~~~前回までのあらすじ~~~
紗弥を助けたあの戦いから1年ほどが経過。
新しく仲間になった紗弥と来栖と共に、歩夢達
は仮面ライダーとして戦っていた。
そんなある日、橘邸に3人の客が訪れる。
『水城ゆきかぜ』、『秋山凜子』、『秋山達郎』
の3人は、行方不明となったゆきかぜの母、
『水城不知火』の探索と救出を依頼するために
やってきたのだった。そして歩夢達は
不知火救出のため、ゆきかぜ達に協力を
要請し共に戦う事になるのだった。
早速、と言う事でゆきかぜ達はしばらく
橘邸で生活する事になった。これから彼等が
綿密に協力していくための措置だ。
そのため、ゆきかぜ達は一旦里に戻って
着替えなどを持って戻ってきた。
そして、その日の夜。
達郎は地下基地へと降りていた。
慣れない家での夜に寝付けなかった彼は、
調査の状況を知る、と言う名目で唯一の
同性である歩夢の元へと向かった。
しかし執務室は空。地下の自室兼研究室
をもぬけの殻だったのて、達郎はマスターAI
であるアイの案内の元、『サイバールーム』と
言うプレートが掲げられた部屋の前に来ていた。
「ここ、だよな」
何度もプレートの文字を確認した達郎は、扉
の脇に設置されているインターホンを押す。
するとピンポーンと言う電子音が鳴る。
『はい。誰かな?』
すると、インターホンから歩夢の声が聞こえてきた。
「あ、あの。橘さん。達郎です。秋山達郎。
えと、今ってお邪魔しても大丈夫でしょうか?」
『あぁ、達郎君か。良いよ。ちょっと待ってね。
今ドアを開けるから』
マイクから歩夢の声が聞こえたかと思うと、
シュンッという音と共に扉が開く。
「お、お邪魔しま~す」
未知の部屋という事もありかしこまった挨拶と
共に部屋には行っていく達郎。
そして入るなり、彼は驚いた。
サイバールームと呼ばれた部屋のあちこち
には無数のディスプレイが、大きい物から
小さい物まで、所狭しと並んでいたのだ。
そして、そんな数多のディスプレイを前に
して椅子に腰掛けている歩夢。
「いらっしゃい達郎君。けど、ごめん。
今手が離せないんだ。話があるなら、そこの
椅子を使って良いよ」
そして歩夢は、達郎の方を向くこと無く自分の
傍にあるパイプ椅子を指さす。
「し、失礼します」
達郎はパイプ椅子に腰掛け、歩夢の作業に
目を向ける。
歩夢は、メールを作るとどこかへと送信。
返信が帰ってくるまでに、どこかの
監視カメラの映像に、不知火か、彼の追って
いるノマドの関係者がいないかどうかを
顔認証システムで調べている。
「あ、あの。歩夢さん、今って何を
してるんですか?」
「ん?あぁこれ?今は各地の情報屋と
メールでやりとりをしつつ顔認証システム
でノマドとの関係があると目されている施設
付近の監視とかをしてるんだよ。
と言っても、未だに不知火さんに繋がる
有力な情報は無いね。……一応、有益な
情報であればそれを500万円で。
不知火さん本人の居場所であれば倍の
1000万円を出すと言ってるんだけど。
……そうそう情報屋が不知火さんの
居場所を知ってる訳無い、か」
ため息をつく歩夢。
しかし一方の達郎は、彼が口にした
金額に戸惑いを覚えた。
「ご、五百!?それに一千万円って!?
歩夢さんそんなにお金持ちなんですか!?」
「ん?あぁ、そう言えば言ってなかったね。
実は僕、最近急成長中の企業でさ、
Dコーポレーションって知ってるかな?
