メインは、アサギ2で登場した沙耶(正確にはそのオリジナルの少女)の救出をメインに
しています。また、名前もオリジナルです。
加えて、序盤にある男のオリキャラが登場しますが、その男はある方から
頂いた設定を元にしています。今回はあくまでもちょっと出るだけ
ですが、まぁそこは追々と言う事で、お楽しみに。
第1話 キングダム、再び
~~第2章のあらすじ~~
10年ぶりの再会を経て、ともに歩み戦う決意
を固めるアサギ、さくら、歩夢。3人は
千葉のセーフハウスでひっそりと暮しながら
日々妖魔や悪人と戦っていた。そんな中、
アサギが統領を務める事になった伊賀の
対魔忍の一人、『八津九郎』から彼の妹、
『八津紫』のサポート、或いは救出を
依頼された3人は、紫を追って彼女の
潜伏している場所、『東京キングダム』へと
向かった。
紫は、アサギを捕らえその恋人、沢木恭介
を死に追いやった組織ノマドの、死んだはず
の魔界医、『桐生佐馬斗』の事を探っていた。
桐生は、妖魔と融合する事で生きながらえて
おり、その生存の情報も桐生が紫を
おびき寄せるための物だった。
また、桐生はノマドに対して離反を
企てており、その始末の為にノマドの
首魁、エドウィン・ブラックが側近、
女魔界騎士『イングリッド』が派遣
される。
しかし、紫もイングリッドも、それぞれ
桐生に敗れ捕らえられ、東京キングダムの
組織、『龍門』のビル内部で陵辱されていた。
しかし、そこへ仮面ライダーである歩夢が
駆けつけた事で解放された二人。
イングリッドと紫、歩夢は
お互いの共通の敵、桐生を討つために
一時的に共闘。桐生を退けるのだった。
その後、紫は歩夢に助けられた事で
彼への好意を芽生えさせる。一旦は
さくらの存在ゆえに身を引こうと
したが、さくらの言葉によって、紫は
橘邸の家族として迎え入れられるのだった。
紫の一件で少しした後。その日歩夢は、
東京のDコーポレーションに足を運び
仕事をしていた。在宅勤務をメインにした
とは言え、かといって家で全ての仕事が
出来る訳では無いので、こうして
ちょくちょく本社に足を運んでいたのだ。
「ハァ」
そんな中、歩夢はため息をつく。
彼のため息の理由は、一週間と少し前の
ある夜の事だった。
「え?アサギやさくらちゃん、紫ちゃん
が『仮面ライダー』に?」
夜。地下のセーフハウスの歩夢の部屋にて。
歩夢達4人は、夜のHな営みを終えて
シャワーで汗などを落とし、全員が
バスローブを纏っていた。そして、
歩夢がコーヒーを淹れていた時、
さくらがその話題を切り出したのだ。
「うん。アユ兄の持ってるゲーマドライバー、
だっけ?あれってアユ兄の以外にまだ
3つくらいあったよね?」
「うん。ライダーシステムは強力
だから。数は多い方が良いと思って。
僕の予備も含めて作ってあるよ」
「それで、3人で話し合ったんです。
歩夢さんと同等の力を手にできれば
って。今現在、仮面ライダーの知名度
はうなぎ登りです。アサギ様も、
ブラックに目を付けられている以上
狙われる危険もありますし」
「今後、戦いが激化していくかも
しれないし、更なる力は必要だと
思うの」
「そっか。……ただ、少し問題が
あってね」
「問題?」
歩夢の言葉に首をかしげるアサギ。
彼は3人にコーヒーを渡すと
机の前の椅子に腰を下ろした。
「僕の創ったゲーマドライバーの
ライダーになるためには、人工
生命体とも言える極微少物、
『バグスターウィルス』って言う
のを体内に投与して適合しなきゃ
いけないんだ」
「それが、ライダーの力に必要なのね?」
「うん」
アサギの言葉に頷く歩夢。
「ウィルス、なんて言ってるけど安全性は
僕の体で実証済み。その辺は問題無い
んだけど……。ただ、変身用ウィルス
の生成には元になる、つまりアサギ達の
DNAデータを採取して、それにあった
ウィルスを精製しなくちゃいけないんだ。
今のこのセーフハウスの設備だと、精々
二人分の同時生成が限界。それに2週間
はかかるから、最悪誰か一人は4週間
くらい後になるんだ」
と、説明を聞いた3人はお互いの顔を見て
考える。
やがて……。
「なら、私が最後で構いません」
そう言って挙手する紫。
「良いの?むっちゃん」
「あぁ。こういう時は、付き合いの
長いアサギ様やお前の方が先で
良いさ。それに、なれない訳
ではないんだ。私はそれで良い」
と、さくらの言葉に頷く紫。
「そっか。アサギとさくらちゃんは?
