side?
鬼村五十冬……その名で呼ばれている少女は、自分が何者なのかを考えていた。まず、体が機械化している部分がある。その理由を、したしそうな人物に聞いてもはぐらかされてしまう。
そして、IS……自分はそれに乗っていたというのはなんとなく理解出来ているが、手に着けているペンダントがそれなのかと考えて、何となくISをまとう気にはなれなかった。
今の彼女自身、なぜ自分がこんな所にいるのかはわからなかった。
「……私って、なんなんだろう……」
記憶喪失と自分は言われた。過去の自分が何をしていたのか、それさて調べられればいいのだが、それを調べようという気が彼女にはなかった。
「……自分探しの、旅……?」
そんなのに出かけたところで、一体どうすれば良いのか彼女には皆目検討もつかなかった。それ以上に、自分が記憶を取り戻したとして……一体何をしでかしてしまうのかと考えると、不安で仕方なかった。
「……私って……」
IS学園寮、鬼村五十冬と名付けられた少女はそこに軟禁されていた。出る事は可能でも、IS学園範囲内でなければならないということは変わらなかった。
そして、季節は年を越した冬……彼女には、分からないことばかりが募っているのであった。
「はぁ……」
そして、時同じくして……場所もほぼ同じ。されど細かいところが違う。IS学園内生徒会室。そこでは一人の少女……マライアが床で寝そべっていた。
「……おい、こいつどうなってんだ?」
「鬼村が自分のことを忘れてるのが、心に来てるみたいっすね……」
マライアはぼーっと寝転がっていた。その瞳に移るのはかつての五十冬の姿ばかりであった。年を越したという話だが、日本にあまり住み込んでいる訳でもない彼女は、それに浮かれるほどでもないために、余計に落ち込んでいた。
「……まー、好きなやつに忘れられるってのは辛いな」
「そっすねぇ……忘れられるのは、辛いっす」
そして、同じようにレインとフォルテもまた年越しにあまり馴染みが無いために、特に浮かれることも無くマライアに付き合っていた。
因みに、今現在簪は更識家に呼ばれているために留守である。
「……にしても、前から思ってたんだけどよ」
「はい?」
「あのカリオストロって機体……誰がどう言った理由で作ったんだ?」
「あぁ……あれは篠ノ之束が作ったって話っす……と言っても、基盤となる設計図的な扱いらしいっすが」
「あー……話が見えてこないな」
頭を抱えるレイン。何故フォルテがそんなことを知っているのかと気になったので、というかそちらの方が気になっているので話の内容がイマイチ頭の中に入ってきていなかった。
「まぁ、それに関しては……会長から聞く方が正解っすよ。そっちから聞きましたし」
「そうかい……」
興味無さそうに、レインは返事を返す。カリオストロの件は気になるが、そこまでして知りたいという訳でもないのだ。
「……人の頭とISを繋ぐシステム、ねぇ?」
「考えてみたら、だいぶ恐ろしいことっすよね。人体実験を極めていかないと、きついっすよ」
「……ま、その人体実験を繰り返されてきたやつも今はもう見る影もないけどな」
「確かに、そうっすね」
窓から外を覗く2人。外は軽く雪が降っており、空を白く染めあげていたのであった。
「……失態ね、エム」
「……うるさい」
余談だが、五十冬が織斑一夏と戦っていた頃の話である。その時いたエムはセシリアとチェルシーの2人と一緒に戦っていた。一時的にとはいえ、亡国機業にいたチェルシーのISを奪うためである。
だが、その戦いの最中に箒の乱入もあった。当たり前だ、仲間を守ろうとして動くのは当たり前なのだから。
そして、箒一人またはセシリア一人ないしチェルシー一人……いずれかの条件であれば勝てたはずの戦いにエムは負けてしまったのだ。それが原因でそのまま退散した……という流れである。
「……言い訳をするつもりは無い」
「させる気もないわ、五十冬はある意味で死んでしまったとはいえ……情報を残してくれたというのに」
「……織斑一夏の白式の話か」
「えぇ、ISを初期化する……なんてISは聞いたこともないわ」
「当たり前だ……そんなIS、存在していいはずがない」
「えぇ、その通りよ……けど今の白式だと貴方は勝てない」
「……」
「だからこそ、策を弄して戦い方を考える必要がある」
スコールの言葉に、エムはただ耳を傾けるだけである。だが、スコールはそれでも良かったのだ。何せ、エムを納得させれているだけでいいのだから。
「……策を弄して、というのならば……あの女のIS……カリオストロを手中に収めるのが1番だろう」
「辞めておいた方がいいわよ、あのISは……五十冬に一目惚れしてるもの」
「……何?」
スコールの言葉の意味を問いただそうとしたエム。だが、スコールの言葉が所謂『ISの好み』で収まる範囲ならば、聞く必要も無いと再び背を椅子に預ける。