あれ、実は僕が起業した会社でね」
「えぇ!?最近ゲームとかアプリ開発
で有名な!?」
「そう。それに僕は学生時代から
ゲームを創って売ってたりもした
からね。他にも投資やらなんやらを
して、色々稼いだんだよ」
「どうして、そんな……」
戸惑う達郎の声に、歩夢の手が一瞬止まる。
「どうして、か。……ただ、我武者羅
だったんだと思う。アサギやさくらちゃん
を守る為には、力が、仮面ライダーの
力が必要だった。でも、物を作るのには
お金が掛かった。だからかき集めた。
自分の才能を全て使って、ね。
まぁ最も、世界の名だたる大企業の
社長さんなんかの年収に比べれば、
微々たる物かもしれないけどね」
そう言ってただ苦笑を浮かべる歩夢。
だが、達郎は違った。
彼は思った。
歩夢の背中の、その存在の『大きさ』を。
それは、達郎が、自分が、追いかけるべき
男の背中だと、感じたのだ。
「そんな事無いですよ。僕、歩夢さんを
尊敬します」
「え?」
達郎の予想外の言葉に、歩夢は流石に手を止め
彼の方を向いた。
「そうやって、誰かのために全力で物事に
向かっていける人って、多くは無いと
僕は思います。それに、歩夢さんはその
意思を貫き通して、アサギ様や
さくらさんを助け出したんですよね?
……正直に言うと、男としてとても
尊敬してますし、ちょっと嫉妬して
しまいます」
「嫉妬?」
「はい。……恥ずかしい話ですが、僕に
も歩夢さんみたいな才能と男らしい
覚悟があったらな、って。
技も、力も無い自分が情けなくなって
しまって……。すみません、歩夢さん
にこんな話」
「いや、良いんだよ達郎君。
……君が知ってるかどうかは分からない
けど、僕も対魔忍だったんだ。能力の
低さ故に里を追放された、元、だけどね」
「ッ。はい。聞いた事があります」
「そう。……正直に言うとね、里を出た後、
僕はすぐに自分の行いを後悔した。
文字通り、後悔先に立たず、って奴だよ。
……女性の対魔忍が、ましてやアサギや
さくらちゃんの用に、美しい女性が
敵に捕まった時、どうなるのか、僕は
知っていた。……知っていたのに、里から
出て行ってしまった。あの時の僕は、
自分自身に怒りを覚え、そして、周りに
居た力のある同期の対魔忍に嫉妬していた」
歩夢は、静かに拳を握りしめる。
「けれど、だからこそ僕は二度と後悔したく
なかったんだ。
それに、よく言うでしょ?やらずに後悔
するくらいなら、やって後悔したい、
ってさ。だからこそ、知識を貪り、
仮面ライダーを生み出した。
……今度こそ、逃げずに戦おうって
決めて、ね」
「……今度こそ、ですか」
「うん。そして、だからこそ君の嫉妬は
良く分かるんだ。あの時の僕もまた、
我武者羅に力を欲していたからね」
「歩夢さんにも、そんな時期があったん
ですね」
「それはそうだよ。僕だって子供時代が
ある訳だし」
そう言って笑みを浮かべる歩夢。
「悩んで、考え、自分なりの望んだ未来、
『答え』を想像する。
そして、そこにたどり着く為の道を
思い描く。あとはその道を僕は
進んだんだ。2人を助けるために、
仮面ライダーを作り、戦った。
……そして気がつけば、『今』と言う
この場所にたどり着いた」
歩夢は、過去を振り返るように、椅子に
体を預け天井をぼうっと見上げる。
「自分なりの、答え。道を、思い描く」
達郎は、静かに歩夢の言葉を呟き
考える。
今の自分が目指す道とは、その道のゴールとは何だ?
それは不知火を無事に救出し、ゆきかぜと
再会させる事。それが今、達郎自身が強く
望むゴール、道の行き先だ。
では、そこに行く為にはどうすれば良い?
達郎は考えた。自分には力が無い。
姉の凜子や恋人のゆきかぜと比べ、
これと言って強大な力も無い。
そこまで考えついた達郎は思う。
『自分にも、仮面ライダーの力があれば』、と。
そう考えた瞬間、達郎はギュッと拳を
握りしめた。
歩夢は言った。仮面ライダーに『なれる』と。
だからこそ、達郎は自分の意思で。
自らの胸の内に秘めたる願いを、現実に
するために、その手を伸ばす。
「あ、あの!歩夢さん!僕を、僕を
仮面ライダーにして下さい!」
「……」
自らの思いを言葉にして飛ばす達郎。
歩夢は、そんな彼と向き合い、彼を
真っ直ぐ見つめる。達郎も、彼から
視線を外さない。
「……達郎君。君は、自分が何を言って
いるのか、分かってるのかな?