それで良い?」
「私は構わないわ」
「うん。私も」
アサギ、さくらの順に頷く。
「分かった。じゃあ、明日にでも二人の
DNAデータから変身用ウィルスの生成
を始めるよ」
そう言って歩夢はコーヒーに口を付ける
のだった。
そして時間軸は巻き戻り、本社にて。
『アサギとさくらちゃん、それに紫ちゃん
が仮面ライダーに、か。……確かに
ライダーにはそこそこの力があるけど』
そう考えながら、歩夢は鞄の中のPCに
目を向けた。
そのPCの、多重の防壁が張られた
データファイルの中には、ドライバー
やガシャットに関するデータが収められ
ていた。万が一にもデータを盗まれない
為に、歩夢はそのPCを殆ど肌身離さず
に持ち歩いていたのだ。
ライダーの力は強力だ。それは実戦で
遺憾なく発揮され、既にアサギやさくら、
紫を助ける為に活躍した。
しかし、それが外に漏れ、歩夢達の
敵になる事を彼は恐れ警戒していた。
強力な武器は、強力であるが故に
同じ物が敵の手に渡った時、それは
恐ろしい存在となって歩夢達に襲い来る。
それは、ある意味最悪のシナリオだ。
『ライダーのデータはこのPC
の中にしか無いし、防壁をもっと
厚く強固にしないとな』
歩夢は、そんな事を考えていた。
その時。
「橘君」
不意に、歩夢の所属する部門の部長が
彼に声を掛けた。
「あ、部長」
それに気づいて立ち上がる歩夢。
見ると、中年の部長とその後ろに、
若くもスーツをビシッと着こなした、
独特なオーラを纏った青年が立っていた。
「僕に何か用でしょうか?」
「あぁ。実は君に会っておきたいと
言う人が居てね」
そう言うと、部長と呼ばれた男が
横にずれ、スーツ姿の青年が歩夢の
前に出た。
「はじめまして。私はこう言う者です」
青年は胸ポケットから名刺を取り出す
と歩夢に差し出した。
「あっ、ご、ご丁寧にどうも」
慌てて歩夢も名刺を取りだし、彼と
交換した。
そして、それを見たのだが……。
「えっと、『檀ファウンデーションCEO、
檀クロト、さん?………ってぇ!
えぇぇぇっ!?」
歩夢は相手の素性を知り、素っ頓狂な声を
上げてしまった。
「だ、檀ファウンデーションというと、
現在において最も強大な企業と
言われているあの!?」
相手の立場の大きさに驚く歩夢。
彼の言う、『檀ファウンデーション』とは、
現在において『最大・最強の企業』と呼ばれる
超巨大企業だ。
そのCEOなど、一般人から見れば正しく
殿上人だ。歩夢が驚くのも無理は無い。
「あ、あの!なぜそんな檀クロトさんが僕に!?
