~~~前回までのあらすじ~~~
対魔忍紫を救出した歩夢達3人。新たに、
邸宅の家族として紫を迎え入れた橘邸。
そんなある日、アサギ達3人は、歩夢に、
仮面ライダーの力が欲しいと言い、若干の
抵抗がある物の、歩夢はその提案を承諾。
まずはアサギとさくらに仮面ライダーの力を
与える用意を進めていた。そんなある日、
橘邸に来栖という少女がやってきた。彼女は
既に下忍として活動している彼女の友人の
対魔忍、『紗弥』の救出を歩夢達に懇願する。
歩夢は、仮面ライダーとしての決意からこれを
承諾。アサギ達にライダーとしての力と
ドライバー、ガシャットを与えると、3人を
伴って紗弥が捕らえられていると思われる
東京キングダムへと向かった。
そして、紫と因縁のある龍門のビル内部で
紗弥を助け出す4人。しかし直後、彼等の前
にカオスアリーナで倒れたはずの朧が
現れるのだった。
「朧ッ!?」
アサギが叫ぶと、さくらが戸惑いながら双剣を
抜く。
「何!?奴が!?」
紫も、驚きながら両手斧を構える。
「何故、何故お前がここにいる!?
お前はカオスアリーナで、確かにアサギが
倒したはず!?」
そしてライダーも、背後に紗弥を庇いながら
驚きを隠せないでいた。
そう、この4人の中で、アサギ、さくら、
歩夢の3人は朧が事切れる所を確かに見ている。
驚くのも無理は無い。
「そうね。この場合は、はじめまして、と
言うべきかしら?」
「……はじめまして?」
「どういうこと?」
警戒を強めながらも疑問符を浮かべる
アサギとさくら。
「私は朧の『クローン』よ」
「クローン!?」
驚く歩夢。
「えぇ。私は魔界と人間界の技術が合わさり
生まれた存在。そして、龍門のトップ。
感謝しているわ。あなた達がオリジナル
の私を倒してくれたおかげで、今の私は
こうして龍門のトップに君臨している」
「朧のクローンが龍門のトップとは。
ならば!」
紫は斧を振り回し、構える。
「ここで貴様を倒し、龍門の頭を潰すまで!」
予想外の敵が、憎き組織のボスと知ってか、
紫の斧を握る手に力が籠もる。
しかし……。
「紫ちゃん!今は紗弥ちゃんの救出が
先決だ!目的をはき違えないで!」
歩夢は、叫びながらもベルトのスロット
ホルダーに手を掛けた。
『とにかく、ここから離脱する!』
そう考え、歩夢はステージセレクトの力を
行使しようとボタンを押し込む。
だが……。
『カチッ!……カチッカチッ!』
『ッ!?発動しない!?』
歩夢は、驚きながらも何度もスイッチを
押し込むが、ベルトは反応しない。
何故?と言う考えが歩夢の中で巻き起こる。
その時。
「アハハハハッ!残念だったわね仮面ライダー。
あなたの使う奇妙な転移技術は封じさせて
貰ったわ」
「ッ!?何!?」
朧の言葉に息をのみつつも問い返すアサギ。
「今、この東京キングダム全体は特殊な
結界に覆われている。そのため、物理的な
移動は可能でも、魔法陣などの転移は
一切不可能。……仮面ライダーの、その
おかしな転移技術もね」
「ッ!……まさか、僕達が来ると分かっていて!」
「そうねぇ。半分ハズレで半分当たりって
所かしら。……いつかは来るとは思って居たわ。
けど、まさかそのガキの実験が終わる前に
来るとは、思わなかったけど」
実験、と言う言葉に体を震わせる紗弥。
「朧……!貴様紗弥ちゃんに何をした!」
そして歩夢も、怒りと共に叫ぶ。
「ふふ、何って簡単な事よ。まずはそのガキ
の精神を壊そうとして、男達に手当たり
次第に陵辱させただけよ」
朧クローンは、そう言って加虐的な笑みを
浮かべる。
対して、紗弥は更に顔を青くし、歩夢の
背中に縋り付き、震えている。
「……ざけるな……!」
歩夢の中でも怒りの炎が燃えさかる。
そして、考える。ここでの自分の敗北が
何を意味するのか。アサギに。さくらに。
紫に。どんな未来が待っているのかを。
考える。考えてしまった。
それだけで、彼の中の血が沸騰する。
「陵辱しただけ、だと?