仮面ライダーになる、と言うのは
1回きりと言う訳には行かない。
仮面ライダーになれば、そこには
必ず、戦いが付きまとう」
「……分かってます」
彼の言葉を聞き、歩夢は立ち上がり
達郎に背を向ける。
「ライダーの力は現在、僕が独占
している。技術、データに関しても
徹底的に管理している事もあって、
今のところ類似の装備が目撃された
例はない。……そして、最近になって
仮面ライダーは人々の間でも、魔族の
間でも噂になるつつあるそうだよ。
……驚異的な力を持つ、戦士として」
「……」
達郎は考え、そして歩夢の言わんとしている
事を理解した。
「もし、僕が仮面ライダーになれば、それは
狙われるって事ですよね?」
「そう。……ライダーの力は強大だ。
素では成人男性の数倍、程度の力しかない
僕に一騎当千の力を与えたライダー
システム。それを第3者が入手するには、
僕達から奪うしかない。……故に、
仮面ライダーになると言う事は、そういった
敵。魔族、悪人、更にはライダーの力に
目を付けるであろう軍事組織、米連なども
動き出す可能性だってある」
そう言うと、歩夢は再び椅子に座り直す。
しかし今の彼の表情は、どこか冷徹であり、
覚悟を決めた物だった。
「正直に言おう。僕は愛国者という訳
ではない。だからもし、この国が、
世界が、アサギやさくらちゃん、
紫ちゃんに危害を加えると言うのなら、
ライダーの力を使ってでも彼女達を
守り、僕は、『世界と』戦う」
「ッ……!」
達郎は、彼の決意に静かに息を呑む。
眼鏡の奥に見える歩夢の瞳の中で、炎が
燃えさかる。
「……それが、歩夢さんの覚悟なんですね?」
「そうだ。……僕は、愛する彼女達のために、
世界と決別する意思だってある。
敢えて言うのなら、僕にとって、アサギも、
さくらちゃんも、紫ちゃんも、紗弥ちゃんも、
来栖ちゃんも、彼女達皆……」
「世界を壊そうとも守るべき、大切な人だ」
それが、歩夢の決意だ。
改めて、達郎は目の前に立つ男の『格』の
大きさに飲まれそうになっていた。
『愛する人のためなら世界とも戦おう』。
歩夢は、そう宣言したのだ。
その言葉に、達郎はギュッと拳を握りしめる。
今度は、彼の番だ。
「正直、僕には歩夢さんほどの覚悟はありません。
それでも……!!」
達郎の脳裏に浮かぶ、母の安否を思うあまり、
幾度も涙を流し、眠れぬ夜を過ごしてきた
恋人の、ゆきかぜの、震えるその体。
「僕は、ゆきかぜを助けたい!不知火さんを
助けて、ゆきかぜに笑って欲しい!
そのために、僕は僕に出来る事を
したい!『仮面ライダー』になったら、
きっと痛いことも、怖い事も、たくさん
あるかもしれない……!
それでも……!」
彼もまた、心の内で燃えたぎる思いを言葉
にして叫ぶ。
「僕は、ゆきかぜに笑っていて欲しい!
彼女の『笑顔』を!『幸せ』を!
守りたい!取り戻したい!」
彼の、ギュッと握りしめた拳から血が
滴り落ち、床に赤い点を作る。
「そのためなら、僕は……!」
その先の言葉が喉から出ようとしない。
誰だって、戦い傷つく事を望みはしない。
痛みも、恐怖も、欲しくはない。
だが……。
「踏み出せ……!」
「ッ!」
不意に聞こえた歩夢の静かで、されど力強い声
に俯き掛けていた達郎は視線を上げ、
正面の彼を見据える。
「君の戦う理由は何だ……!
世界は、君や彼女に優しく
なんか無い!無情、残酷……!