えと。僕はただのシステムエンジニアですし!」
そして歩夢は驚き、テンパったまま彼に問うた。
「はっはっはっ。いや、大した事では無いが。
私は趣味でゲーム開発をしていてね。
君の噂は聞いているよ。若くしてゲームアプリ
を開発した天才、とね」
そう言って、笑みと共に彼を褒めるクロト。
「い、いえそんな!檀クロトさんこそ、若くして
起業され、剰え世界一の企業へと成長させたと
聞いています。僕なんか、あなたに比べれば」
と、歩夢は謙遜をしていた。まぁ、彼自身
自らの功績を威張る、等という事はしないタイプ
だからだ。
「謙遜か?しかし君には才能があるようだ。
私もゲームを創るのが好きでね。丁度
ビジネスで来ていたが、君にも会って
おきたかったのさ。っと。もうこんな時間か。
では、これで失礼するよ」
と言うと、クロトは去って行った。
そして彼が出て行くと、歩夢は息を吐き
ながら椅子に腰を下ろした。
「あ~。びっくりした~」
驚く歩夢。そして直後、彼の周囲には大勢の
同僚が集まり、彼と色々な話をしていた。
一方で、その有名人、クロトはと言うと……。
彼は、Dコーポレーションの地下駐車場に
向かうエレベーターの中で、スマホを
取りだした。
そして、その画面には映し出されていたのは。
『コピー完了』の文字と、『100%』の
パーセンテージだった。
その画面にほくそ笑むクロト。
歩夢は、まだ知らない。この出会いの意味を。
そして、翌日の朝。千葉の橘邸。
歩夢達4人は、地上のハウスで朝食を
取っていた。
「へ~~。アユ兄、あの檀ファウンデーション
のCEOさんと会ったの?」
「うん。もうびっくりしちゃったよ。
昔、二十歳前にゲームアプリを創ったのに
興味があったみたいでね。クロトさん
ゲームを創るのが趣味だって言ってた
んだよ」
「成程、それで」
と、頷く紫。
「まぁ、歩夢の才能は確かに天才と呼べる
物ね。何せ、仮面ライダーを一人で
設計開発しちゃうくらいなんだから」
と、アサギは言うと、さくらと紫は
うんうんと頷いた。
「あ、アハハ。ありがと、アサギ」
彼女の褒め言葉に、歩夢は顔を赤くしながら
笑みを浮かべるのだった。
そして、その日の午後。歩夢は地下の
基地でアサギとさくら用のバグスターウィルス
の培養状況を確認していた。
『……。あと数時間で完成、か。そうなれば、
アサギとさくらちゃんは』
そう考えていた歩夢。
そして、彼は悩んでいた。
仮面ライダー。それは、『騎士』だ。
疾風の如く世界を駆け、絶望の淵にある
人々へと、誰よりも早くその手を差し伸べる。
仮面ライダーとは何か?それは……
人々の自由と平和を脅かす悪を切り裂く『剣』
であり。
力無き人々を悪しき者から護る『盾』
である。
そして、騎士は人々を、愛おしい女性を
守る為に全身全霊で戦う。だからこそ、迷う。
自らと同じになる事は、更なる戦いへと
彼女達を駆り立てるのでは無いのか?と。
もちろん、仮面ライダーになると言い出した
のは彼女達だ。その選択を、歩夢と言えど
後からとやかく言う資格は無い。
しかし……。
それでも、歩夢は悩んでしまうのだった。
と、その時。
『ピピピッ!ピピピッ!』
机の側にあった内線電話がコール音を
鳴らした。
電話を取る歩夢。
「もしもし?」
『あ。アユ兄。ごめん、今すぐ上に来て。
ちょっと緊急事態って言うか、
とてつもなく大きな案件というか……』
と、どこか歯切れの悪いさくらに歩夢は
疑問を感じつつも、『すぐに行く』と
言って電話を切り、エレベーターで上の
ハウスに向かった。
そして、リビングに向かうとそこには、
歩夢の見知らぬ黒髪ロングヘアの少女が、
和服姿で座っていた。
「あっ。歩夢さん」
そして、少女と向かい合っていた紫と
アサギ、さくらの内、紫が振り返り歩夢に
気づいて声を掛けた。
「紫ちゃん、さくらちゃん、アサギ。
……その子は?」
と、少女を一瞥しながら問いかける歩夢。
「……彼女は里の学園、対魔忍の育成機関に
籍を置く見習いの対魔忍よ。ここへ来た
理由は歩夢がくるまでに聞いたけど。
……『来栖(くるす)』ちゃんだったわね?悪いけど
あなたの話、もう一度歩夢にしてあげて」
「は、はい」
