紗夜は首をかしげる。
「今度の祝日に一緒に出掛けるのではないのですか?」
「まぁそうなんだけどさ、日菜とかリサも一緒だから、紗夜と二人であまり居られないと思うんだ」
これは半分口実だった。実は紗夜にやってみたいことがあった。「それも...そうですね。では今日のうちに、少し店を見て回りましょう。」
そうしてどうにか紗夜を説得し、二人でショッピングモールに向かった。
「紗夜って夏でもあんまり露出多い服着ないよね。」
「ええ、高校生は高校生らしく、華美でない服装でいるべきだとおもっているので。」
風紀委員の模範のような答えが返ってきた。
近くにあった、明るい色が基調の上下一組の服を取る。今までミニスカートをはいた紗夜を見たことがなかったので、あわよくばお目にかかりたい。そのためにあえてハードル高めのものから提案してみる。
「紗夜、こんなのも似合いようだな」
「そ、そんな華美なものは高校生に相応しくありません...」
そう言いながらも満更でもない様子だ。ここは押してみる。
「誰も見てないんだしさ、試着だけでもしようよ」
試着室の方を見ながら誘ってみる。しばらく逡巡したが
「分かりました ...試着だけですが...」
」
紗夜はそう言って試着室に入っていった。
数分後、カーテン越しに声が聞こえてきた。
「○○、恥ずかしいです...」
どうやら他の人に見られるのが恥ずかしいそうだ。
「僕も見たいんだけど、いいかな」
すると紗夜はカーテンをちょっぴり開け、
「入ってください...」
と言った。試着室に入ると、そこにはいつもと印象が全く違う紗夜がいた。
「紗夜...控え目に言って、むちゃくちゃ可愛いよ。」
冗談抜きでそう思った。いつもは凜とした美人系だが、今は可愛い系女子になっている。制服姿では見えなかったミニスカートから伸びた太ももがとても魅力的で、いつもの私服では分かりにくかった紗夜のスタイルも、今はそれが存分に活かされている。
「か、可愛いとか、言わないで下さい...恥ずかしいです...」
羞恥に満ちた表情もさらに魅力的だ。だがそんな紗夜の姿に少し欲情してしまった。
「紗夜...いいか?」
紗夜に少しだけ迫ってみる。拒絶されないか少し不安があったが、
「こっ、ここは...公共の場で...」
乙女心と風紀委員の心がせめぎあっているみたいだ。しかし拒絶する気は無いようだ。その証拠に背中に手を回しても逃れようとしない。そのまま紗夜に顔を近づける。しかし唇に触れる寸前で止める。
「っ!?、意地悪しないで...」
そう言って、紗夜も僕の背中に手を回し、僕を抱き寄せた。以前したときより紗夜が積極的になってくれたのが少しだけ嬉しかった。唇を重ねるだけのキスをしばらくしたあと、濃厚なディープキスを交わす。紗夜の舌に自分の舌を絡ませると、紗夜もそれに応じて舌を絡めてくる。ぴちゃぴちゃ、と密室の試着室に水が響く。
「ぷはぁ...○○、良かったです...。」
紗夜は恍惚とした表情で言う。
「紗夜も、舌遣い上手くなったよ」
試着室に長居するのも怪しまれるので、試着を終える。また服選びを再開するが、紗夜がすこししおらしくなった気がした。そして
「紗夜、このくらいのやつなら着れそうじゃない?」
ここで予め目をつけていた、少しだけ大人しめの服を紗夜に見せてみる。
「これなら、恥ずかしくないです...」
また再び試着室に紗夜は入っていった。しばらくしたら紗夜がカーテンを開けた。うん、紗夜の大人っぽい雰囲気と可愛いスカートが絶妙に合っている。
「紗夜、にあってるよ」
そういうと紗夜は安心したようで、
「私も気に入りました!」
と少しだけ笑顔を浮かべた。紗夜も気に入ったようで、安心した。
「じゃ、レジ行ってくるから、少し待ってて。」
紗夜から一旦服を受け取って会計に行く。背後で、
「分かりました...えっ!?」
と一人またもノリ突っ込みをする紗夜の声が聴こえた。
会計を済ませ、店の入り口で待っていた紗夜の元へ向かう。
「お待たせ、紗夜。」
紗夜は嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちで板挟みになっているようだ。すると、紗夜は僕のポケットから無言でレシートを奪い取ってしまう。
「はぁ、見なくてもいいものを」
レシートの0の数を見た紗夜は目を見開いた。
「○○、せめて割り勘にしてください。でないと私...」
「ここにきてもやっぱり紗夜は紗夜だな。せっかく買ったんだから、素直に喜んでいいんだぞ?」
そう言うと、紗夜も吹っ切れたようで、素直に
「ありがとう。私、嬉しい。」
やっと紗夜の、年相応の笑顔が見られた。何物にも代えがたいものが見られたので、それで十分満足だ。
「よし、そろそろ帰るか。」
紗夜の家の前に着いた。
「今日は、ありがとう。」
「こっちも、可愛い紗夜が見れて良かったよ。」
別れの言葉を言ったあと、唇を重ねるだけの別れのキスをした。
人生で一番高い買い物をした日だったが、そんなのはどうでもよかった。冬の星空を見上げながらそう心から思った。
書き終わってから気づいたけど、いつもの倍近い字数になってしまいました。どうしても一話にまとめたかったので仕方ない。次回はもうちょっとだけリサとの関係性を掘り下げるつもりです。