……ふざけるなぁっ!」
『ハリケーンニンジャ!』
怒号と共に、歩夢はガシャットを起動する。
「変身っ!!!」
叫び、怒りに震える手でガシャットを
ドライバーに突き刺す。
『ガシャット!ガッチャーン!
レベルア~ップ!』
『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ~!』
歩夢は、怒りと共に仮面ライダーに変身する。
「ふふっ。仮面ライダーの登場ね。けど、
残念ね。あなた達の今の相手は私じゃ
無いわ」
そう言うと、朧が闇の中に溶けるように
消えていった。
「ッ!待てっ!」
追おうと牢屋を飛び出す歩夢達。しかし、
そこには既に朧の姿は無く………。
代わりに、無数の妖魔と悪人達が通路を
埋め尽くしていた。
「ッ!」
咄嗟に双刀を構えるライダー。彼は
忍者プレイヤー達を呼び出そうとするが……。
『ッ!?プレイヤー達も呼び出せない
のか!?』
「アサギ、さくらちゃん、紫ちゃんは
紗弥ちゃんを護りつつ付いてきて!
僕が突破口を開く!」
「アユ兄!だったら私達も!」
そう言って懐に手を伸ばすさくら。
「ッ!ダメだ!」
その言葉と動きが何を意味するのか、理解した
歩夢は、ライダーは叫ぶ。
「まだウィルスを投与して数時間しか
経っていない!完全に体に馴染んだとも
思えない!副作用に何があるかも
分からない!だからダメだ!」
そう叫びながら、ライダーは敵の群れに
飛び込んだ。
蹴り一つで妖魔の腹に風穴を開ける。
そのまま、貫いた妖魔の骸を敵集団の
群れに向かって蹴り飛ばす。
数人の妖魔と人間がそれに命中し吹き飛ぶ。
『ガッシューン』
その隙に、ライダーはガシャットを抜く。
『ガシャット!キメワザ!』
そして、キメワザスロットホルダーに
差し込みボタンを押し込む。
『ハリケーンクリティカルストライク!』
「おぉぉぉぉぉぉぉっ!」
回転する双刀から放たれたエネルギーの
奔流が妖魔と悪人達を飲み込み、
吹き飛ばす。
「行くよ!付いてきて!」
歩夢が叫ぶと、紫がいつの間にか気を失っていた
紗弥を背負い、その前後をカバーする形で
アサギとさくらが続き、敵を蹴散らし
ながら進んでいくライダーに続く。
だが……。
「おぉぉぉぉぉぉっ!」
『ザンッ!』
ライダーが妖魔を一体切り裂いた直後。
「そこだぁっ!」
『ドバンッ!』
『ガキィンッ!』
「あぐっ!?」
武装した男の放ったマグナム弾がライダー
の側頭部に命中した。
弾は貫通する事なく逸れたが、衝撃で一瞬
平衡感覚を失うライダー。
「グルァァァァァァッ!」
『ドゴォンッ!』
「ぐっ!?」
そこに、隙を突いたオークの拳がノーガード
のライダーの脇腹に突き刺さった。
直後。
「くっ!おぉぉぉぉぉぉぉっ!」
小太刀を振って、楔状のエネルギーの雨を
放ち周囲を掃討するライダー。
「はぁ、はぁ、うっ」
その時、ライダーは咄嗟に脇腹を押さえて
一瞬呻いた。
「アユ兄!?大丈夫!?」
咄嗟に駆け寄るさくら。
「大丈夫。それより、今は急ごう」
そう言うと、歩夢は有無を言わさずに
駆け出した。慌ててその後を追う3人。
「アユ兄」
そして、さくらは先頭を走るライダーの背中を、
心配そうに見つめていた。
通路を駆ける4人。そしてT字路に出たとき。
「当れやぁっ!」
飛び出た直後、左側から、悪人達が構えていた
巨大なライフルから放たれた弾丸が放たれ、
真っ直ぐ仮面ライダーに向かって来た。
咄嗟に、左腕前腕のパーツで防ぐライダー。
『バキィィィンッ!!』
甲高い音が響いた。左肘のパーツが、音を
立てて砕け散る。
「ぐぁっ!」
歩夢の、ライダーの悲鳴と共に、左腕が
弾かれるように上がる。
『ドゴォンッ!』
そして、前腕パーツとぶつかり逸れた
銃弾が後ろの壁に突き刺さった。
数歩後ろへ下がるライダー。そして彼は、
右手で左肘の辺りを押さえる。
スーツが、僅かに赤く染まり始める。
「今だぁ!もう一発行くぜぇ!」
悪人達は、対物ライフルをもう一発見舞おうと
狙いを定める。だが……。
「はぁ!」
グサグサッ!