歩夢がアサギの隣に腰を下ろすと、来栖と
呼ばれた少女が静かに話し始めた。
「実は、私の同期で、仲の良かった女の
友達が居るんです。その子、紗弥(さや)って
言うんですけど。紗弥は私よりも
飲み込みが早くて、私の同い年
なのにもう下忍として任務について
いたんです。でも、数日前、任務に
出かけたっきり帰ってこなくて……」
事情を話しながらも、来栖はその目に
大粒の涙を浮かべていた。
「紗弥って、明るくて、活発で、何でも
出来る癖によくおっちょこちょいして周り
から怒られたりして……。でも懲りずに
悪戯したりして……。私、心配
なんです。だから……!」
叫ぼうとする来栖。
その時、彼女を制止するように歩夢が
彼女の肩に手を置いた。
彼女の願いが分からぬ程、歩夢は鈍感では
無い。むしろ、彼女の前にした時から、
なんとなく分かっていた事だ。
そして、彼女の今にも泣き出しそうな目を見た
その時から、彼の中の、英雄としての心には
火が灯っていた。
「その子を、助けて欲しい。そうなんだね?」
歩夢が優しく問いかけると、少女は何度も
首を縦に振る。
歩夢は、そんな彼女を見つめながらギュッと
拳を握りしめる。
「……仮面ライダーは、助けを求めている
人を、決して見捨てない。……大丈夫。
君の友達は、僕達が必ず助け出すから」
それは、歩夢自身の、『英雄として』、
『仮面ライダーとして』覚醒した彼の
決意だ。
「紗弥ちゃんは、僕達が助ける」
「ッ。……ありがとう、ございます」
彼女は、涙ながらに頭を下げるのだった。
その後、紗弥と呼ばれていた少女がどんな
任務に就いていたのか、可能な限り聞き
出した後、彼女は紫が里へと送っていった。
夕方には邸宅へ戻ってくる紫。
そして、彼等4人は作戦会議を始めた。
「来栖ちゃんから依頼されたのは、
下忍の紗弥ちゃんの捜索と救出。
来栖ちゃんが教えてくれた情報によると、
紗弥ちゃんは東京キングダムにおける
龍門の調査を行うように命令を受けて
居たけど……。数日前、正確には四日前に
突如として定時連絡が途絶えた。そしてそれ
以降は音信不通、と」
歩夢は、今ある情報をノートに書き写して
いた。
四日前、と言う部分に線を引く歩夢。
「……龍門に捕らえられた、と見るべき
かしらね?」
「うん。僕もそう考えるのが妥当な所だと
思うよ」
歩夢は、アサギの言葉に頷く。
「龍門……!」
そして、紫はその名を憎たらしげに呟く。
紫は少し前、龍門とそれに加担していた桐生
佐馬斗によって、捕らえられ、慰み者に
される寸前だった。
そして今、その龍門が自分と同じ対魔忍の、
それも女の対魔忍を捕らえたのだ。何を
されている、もしくはされようとしているのか、
それは紫が一番良く分かっていた。
そんな彼女を一瞥しつつ、歩夢は四日前
と言う数字に目を向ける。
「四日。……龍門の奴らが紗弥ちゃんに何かを
するには、十分過ぎる時間だ」
そう言うと、歩夢はソファから立ち上がる。
そして、アサギ達を見回す歩夢。
「今すぐ発とう。東京キングダムへ」
「うん」
「えぇ」
「はい」
歩夢の言葉に、さくら、アサギ、紫が
頷く。
そして、準備を始めようとしたのだが……。
「アユ兄。私達用のウィルスの培養は、
終わってるんだよね?」
「ッ」
突然のさくらの言葉に、歩夢は一瞬体を
震わせた。
「……。確かに、今の時間ならもう、培養は
終了しているけど……」
そう言いながら、歩夢は振り返る。そして
そこには、何かを決意した表情のさくらと
アサギが立っていた。
それだけで、全てを察してしまう歩夢。
「本気?いきなり実戦で、ライダーの力を
試すつもりなの?」
「実戦でいきなり使うつもりは無いわ。
でも、使えるのなら持っておきたいの」
「うん。私もお姉ちゃんも、仮面ライダー
としての力が欲しい。紗弥ちゃんを
助ける為に。そして……。アユ兄と
一緒に戦う為に」
アサギとさくらは、真っ直ぐに歩夢を見つめる。
そして、先に折れたのは歩夢だった。
「……分かった。じゃあすぐにウィルスを
投与するよ。けど、僕が大丈夫だったから
って二人に何かしらの拒否反応が出ない
とも限らないから。もし、急に体調が
悪くなったりしたら、必ず言ってね?
これだけは、約束だよ?」
そう、念を押す歩夢。
「えぇ。分かってるわ」
「うん。大丈夫だよアユ兄。
だって、アユ兄が側に居てくれる
んだもん」
そう言って、さくらは歩夢の右手を取り、
自分の胸に抱いた。
「さくらちゃん」
静かにさくらの名を呟く歩夢。
しかし、彼の中では未だにくすぶっていた。
彼女達がライダーになる事への、疑問が。
その後。歩夢は二人にウィルスを投与した。
直後には何の拒絶反応などは無かった。
それを確認した歩夢は、どこからか二つの
ジュラルミンケースを持ってきて、
歩夢の地下の部屋で待機していた二人の
前に置いた。
パチンパチン、とロックを解除し、
ケースを開く歩夢。
中に入っていたのは……。
「これが、二人のゲーマドライバーと、
変身用ガシャットだよ」
歩夢の物とは別のゲーマドライバーとガシャット
だった。
歩夢は二人のドライバーを渡した後、ガシャット
を取りだし、二つをアサギとさくらに
差し出した。
「これは『マイティアクションXガシャット』。
近接戦闘をこなすライダーだよ。
さくらちゃんのは、『バンバンシューティング
ガシャット』。射撃武器を使ったライダー
なんだ。とりあえずは、まずこの基本
ガシャットを渡しておくよ」
「……。これが、仮面ライダーの力」
静かに呟きながら、さくらはバンバン
シューティングガシャットを握りしめていた。
「…………」
そしてアサギも、無言のままに
マイティアクションXガシャットを
見つめているのだった。
その後、アサギとさくらも、改めて準備が
完了した事から、4人は地下の一角に
集まっていた。
「……それじゃあ」
3人を見回してから、歩夢はハリケーン
ニンジャガシャットを取り出した。
『ハリケーンニンジャ!』
「変身」
『ガシャット!ガッチャーン!
レベルア~ップ!』
『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ~!』
歩夢は、仮面ライダーへと変身する。
そして彼は、左側面のスロットホルダーの
スイッチを押し込んだ。
『ステージ!セレクト!』
電子音声が響き、次の瞬間には、4人は
薄暗くなり始めていた夜の東京のビルの
屋上に立っていた。
「……東京キングダム」
そして、仮面ライダーはビルの屋上から
見える孤島、東京キングダムを遠くに見つめ
ながら呟いた。
まるで、夜の闇を映すかのように漆黒の海
の中にぽつんと浮かび、光を放つそれは、
正しく孤島と呼ぶに相応しい物だった。
そして、その孤島には、人ならざる怪異と
外道へと落ちた悪人達が巣くっている。
正しく無法の島だ。
そして、しばらく東京キングダムを見つめていた
ライダーは、3人の方へと振り返る。
「……行こう。紗弥ちゃんを救出しに」
彼の言葉に、3人が決意の表情を浮かべながら
無言で頷く。
そして、仮面ライダーはジェットコンバット
ガシャットを取りだし、レベル3へと変身。
3人を抱えて飛び立った。
以前の紫救出時と同じ、廃ビルに着地する4人。
「……ひとまず、侵入成功ね」
「そうだね」
周囲を警戒しつつも息をつくアサギと頷く
さくら。
「それで、歩夢さん。この後は?」
「……既に時間が経っているからね。
出来るだけ速く紗弥ちゃんを発見したい。
とりあえず、龍門のビルに潜入。紗弥
ちゃんを発見したら、ステージセレクト
の力で即座に撤退しよう」
歩夢の言葉に3人が頷き、彼等はボロ布の
外套を纏うと、夜の闇の中へと跳んでいった。
4人がまず真っ先に向かったのは、かつて
歩夢と紫が、女魔界騎士イングリッドの助力
を得て倒した、桐生佐馬斗が居た龍門の
ビル。
しかし……。
「既にあの時の面影は無い、か」
ぽつりと呟いたライダー。
彼の言うとおり、巨大なビルの窓はあちこち
ひび割れて中が見え、仮の補強なのか
ダンボールで塞いだ窓がいくつかあった。
そんな補強もされていない割れた窓から
中へと視線を向けると、薬物中毒者や
浮浪者らしき男達の姿があるだけ。
どう見ても、龍門が使って居るビルには
見えなかった。
「あの戦いの後、アジトとして破棄されたの
でしょうか?」
「多分ね。敵も、色々バレた基地を直して
再利用しようとは、思わなかったんだと
思うよ」
紫の言葉に頷くライダー。
「だとすると、拠点は別の場所に?」
「うん。ここからは一旦ツーマンセルに
別れて龍門の拠点を探そう。アサギと
さくらちゃん。僕と紫ちゃんに別れる。
何かあったら、渡してある通信機で
呼ぶか、緊急警報を鳴らして。
すぐに飛んでいくから」
「うん、分かったよアユ兄」
「それじゃあ二人とも、あとでね」
そう言うと、アサギとさくらが跳躍し
離れていく。
「それじゃあ紫ちゃん。僕達も」
「はいっ」
そして、二人を見送った後、ライダーも紫と
共にどこかへと跳躍していく。
しかし、それを廃棄された龍門のビルの中から
見ていた男が居た。
男は彼等が離れたのを確認すると、携帯を
取りだしある番号にかけた。
電話の向こうで、ガチャリと受話器を取る
音がした。
「もしもし?こちら監視班。旧ビル付近に
例の仮面野郎が出現。側には対魔忍が3人。
内二人は、あのアリーナから逃げ出した
姉妹です。………はい、了解。撤収します」
男は、報告を終えるとその場を後にした。
歩夢達、ライダー達はまだ気づいて無かった。
今自分達が足を踏み入れているここには、
『罠』が仕掛けられている事を。
その後、ライダーは紫と共に島内をあちこち
飛び回っていた。
しかし、島と言ってもさして大きくないのだ。
龍門の物と思われるビルを発見するのには、
大して時間は掛からなかった。
「……あれか」
ライダーは、龍門の物と思われるビルを、側に
ある廃ビルから紫と共に見上げる。
そこへ。
「アユ兄、むっちゃん」
別行動していたアサギとさくらが合流した。
「二人もここまでたどり着いたのね」
「うん。街中での会話を盗み聞きして、
龍門の者と思われる男達の足取りを探って
たらね。二人も?」
「えぇ。歩夢達と同じよ。……それより」
頷いたアサギは、静かに龍門のビルに視線を
向け、ライダー、さくら、紫もその視線を追う
ようにビルを見上げる。
「行こう。紗弥ちゃんを助けに」
彼の言葉に無言で頷く3人。そして、4人は
龍門のビルへと潜入を開始した。
4人は、歩夢の開発した光学迷彩コートなどの
アイテムを使って、無事に龍門ビル内部への
潜入に成功した。
そして4人は、再びツーマンセルに別れて
建物内部を捜査する。
そして彼等は見つけた。その場所を。
「アサギ、さくらちゃん。これから言う場所
に来て。隔離区画らしき場所を発見したから」
『『了解』』
通信機越しに、二人の声を聞くと、歩夢は
場所を教えた。
そして数分もすれば、合流するアサギとさくら。
今、4人が居るのは地下の区画にある小さな倉庫
の中だった。
「お待たせアユ兄。それで?」
「うん。この先に、警備の厳重な区画がある。
そして、近くを通りかかった男達が
言ってたんだよ。『またあの女対魔忍と
やりてぇな』って」
そう呟くライダーの言葉に、女として3人は
表情を歪ませる。
当然だ。誰がレイプなどと言う下劣で低俗、
最低な行為に喜びなど感じようか。
まして、その被害者ともなれば当然だ。
しかし、だからこそ。
「……紗弥ちゃんの年齢を考えると、
時間が惜しい。ここは、発見されるのを
覚悟で強行突破する。良い?」
ライダーが問いかけると、3人が殺意と
決意を浮かべながら頷く。
そして、ライダーも……。
ゆっくりと背中の双刀を抜く。
ライダーの、その瞳が怒りを表すかのように
ブゥンと怪しく光を放つ。
「行くぞ」
彼等は動き出す。絶望の淵で涙を流す命を
助け出すために。
そして、悪しき者を徹底的にぶちのめすために。
その時、隔離区画と一般区画を隔てる分厚い
金属扉の前には、銃器で武装しプロテクターに
身を包んだ男達が立っていた。
「ふ、あぁ~~」
そんな中、男の一人が大きく欠伸をかいた。
「おいおい。欠伸なんてかいてないで
真面目に警備しろよ。お前が怠けると
俺まで連帯責任で怒られる」
「っつったって、どこの誰が龍門のビルの、
それもこんな所まで侵入してくるんだ
っつうの」
「まぁ、そりゃそうか」
と、男達は気を抜いていた。
ゆえに、終わった。
『『ドドッ!!』』
次に気がついた時、男達の喉に、どこからか
投擲されたのか二つの小太刀が突き刺さっていた。
喉を潰され、男達は声が出ない。急速に意識が
遠のいていく。その時。
「居るとも。ここに来る奴というのは」
声が聞こえた。そして、空間が揺らめいたかと
思うと、光学迷彩を解除した仮面ライダーが
姿を現した。
そして、男達は歩夢の言葉を最後に、命を
手放した。
それを確認したライダーは、小太刀を抜く。
その背後から現れるアサギ達3人。
彼等は互いを一瞥すると、殺した男の
持っていたIDカードで扉を開放し、
一気に飛び込んだ。
巡回なのか、通路を駆け抜けていると時たま
武装した男達と接触するが、その全てを
仮面ライダーの小太刀やアサギ達のクナイが
切り裂き、貫く。
そして、4人はたどり着いた。
そこは、いくつもの鉄格子の牢屋が並んでいた。
4人は素早く中を確認する。
「ッ!歩夢さん!」
そんな中、紫が一つの牢屋の前で叫んだ。
他の3人も彼女の元に駆け寄り、中を確認
する。
そこでは、ビリビリに破かれた対魔忍スーツ
姿の少女が、体のあちこちを精液で汚され
ながら、鉄の床の上でぐったりと横たわっていた。
そして、歩夢は来栖から教えられていた彼女の
特徴を思い出す。
「桃色の髪のショートヘア。間違い無い!」
紗弥の事を確認した歩夢、ライダーは小太刀で
鉄格子を切り裂き、中へと踏み込む。
そして、自分の手や体が精液で汚れる事も
構わず、紗弥を優しく抱き起こした。
「紗弥ちゃん!紗弥ちゃん!」
呼びかける仮面ライダー。すると……。
「う、うぅ。………だ、れ?」
弱々しい声と共に、ゆっくりと瞼を開き
ライダーを見上げる紗弥。どうやら完全に
覚醒していないのか、その瞳は朧気に
宙を彷徨い、そしてアサギ達に注がれた。
「対魔、忍……?どうして……?」
状況がつかめない、と言わんばかりに戸惑い
紗弥の視線は周囲に泳ぐ。
「あなたは龍門の調査中に捕らえられたのよ。
覚えてないの?」
アサギが静かに問いかける。
「あっ」
そう、呟いた紗弥。
直後。
フラッシュバックする。自分がここで『何』を
されたのか。
「ッ!いや!いやぁっ!来ないで!
やだぁっ!やだやだやだぁ!」
急に暴れ出す紗弥。彼女はライダーの腕から
離れようと藻掻き、彼の胸や顔に腕を振る。
「お、落ち着いて!もう大丈夫だから!」
必死に宥めようとするさくら。
「いやぁ!いやぁ!いやいやいや!
いやぁぁぁっ!やめて!やめてよ!
来ないで!来ないでぇぇぇっ!」
しかし、彼女の瞳は、現実を見ては居なかった。
彼女の中で繰り返しフラッシュバックする、
レイプの現実。
下卑た笑み、薄汚い逸物、男達の嘲笑。
脳裏にこびり付いた闇の残滓が彼女の心を
壊していく。
と、その時。
『ガッチョーン。ガッシューン』
ライダーが変身を解除し、紗弥を優しく
抱き寄せた。
しかし、それでも紗弥は暴れる。下忍とは
いえ対魔忍。その腕力は少女といえど
舐めては居られない。
『ガッ!』
乱暴に振り下ろされた紗弥の拳が歩夢の
額に命中し、歩夢は額から血を流す。
「アユ兄!」
それを見て叫ぶさくら。
「任せて」
しかし、そんな中でも歩夢は静かに、そう呟く
だけだった。
歩夢は、もう一度ギュッと紗弥を抱きしめる。
「もう、大丈夫だ。君に酷い事をした奴らが、
また襲いかかってきても、僕達が君を護る」
彼は、優しく紗弥に語りかける。しかし、紗弥は
まだ暴れている。
「絶対、絶対君を奴らから護る。守り抜いて
見せる……!」
やがて、歩夢は声のボリュームを上げる。
「どんな敵が来たって、君を必ず守る!」
「ッ!」
びくりと、紗弥の体が震える。そして、歩夢を
叩き続けていた手が止まる。
「僕達は決して君を見捨てない!必ず
ここから助け出す!だから、信じて欲しい!