それが世界なんだ!君は、どうする!?」
「ッ!」
彼の言葉を聞き、達郎は更に拳を握りしめる。
ボタボタと血が垂れても、構わない。
爪が皮膚を裂く痛み。戦いになれば、
この程度の痛みとは比肩することも出来ない
重傷を負うかもしれない。
それでも……。
「僕は、僕は……!」
彼の中で心臓がドクドクと音を鳴らす。
頭の中で、魂が叫ぶ。
『踏み出せ、踏み越えろ』と。
『恐怖を壊し、その先へ進め』と。
『≪勇気≫を振り絞れ』と!
そして……。
「僕は、戦うっ!!!」
彼は勇気を振り絞り、その言葉を叫ぶ。
しばし、達郎のハァハァと言う息づかい
だけが部屋の中で反響する。
やがて……。
「良いんだね?」
「はい……!」
達郎は、歩夢の問いかけに達郎は躊躇う事
無く、力強く頷くのだった。
こうして、新たに一人の男が覚醒した。
彼もまた、愛する人の笑顔と幸せのために、
その手に『剣』を取るのだった。
その翌日。朝。
「えぇっ!?達郎が、仮面ライダーに!?」
朝、地上のログハウスで朝食を取っていた時、
達郎が仮面ライダーになると言うと、ゆきかぜ
は戸惑い驚きの声を上げてしまう。
「うん。……昨日の夜、歩夢さんと会って
話をしてたんだ。その時、志願したんだよ。
僕を、仮面ライダーにして欲しいって」
彼の言葉に、ゆきかぜと凜子は戸惑うような
表情を浮かべる。
「達郎、お前何故……?」
「ごめん。姉さんにもゆきかぜにも、
何の相談も無く決めた事は謝るよ。
……でも、これは僕が自分で決めた事
なんだ」
凜子の言葉に、達郎は覚悟を決めた瞳で
彼女を正面から見据える。
「達郎……」
ゆきかぜは、そんな恋人の姿に驚いていた。
彼女は今度、歩夢に目を向ける。
「あの、大丈夫なんですか?達郎が
仮面ライダーになるなんて」
「彼への肉体的な影響を心配しているの
なら問題無いよ。彼は、僕やアサギ達と
同じ、バグスターウィルスという人工
のウィルスを投与する事で変身する、
ゲーマドライバーを使用するライダーを
希望した。とは言え、僕はかれこれ
ウィルスを投与してから2年は経過
している。安全性は僕やアサギ達が
証明している。……ウィルスと人の
相性の問題もあるけど、そこは
慎重に調べるから大丈夫だよ」
「……達郎、どうしてそこまで」
「男として、覚悟を決めたんだよ。
不知火さんを、絶対に助けるって
言う。僕の決意表明だよ」
そう言って、達郎は隣に座るゆきかぜの手
に、自らの手を重ねた。
それに驚きピクッと体を震わせるゆきかぜ。
彼女は、改めて達郎の表情を伺う。
彼は一晩で変わったようだった。
それは達郎自身が『覚醒』した結果に
他ならない。
『橘歩夢』という男は、男として大きな
格、器を持つ存在だった。
愛する人のためならば世界とも戦う。
彼はそれを達郎の前で宣言した。
そこに嘘や偽りは無い。
それこそが達郎の覚醒を促した。
あの歩夢の覚悟こそが、『仮面ライダー』の
『熱き魂』の根底であると、彼は
理解したのだ。
そして、同時にその熱き魂に彼も感化された
のだ。
愛する人の幸せのため、笑顔のため。
その手に剣を取る熱き『覚悟』。
それが達郎を覚醒させたのだ。
確固たる決意を浮かべる達郎の表情に、
ゆきかぜは顔を赤くしながら視線を
逸らせるのだった。
そして、数日後。達郎にバグスターウィルス
が投与された。
ウィルスが馴染むまでの間、歩夢は
ゲーマドライバーとガシャットの操作方法や
機能を分かりやすく説明し、最後に残っていた
ガシャットを彼に渡した。
「これが……」
「そう。『タドルクエストガシャット』。
僕が開発し、現在まで未使用のまま
残っていた最後のガシャットだ。
現在、僕達には『仮面ライダー』という
名前以外に、それぞれを識別する
コードネームみたいな物があるんだ。
例えば、僕が『風魔』。アサギが
『エグゼイド』。さくらちゃんが『スナイプ』。
紗弥ちゃんが『レーザー』。紫ちゃんが
『イクサ』と言った具合にね。
そして……。達郎君。君の変身する
ライダーのコードネームは、『ブレイブ』だ」
「ッ。……ブレイブ。『勇者』」
彼は、静かに呟きながら青いガシャットを
握りしめる。
「口で説明するよりも、体で感じた方が
早いだろう。こっちへ」
白衣姿の歩夢は、自分のドライバーと
ハリケーンニンジャガシャットを手に
歩き出す。
「あ、はいっ!」
それに少し遅れて続く達郎。
彼等は、その足で地下のトレーニングルーム
へとやってきた。
向かい合う歩夢と達郎。それを遠巻きに見守る
アサギやゆきかぜ達。
「まずは僕がお手本を見せる。よく見て
おいてね」
「はいっ!よろしくお願いします!」
「それじゃあ、行くよ」
『ハリケーンニンジャ!』
眼前に掲げられたハリケーンニンジャ
ガシャットが起動する。
「……変身」
『ガシャット!ガッチャーン!
レベルア~ップ!』
ガシャットを装填し、レバーを引く。
『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ~!』
現れたディスプレイが彼の体を通過すると、
歩夢は『仮面ライダー風魔』へと変身
していた。
それを見て、達郎は緊張から冷や汗を掻き、
手汗に濡れた手でガシャットを握りしめ、
手元に視線を落とす。
「ッ!」
だがすぐさま正面の風魔を見据え、
ガシャットを掲げる。
「行くぞ……!」
『タドルクエスト!』
ガシャットが起動し、周囲に宝箱型の
アイテムボックスが散らばる。
「よし……!変身っ!!!」
達郎は力強く叫ぶと、ガシャットをドライバー
に突き刺し、レバーを引いてゲートを開く。
『ガシャット!ガッチャーン!
レベルア~ップ!』
正面に現れたディスプレイが、達郎の体を
透過し、彼は『変わる』。
『タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト~!』
達郎は、新たな姿を得た。
青を基調とし、頭部の鎧のようなデザイン。
両肩の棘付きのアーマー。左手前部を覆う
小型のシールド。
そして、その手に握られた炎のエフェクトが
迸る剣、『ガシャコンソード』。
「あれ、が。達郎?」
ゆきかぜは、戸惑いながらも恋人である
達郎へ、いや、『仮面ライダーブレイブ』
視線を向ける。
「そうだよ。あれが、達郎君。ううん。
新しい仮面ライダー。
『仮面ライダーブレイブ』」
「仮面、ライダー。……ブレイブ」
ゆきかぜは、さくらの言葉を繰り返しながら
達郎へと目を向けるのだった。
「それじゃあ、模擬戦を始めよう」
そう言うと、風魔は背中の双剣を抜く。
「ッ!はいっ!よろしくお願いします!」
それを前にした達郎も、ガシャコンソードを
両手で握り構える。
「まずは仮面ライダーの力に慣れて貰う。
ブレイブのスペックは、およそ
パンチ力7トン。キック力11トン。
跳躍力30メートル。速力は
100メートルを7秒で走りきるだけの
スペックがある。まずは実戦形式で
様子を見ながら慣れていって貰う。
……来い」
そう言って、双剣を構える風魔。
「ッ!い、行きますっ!」
次の瞬間、地面を蹴って前に出るブレイブ。
「うわっ!?」
しかし、普段とは違う感覚に戸惑い、
ブレイブ、達郎は歩夢の眼前まで踏み込みだけで
跳躍してしまった。
「はっ!」
『バキッ!』
「ぐっ!?」
何とか着地したのも束の間、風魔の裏拳が
ブレイブの頬を殴り飛ばす。
それだけで数メートルは吹き飛ぶブレイブ。
「達郎っ!」
「ぐ、うっ」
咄嗟に叫ぶゆきかぜ。ブレイブは左手で頬を
抑えながら立ち上がった。
「こ、これが、仮面ライダーの力」
「そうだ」
戸惑うブレイブの言葉に頷く風魔。
彼は静かに立ち上がるブレイブに目を向ける。
「仮面ライダーの力は、圧倒的だ。
だからこそ、その力を100%引き出す
には鍛錬が必要だ。……来い。
修行はまだまだ始まったばかりだ」
「ッ!はいっ!うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
こうして、風魔によるトレーニングが
始まった。
それから二人は戦った。風魔の攻撃を受けて
吹き飛ぶブレイブ。しかしすぐに彼は立ち
上がり風魔に斬りかかる。
達郎も仮面ライダーの力に慣れ始めるが、
相手は仮面ライダーの生みの親にして、
1年以上戦ってきた経験を持つベテランの
歩夢。
ブレイブの攻撃はいなされてばかりだ。
更に攻撃を受けて再び吹き飛ぶブレイブ。
その様子をゆきかぜはハラハラしたまま
見守っていた。
そしてまたしても腹部にパンチを貰って
吹き飛ぶブレイブ。
「ぐっ!?かはっ!」
お腹を押さえるブレイブ。しかし、彼は
すぐに立ち上がると……。
「こうなったら……!」
『ガッシューン』
ベルトからガシャットを抜き……。
『ガシャット!』
左腰のキメワザスロットホルダーにそれを
装填した。
「……」
『ガシャット!』
それを見た風魔も、静かにガシャットを
キメワザスロットホルダーに指す。
『『キメワザ!!』』
二人は同時にボタンを連打する。
『タドル!』
『ハリケーン!』
『『クリティカルストライク!』』
二人の右足にエネルギーが収束する。
「ハァッ!」
駆け出すブレイブ。
「ッ!」
それに一拍遅れて風魔を駆け出す。
助走を付けて跳躍する二人。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「はぁっ!」
そして、空中で二人の蹴りが炸裂。
二人は空中で交差しながら、互いに背を
向けるように着地した。
一瞬の静寂。
そして……。
「ぐあぁぁぁぁぁっ!」
ブレイブの体から火花が迸り、彼は
床の上に倒れた。
『ガッシューン』
更に限界だったのか、自動的に変身が
解除されてしまう。
「達郎!」
倒れた彼の元へと駆け寄るゆきかぜ。
彼女が抱き起こした達郎は、体のあちこちに
裂傷があった。服の一部にも血痕が付着
していた。
『ガッチョーン、ガッシューン』
そこに、同じく変身解除した歩夢やアサギ達
が歩み寄る。
そんな中、凜子は険しい表情で歩夢を
睨み付ける。
「橘さん!これはどういうことですか!?
いくらなんでも、無茶が過ぎます!」
彼女にとって、弟を傷付けられるのは
我慢ならなかった。
だが……。
「良いんだ、姉さん」
それを達郎自身が止めた。
「僕は、自ら望んで仮面ライダーに
なったんだ。これくらいの傷で、
泣き言なんて言ってられないよ」
そう言って、達郎は立ち上がった。
「こんな事で愚痴を言ってるようじゃ、
仮面ライダーに何て慣れませんよね?
歩夢さん」
「うん。……酷な事かもしれない。
それでも、僕達は戦わなければ
ならない。自分と、自分の大切な人を
守る為に」
二人は、互いに視線を交差させる。
歩夢にとって、達郎は新しい仮面ライダー
であり、自分が育てるべき、次代の英雄の
卵でもある。
達郎にとって、歩夢は目指すべき指標であり、
同時に超えるべき壁でもある。
男達は、それぞれの決意を胸に向かい合うの
だった。
その後、達郎はゆきかぜ達に傷の処置を
して貰った。
それを見守っていた歩夢たち。
と、その時。
『マスター、連絡事項です』
マスターAIであるアイの声が聞こえてきた。
『メールにてやり取りをしていた情報屋の
一人から、≪水城不知火について
有力な情報がある≫、との事です』
「ッ!?本当に!?」
アイの言葉に真っ先に反応したのは
娘であるゆきかぜだ。
『はい。文末には、情報の交換と値段
交渉のために電話でのやりとりをしたい、
との旨が』
「分かった。皆、今すぐ僕についてきて」
頷く歩夢。アサギ達は足早に歩く彼に
続いて、達郎があの時訪れたサイバールーム
へと足を運んだ。
ここに初めて来るアサギやさくら達、更には
ゆきかぜ達が驚く中で、歩夢は届いた
メールの内容を確認すると、すぐさま
文末に添えられていた電話番号へと
コールをする。
しばしの呼び出し音の後。
『はい。もしもし?』
「はじめまして。と名乗っておこう」
相手は男の声だった。対して歩夢は、
声に対して加工を施していた。
「私のことは、そうだな。Mと呼んでくれ」
『OK、ミスターM。……アンタだろう?
