私の家は、本当に普通の家でした。二階建て一軒家、両親は健在で……私という存在と私の兄という存在の二つが欠け落ちていることを除いては、本当にただの家でした。
「……ここが?」
「……うん、私の家……みたい」
ここの家は、更識さんが調べてくれました。私から抜け落ちた記憶……それを少しでも埋めるために調べてもらったんですが、ここまで来ても私の記憶は全く蘇ることはありませんでした。
「……家族に会うか?」
「……」
怖い、はっきり私はそう感じてました。だって、私は両親からしてみれば死んだ扱い……それ以上に、この体を見せたくないというのが現状でした。
けれど、その怖さを乗りきってでも……私はここの扉を叩いて通らないといけない……そう感じたんです。
「……会います、じゃないと来た意味がないから」
「……わかった、俺はここにいるから何かあったら呼んでくれよ」
織斑君が私のために、一緒に来てくれました。こんな私でも優しくしてくれる織斑君……私は彼から勇気を貰って……インターホンを鳴らしました。
「……」
しばらくしてから、ゆっくりと目の前の扉が開かれました。そこから、オドオドした様子で……女性が1人扉から出てきました。キョロキョロと辺りを見渡してから……私の方を見て━━━
「……貴方……■■……?」
「……えっ、と……ごめんなさい今なんて━━━」
「■■!!」
聞き取れない。多分私の名前を……本名を発してくれているんだろうけど……それが妙に聞き取れない。まるで、そこだけを私の脳が拒否しているかのように……私はそれを聞き取れない。
けど、女性は私に飛びつくように抱きつきながら……わんわんと泣き始めました。
「よかった……生きてたのね、生きてたのね……!」
ちらりと、私はせめて苗字だけでも覚えていこうと表札の方に目線を向ける。聞き取れなくても、苗字なら……視覚ならと思ってそれに目を向けました。
『■■多恵/圭吾/■■』
苗字すら見ることができない。母親であろう女性の名前、父親であろう男性の名前……その2つは認識できるにもかかわらず、私は自分の苗字と名前を全く認識できなくなっていた。
「……鬼村……?」
私の違和感に、織斑君が気づいたようです。けれど、私は私の違和感を止めることが出来ない。女性に対して懐かしさがあり、涙もあふれてきそうなのに……この虚無感が私を現実へと引き戻して……絶望へとたたき落としているような、そんな気しかしないのです。
「……上がっていきなさい、そこの……織斑君だったわよね? 一緒にどうぞ」
「あ、はい……って俺の名前……」
「ふふ、世界で唯一ISを使える男子ってテレビで散々流されてるもの……嫌でも覚えるわ」
私と織斑君はこうして、私の家に招かれることとなったのでした。けれど、多分……私は私の部屋をみても思い出すことは何もないだろうと感じていた。一体何が原因で、私の記憶はここまで無くなっているのか……一体どうしたら記憶は戻るのか……それさえ分からないままに……私は家に上がっていくのでした。
「……ここが貴方の部屋だった場所よ、当時のままにしてあるから……」
そう言って、私は私の部屋に招かれました。私が記憶喪失であることは、既に伝えています。けれど、それでも私の記憶は目覚めることはありませんでした。
「……鬼村……」
「……いえ、大丈夫です……」
「……本当に、思い出せないの?」
「……ごめんなさい」
本当は、自分がここの家の娘じゃないのではないか。ここまで親密な場所なのにも関わらず、一切の記憶を思い出せないのはそういうことではないのだろうか。
私はそう感じてしまうほどに、ショックを受けてました。織斑君も母親である目の前の女性も……見るからにショックを受けてました。ここまでやって思い出せない、その結果がこの状況でした。私は嫌な気分に苛まれながらも、それ以上に母親が嫌な思いをしているのだと考えてすぐにそれを頭から無くしました。
「……ごめんなさい、ここまでしてくれたのに」
「いいのよ……貴方は記憶が無くなっても私たちの娘なんだから」
「……? あの、この写真は……」
そう言って私が取った写真は、小さい頃の私であろう少女と……少し年上の男性……これが兄なのだろうと思われる男子の写真でした。
その写真を見て……何か、心にモヤっとしたものが私の中に生まれていました。
「……あなたのお兄ちゃんの、写真よ……あの子は……とてもいい子だったのに……う、うぅ……!」
女性は、涙を流し始めました。自分の息子が死んだ時のことを思い出したのでしょうか……他人事のように語れてしまう私は、まだ記憶が戻る気配がないからそう言えちゃうのでしょう。
「……1つ、いいですか?」
「……何、かしら?」
「兄の……通っていた……会社に連れて行って貰えますか?」
「……ごめんなさい、連れて行けないの……どうしても行きたいなら……地図を送るわ」
「……はい、ありがとうございます」
マップのデータを貰って、私はそこに行く覚悟を決めました。記憶が戻らないならせめて……私が、過去の私が何をしようとしたのかを確認しなければならないと思ったのです。
「ここが……」
「……兄の、会社だったみたいです」
特別に許可を貰って、私は屋上まで登りました。まるでその屋上には何も無かったかのように……見事に何もありませんでした。あるものと言えば、せいぜい落ちないようにする柵と貯水槽位のものでした。
「……」
「……鬼村、何か思い出せそうか?」