アサギの投げたクナイが男達と対物ライフルに
突き刺さり無力化した。
男達を無力化したのを確認したアサギは振り返る。
「アユ兄!」
彼女が振り返った先では、ライダーが右手で
左肘の辺りを押さえながら床に膝を突いた。
「大丈夫アユ兄!?スーツ、血が滲んで!」
「だ、大丈夫。骨は無事だ。衝撃で、少し
痺れてるけど、まだ、戦える」
ライダーは、そう言って立ち上がり、震える
左手で床に落ちた小太刀を拾い上げる。
「急いで、ここを離れないと」
そう言って、歩夢は震える体に鞭を打ち
駆け出した。それに続く3人。
その後も、幾多の魔物と悪人が行く手を
塞いだ。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
仮面ライダーは、戦いの度に傷つく。
「おぉぉぉぉぉぉっ!」
それでも戦う。
「ぜやぁぁぁぁぁぁっ!」
震える体を、必死に動かし戦った。
そして、ライダー達は窓を突き破り外へと
飛び出した。
「歩夢!」
「全員、一旦あの廃ビルへ!」
「うん!」
「はいっ!」
アサギが叫び、歩夢の言葉に頷くさくらと紫。
4人は、闇へと飛び込み、駆けた。
闇の中に消えていくライダー達を、破られた
窓から見つめている朧クローン。
「ふふ、ここからは逃げられたようね。
でも、貴方達に、逃げ場は無いわ。
なぜなら、今この東京キングダムそのもの
が、貴方達と捕らえている檻なのだから。
ふふ、アハハハハハハハッ!」
まるで、勝利を予見しているかのように
高笑いを浮かべる朧クローンだった。
あの廃ビルへと逃げ込んだ5人。
そんな中で……。
「う、ぐっ」
この中でも一番怪我の酷いライダーは壁に
寄りかかると、そのままズルズルと腰を下ろし
床に座り込んでしまった。
「ッ、アユ兄!」
それに気づいたさくらは、咄嗟に駆け寄り
ドライバーを閉じてガシャットを抜き、
歩夢の変身を解除させた。
「アユ兄!大丈夫!?」
彼に声を掛けるさくら。しかし、彼女は
見ただけで理解してしまった。
額に浮かぶ、玉のような汗と、服の袖を真っ赤
に染め上げる血の出血量。
「だ、大丈夫、これくら、うっ!?」
「何が全然大丈夫なの!?こんな酷い怪我
までして!」
さくらは、叫びながら歩夢の服の左袖を
破いた。
その下から現れたのは、対物ライフルで撃たれた
衝撃で縦に大きく切り裂かれた裂傷だった。
「やっぱり!お姉ちゃん!手伝って!」
「えぇ。任せて」
さくらの声を聞き、外の様子をうかがっていた
アサギは歩夢の元に歩み寄る。
そして、治療をしていた時。
「紫」
「あ、はいっ!何でしょうか、アサギ様」
外を警戒していた紫に呼びかけるアサギ。
「悪いけど、今から本島とキングダムを
結ぶ道の偵察をお願い。……多分、
封鎖されていると思うけど、お願い」
「分かりました」
頷くと、紫は窓から外へと飛び出していった。
紗弥は、まだ眠っていた。黙々と歩夢の怪我を
治療していく2人。
やがて……。
「……。よし、当面はこれで大丈夫かな」
頷くさくらの言葉を聞き、歩夢は包帯が
巻かれた左肘の辺りに目を向けた。
「……ありがとうさくらちゃん」
「ううん。これくらい。……でも、無茶
しすぎだよアユ兄。どうしてこんなに……」
「……」
さくらの問いかけに、歩夢は口をつぐんで
しまう。
しかし、やがて……。
「実を言うとね、怖かったんだ」
彼は静かに話し始めた。
「怖い?何が?」
「……女性の対魔忍が、妖魔や悪人に捕まると、
どうなるのか、僕は知っていた。
その現実を知っていたから、アサギや
さくらちゃんを護ろうと思って、
マスクドライダーシステムを作り上げた。
……そして、あんな紗弥ちゃんの姿を
見て、重ねてしまったんだ。もし仮に、
アサギ達が捕まったら、って」