水城不知火って言う女の情報を探してる
のは』
「そうだ」
『OK。なら早速商談と行こうじゃないか。
アンタは俺に、いくら払える?』
「情報量は、その内容による。僅かでも
彼女の行方が分かれば500万。
明確な彼女についての情報ならば
1000万。そして、彼女の的確な居場所
があるのなら、1500万。日本円でだ。ただし
これらはあくまでも基準と考えてくれ。
情報の鮮度によって、更に色を付けることも、
こちらは出来る」
『へ~成程。OK。良いだろう。その提案に
乗った』
「では、早速だが、商談を始めるとしよう。
まずは、そちらの情報を話してくれ」
『OKOK。んじゃ、このネタを入手した
経緯を教えよう。この情報の出所は、
ちょっとした小悪党な政治家さ』
「ほう?」
『奴は他人を蹴落としてでものし上がろう
って野望があるが、ちょいと小心者でね。
まずはある男に取り入ろうとしたのさ』
「ある男?誰だ?」
『ままま、そう急くなよ』
歩夢の問いかけに、男はそれだけ言って
はぐらかす。
「ッ!」
その態度に苛立ちを覚えたのは、一刻も
早く母を救いたいゆきかぜだ。
しかし、声を荒らげようとする彼女を
アサギが制する。
「落ち着きなさい。今は、彼を
信じて」
「あっ、ご、ごめんなさい」
離れた場所で他のメンバーと一緒に
会話を見守っていた二人。
ゆきかぜは小さく謝る。
『ある宴会の席での事だ。奴はある男を
接待していた。するとそれがよほど
良かったんだろう。ある男は様々な
自慢話をし始めた。そして、そんな
中に出てきたのが、対魔忍、水城不知火
の名前って訳さ』
「……成程。それで?」
『奴も裏社会の人間だが、まだまだ浅かった
んだろう。まるでアニメみたいだと、
対魔忍の話を面白半分によく覚えていたようだ。
が、問題だったのは奴があまりよろしくない
連中に金を借りていた事さ。おかげで奴は
海の藻屑。ある男のスキャンダルになる
からってこの情報を提供したが、そんな
ので納得するほど優しい連中じゃ無かった
みたいでな。んで、俺はその連中の一人から
この話題を聞いたのさ』
「成程。それで、話題の内容は?」
『あぁ、ここからがアンタが欲しい情報
だろう。ある男は闇の組織に属していて、
自分を調べにやってきた水城不知火を
罠に掛け捕えた。そして、その不知火を
自分の奴隷として今も『ある場所』で
『調教中』らしい』
「ッ!?」
男の言葉に、ギュッと拳を作るゆきかぜ。
その時、その拳を優しく達郎の手が包み込む。
その事にハッとなって達郎を見上げるゆきかぜ。
「大丈夫。大丈夫だ。絶対」
「達郎。……うん、ありがとう」
恋人の優しい言葉に、ゆきかぜは落ち着く。
『だが、男の立場上、女を奴隷みたいに
扱うなんて、その表の立場を揺るがしかねない
スキャンダルなのさ』
「成程。……で、誰だ?その男とは?
不知火の居場所はどこだ?」
『ははっ。良いぜ。それじゃあ究極の
ネタバレと行こうか?
