※この作品はR-18です。

アウトサイダー   作:クラクモ

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時系列としては「MISSION01 私有地警備」の冒頭前になる補足的な小話です。


その時のこと

 

 

 

 

 

 荒野の上空を進む輸送機のコックピット内。

 

 小さな電子音と共に、画面へ一つの光点が現れた。

 

「む……?」

 

 レーダーに映った反応を見て機長の男は目を細める。表示される情報はそれがAC……戦闘力の高い人型兵器であるアーマード・コアだと示していた。

 

 ふと、つい先日に空港の知り合いに聞いた噂が男の脳裏を過ぎる。内容は航空輸送を行う同業者が何機か行方不明になっているという話だった。今回の届け先は紛争が激化している地域からは離れた辺境、また力のある大手企業からの斡旋でもあって安心していたが、裏を調べなかったのは軽率だったのかも知れない。

 

「機長さん、どうかしたんですか?」

 

「あー……お嬢。 もうしばらくしたら配達先に着きますんで、今の内にコーヒーでも用意してくれませんか?」

 

 隣に乗っていた娘からかけられた声に僅かに考え、質問に応えず誤魔化すようにそう返す。

 

「ほらほら、あまり時間も無いので早い所淹れてくださいな」

 

「もう! 積み出し作業の間にトイレに行きたくなっても知りませんよ」

 

 おどけるように急かせば、娘は小言を言いながらも席を離れ休憩室へ向かってくれた。

 

 美しく成長した後ろ姿に目じりの皺が深くなる。養子というわけではないが、親代わりのような立場になってからもう何年経っただろうか。娘は、世話になった前の社長の忘れ形見は、気づけばもう成人を迎える年頃だ。

 

 生きてさえいれば……この場を生き延びられれば、後は一人でも生きていける。そう信じた。

 

 

 

「(そうだ、これでいい)」

 

 この機体の休憩室は、要人が利用する時の為にセーフティールームとして改装してあった。壁は厚く強固に、内壁は柔らかく、室内には非常用に衝撃を吸収するエアバッグも設置されている。これまで幸運にも襲撃や事故に遭うことは無かったので実際にその機能が使われた事は無い。しかし、少なくとも機体から突き出たコックピットに居るよりはずっと安全に違いない。

 

「こちらイーストマール輸送所属の206便。そちらのACの所属と目的を求む」

 

 辺境の採掘基地へ消耗品を届けるだけという今回の輸送業務に、迎えがあるとは聞いていない。

 

 あるいは単に、たまたま通りがかった無関係の機体である可能性もある。だが……もしそうでなかったとしたら? 危険が目前に迫ったとしても、亡くなった親に似て情の深い娘は自分だけ安全な場所へ隠れようとはしないだろう。

 

 何も無ければ……取り越し苦労であるのならそれでいい。後で笑い話にでもしたらいいだけだ。

 

『…………』

 

 しかし、届いている筈の通信に、返答は無かった。

 

 

『機長さーん、お砂糖はどうします?』

 

「ああ、それじゃあ多めにお願いしますわ……ミルクも、そうですね四個くらいたっぷりで」

 

『多めって。もう若くないんだから、甘いものの摂り過ぎで次の健康診断に引っかかるんじゃないですか?』

 

「かも知れないですなぁ……お嬢も健康には気をつけてくださいね。 いつまでも、元気で」

 

 インカムからの声に祈りを込めて答えて、側面に並んだ操作パネルから彼女の居る部屋をロックする。

 

 

 

 僅かな間。

 

 自動操縦を切った直後だった。ほとんど聞く事が無い、ロックオンされた事を示す耳障りな警告音をコンソールが鳴らした。

 

 決(・)ま(・)り(・)だ。すぐさま救難信号のスイッチを入れ、汗ばむ手で操縦桿を握り締める。

 

 

 ああ……本当に、彼女の親である前の社長には助けられた。あの人が居なければ、今日までの自分は無かった。ならば今度は、私の番だろう。恩を返す時が来たのだ。

 

守らなければ。

 

 

 

そして――

 

 

 

 

 




ロボ物に出てくるオペ子ってどうしてあんなに妄想を掻きたてられるんでしょう。
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