そう言って、歩夢はギュッと右手を握りしめる。
「そんな事は絶対にさせない。そう思って
戦ってきていた。……けど、僕は二人に
仮面ライダーの力を与えた。与えて
しまった。……それが、二人をもっと危険
な戦いに巻き込んでしまうかもしれないと、
思って居たのに。だから怖かった。二人に
もしもの事があったらって思うと……。
なのに、こんな様で。……僕は、やっぱり昔の
弱いままなんだな」
と、言った時。
『パァンッ』
乾いた音が響いた。それは、さくらの
ビンタの音だった。
呆然としながら、赤くなった頬に左手を
当てる歩夢。
「見くびらないでよ、アユ兄」
さくらは、俯き体を震わせながら静かに
話し始めた。
「確かに、私もお姉も、アユ兄に助けられた
からここに居る。幸せに暮らせている。
……でも、でもねアユ兄。私達は、アユ兄が
思ってる程、弱い女じゃないんだからね」
「さくら、ちゃん」
「私はあの日誓ったんだから!アユ兄の側で、
アユ兄を支える!助ける!一緒に戦うって!
そう決めたの!」
顔を上げたさくら。その彼女の目尻には、涙が
浮かんで居た。
「私は、仮面ライダーの力を得た事に後悔
なんてしない!今よりも危ない所で戦う!?
良いよ!やってやるもん!どんな敵が来たって
返り討ちにしてやるもん!」
さくらは、叫びながら歩夢の胸に飛び込んだ。
「さくらちゃん」
「辛い戦いがあっても良い。怖い事があっても
頑張って乗り越えてみせる。……でも、
でもそれは、アユ兄が側に居てくれなきゃ、
意味なんて無いよ」
さくらは、歩夢を上目遣いで見上げる。
「私が今、対魔忍として戦う意味は、もう
決まってる。……仮面ライダーと一緒に
戦う為。そして……」
さくらは、自分から歩夢に口づけをした。
「橘歩夢という男性を愛し、助け、
添い遂げるために」
「さくら、ちゃん」
静かに見つめ合う二人。そして、さくらは
優しく歩夢の右手を両手で包み込んだ。
「私は、ずっと一緒だよ?アユ兄の側で、
一緒に戦う。アユ兄が私達を護ろうと
してくれているように。私達も
アユ兄を護りたいから」
彼の手を温かく包み込みながら呟くさくら。
「歩夢。私もさくらも、思いは同じよ」
そして、アサギも静かに語り始める。
「今、ここにある平和を、私達の日常を
護りたい。そして、あんな奴らに
仲間を嬲られるのは、我慢ならない。
だから戦うわ。妖魔や悪人と。
歩夢やさくら、紫と一緒に」
「アサギ」
「たまには私達を頼りなさい。私達だって、
結構強いんだから」
そう言って、アサギは笑みを浮かべた。
「歩夢。私も、さくらも、紫も。そして
これから、多くの人が貴方の背中を見て、
その背を追いかけると思う。なんとなく、
そんな気がするの。……仮面ライダーという
英雄の背中を」
「僕の、背中を……」
「えぇ。でも、私達は追うだけじゃない。
その隣に並んで、戦う事も出来る。
『新しい仮面ライダー』として。
私達も戦うわ。仮面ライダーの仲間として。
橘歩夢という、『始まりの仮面ライダー』と
共に」
「アサギ。さくらちゃん」
歩夢は、二人の名を呟きながら交互に見回す。
決意の表情と共に頷く二人。
その時。
「アサギ様」
外へ偵察に行っていた紫が戻って来た。
「紫。道の様子は?」
「はい。アサギ様の予想通りでした。本島へ
伸びる道の前には龍門の手の者と思われる
妖魔や悪人が多数、待ち構えています」
「やはりか」
そう言うと、立ち上がるアサギ。
「どうされますか?このままでは、キングダム
から陸路で脱出する術がありません。
船などを奪って海路で離脱しますか?」
「それも手の一つではあるけど、周辺海域が
見張られている可能性もあるわね。
……ここは、正面突破するしか無いわね」
「なっ!?アサギ様!恐れながらそれは無謀