ISには、パイロットの好みというものもあるにはあるという話がある。その程度のことなのだと、エムは聞くことは無かった。だが、現実カリオストロがどんなISか……スコールの言葉の意味を探らなかったエムは、後に驚くことになるだろう。
年を越してしまってから、数日……IS学園はまた新しく始まった。故郷に帰っていたもの、日本で滞在していた者……色々いるがIS学園に再び集っていた。
そんな中で、五十冬はオドオドしながら周りを見渡していた。IS学園のことも習ったし、ISの知識も詰め込んだ。しかし、人間関係はそうはいかない。もし、自分と仲の悪い人がいるとして……その人物に攻撃的な行為をされてしまったら……そう考えて、五十冬は落ち着いていられなかった。
「……一夏」
「あぁ……せめて、俺達で……」
五十冬には聞こえない声で、織斑一夏と篠ノ之箒は話し合っていた。怯えている五十冬は、そのことに全く気づく様子もなかった。
「わ、私……このクラスで生きていけるのかな……」
記憶を失う前とはまるで別人のように、五十冬は怯えていた。その違いから、困惑するクラスメイトが大多数だった。しかし、その気に乗じて五十冬に攻撃を加えよ
うとする輩はいなかった。
「静かに……本日から特別留学生として、ルクーゼンブルク
担任の台詞で、表向きに騒がれることはなくなったが……各生徒全員内心は少しだけ気分が良くなっていた。ラウラとシャルロットが退場、千冬も真耶もいなくなった。失い続けたこのクラスに、得るものが来たのだから。
「では、王女殿下……お入りください」
「紹介ご苦労であった、誠に大儀である」
「はっ」
入ってきたのは、未だ齢14の少女だった。ほとんど成長していない胸、小さな身長……だがその体に身に纏うドレスはとても釣り合いの取れた綺麗なものだった。
「……お主が、有名な織斑一夏じゃな?」
「……まぁ、はい……」
急に名指しされ、困惑する一夏。だが、その困惑の表情には明確な不安が宿っていた。明らかに彼は思っていただろう。『嫌なことが今から起きる』と。
だが、五十冬は一切それらを気にしていなかった。それら全てが見えず聞こえず……彼女の視線は、彼女が連れてきた従者……その中の一人の別格の雰囲気をまとっている女騎士のような人物だった。
「……」
向こうは、五十冬の視線に気づいたのか五十冬を睨み返す……のだが、その表情は困惑したものになっていた。
「……」
五十冬の視線はその女性の帯刀している剣……それに目線が向かっていた。相手もそれに気づいたからこそ、困惑しているのだろう。
「……」
ふと、五十冬はそれをぼーっと眺めながら思うのだった。『オナカヘッタ』と。その直後に、自分はなにを考えているのかと頭を降ってその考えを飛ばしていた。
待機状態となったISが、ほんのり鈍く……光を宿していることに誰も気づくことは無かった。
「……鬼村さん? どうかなさいましたか?」
「い、いえ! ごめんなさいちょっとぼーっとしてました!」
「……」
王女の隣にいる女騎士……彼女は五十冬を見て少しだけ睨んでいた。明らかに異常だと、五十冬を見てそう考えた。だがそれも、直ぐにやめる。下手に問題を起こす訳には行かないと、止めたのだ。
「では、織斑君お願いしますね」
「は、はい……」
五十冬には訳が分からなかったが、どうやら織斑一夏にとってなにか良くないことがたった今起こっていたらしい……というのは何となく理解は出来ていた。
「貴様、何を見ていた?」
「……へ?」
「……ジブリール?」
放課後、王女殿下……アイリスとその付き人ジブリールの2人が五十冬の目の前にいた。偶然出会っただけなのだが、その偶然を利用しての言葉だった。
「……あの、何の話ですか?」
「ジブリール、何を言っておる?」
「この女、王女殿下が自己紹介の最中……私を、正確には私のこの剣を見ていたのです」
「……ほう?」
剣を撫でるジブリール。その剣が、ISだというのはこの二人しか今のところ知る者はいないのだが、そのこともありジブリールはさらに警戒を強めていた。『何故ISを見ていたのか』と。
「貴様、この剣が何なのか知っているのか?」
「……IS、ですよね? 随分と珍しい形ですけど……」
「ジブリール、日本では珍しい装備じゃ。珍しいものを身につけていれば、そう疑われてもおかしくないのではないのか?」
「……確かに、そう言われればその通りなのですが……」
アイリスの言っていることも、確かに正論ではあるのだ。しかし、他の誰もが気にしていなかったのにも関わらず、たった1人……五十冬だけが気にしているということにジブリールは強い疑念を抱いていた。
「……まぁ、いい。王女殿下に手を出さない限り……私も手は出さん」
「は、はぁ……」
「ジブリール、もう行くのじゃ」
「はっ!」
そして、五十冬の前から2人は姿を消した。五十冬は首を傾げていたが、特に気にする必要も無いと感じたのでそのまま自分の部屋へと戻っていくのであった。
side??
