リサとの通話を終え、部屋に戻る。
「紗夜、待たせてごめん」
「いいえ、大丈夫です。お出掛けの件でしたか?」
「あぁ、うん。リサに確認されたよ。」
プライベートなのに相変わらず敬語なのが少し滑稽だった。僕の通っていた高校には紗夜のような風紀委員は居なかったが、それでも何だか学校の教室で話しているような感覚になった。
「今日は家に帰ることにするよ。洗濯物とかも溜まったままだし。」
「そ、そうですか...。」
紗夜が少し寂しそうにする。本人は僕が泊まっていくのを期待したのだろうか。そのまま雑談をしながら家の前まで紗夜は見送ってくれた。東京とは言っても都心から離れているので喧騒は聴こえてこない。紗夜はなにも言わない。静寂が流れ、リサの助言を思い出した。彼女と二人っきりでも他の女の事を考える僕はきっと浮気性なのだろう。そう思いながら紗夜の手を取る。
「○○さん?...んっ!?」
紗夜の声が漏れる。閑散とした夜に紗夜の喘ぎ声と水音が響く。紗夜の唇に舌を入れ、歯茎や上顎の内側を舐める。舌を動かす度に紗夜は体を震わせる。紗夜も僕の腰に手を回してきた。そして紗夜の方もこちらの舌に自分の舌を絡めてきた。お互いの気持ちを確かめるように唾液を交換する。出来ればずっとこうしていたいが、紗夜が体を冷やしてはいけないのでそこでやめにした。唇を離し、銀色の糸が垂れる。
「...過激だったか?」
顔を赤く染めたままの紗夜に聞く。
「...はぃ。...初めてなのに舌まで...」
意外だった。紗夜は美人なので持てそうなのにな。まあ紗夜の性格だと無理もないか。
「それじゃ、おやすみなさい」
そう言って紗夜と別れる。まだ口の中に紗夜の唾液の味が残っている。カーテンの隙間から日菜が盗み見していたが見なかった事にした。
家の前に着くと、見知らぬ人があった。別に不審者とかストーカーとかではなく、今朝偶然会った今井リサだった。
「はぁ...」
心の中でため息をついたつもりが声に出ていた。
「ちょっと!女の子見てため息つくって、失礼すぎない~?」
女の子成分はついさっきの摂取したのでもういらん。
「何の用だよ、こんな夜に」
さっさとコタツに入ってワインを堪能したかったのに、予定が台無しだ。するとリサが寒いと言わんばかりの仕草をわざとらしくする。
「... 入れよ...。」
無視して放置してやろうかと思ったのだが。
「お邪魔しま~す♪」
遠慮なくいってくる反面、玄関でブーツをしっかり揃えて脱ぐ。そういう所がしっかりしているのが救いだ。突然の事で気付かなかったがリサは片手に何か荷物を持っている。
「何だ、その荷物は。」
「○○、まだ晩御飯まだでしょ?作ってあげようと思って」
そう言いながらリサはエプロンを着て台所に立つ。手持ち無沙汰なので、散らかった部屋を片付けることにした。セラーから出しっぱなしのボトルをしまい、読みかけの本を棚に戻して机を開ける。リサに見られるとマズイ類いの雑誌をベットの下に滑り込ませる。何だか結婚生活みたいだな、と思いながら料理するリサの後ろ姿をながめていた。