そんなこんなで雑談をしていると、いつの間にか料理を食べきってしまった。机の上には空の大皿と茶碗があるだけ。せめて食器洗いくらいはしようと、それらキッチンに持っていく。リサが手伝おうとコタツから出ようとするが
「手伝わなくていいよ。コタツで暖まってて。」
そういうと
「そう、ありがとう。」
といって思いの外簡単に引き下がった。食器を洗っていると視界の端に携帯をいじるリサが目に写った。相手は友希那あたりだろうか。高校生らしいな、と少しだけ微笑ましく思った。茶碗はあっさり終わったが、大皿は油がついているので時間が掛かりそうだ。そんなことを考えていると、リサがいつの間にか居なくなっていた。
それと同時に脇腹に手が回ったのに気づいた。
「何だ、構ってほしいのか?」
冷水に指先が冷えていくのを感じながらそう言う。
「今日、泊まっていきたいっていったら、嫌?」
なんだその妙に遠回しな言い方は。そのくせあまり本心を隠す気もないようだ。
「別に構わないけど、親御さんは大丈夫なのか?」
「うん、もう許可とった。」
また手が早いことで。腰に回された手には携帯が握られている。
幸い、風呂は一昨日掃除したし、布団も干した。強敵の大皿も洗い終え、手を拭いてリサの手をほどこうとする。
「いじわる。しばらくこのままで居させて。」
そういって手を離そうとしない。仕方ないのでリサが密着したまま風呂を沸かす。
「わぁ、意外に広いんだね。」
リサは本当に意外そうに言った。
風呂場はありのままに使うしかないからな。リビングは家具の位置を工夫すれば広く使えるが、風呂場は湯船とシャワー以外ないから広さだけが物を言う。窮屈な風呂場じゃ心も休まらない。蛇口を捻り、水流に手を当てながら温度を調整する。
「リサ、こんな位でいいか?」
いつもより少しだけぬるめにした。
「うん、このくらいでいいよ。」
リサも手を当てながら言う。水面にリサと自分の姿が写る。
何だか違和感を感じたが、それはいつもはいないリサがいるからではないようだ。
人は自分の姿を確認するために必ず鏡を使う。しかし正確には彼らは左右反転した自身の姿を見ている。言い換えると、人に見られるときの姿とは左右反転だ。人間の顔は厳密には左右対称ではないので、人が見る自分の顔と自分の見る自分の顔は印象が違って見えるそうだ。特に髪型何かは左右反転して見えると随分と印象が変わる。当然リサの髪も同様に反転していたから僕は違和感を感じたのか。ふと水面を見直すと、リサの顔が歪んで見えた。
「あぁ、ごめんな。さっさとリビングに戻るか」
「いつまで水面見とれて、何考えてたの?」
顔が歪んで見えたのは水面が揺れていたせいではなかったようだ。
リサはジト目で訊いてくる。
「リサの美貌に見とれてただけだよ」
そう受け流し、ジト目のままのリサと風呂場を出た。
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