夢を見ていました。私は赤黒い液体に染った黒い空間に、立っていました。どうやら私以外にも誰かがいるようで、2人ほどの人影が見えていました。1人は立っていて、もう1人は座り込んでいました。
「あの、どうかしましたか?」
私は声をかけながら近づいて……足を止めました。立っていた1人……私でした。でも、雰囲気は私とは全く違う私……まるで、全てを諦めているような、憎んでいるような……そんな雰囲気をまとっていました。
そしてもう1人……そこに居たのは、もはや人間ではありませんでした。
言うなれば、鉄と肉の化け物……それが私の方を向いて座り込んでいたのです。
「……随分と可愛子ぶってるけど、本気?」
「……え?」
「何も知らないから仕方ないのかもしれないけど、こんな世界で本当に満足してるの?」
「ま、満足……? 皆さん優しいし……それに、織斑君は私のことをずっと気にかけてくれてます……みんな、いい人ですよ? 特に、織斑君は……」
少し、顔が熱くなるのを感じましたが……私は本心だけを話しました。けど、織斑君を語る時だけ妙に語調が強くなってしまいます……なんで、なんだろう?
「━━━きっも」
……でも、もう1人の私から発せられた言葉はそれら全てを切り捨てるような発言でした。その言葉に一瞬私は詰まってしまいましたが、直ぐに反論しようとします。
「な、何がですか!?」
「え、あんな男がいいの? ごめん私は無理だわ、いや待ってもしかして私のタイプって織斑一夏なの? いや嘘でしょ? 流石にないわ……記憶がなくて今までの価値観が無くなってるから……って擁護させて欲しい」
「……なんで、何でそんなに織斑君を悪くいうんですか?」
「嫌いだから」
「あんないい人なのに?」
「自分勝手な正義を振るうから」
「誰にだって優しいのに?」
「八方美人なだけ、それが無意識で行われてるからタチが悪い」
「あんなに……強い心があるのに?」
「信念を曲げない男だったら誰でもいいの? だったら凶悪連続殺人犯とでも付き合っとけ」
自分自身とは到底思えないような、罵詈雑言の数々が私の心をさらに抉ります。もう私は、目の前の私が怖く感じてきました。
「……そんな、そんな言い方って……」
『━━━オナカ、ヘッタ』
「っ……!?」
そして……急に発声した化け物に私はつい驚いてしまいました。それに、目の前の私は少し申し訳なさそうに頭をかいていました。
「あー、ごめんごめん……」
もう1人の私は、私の方に一瞬だけ目線を移して……そしてほんの少しだけ笑みを浮かべました。
「食べていいよ、こいつ」
『ヤッ、ター……イタダ、キマス……』
化け物はゆっくりと立ち上がり……次の瞬間には私の目の前まで飛び込んできて、その口を大きく広げ━━━
「っ!! はぁ、はぁ……!?」
私は部屋を見渡しました。学生寮の、私の部屋……今までのがちゃんと夢だったと認識してから……私は自分の手を見ました。
「私は、私……私は私私は私私は私……! 生きてる、ちゃんと自分……記憶は確かにないけど、私は……まだ『残ってる』……!」
その認識だけして、私は再びベッドへと体を預ける。記憶が無いというのが見せた怖い夢だと思いながら、再び眠りにつく……それ以降の眠りは、とても快眠出来るものだっただけマシだと思うことに私はしました。
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい