「ババア、今日雄二泊まるぞ」
荒々しく玄関を開けると、彼は開口一番そんな言葉を大きく発した。
「ほら、入れよ」
「あ、うん。お邪魔します」
雄二はいつものリュックを持って、靴を脱ぐ。もはや雄二専用のスペースがある靴棚に仕舞うと、背後からとととと、階段を降りる音がした。
「勝己ィ、あんたまたババアって……!! あ、雄二くん、いらっしゃい。お部屋、いつものところで良いわよね?」
振り返ると、そこには爆豪光己の姿があった。部屋着といえど女体のラインがはっきり浮き出る衣服の彼女は、やっぱり誰が見ても美人だろう。
「あそこしかねェだろ、アホが。まさかババアの部屋に泊まるってか?」
「それも良いわね……どう、おばさんと一緒におねんねしてみない? 勝己なんかよりよっぽど可愛げのある雄二くんなら歓迎よ」
「死ね。行くぞ雄二」
「あ、うん……光己さん、じゃあそういう事で」
「うん、今日は美味しいご飯作ってあげるからね」
「ありがとうございます」
雄二は光己に手を振って別れると、彼に導かれるまま部屋に入る。今日も本当なら睡の家で過ごすつもりだったが、彼女は絶賛ヒーロー活動中だったので仕方なく諦めたのだ。
「んふふー、何作ろっかなー……♪」
二人とも、もはや雄二が泊まる事には慣れたものだった。今や雄二用に空いている部屋が用意されているし、いつ来てもいいように食材も買い溜めしてあるらしい。それほど頻繁に雄二はこの家に泊まりに来ていた。
本当に、頭が上がらない。いつかこの恩は返さないと、と思いつつ、雄二はリュックを置いた。
「先週、何してたんだ? ババアが心配してうるさかったんだぞ」
「ちょっと色々あって。連絡すれば良かったね、ごめん──かっちゃん」
爆豪勝己。あの光己の一人息子で、雄二とは幼稚園より前からの仲であり、所謂幼馴染である。
家庭の事情により一人になる事が多かった雄二を、爆豪一家は快く受け入れてくれた。彼は雄二を一人にしたくないと、双方の両親に頭を下げて、五歳児にもかかわらず大人達に宿泊を許可させたのだ。
そんな事もあって、雄二はここに宿泊する事が当たり前のようになっていた。
だから雄二は、この口の悪い幼馴染を心から信頼している。
孤独。そして無個性だった雄二に対するいじめ。そう言ったものから、彼は守ってくれた。守り続けてくれた。
彼は、まだヒーローではないが、雄二にとってはあのミッドナイトよりも以前から応援している、自分だけのヒーローだった。
「早い話が、僕に個性が見つかったんだよね」
雄二はどう説明するべきかと頭を掻きながら、勝己を見つめてそう言った。
「あァン……?」
一方の勝己は何を言われたのか理解できない様子で、首を傾げていた。
しかし徐々にその意味を理解しだすと、大きく目を見開いて、ぽかんと口を開けた。
「お前……マジか……?」
「うん、そうみたい……まだよくわかんないけど」
勝己は天井を見上げると、笑い声を上げた。
「はは、ははは、そうか、良かったな……って、お前は別に個性欲しがってなかったか」
「あのクソデクと違ってな」と面白くなさそうに唇を尖らせながら、勝己はそれでも笑顔を見せていた。
「うん、そう。でももしかしたら、これでかっちゃんと二人で──」
──ヒーローになれるかも。
「ま、安心しろよ。個性があろうと無かろうと、俺が守ってやるから」
「……うん」
雄二の声は小さく消えた。
個性を手に入れたと報告しても、未だ彼の中では雄二は守るべき存在なのだろう。
今まではそれが嬉しかったが。ふと何気無く二人でヒーローになるなどと口走りそうになって、自分でも気がついてしまった。
自分の中でどこか神格化していた彼と、対等になれるかも。
そう思ってしまった。
けれど勝己にそう言われては、雄二は素直に頷くしかなかった。
自分はやはり、弱い人間だ。
結局、彼と対等になれるのは、彼しかいないのだ。
雄二と同じく無個性だったにもかかわらず、常に彼のとなりに立ち続けた、あの緑色の少年しか。
「なんの話してんの?」
「うわ」
突然、幸せな膨らみが後頭部に押し付けられる。
真上から光己の声が聞こえると、そのままぬいぐるみのように抱きしめられる。
「おいこらババア、何勝手に入ってきたんだコラぁ!!?」
「いいでしょ別に。私だって雄二くんと話したいんだからー」
「バッ……歳を考えろよ、ババアと話なんか合うわけねェだろ!!」
光己は勝己の言葉を聞き流しながら、「そんな事無いわよねー?」と覗き込むように目線を合わせてくる。
ムチムチの女体が、無警戒で密着してくる。
「は、はい、光己さん……あと、ちか、近いです……」
睡を抱いた事で女の味を知ってしまった雄二。今までは気にならなかった光己の乳房の感触に、興奮を抑えきれなかった。
『犯せ、犯せ──全てを、犯せ』
「く……ぅっ……」
頭に響く、力強い声。
まただ。また。
またこの声だ。
我慢出来ない。
この間も、光己と別れた後、我慢出来なくなって睡に激しく発散した。
光己を見ると、興奮か抑えられないのだ。
「やば……」
むにゅむにゅと押し付けられる巨乳に、雄二は勃起してしまっていた。
「だいたい、雄二は優しいから言わないだけで──」
「はぁ? こら息子、調子乗ってると──」
二人は尚も言い争っている。
今のうちにトイレにでも行って、少しでも性欲を抑えないと。個性を抑えないと。
「と、トイレ……!」
雄二は逃げ出すように部屋を出ると、勝手知ったる爆轟家の廊下を歩いてトイレに駆け込む。
もはやズボンの上からでもはっきり分かる程度に勃起している。急いで脱いで、男根を外に晒す。
その瞬間、閉じ込められていた悪臭が解き放たれた。睡曰く、女には決して逆らえない暴力的なちんぽの臭い。電車の中等で放てば、テロに匹敵するような魔性の香りらしい。
正直雄二自身が嗅いだところでちんぽ臭いだけなのだが、今は問題じゃない。
とにかく、これを光己に嗅がせる訳にはいかない。そして見せる訳にもいかない。ただでさえ雄二は中学生で、女性と行為に及ぶのは危険な事なのに。
それに、何より光己は息子の勝己を見れば分かる通り、子持ちだ。人妻だ。二重の意味でマズイ。
もし彼女がこれを嗅いで、興奮のあまり雄二を押し倒してきたら。ルックスだけ見れば大歓迎ではあるが、前述したようにあってはならない事だった。
「はぁ、はぁ……と、とりあえず、小さくしないと」
雄二は両手で握っても収まりきらない巨根の根元を持つと、ぎこちない動作で扱き始めた。
精子の量も大変だが、便器に直接流し込めば問題ないだろう。
あとは、出すだけ。
「光己さん……光己さん……!」
おっぱいの感触を思い返しながら、懸命にちんぽを扱く。我慢汁が便器の中に垂れるたびに、個室の中にフェロモンが充満していく。
もしこの中に睡が居れば、恐らく呼吸するだけで絶頂するだろう。オナニーを続ければ続けるほど、濃度は濃くなっていった。
もちろんこれは臭いだけじゃない。雄二はこれが個性によるものだと感じ取っていた。
早く、早く処理しないと。そして換気の時間も設けなければ。光己が嗅いでしまったら終わりだ。
あまり長時間は掛けられない。長引けば心配されてしまうかもしれない。
そんな焦りが、雄二の視野を狭めていた。
「ねぇ、雄二くん……♡♡♡」
だから雄二は、扉を開けて背後に立つ光己に、気付くのが遅れた。