「……私は……」
心の中のモヤモヤが、段々と強くなっていきました。何か、思い出せそうで……思い出せなさそうで……そんなもやもやを感じながらも、私はゆっくりとした足取りで柵に向かって歩いていきました。
そして、その柵に手をかけて……思いっきり力を込めて柵を押します。
「ふんっ……!」
「鬼村……」
「……繋ぎ目もない、けど簡単に外れるようなもろさでも無い。兄が死んでから……すぐに取り換えたみたいだね」
「……」
悲しくはなかった。だって、危ないことが起こったのならそれを防ぐために手を尽くすのは当たり前の話だ。一年以上経過していて何も手を出していなかったら、それこそ変な話だ。
「……帰ろっか、織斑君」
「あぁ……ん?」
ふと、織斑君が屋上から建物内に繋がる扉に目を向けていました。私もその扉に目を向けてから、ようやく気づきました。中から誰かが歩いてきているようで、足音が段々と近づいていました。しかし、別に何か怪しい時間でもないのでさっさと抜けてしまえば多少気にはされるでしょうが、それだけで済むでしょう。
私はそう思っていたので、一旦階段を登ってきた人たちを通してから戻るつもりでした。そして、その人たちが扉を開けた瞬間━━━
「……げっ、何か気持ち悪い女がいる……」
「うわぁ……しかも織斑君と一緒とかまじ有り得ねぇ……」
2人の女性が中から現れました。しかしまた……随分と、私のことをコケにしました。初対面の人間のそこまで言えるなんて、随分と失礼な人だと思いましたが……挑発に乗って関わる訳にも行かないので何も言わずにそのままスルーする。
「つーか、あの女どっかで見たことが……」
「あ、会社のミーティングで出てた女じゃない?」
「……?」
一体なんの話をしているのか私は気になりましたが、そのまま無視して屋上から建物内に戻ろうと━━━
「
━━━無視するわけにはいかなくなりました。私は彼女達に詰め寄って、話を聞こうとして向きを180°を変換してそのまま向かっていきました。
「……あの」
「何? あたしらあんたに用なんてないんだけど?」
……随分と、私が嫌われているものだと思いました。ここまで嫌われているのなら、もういっその事清々しさすら感じるほどです。でも、私のこの人達はおそらく嫌いなタイプの人種でしょう。
「……私に何か言いたいことがあるのなら、言ってください」
「……じゃあ、言わせてもらうわ……こういう事よ!!」
そう言った瞬間に、わたしはビンタされていました。なぜ私がビンタされているのか、どうしてビンタをしたのか。その2つも気になるところですが、今私が1番気にしてるのは……何故ここまで私のことを嫌いでいられるのか、ということでした。
「鬼村!!」
「あんたのせいで私らの会社は評判ガタ落ちよ!! おかげで仕事なんてろくに入ってこなくなっちゃったじゃない!!」
「……それが何か?」
織斑君が心配してこちらに駆け寄ってくれました……けど、私はどうやら少しだけ目の前の人達に怒ったようで……イラッとした感情がかなり強くなっていました。
「ここと鬼村は関係ないだろ!?」
「関係あるわよ!! この女の兄貴が飛び降りなんてするから……お陰で証拠もないのに、私達が犯人みたいに扱われちゃってるのよ!!」
私が体験した事……記憶が無いために伝聞ですが……まず私の兄は飛び降りなんてしていません。結果そのようになっただけで、実際は落とされたというのが正しいという話でした。ですが、目の前の人たちにはそのような事実は関係ないようです。
「男の癖に死んでも迷惑かけるなんて……初めから生まれてこなかったらよかったのよ!!」
「……おい、あんた━━━」
織斑君が私のために怒ってくれようとしてくれた、その時でした。私たちと言い争っていた女性達の周りに、黒い箱のようなものが一瞬で形成されていきました。
「っ!? な、何よこれ!!」
「だ、出しなさいよ! だ、誰か! 誰かここから出して!!」
「━━━━なら出してあげるよ、
その言葉がいい放われた瞬間、なにかを潰すような鈍い音が目の前の黒い箱ふたつからそれぞれなりました。そして、同時に先程まで助けて欲しいと騒いでいた中にいる女性二人は……一切何も喋らなくなっていました。
「ありゃ、飛び出ずに中でそのまま潰されちゃったか」
……声の主は、どこかで聞き覚えのある声でした。しかし、ここまで常軌を逸した行動は、目的も無しではさすがに彼女も行わないでしょう。
「……誰だ!!」
「……この姿を見て、一瞬で私が誰かを見破れたなら……ご褒美に肉奴隷でもなんでもなってあげよう、篠ノ之束が」
突如目の前の空間から篠ノ之束博士……の髪を染めたような見た目をした女性が現れました。声も姿も完全に篠ノ之束博士そのものですが、その身に纏う雰囲気が明らかに『篠ノ之束博士じゃない』と警告を慣らしていました。
「……貴方は……」
「いやぁ、こうして顔を合わせると……ホント気の抜けた顔してるんだね
「私……?」
「お前……まさか……! 鬼村か! 記憶を失う前の……鬼村五十冬か!?」
「ふふん、正解だよ」
自慢げに指をさす目の前の女性……今起こったことも含めて……少しばかり、面倒なことが起きそうな予感が私の中でビンビンになっていました。
五十冬の見た目
-
黒髪ロング、胸はない
-
黒髪で肩までの長さ、胸はない
-
茶髪ロング、胸はない
-
茶髪で肩までの長さ、胸はない
-
なんでもいいけど眼鏡が欲しい