です!歩夢さんもあの怪我では、まともに
戦えるかどうか!」
「そうね。でも、私とさくらには、これが
あるわ」
そう言って、アサギが取り出したのは、
ゲーマドライバーとガシャットだ。
「……使われるのですね?」
「えぇ。……歩夢。あなたの力、使わせて
貰うわよ」
「……分かった。でも、気をつけてね」
歩夢は、さくらに手を引かれながら立ち
上がった。
「えぇ。分かってるわ。……でも大丈夫。
だってこれは、歩夢が私達を守る為に
与えてくれた力なんだから。
あんな雑魚に何か、決して負けないわ」
そう言って、アサギはマイティアクションX
ガシャットを握りしめた。
「さくら」
「うん。分かってる。……私達は、絶対に
負けないから」
二人は、その瞳の奥で炎を滾らせていた。
この罠を食い破る程に、熱く大きな炎を。
そして、それから数時間後。
あと少しで夜明け、と言った時間帯。
本島と東京キングダムを結ぶ道路の上で、
無数の妖魔と悪人が屯していた。
その中心に立つ女、朧。朧は腕を組み、
目を瞑りながら静かに待っていた。
そして……。
「ッ!来たぞぉっ!」
どこからか男の声が聞こえた。
周囲がガヤガヤと騒ぎ出す中、静かに目を
開いた朧は、妖魔や悪人をかき分け
進んだ。
彼女の視界が開けると、その視界に真っ先
に飛び込んできた相手。その相手を見た瞬間、
朧は凶暴な笑みを浮かべた。
「くくっ、やはり来たわねアサギ」
無数の妖魔と悪人、そして朧と相対する
アサギ、さくら、歩夢、紗弥を背負った紫。
朧は、左腕を包帯で巻かれた歩夢を一瞥し、
更に勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「それで?ご自慢の彼は怪我してるみたいねぇ。
……あなた達にこの包囲が突破出来る
かしら?」
「……」
アサギは答えず、周囲を見回す。
「お前達!よく聞け!あの女どもは生かして
捕らえな!そうすれば、やりたい放題だよ!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」
朧の言葉に、妖魔と悪人達は下卑た笑いと
叫びを上げ、アサギ達の体を見て舌なめずりを
し始める。
しかし……。
「クズ共が」
静かに呟くアサギ。そして、彼女は殺気を
滾らせながら朧と妖魔、悪人達を睨み付ける。
「この私の体を抱き、触れて良いのは、この世界
でたった一人!橘歩夢、彼だけだ!」
「ふんっ!その虚勢、捕まって陵辱されても
言えるかしらね!」
朧の言葉を合図にするかのように、妖魔と
悪人達がジリジリと5人に近づいてくる。
「むっちゃん。アユ兄と紗弥ちゃんをお願い」
「あぁ。任せろ。その代わり、奴らを徹底的に
殺ってくれ。でなければ、私の気が済まん」
「うん。分かってるよ。……私だって、お姉と
同じだもん。……この体に触って良いのは、
アユ兄だけなんだから!」
そう叫ぶと、さくらはゲーマドライバーを
取り出した。アサギも、同様に取りだしそれを
腰元に装着し、ベルトを展開した。
『『ゲーマドライバー!』』
そして、それを見た瞬間、朧の表情が
強ばった。
「ッ!?何故お前達がそれを!?」
「ふふっ。良い事を教えてやろう朧」
対して、逆に笑みを浮かべるアサギ。
「歩夢の創り出したその力は、歩夢だけの
物じゃない。そして、よく見てなさい!
これが、仮面ライダーの力よ!」
二人は、それぞれのガシャットを掲げる。
と、その時。夜が明けた。
ビルの合間から差し込む光が、アサギと
さくらを照らし出す。光を反射する
ガシャット。
差し込む光はまるで、新たな英雄の
誕生を祝福するが如く、二人を照らし出す。
『マイティアクションX!』
「見せてあげるから、よく見てなさい!
アユ兄の創った力をね!」
『バンバンシューティング!』
アサギとさくらは、叫びながらガシャットを
起動する。
二人の背後に浮かんだディスプレイから、周囲に
ゲームのチョコブロックとドラム缶のような
アイテムが出現し設置される。
そして、叫ぶ。二人はあの言葉を。
「「変身ッ!!!」」
『『ガシャット!!』』
二人はドライバーにガシャットを突き刺し、
ドライバーのレバーを引き放つ。
『『ガッチャーン!レベルアーップ!』』
二人の前に現れた長方形のディスプレイが
後退し、二人と重なる。
と、同時に、彼女達もまた、『変わった』。
『マイティジャンプ!マイティキック!
マイティマイティアクション!X!』
『ババンバン!バンババン!バンバン
シューティング!』
二人が変身した仮面ライダー。
アサギの物は、基本カラーをピンクとし、
ヘアパーツや、所々淵を彩る緑。
その下の黒いスーツ。
さくらの物は、ディープブルーを
基本カラーとし、ヘルメットのような
頭部、黄色いマント、スーツの上を走る
黄色のラインが特徴的だ。
「さぁ、死にたい奴から掛かってきなさい!」
「めっためたのボッコボコにしてやるん
だから!」
叫ぶアサギとさくら。
「ちっ!相手は二人だ!かかれ!」
「「「「「おぉぉぉぉぉっ!」」」」」
舌打ちをしながらも命令を飛ばす朧。
その命令に従い、妖魔と悪人達が
駆け出す。
「行くわよ!さくら!」
「OKお姉!」
そして、アサギとさくら。
二人の仮面ライダーも駆け出した。
そして、駆ける二人の周囲にリング状の
物体が現れたかと思うと、そこから武器が
実体化した。
『ガシャコンブレイカー!』
『ガシャコンマグナム!』
アサギは、ハンマーのような武器を。
さくらは、ハンドガンのような武器を。
それぞれ取り出した。
そして……。
「おぉぉぉぉぉっ!」
『ドゴォォォォォォンッ!』
アサギの武器、ガシャコンブレイカーの
一撃が妖魔の頭に真上から叩き付けられた。
すると、HITの文字と共に、頭が胴体に
めり込み、妖魔が倒れた。
「はぁぁぁぁぁッ!」
更にそれを繰り出すアサギ。
ハンマーモードのブレイカーの一撃は、
容赦なく悪人の腹を穿ち、上半身と下半身を
分離させる。
振り下ろされた一撃が、頭をたたき割り、
地面に振り下ろされれば、爆音と共に大きな
クレーターを創り出した。
そして、アサギは周囲を警戒しながら
ブレイカーのAボタンを押す。
『ジャ・キーン!』
すると、電子音声と共に折りたたまれていた
刀身が起立し、ハンマーモードから
ブレードモードへと変化した。
「はぁっ!」
振り下ろされた刀身に沿って出現する、
レーザーワイヤーが相手を切り裂く。
例え防具と武器で防御しようとしても、その
防御ごと切り裂かれる妖魔と悪人達。
「グォォォォォォォッ!」
そんなアサギの背後へと迫る妖魔たち。
だが……。
「行かせる訳ないでしょ!」
『バシュバシュッ!』
その妖魔たちは、さくらの武器、
ガシャコンマグナムが放った光弾に体を
撃ち抜かれ、その場に倒れ伏した。
「この雌ガキがぁぁぁぁっ!」
その時、さくらに剣を構えた男が斬りかかった。
「そんなトロいの!」
しかし、さくらはこれを余裕で回避する。
「当らないっての!」
そして、カウンターの光弾を一発、男の脇腹に
たたき込んだ。
無数の妖魔達が、さくらへと向かってくる。
「群れで来たって!」
だが、さくらは慌てる事無く、マグナムの
Bボタンを押し込む。
「同じなんだよ!」
『バババババババッ!!!』
マグナムから、ガトリングの如き連射され
放たれた光弾の雨。それが、妖魔達の体を
撃ち抜いていく。
その時。視界の隅で何かが瞬いた。
「ッ!」
咄嗟にその場から横っ飛びで離れるさくら。
次の瞬間、彼女が立っていた場所に無数の
銃弾が撃ち込まれた。
瓦礫の影に飛び込んださくらは、視線を
巡らせ、発見した。
少し離れたビルの屋上に、無数の武装した
男達の姿があった。
しかし、さくらはマスクの下で笑みを浮かべた。
「そんな所に居るから届かないと思ったら、
大間違いなんだからね!」
さくらは、叫ぶと瓦礫を飛び出し、銃弾を
避けながらガシャコンマグナムのAボタンを
押し込んだ。
『ズ・キューン!』
すると、電子音と共に折りたたまれていた
銃身が展開される。そしてその形はハンドガン
からライフルへと変化した。
さくらは、瓦礫の側に飛び込むとすぐさま
ライフルモードのマグナムの狙いを付ける。
モードチェンジによって展開されたスコープ
で狙いを付けるさくら。
そして……。
「当れっ!」
『ビシュゥッ!』
ハンドガンモードの50発分に相当する
一発の光弾が、ビルの壁に命中。爆発。
それだけでビルの一面が吹き飛び、男達は
吹き飛ばされ地面に落下した。
そして、さくらは落下する男達を一瞥すると
すぐにアサギの支援を始めた。
彼女の背後に迫る妖魔や悪人達を、正確な
射撃で撃ち抜いていったのだ。
そして、それを後ろで見ていた紫たち。
「……あれが、仮面ライダーの力か」
そんな中でポツリと呟く紫。その時。
「……あれ、は?」
不意に彼女の背中で声が聞こえた。肩越しに
振り返る紫。見ると、先ほどまで眠っていた
紗弥が目を覚ましていた。
「起きたのか。……気分はどうだ?
大丈夫か?」
「え、あ、はい」
戸惑いながらも頷く紗弥。
「そうか」
「……あ、あの。あの二人は、一体」
そう言って、紗弥は紫に問うた。
あの二人、と言うのは間違い無くアサギと
さくらの事だ。
「……あれは、仮面ライダーだ」
「仮面、ライダー?」
「そうだ」
紫は、妖魔と悪人を相手に一騎当千の戦いを
続ける二人の背中を見つめる。憧憬、尊敬、
驚嘆。そんな感情と共に、紫は二人の背中に
熱い視線を送り続ける。
アサギが切り裂き、さくらが撃ち抜く。
その姿を。
そして重ねる。あの日、自分を助けてくれた
歩夢の、『始まりの仮面ライダー』の背中と。
そして彼女は思う。
何時か自分も、気高き騎士、『仮面ライダー』
として、3人と肩を並べて戦うのだ、と。
「誰かが絶望しているとき。彼等は何時
だって現れて、助けてくれる。
紛う事なき、英雄。その優しき腕は、
涙に暮れる者を闇から救い上げ、
力強き腕は、悪しき者を打ち倒す。
この世界に誕生した、最も新しい
英雄。それが、『仮面ライダー』だ」
「英雄。……仮面ライダー」
紗弥もまた、驚きと憧れを宿した瞳で、
二人の背中を見つめる。
その時。
「紫ちゃん」
側に居た歩夢が、数歩前に出た。
「……行かれるのですか?」
「うん。何て言うか、ただここで立ってる
だけってのは、我慢出来ないから」
そう言って、歩夢はゲーマドライバーと
ガシャットを取り出した。
「それに、僕だって仮面ライダーだから。
これくらいの怪我で戦えなくなる、
なんて後輩の二人に示しが付かないよ」
そう言って、苦笑を浮かべる歩夢。
やがて、彼は前を見据えながら真剣な表情を
浮かべる。
「仮面ライダーは、誰一人、見捨てない。
闇を払い、誰かを助けるために、僕は
仮面ライダーという存在を生み出した。
だからこそ、戦う!どんな時でも!」
『ハリケーンニンジャ!』
「変身っ!!!」
『ガシャット!ガッチャーン!
レベルア~ップ!』
『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ~!』
歩夢もまた、仮面ライダーへと変身する。
紗弥は、その背中を見つめる。
先ほどよりも、更に強い憧れと尊敬を
込めて。
その頬を、赤く染めながら。
「はぁっ!」
背中の双刀を抜き、駆け出す仮面ライダー。
アサギの背後へと迫る妖魔の群れ。
さくらは別の集団を打ち倒していて
対応は間に合いそうにない。
その時。
「おぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ライダーがアサギと妖魔の群れの間に
飛び込み、瞬く間に妖魔を切り捨てた。
「ッ!歩夢!あなた怪我は!」
「大丈夫!それに、二人が戦ってるんだ!
後ろでただ見てる訳には、行かないよ!」
そう叫びながら、ライダーの蹴りが妖魔を
吹き飛ばす。
その時。
「おのれ……!おのれおのれおのれおのれ!
