、他のところをテロリストとして持ち上げる。まぁ7つなんて世界で分けられる数じゃないけど……問題はそこじゃない。
「じゃあ五十冬、オータムと一緒に頑張ってちょうだいね」
「はいはい、世界のお偉い様相手に説得頑張ってきますよ」
「ふん、せいぜい頑張るこったな」
「私としてはオータムが心配過ぎてやばい」
とりあえず……私は、世界のお偉い様達を集めておかないといけない。ま、今回は織斑千冬を思いっきり利用させてもらうとしますよ。
side千冬
私はとある人物に連絡をしていた。いや、連絡というよりは呼び出されたと言った方が無難か。モニター越しから話しかけてくるのは、日本やアメリカ、その他色々な国の代表……つまりは総理大臣等が何故か私に連絡を出していた。
『近々、国同士で話し合いが行われる』
『ブリュンヒルデと、もう1人の教師を連れてきてもらいたい』
話の内容的に、世界会議のような場所で私ともう1人に来て欲しいということだ。名目として語られたのは、『最近頻発しているIS関係のテロについて』らしい。
今度、IS学園で修学旅行がある。場所は京都。だが、その際に再びIS学園を狙ったテロが行われるのではないか? という懸念が、各国代表には存在しているのだ。
「織斑先生……」
「……呼ばれて、行かなければまず間違いなく舐められるな。山田先生、ついてきて貰えますか?」
「は、はい!」
ひとまず、私は彼女を誘っていくことにした。しかし、どうにも違和感や不安がぬぐえない。一体何に対して不安を感じているのか……私はそれだけが気になりながらも、話し合いの場に向かうのであった。
9巻の内容はガン飛ばしです。だって楯無会長いないから大半のイベント起こらないわけで…
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい