「そろそろ散歩いこっか」
そうリサが言った。こたつが恋しくなりかけていたが、リサを待たせるのは悪い。重い腰を上げて着替える。少し暖かめのコートを着ていくことにした。一方リサは少し寒そうなかっこうのままだ。
「寒いから、これ着てけよ」
その辺にあったあまり着ないコートをリサに渡す。
「あ、助かっちゃう♪ありがとう!」
昨日と違い、リサはタイツを穿いているので昨日よりは大分暖かい服装だ。
リサと家を出て、並んで歩き出す。いつもは一人で歩いているが、今はリサが腕を絡めてくるので自然と歩くペースはリサに合わせられる。
「あれだな、今の僕たち、カップルみたいだな。」
「馬鹿言わないで。本当は紗夜がここにいるべきってこと、自覚ある?」
痛い所を突かれるな。自分でも紗夜といる時間より日菜やリサといる時間の方が長いことにくらい気づいている。
「何かリサといる時の方がリラックスできるっていうか、今はそうなりたい気分なんだよ」
「ふ~ん、じゃあ私のことは友達、として見てるワケ?」
「まぁ、そうなるな。」
友達。それは恋人より定義が曖昧で、存在が危ういもの。
彼氏彼女の関係は、お互いの気持ちを確かめあって成立するものだ。つまり言葉のあとに、関係が成立するのだ。対して友達はお互いが友達であることを関係することなく、ただ同じときを過ごした先にあるもの。つまり言葉が介在することはないので、故に友達というのは恋人よりも尊いと思う。
リサの言葉は女として見ていないのか、という意図なのでこれには当たらない。
彼氏彼女というのは、お互いの不安を掻き消すためにお互いを言葉で繋ぎ止めるような存在だ、というのが自分の見解だ。
友もいない自分では机上の空論かもしれないが、もしいたとしたらそれはそれで客観性に欠ける。
「リサを女として見ていない、って意味だけどな。」
「何か引っ掛かる言い方だな~」
そう言いながら絡めた腕を心なしか強く締め付けてきた。
僕としては行く宛もなく歩いていたつもりだが、上手いことリサに誘導されていたみたいだ。
友希那がたまにいるという公園が見えてきた。
「お!いるいるっ♪」
リサが目を輝かせた。視線の方向を見ると、大量の毛玉が白髪の少女に群がっている。多分彼女が友希那だろう。リサとその場所に向かった。
「リサ、奇遇ね。それと、隣の人は誰?」
友希那には僕のこと話してなかったんだな。
「彼は○○。今は大学生で、最近しりあったんだ~」
「そう。さしずめ彼氏、ってところかしら?」
やはり友希那にもそう見えていたらしい。ここは自分から弁解しょう。
「あぁ、そういうのじゃぁないんだ。友達、って言うか」
リサには友達と思ってくれているかは分からないけど、便宜上そうしておく。
「友達、ね。ただならぬ関係、って感じするけど?」
何で分かったんだ、と口にしかけたが、ギリギリで踏みとどまった。
リサにしろ友希那にしろ、女の勘ってのは馬鹿にならないな。
「友希那、冗談キツいよ~♪」
リサが対応してくれたので、正直助かった。
「もちろん分かってるわ。それよりはベンチにすわったらどうなの?」
彼女でもない女性の隣に座るのは気が引けるが、本人から言われると気が楽だ。すると、足に猫たちが集まってきていた。座れないな、と思っていたが、
「○○邪魔しちゃだめだよ、」
と言って猫を抱き上げる。そのとき友希那の香りがふわっ漂ってきた。リサとは違う匂いに少しだけ呆然としていた。
「どうしたの?早く座らないと」
そういう友希那の顔には幼さが残っている。
友希那を初めて見たのはこの公園だった。もっともそのときは話し掛けられなかったが。
しかしこの子はリサや日菜とは違ってあんなことやこんなことも知らないのだろうか。無知、というのは女性の魅力を引き立てるものだな、と思った。
冬の日、公園のベンチに女の子二人と座って猫と戯れる。
「にゃーんちゃん、ふふっ、かわいい」
友希那はもうすでに自分の世界に入っていた。自分も近くの猫を一匹抱き上げ、暖かそうな毛玉を撫でる。あちらでは猫同士がくっつきあって大きな毛玉ができている。僕もリサもそれを見て、自然と体を寄せあった。
バレンタインの夜にこんな文章をしたためる大学生が、そこにはいた。こんなことかいてると寂しくなってきたのでチョコ買ってきます。