僕を、仮面ライダーの名前を!」
歩夢は、魂の言葉を響かせる。そこに、
一切の嘘や偽りは無い。
仮面ライダーとしての道を選び、弱き者、
あらん限りの涙を流す者たちを護ると、
助けると誓ったその意思は、英雄という
存在の魂そのもの。
英雄とは、光を放つ、輝く存在。
闇を払う聖光の如き存在。
そして、仮面ライダーという存在は英雄と
呼ぶに相応しい。
英雄とは、輝く存在。
仮面ライダーとは、真の英雄となった者に
送られるに相応しい称号。
つまり、仮面ライダーとしての覚醒は、
真の英雄への、『光輝への覚醒』を意味する。
故に、照らし出す。絶望に暮れる少女の心を
優しく、温かく、照らし出す。
その心の輝きは、万物を照らす太陽の如し。
英雄、仮面ライダーの放つ光は、静かに、
しかし確かに、少女の闇に囚われた心を
照らし出す。
そして、少女もまた見えた。
鮮烈なる光。光り輝く存在を、歩夢に。
本物の英雄の姿を。
「あなた、は……?」
紗弥は、震える唇で問いかける。
彼女の心は知りたがる。真の英雄の名を。
「僕は、『仮面ライダー』。君をこの絶望から
救い出すためにやってきた」
歩夢は、そう優しく答えた。
そして、紗弥は理解する。
本当の英雄とは誰なのか?そんな人は居るのか?
居たとして、本当に誰かを助けるために現れて
くれるのか?……そんな幻想にも似た疑問。
その答えの全ては、今正に彼女の前にある。
『仮面ライダー』という答えが。
「う、うぅ、うっ、えぐっ、う、うぅ。
……あり、がとう、ございま、す」
紗弥は、嗚咽を堪えながら頭を下げる。
そんな彼女を、歩夢がもう一度優しく
抱きしめる。
「もう、大丈夫。僕達が君をここから
連れ出すから」
そう言うと、歩夢は紗弥をお姫様抱っこで
抱え、立ち上がった。
「あっ」
それだけで、紗弥は僅かに呆けた声を
漏らしてしまう。
「もう、大丈夫」
そして、耳元で呟かれる優しい言葉と、
決意に満ちた表情。
それは、正しく英雄、いや、童話の
王子様と呼ぶに相応しい程、紗弥の心に
来る物があった。
紗弥は、俯き顔を赤くする。
と、その時。
「残念だけど、あなた達がここから出る
事なんて出来ないわよ」
「「「ッ!!!」」」
唐突に響いた声に、その場に居た5人の中でも
アサギ、紗弥、そして歩夢が驚き、固まる。
まさか、と言わんばかりに驚愕するアサギと
歩夢。
紗弥は、先ほどまで赤くしていた顔色を、
真っ青にして震えていた。
カツーン、カツーンと音がしたかと思うと、
声の主が牢屋の前に姿を現した。
その人物を見た瞬間、アサギの表情が憤怒に
歪む。
「なぜ!?何故貴様がここに居る!?」
アサギは対魔剣を抜きながら、怒りの形相で
叫ぶ。
「朧ォォォォォォォォッ!!!!!」
捕らえられた対魔忍、紗弥を救出するため
やってきた歩夢達。
そして、紗弥を救出し宥めたのも束の間。
歩夢達の前に現れたのは、カオスアリーナ
でアサギに討たれたはずの裏切り者の
対魔忍、『朧』だった。
果たして、彼等は東京キングダムから無事に
脱出出来るのか?
第1話 END
ってな感じです。沙耶は、オリジナルの対魔忍のクローンって事なので、
容姿は同一ですが、名前を沙耶、から、紗弥、に変更しました。読み方は同じです。
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