まさか昼下がりの公園で、彼女と二人でベンチに座って弁当を食べるという、テンプレートなシチュエーションを体験するとは思わなかった。向こうで子供達がはしゃいでいるのを見ながら、今の状況に実感が持てない。隣では紗夜が弁当の包みを手解き、蓋を開ける。待てよ、肝心の箸が一膳しか見当たらない。
「紗夜、箸が一膳しかないんだが...」
「ご、ごめんなさい、元々自分だけ食べるつもりでしたので...。では、口移しでどうでしょうか?」
今、とんでもない言葉が紗夜の口から飛び出た気がする。多分、所謂「あーん」のことだろう。個人的には口移しでも全然構わないのだが、いかんせんここは公共の場だ。大人のキスを子供に見せつけるのは英才教育にも程がある。自分で間違いに気づいたのか、紗夜は
「ち、違いますからねっ!」
そう言って、唐揚げを箸でつまんでこちらにやる。
「いただきます。」
そういって、あーん、とは言わずに紗夜の唐揚げを食べる。紗夜に餌付けされるというシチュエーションも相まって、二重に美味しい唐揚げだった。
僕が唐揚げを食べている間、紗夜はポテトサラダを食べていた。フライドポテトが好きなのかと思っていたが、正確には、ポテトが使われた食べ物が好きなようだ。
僕が唐揚げを食べ終えたのを見計らうと、今度はご飯を食べさせてくれた。
丁度ご飯が欲しいと思っていたので、紗夜の思慮深さに改めて感心する。そんな風に、紗夜に箸で餌付けされるプレイをしていたので、いつもより食事に時間が掛かってしまったのだった。
「紗夜、最近バンドの調子はどうだ?」
ありきたりな質問をしてみる。リサの腕は上がったのか気になったのだ。
「そうですね、宇田川さんは体力がついて曲の最後の方でもダレなくなりましたね。」
宇田川さん...、ドラムの中学生の子だったな。紗夜は続けて、
「...しかしそれ以上に、今井さんの演奏技術の向上には、目を見張るものがあります。」
そう素直にリサを褒め称える。あの紗夜が素直に褒めるのだから、自主練習の甲斐もあって上達したんだな、と思った。
「あら○○、ご飯粒、付いてますよ」
紗夜はそう言って、僕の頬からご飯粒を取る。急に紗夜が近づいてくるものだから驚いてしまった。しかし、紗夜との距離が縮まったせいで、自然とそういう雰囲気になってしまう。紗夜は少しだけ色っぽい表情になる。
「紗夜...」
紗夜の背中に手を回し、顔を近づけ、そのままキスをした。唇を重ねるだけのキスをするつもりだったが、紗夜は僕の口に舌を滑り込ませてくる。
「さ、流石にばれるぞ...?」
「ここなら、丁度陰になってますし、それに見られるかも、というのがいいんじゃないですか...。」
紗夜はこういうことをする女だっただろうか。思い返すと、今日の紗夜は少し顔が上気している気がする。リサあたりに彼女としての色々なテクやらを入れ知恵されたのかもしれない。端から見ても、舌を使っているのが分かりそうな程に濃厚なキスをする。紗夜はまるで
「私だけを見て。」
と言わんばかりに舌を積極的に絡めてくる。ここで今朝、リサに寸止めされたのが効いてきた。僕の下半身はズボンの上からでも分かるくらいに勃起していた。あろうことか、紗夜は僕とキスしたまま、僕の下半身を手で撫でる。そして口を離し、
「ここ、苦しそうですし、今夜どうでしょうか?」
紗夜の唾液が口のなかに残ったのを感じながら、僕は頷いた。その後しばらく紗夜とベンチにいたのだが、
「それより○○、そろそろお昼休みも終わりではないのですか?」
紗夜はそう言う。時計を確認すると、ちょうどよい時間だったので、そろそろcircleに戻ろう。
「昼ごはん、ご馳走になったな。ありがとう」
紗夜に礼を言い、僕は勃起が収まらないまま、またcircleに戻るのだった。
時刻は5時、いつもどうりバイト終了の時が来た。相変わらずまりなさんにコキ使われる僕だったが、昨日よりは疲れは少ないと感じた。徐々に身体は社会の歯車に適応してきていることを実感する。
「あ~、リサちゃん、お疲れ~♪」
裏で備品の片付けをしていたが、そんなまりなさんの声が聞こえてくる。
「○○くん、お疲れ様。リサちゃん待ってるから、もう上がっていいよ♪」
まりなさんはそう言う。着替えを済ませ、circleから出ると、入り口でリサが待っていた。
「おまたせ、リサ」
こうしてリサと一緒に帰るのが習慣になりつつあるな。
「も~、寒い中女の子待たせるなんて、男としてどうなの~?」
「悪かったな、リサ」
この下りは何回も経験しているので、つい適当に返事してしまう。
「ホントに悪いと思ってるなら、さっき紗夜と何してたか教えてよ」
論理が通ってない気がしたが別段、紗夜とやましいことをしたわけではないので正直に話そう。
「別に、ただ箸が一膳しかなかったから、紗夜にあーんしてもらっただけだよ」
端的に言う。するとリサはがっかりしたような顔をする。
「え~、それだけ?口移しとかディープキスしなかったの?」
この子はそういう言葉を悪びれずに言うようになったな。一体誰の影響だろう。
「あぁ、軽いキスだけはしたっけな。」
ディープキスではないとはいってない。
本当は、あのまま紗夜を押し倒して、犯したかったのを押さえたことを、゛軽く゛と表現しただけだ。
そこで、リサに今朝のことを黙っておく交換条件を話すのだった。
「ふ~ん、それで、お楽しみは今夜までとって置くんだね~♪」
条件を聞き、リサはそう言った。
紗夜のアリバイを作ってもらうため、リサに今夜のことを話すのは避けられなかったのだ。
「でも○○、紗夜、経験ないから手加減しないと、トンじゃうかもしれないよ~♪」
「まあ善処するよ。せっかく一晩あるし、夜が明ける頃には紗夜、牝に堕ちてるだろうな。」
紗夜もノリノリなので、牝になるまでそんなに時間はかからないだろう。
「へ~、処女になかなかえげつないことするんだね~♪」
そんなことを話していると、あっという間に家についてしまった。
「じゃあな、リサ。」
「○○、おやすみ~♪」
今夜、寝るつもりはないのが分かっているクセに、リサはそう言うのだった。
自宅に着くと、案の定家の前で紗夜が待っていた。軽いキスを交わすと、
「○○、早くしましょ...」
紗夜はすっかり上気した顔でそう言う。そして僕は紗夜に何があったのかを察する。さあ、お楽しみの時間だ。