まずは、その男の正体だが、
奴の名は『矢崎宗一』だ』
「ッ。現政権与党、民新党の幹事長か?」
これには歩夢も驚き、咄嗟に聞き返してしまう。
『そうさ。仮にも政治家が女を奴隷として
好き放題しようとしてたなんて世論に
バレてみろ?政権を失うのは目に見えている
だろ?』
「……成程。確かにスキャンダルだな」
『だろ~?でだ、酒の席で酔っていたのか、
矢崎は死んだ男に、不知火がどうなって
いるのかまでペラペラ喋っていたのさ。
奴には弟が居るらしい。『リーアル』、
と言うのは偽名で、本名『矢崎利二』。
こいつはノマドの地下都市、ヨミハラで
『アンダーエデン』という名の娼館を
経営しているらしい。そして、未だに
反抗的な態度を取る不知火をここで
調教しているらしい』
「成程。分かった」
『へへっ。さて、それじゃあミスターM。
値段交渉と行こうじゃないか。俺としては、
1500万程度じゃ足りねぇ~なぁ。
せめてその倍くらいは……』
「5000万だ」
『ん?』
「聞こえなかったのか?倍くらい欲しいの
だろう?5000万出そう。……不服か?」
歩夢の言葉に、しばし相手の男は沈黙する。
が……。
『くくっ!はははははっ!まさか倍以上かよ!
良いぜ旦那!乗った!商談成立だ!』
「あぁ。良い取引が出来た。こちらとしても、
後腐れの無い方が良いからな」
その後、歩夢によって男の口座にきっちり
5000万円が振り込まれた。
『ひひひっ。まいどど~も!これからも
どうぞご贔屓に!』
その言葉を最後に、通話は終了した。
やがて、通話を終えた歩夢は息をつくと椅子
から立ち上がり後ろに居る皆の方へと
歩み寄った。
「皆、そういうわけだ。これで不知火さんの
居場所は判明した。敵の正体も、だ」
歩夢は、静かに決心の表情を浮かべる。
「場所はノマドの地下都市。あの東京キングダム
以上の危険地帯とされた、ヨミハラ。
僕達はその都市を相手に戦争をする事に
なるだろう。だが、負けはしない……!
僕達の手で、必ず、水城不知火さんを
救出しよう……!」
歩夢の言葉に、アサギ達もまた、覚悟を
決めた表情で頷く。
その後。彼女達は戦いに向けて準備を
始めた。
その折に……。
「あの、歩夢さん」
「ん?どうしたの?ゆきかぜちゃん」
ゆきかぜが歩夢に声を掛けた。
「本当に、良かったんですか?
5000万なんて大金。お母さんのために
使ってくれたのは、嬉しいです。
でも……」
「そっか。まぁ、安い出費だよ」
「え?」
ゆきかぜは戸惑った。
『彼は安いと言ったのか?』と。
歩夢は、戸惑うゆきかぜに笑みを浮かべ
ながら語りかける。
「どれだけお金があっても、それで人の、
『本当の』笑顔や幸せが買える訳じゃない。
だからこそ、本当の笑顔や幸せを取り戻せる
のなら、高々5000万ぽっち。
僕にしてみれば安い出費さ」
そう言って、歩夢は笑った。
その笑みに、ゆきかぜは一瞬自分のハート
が高鳴るのを感じた。
同時に、彼女は理解した。
橘歩夢という男が、アサギ達に慕われる
理由を。
誰かのために、全身全霊でもって立ち向かう、
その勇士の一端を、彼女は垣間見た。
情熱の炎で太陽の如く燃え上がる魂を、
彼女は幻視した。
そして彼女は更に思う。
『もし、自分に達郎がいなかったら、
彼に惚れていたかも知れない』、と。
やがて、ゆきかぜはそんな考えを振り払うと、
両手でパンッと頬を叩いた。
「待っててね。お母さん。必ず、私達が
助けるから……!」
彼女もまた、気を引き締める。
全ては、仲間と共に母を助けるために。
ここに、水城不知火奪還作戦。
またの名を、『ヨミハラ壊滅作戦』が
始まろうとしていた。
第2話 END
って事で達郎はブレイブになりました。
また、次回からド派手なバトルになると思います。
Hシーンはもうしばらく先ですね。
感想や評価、お待ちしています。
読者様から、不知火を歩夢のハーレムに入れて欲しいと言うのがありました。どちらが良いですか?
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不知火は予定通り達郎のハーレムに入る。
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上とは別に歩夢のハーレムに入る。