side簪
━━━ほんの少しだけ、時間を戻して話をさせてもらう。それは、まだIS学園で平凡で在り来りな作業を行って行けるくらい平和な……そんな時だった。
「……お姉様?」
生徒会室で、仕事をしながらぼーっとするという器用なことをしていたマライア。私はそんなマライアを無視していたけど、突然そんなことを言い始めた。
「……どうしたの、急に……」
「……今お姉様の気配がした」
「……」
正直、今私は『こいつ頭大丈夫か』と思った。突然私たちの元から姿を消した五十冬。正確には、ナノマシンとなった体を手に入れてから……だけど。
そこから突然姿を消した五十冬、今どこで何をしているのか分からないけど……多分無事でいると思う。
「……何言ってるの、急に」
「今したもん!! 気配したもん!!」
狼少年の話を、ふと私は思い出していた。嘘をつきすぎて信用されなくなった少年の話だけど……マライアは五十冬が居なくなってから、その影を追うようになっていった。酷い時は抱き枕を五十冬と誤認しては、ISで八つ裂きにするくらいには重症になっていた。
「……マライア、いい加減病院行こう?」
「そんな目で私を見ないで!!」
そりゃあ見る、と言いたくなる。幻覚幻聴幻視に加えて、軽い鬱病まで発生させられてたらたまったもんじゃない。と、ここまで来てふと思い出した事がある。
「五十冬と言えば……先輩方2人が『体』の方に『生徒会』として、戦いを挑みに行ったらしいけど」
「はっ!? なんでそれを早く教えてくれなかったの!?」
「……だって、自分の危機に五十冬が気づかないわけないでしょ」
その一言で、マライアは私の方をじっと見ていた。何が言いたいのかは分からないけど、何か言いたげなのは理解出来た。
「……あの、そうなって黙られると私も反応に困るんだけど」
「……いや、さすがにびっくりしただけ」
「え、なんで?」
「だって……そんな直接的な告白を聞かされることになるとは思ってなかったから……」
……私は呆れていた。五十冬はただの友達だ、きっとそうだ。傍から見たら、そんな風に……同性同士でもそんなふうに見えるくらいに距離が近かったのかもしれないけど、私はそっちの気はない……はず。
「……それで? 五十冬の気配っていうのは……ちょっと待って……」
今、私の耳に爆発音が聞こえたような気がした。しかし、爆発音ということは誰かが攻めてきたことになるけど……一体誰が攻めてきたのか。
「……今確か、先輩2人がいるって話だよね?」
「……うん」
「……行こうか」
「だね」
そして、時は戻っていく。状況を把握、そして理解までした私達二人は生徒会室でどうするかの話し合いを始めようとしていた。
「お姉様のところに行く」
「……」
マライアの第一声はそれだった。私は、そんなところがマライアらしいと思っていたけど、同時に少し呆れてもいた。決断力がありすぎると言うか……もはや正常な判断力が残っているのか不安になるくらい早かった。
「何? 私達二人しかいないのに……それに、私達二人は別に『亡国機業』そのものを信頼してるわけじゃないでしょ?」
「……それは、確かにそうだけど」
実際……マライアはとんでもないくらい五十冬に心酔してる。五十冬が裏切ると言ったら、多分それにつられて裏切るくらいするだろう。世界を裏切ったフォルテ・サファイアの様に。
「……」
━━━じゃあ、私は? 私は……五十冬について行く? IS学園にいる? 亡国機業に勤める? いっぱいある中で、私はかなりの宙ぶらりんだ。どうしたらいいのかなんて……全く分からない。
「……簪?」
「……ごめん、何?」
「どうするの? お姉様について行くか、ついて行かないか」
「……それもまぁ、大事な事だとは思うけど……それ以上に、今考えないといけないことがある」
「考えないといけないこと?」
マライアは、五十冬の気配を感じとったというだけで話を進めている……仮にそれを前提とした上で、それでも尚五十冬に着いていくか着いていかないか……それよりも前に考えることがある。
「━━━五十冬、どこにいるの?」
「あ━━━」
1番大事な部分、通信なんて通じないだろうしそもそも携帯を持っているかどうかも怪しいから『足』で調べないといけないのに……そもそもの場所が分からなさすぎて、探しようがない……今はそんな状態なのである。
「……な、何とかなるよ!」
「なんとかなる、でほんとに何とかなるのは……大体本当に何とかなる時だけだから……」
「……頭痛くなりそうな文止めてよ……」
「情報が少なすぎるから、せめてもうちょっと情報がないと……」
「……じゃあ、状況の整理してみよう。もしかしたら何かわかるかもしれないし」
フォルテ・サファイアの話だと、どうやら五十冬は突然現れたみたいだけど……それが本当なら、五十冬……いや、カリオストロはステルス能力を手に入れたことになる。私の知っているカリオストロに、ステルス能力はない。それに近い能力も覚えがない。他のISを奪ったという話だと……近い物だと、一つだけ覚えがある。
「……まず、分かってることは……カリオストロには新しくISのコアが追加されてるってこと」
「話を聞いてる感じだと……姿をどうにかして隠せるISのコアってこと?」
「……それに近いのを、私は一つだけ知ってる」
「へ? 何?」
「ブルーティアーズを元として生まれたIS……名前はダイブトゥブルー」
このIS……イギリスに行った時にメイドのチェルシーが使っていたISである。空間潜航能力を有していて、その力を応用したらたとえ異空間であってもフォルテ達を認識することは可能である。
「……けど、そのISの力を持ってるってことは……」
「イギリスを1度経由してる……理由は多分、力をつけるため」
「織斑一夏に一回負けちゃってるからね、お姉様」
そう、伊達に今の白式の名前は飾りではないということだ。普通のISとの戦闘では、シールドエネルギーが尽きるか乗ってる人間の命が尽きるかの二択だ。
けど、今の白式はそれらを凌駕する。全てのISの無力化……それが今の白式の能力。相手を死なせない、自分が死なないために極端に相手を弱体化させるという戦闘を避けるための力。
「……勝ちにいかない代わりに、絶対に負けない能力」
「……私でも相手するのはきついよ。簪がやってた、ちょっと段差があったらすぐに死んじゃう主人公のゲーム並に難易度高いし」
全く別系統ではあるけど、要するにとんでも難易度ということだけは理解出来る。実際、無茶苦茶な難易度なことだけは確かなのだから。
「……それの対策をするために、世界各国のISを集めてる、ってこと? だとすると……もう、やってる事が……」
「1人テロリスト、って所だね」
亡国機業とは違う、新たなテロリスト。織斑一夏を殺すためだけに世界をめぐり、織斑一夏を倒すためだけに世界を無茶苦茶にしていく。
「……兎も角、私達の前から姿を消した後……そこで何が行われたか……それが理解出来れば私達も動きようがあるんだけど……」
「……ちょっと調べて見てもいいかもしれないね」
「……となると、最初に行くべきところは……」
五十冬が姿を消した日……その時何があったか、何が行われていたか。何をしようとしていたか……それを、ちゃんと思い出して……調べてやらないと。
「……篝火?」
「倉持技研、白式生誕の地とでも言った方がいいかもね」
放課後、私たちはとある場所に来ていた。倉持技研、今も言ったが白式が生まれた場所でもある。
なぜこんな所に来ているのか、私にはひとつ思い当たる節があるのだ。
「それで? どうしてここに来たの?」
「マライアはいなかったから分からないけど、イギリスでの作戦の時……ここで作られたある装備のことが少し気になってたの」
「ある装備?」
「O.V.E.R.S……簡単に言えば、少しのエネルギーもものすごい量のエネルギーに変換する装備」
「その能力って……まるで紅椿みたいだね」
既に赤月となって、そしてその姿を消した紅椿。そのワンオフアビリティーは、エネルギーを増やせるという単純明快かつ随分と大きなヒントになるものだった。
「そう、そして……前の赤月事件の時に真っ赤な量産型のISがやってきた。まるで、紅椿みたいに真っ赤なISが」
「……持って、要するに倉持技研がお姉様の件に1枚噛んでいる可能性があるってこと?」
「大まか、その通り。実際にあるのかどうかは分からないけど、可能性がないにしては少し偶然ができてしまっているような気がする」
「……けど、それ調べるにしても……」
私たちは周囲を確認する。周囲にあるのはボロボロになった建物と、土地だけである。人気は一切存在しない。まるで、どこかからの襲撃を受けたかのようにボロボロになり、そのまま放置されてしまったかのようである。
「……誰もいないみたいだけど?」
「……逃げた、にしては……」
誰かに襲撃されたとしたら、それは恐らく篠ノ之束か赤月事件で暴走した篠ノ之箒だろう。しかし、箒であればそのような時間はあったとは思えない。つまり篠ノ之束しか居なくなるが……
「……お姉様がここまでやった?」
「関係はないとは言っても、流石にここを責めるのは理由が思い当たらない」
「……作ろうと思えばいくらでも理由は作れるけど……そうなると、死体がひとつも残っていないのが分からない」
「死体処理をした形跡もないみたいだし……」
私たち二人で探索をするけど、一向に証拠は見つからない。証拠どころか手がかりひとつすら掴めやしない。せいぜい分かるのは、ここで誰かが暴れた事と、おそらく死人が誰一人も出ていないことである。
「……うーん?」
「ボロボロになったここを放棄、篝火ホタルノは一体どこに……」
「私たちが来ることを予期……なわけないか」
「……でも、完全に情報がなかったわけじゃない……かな」
『そのとおーり!!』
「「っ!?」」
突然響く声。私達は辺りを見回しながら、ISを纏う。敵が来たのか、はたまた別の何かが来たのか。どちらかは定かではないが、警戒しておくに越したことはないと、すぐに攻撃できるように準備をしておく。
『ストップストップ! ほらほら、私だよ!?』
「その喋り方……」
「お姉様!?」
「はーい、どうも私鬼村五十ゆんっ!?」
ひょっこり、とでも擬音がつきそうな登場の仕方をする五十冬を名乗る女性。しかし、その見た目は髪を黒くした篠ノ之束。とりあえず五十冬ではないと即座に判断したので、攻撃を行う。
「ストップストップ! 見た目変わってるけど私だから! 鬼村五十冬だから!! 本当に!!」
「簪! 間違いなく五十冬お姉様だから攻撃をやめて!!」
……私は、マライアの言葉に従って攻撃は辞める。けれど警戒は辞めないまま、目の前の五十冬を名乗る女性を観察する。
「……まー、簪が警戒するのもわかるし……少しだけ話をしよっか。ほら座って座って」
促されるまま私たちは、床に座り込む。ISを纏ったままだが、警戒しておくに越したことはないと……そのままの状態で、一旦話を聞くことにしたのであった。
マライアに感謝して欲しいと思う。
諸事情により、不定期が本気で不定期になります
五十冬の見た目
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黒髪ロング、胸はない
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黒髪で肩までの長さ、胸はない
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茶髪ロング、胸はない
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茶髪で肩までの長さ、胸はない
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なんでもいいけど眼鏡が欲しい