おのれぇ!アサギィ!仮面ライダァァ!」
朧クローンが刀を構え、アサギに斬りかかった。
それをブレイカー・ブレードモードで
弾き返すアサギ。
「まだだ!お前達を倒し、私はぁ!」
「無駄よ。……私達は、英雄の力を得て、
強くなった。護りたい人が隣に居て、
その為の力がある。……今の私達は、
絶対に負けない!」
「ほざくなぁ!雌豚がぁぁぁぁっ!」
再び斬りかかろうとする朧クローン。
だが……。
「歩夢!さくら!決着を付けるわよ!」
「うん!」
「OK!お姉!」
3人は、背中合わせで敵と向かい合う。
アサギは朧クローンと。
さくらは悪人の集団と。
ライダーは妖魔の集団と。
3人はガシャットを抜く。
『『『ガッシューン』』』
そして、それを左腰元のキメワザスロット
ホルダーへと突き刺した。
『『『ガシャット!!』』』
二度、ボタンを押し込む。
『『『キメワザ!』』』
3人は、各々の体勢で右足に力を込める。
そして……。
「「「はぁっ!」」」
3人は空高く跳躍し、それぞれの敵
目がけ、必殺の剛脚を繰り出す。
『マイティ!』
『バンバン!』
『ハリケーン!』
『『『クリティカルストライク!!!』』』
3人の必殺技。
ライダーキックが繰り出された。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
さくらとライダーの一撃が、妖魔と悪人達の
集団に命中する。
『『ドドォォォォォォォンッ!!!』』
爆音と共に、周囲にエネルギーが拡散し、
妖魔と悪人達を飲み込んで行く。
「朧ォォォォォォッ!!!!」
そして、アサギのライダーキック。
「ちっ!?アサギィィィィィッ!!」
朧クローンは、アサギのライダーキックを
刀で防いだ。
しかし、それは一瞬の攻防に過ぎない。
『バキィンッ!』
音を立てる刀。
『ドゴォッ!』
そして、朧に突き刺さるアサギの剛脚の
一撃。
「ぐっ!?あぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そして、朧は光の中に消えていった。
『ドゴォォォォォォンッ!』
『会心の一発!』
次いで、爆発音と電子音が響く。
その爆炎を突き抜けて着地するアサギ。
周囲を炎と煙が3人を覆い隠す。
「アサギ様!歩夢さん!さくら!」
そこに駆け寄る紫と紗弥。
「皆、ご無事ですか?」
「うん。僕達は大丈夫。それより今は……」
「えぇ。東京キングダムから脱出
しましょう」
「うん!こんな所からは、さっさとおさらば
するに限るよ!」
煙に紛れる形で、5人は本島とキングダムを繋ぐ
道の上を走り出した。まずは、結界の範囲外
まで出ようとしての事だ。
そんな中で紗弥は、先頭を走る歩夢の、
仮面ライダーの背中を見つめていたのだった。
しかし、一つのビルの影から、逃げる彼等を
見ている人影があった。その人物は、体を
大きめのローブで覆っている為、顔までは
分からない。しかしその姿は、まるで、
日の光を避けているかのようだ。
「……クローンは負けたようねぇ。けどまぁ、
龍門のトップが私の偽物、なんてのはブラック
様に示しが付かないし。今だけは感謝して
おくわね、アサギ。……今はまだその時
ではないけど、いつかまた相まみえましょう。
私の宿敵、アサギ。いや……。
『仮面ライダー』」
そう、言い残すと人影はその場所を後にした。
その後、無事結界の範囲外へと逃れた5人は、
ステージセレクトの力で無事千葉の邸宅へと
戻るのだった。
こうして、本来死ぬ定めにあった一人の
少女はその命をつなぎ止め、アサギとさくらは
仮面ライダーとしての力を手にした。
しかし一方で、彼女達を狙う敵はまだまだ
存在していた。
対魔忍と仮面ライダーVS妖魔・悪人。
その戦いに終わりは無く、この戦いも、
その大いなる戦いの一幕に過ぎない。
しかし、英雄とは人々を惹きつける存在。
そしてこの戦いでも、また一人、英雄に
魅せられた者が現れたのだった。。
第2話 END
って事で、アサギはエグゼイド。さくらはスナイプに
なりました。次回は紗弥とのHシーンとかになります。
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